美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
「やっほー!!」
「リリー。突然ごめんね、神奈川から」
「いーのいーの! ミサキのこと大好きだからっ!」
翌日、日曜日。
美咲は親友の深澤・リリー・春奈を、彼女の住む神奈川から東京まで呼び出していた。
もっとも、朝からの部活を終えてからだったので、待ち合わせは午後三時になっている。
リリーは天真爛漫という言葉をそのまま体現したような少女だ。
陽光を思わせる白に近いプラチナブロンドの髪には、上品なカチューシャ。
整った目鼻立ちはイギリス人の血を引く証で、そのお嬢様然とした雰囲気と、眩しいほどの明るさは、そこにいるだけで周囲をぱっと明るくさせる。
「リリーは今日も可愛いね」
「でっしょー! リリーちゃんは今日もキラキラだよー!」
「だね。じゃあ、行くよ」
「はーいっ!」
ミニスカートをひらりとはためかせたリリーは美咲のあとについていき、繁華街のカフェに入った。
「それでー? 今日はどったのー?」
「リリーは世間話って言葉知らないよね」
「いいじゃーん! なんの話するか知らされてないんだから、気になるじゃんっ!」
美咲は話したいことがあるから会えないか、とだけ連絡していた。
なので、今日何の話をするのか知らないのだった。
「まあ、いいけど……リリー、あんた腰はどうなの? 高体連は問題なく出られるの?」
「え、こんな明るいカフェで私の腰の話!? 暗《くら》ーい!」
「いいから話しなさいよね……!」
こうしてよくおどけたりもするため、美咲はやれやれという態度で接することが多い。
しかし、真剣な美咲の態度に、結局はリリーが折れるという形だ。
「うーん。どうだろ。良くはない……けど、高体連はちゃんと出られるよ! 関東……それに全国まで持つかどうかはわからないけどね!」
「ほんとリリーって、そういうところあるよね。その腰のお陰で最後まで試合が出られないかもしれないのに。しかも全国行く気満々だし」
「色々言ったってしょうがないじゃん? 私、全国選手だし、今回も出るよ!」
「ふーん。今回は私に負けるかもしれないのに」
美咲もリリーも関東大会常連。ただ、美咲は関東大会が最高成績で、リリーは美咲に勝ってその後の全国大会に出たことが何度かあった。
ライバルとはいえ、実績に差はあった。
「ミサキが私に勝てるかなー? 勝ったことないのに」
「ヘルニアが悪化したら勝てるかもしれないよ」
「もー、ミサキのイジワルー!!」
美咲の煽りにぷんぷんするリリーだが、本気で怒ったわけではない。
こういった会話は日常茶飯事なのだから。
「…………本当は、ヘルニア辛いんじゃないの?」
美咲は話を戻して、本気で心配するように聞いた。
「それはね……癖みたいなものだし……酷い時はホントに酷いよ」
「だろうね……」
聞かなくてもわかっている。
なぜなら、ヘルニアで大会を休んだ時、「テニスしたい」なんてメッセージが送られてきたことがあったから。
「私からは詳しいことは言えない……言えないことになってる…………でも、今からならギリギリ大会に間に合う」
「ん、どゆこと?」
「ヘルニア、治したいんだよね?」
「治したいは治したいけど、再発しちゃうから半分諦めてるなー」
リリーの言葉に美咲は椅子から立ち上がった。
そして――
「私も万全なリリーと戦って高校最後のテニスを終わらせたい……だから――このあと私の家まで着いてきて」
◇ ◇ ◇
「――昨日の今日でごめんね、高梨」
二人は美咲の家に向かい、そしてそのすぐ後に弘世が家に訪れていた。
そして弘世を見たリリーはというと……
「ええええええ!? ちょっとミサキぃ!? これどういうこと!? ボーイフレンドできたの!?」
大はしゃぎしていた。
そして美咲の彼氏だと勝手に思い込んでいた。
「あー、高梨。こういう子だから、慣れてね」
「うん、わかった……高梨弘世です。リリーさん、だよね?」
「リリーだよ! ……リリーだけど!」
興奮しすぎてリリーは今の状況が呑み込めていなかった。
「ミサキが……あのミサキが……! ああ、今年最大のハッピーニュースだわ!」
「……早瀬さん……そろそろ」
「そうね……」
二人は恋人関係だと勘違いしたままリリーは話を進めていた。
しかし実際はそうではない。
「リリー、聞いて。私と高梨は――」
「もうセックスはしたの!?」
「なぁっ!?」
リリーはオープンな性格だった。
美咲の前ではよく男の話をするが、いつもスルーして聞いていた。
そして、聞かれた美咲は、顔を真っ赤にしたのだった。
「バっ、バカ! 私たちはそういう関係じゃ……っ」
「だってもう家に招いてるくらいだし、良いトコロまでイッちゃってるんじゃないかって!」
(確かにそれに近いことはしちゃってるけど……だからといってセックスなんて……)
『そのまま襲われちゃうことが多いから』
そんな時、昨日の弘世の言葉が美咲の頭に浮かび上がった。
(いや……私は、高梨と……ああ、もう……リリーが変なこと言うから……昨日一人でした時のことまで……)
「――リリーさん。俺と早瀬さんは恋人じゃないよ」
「そうだよ。高梨には立派な彼女さんがいるんだから……」
「うーーーーーーん? ………………じゃあ浮気じゃん」
「……だから、そういうことを話そうと呼んだんじゃないの!」
しばらくその後もリリーの誤解を解くまで時間がかかったが、やっとのことでクラスメイトだと理解してもらい、本題に入ることに。
「リリー……ここにいる高梨が、あなたのヘルニア……治せるかもしれないの」
「お医者さんでも完治させられなかったのに?」
「うん……。実績もあるみたい……それと、昨日は体の疲労も完全にとってもらって、それが本当だって実感したの」
「ぬぬぬ……」
リリーは疑っていた。
それは当たり前のことだった。
本来であれば、美咲がホクロを完全に除去し、その前後の写真を見せたりでもすれば、信じたかもしれない。
しかし美咲は来たる大会に向けて、同時期にリリーのヘルニアも治したかったのだ。だからそれはできなかった。
「早瀬さん。気を遣ってもらってごめんね。でも大丈夫だよ。俺から言うね」
「高梨……」
「早瀬さんの大事な友達だと信じて言うね。俺は『美容』ってギフトを持ってるんだ――」
弘世はリリーに向けて、全てではないが持っているスキルとその効果と施術方法、反動を伝えた。
リリーはその間、真面目に話を聞いていて、そして最終的に一つの考えが頭をよぎった。
「――やっぱりえっちなことしてるじゃん!!」
その通りだった。
ただ、セックスはしていないだけで……。
「リリーさん。俺は早瀬さんが治してあげたいというから今日は来た。……でも、一番大事なのはリリーさんの気持ち。直接肌に触れなければいけないし、反動のことだってある。簡単に決められることじゃないはず」
「へえ……男を避けてきたミサキが惚れた男のわけだ……」
「ちょっ、惚れてない!」
「はいはい。そういうのはいいからー。……で、もしヘルニアが治ったら、私は自由にテニスができるってこと?」
少し茶化しが入ったが、リリーはヘルニアについて聞き返した。
彼女が中学に入ってから長く悩まされてきたことだから。
「うん。できると思う」
「…………嘘じゃ、ないよね?」
「自信を持って言える」
リリーは少しだけ考えた。
自分の腰に触れながら、もし治った時のことを考えたのだ。
そうして出した答えは――
「ミサキの施術、見てから決めたい。今から見せて」
「…………うそ」
あの恥ずかしい施術を親友であるリリーに見られると考え、美咲は再び顔を赤くしたのだった。