美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
「ひびきちゃんっ! 本当にごめんなさい!!」
「俺からも……本当にごめん……っ」
翌日、昼休みに校舎の屋上にひびきを呼び出した小春と弘世は、コンクリの地面に頭をつけて謝罪していた。
「な、なんで私に謝るのよっ! 別に……私は弘世と付き合ってるわけでもないし……土下座なんて……っ」
そう。ひびきと弘世は交際していないのだ。
でも、それでも……ということがある。
小春はひびきの気持ちを知っているし、弘世はひびきからの好意に気づいている。そして弘世自身もひびきに好意を持っている。それを考えると、一番最初にすることは謝罪だと思ったのだ。
ひびきの顔色は優れない。
呼び出された時から、薄々感づいていたのだ。自分がやってしまったことだ。小春だってやってしまう可能性があると。何度もそう考えた。ただ、それが現実になってしまうと、少し心が痛かっただけで……。
昨日、小春は乱れに乱れた。弘世を離さず、思い切りに性をぶつけ、何度も放出させた。痛みを感じないスキルを持つ小春は、初めてにも関わらず、最高の快楽を得ていた。だから、弘世の母親が仕事から帰宅するまで、ずっと止まらなかった。
一方の弘世はどこかに罪悪感を感じながらも、気持ちよさを感じてしまっていた。一番やばかったのは小春に「スキルを発動して」と言われ、弘世自身に対して『肌質改善』のスキルを使わされたこと。
スキルを発動したまま手を動かされ、弘世は自分の胸を自分の手で撫でることになった。とんでもない快感が脳を支配し、そこで弘世はおかしくなってしまった。それまでは自分で動かなかったのに、自らも動くようになってしまったのだ。だから、弘世は余計に罪悪感があったのだ。
「…………こうなると思ってたんだよね。でもさ……二人共、悪くない。だって、スキルの反動だもん」
「ひびきちゃん……」
「多分、私と小春が逆の立場だったら、先にしてたのは小春だったと思う……それくらい抗えない反動があるんだよね」
このようなタラレバを話してもしょうがないが、事実、そうだった可能性は高い。
そして、ひびきは意を決した。
「私……弘世のこと、好きなんだ。——最初はね、ただ欲望に流されてしちゃったけど……弘世と仲良くなっていくうちに……」
「ひびき……」
瞳を震わせながら、ひびきはゆっくりと伝えた。
ぎゅっと両手で拳を作り、小春がいる前なのに、ちゃんとした好意を伝えた。足は震えていて、一生懸命に伝えてくれているのだと、弘世も感じていた。
「弘世は、どうかな……? 私のこと、どう思ってる……?」
「好きに決まってる!!」
「弘世っ!?」
ひびきは弘世に恐る恐る聞いた。しかし、間髪入れずにその返事は返ってきたのだ。だからひびきは驚いてしまい、ぱっと涙が宙に飛んだ。
地面に手をつけた状態から立ち上がった弘世。
ひびきに近づいて、手を取る。
「好きだよ、ひびき」
「ひろ、せ……っ」
弘世が愛の言葉を囁き、揺れるひびきの双眸からは涙が溢れる。
その様子を背後で小春が嬉しそうに見つめていた。
「俺さ……クラスにいても存在感ないし、ひびきと仲良くなった今だって変わらない。でも、ひびきはいつもキラキラしてて……皆に人気。……俺がこのギフトを授かれなかったら、接点だってなかった雲の上の人」
「そ、そんなこと……」
「本当だよ。顔もぱっとしないし、服装だって地味……前のままだったら、家に女の子を連れて行くなんてこともなかったと思う」
それくらい女性と接点がなく、ひびきは影の薄い男子として日々生活していた。
冒険者になれれば、自分もモテはじめるかもしれない、なんて幻想を持っていたこともある。けど、それも叶わず、絶望していた。
「でもさ、ひびきが俺を見つけてくれたおかげで、暗かった自分の気持ちが変わってきて、今じゃこのギフトを授かって良かったと思ってる」
「ひろせぇ……」
「だから今の俺にしてくれた、ひびきが好き。始まりは美容のための下心であっても、今はちゃんと俺のこと好きなんだよね?」
「うん……うん……好き……」
「なら、この好きは本物だ……と言っても、俺もこんな気持ち初めてだからよくわかってないけどね……ははっ」
「バカぁ……っ」
もう、暗い顔はしていなかったひびき。自分の想いが伝わり、その相手からも同じ想いを返され、これ以上ない幸せな感情でいっぱいになっていた。
だからだろうか。
弘世の一番になれたと、理解したからだろうか。
ひびきの懐は広くなっていた。
「小春……?」
「ん、どうしたのひびきちゃん」
小春はまだ立ち上がらずそのままだ。ひびきの想いが通じ、もらい泣きをしていた。ただ、これからどうひびきと仲直りすればよいかはわからなかった。
「小春、我慢しなくて良いからね」
「え……それは、どういう……?」
「弘世と…………えっちしても、大丈夫だよ」
「なっ、ひびき!? 何を言って……!」
「ひびきちゃん!?」
思わぬ発言に弘世は目を見開き、小春は動揺を隠せない。
ひびきは何を考えているのだろうか。
「私、小春も大好きなの。痣も治してほしいし、今以上に綺麗になってほしい。これは、ずっと仲良くしてくれていた親友だから」
「で、でも……」
「弘世のこと、好きかどうかはわからないけど……気持ちよかったでしょ?」
「あっ……いや…………はいぃぃ…………」
小春は顔を赤らめ、それを認めた。ひびきの目を見れず、恥ずかしさMAXだった。
「小春、スキル使ったでしょ」
「ぁ……」
「初めてのえっちに持ってこいのスキルだもんね……」
ひびきには全てお見通しだった。
もし弘世と致すなら、初めての痛みを軽減するためにスキルを使うと。わざわざ痛いのを我慢する必要はない。体が熱くなり、欲望に素直になってしまっているあの状態なら、使うのだと容易に想像できた。
「私ね。弘世と付き合えただけで嬉しいの……それに、これからも弘世は私や小春以外にもスキルを使う機会が出てくると思う。反動は避けられない……だから、彼女の私が寛容にならなくちゃ」
「でも……良いの?」
「私は弘世の一番ならそれで良いの。それに、スキル使用後に動けなくなること……猛獣になった女の子を止められるわけないしね。だったら、私がそれを受け入れるしかない」
「ひびきちゃん……優しすぎるよ……」
ひびきは思っていた。
冒険者の夢を諦めるしかなく、人に使うつもりのないギフトを使いはじめ、今徐々に変わってきていると。これからも自分や小春以外にも使う機会が出てくるだろう。それは弘世がギフトを授かって良かったと思える手助けになるはずだと。
弘世のギフトは、女の子にとって夢のような能力。美容医療がどのくらい高いのか、女子なら誰でも調べるし、知っている。高校生には手が出せないほど高額で、大人であっても、ほいほいとお金を出せるものではない。
いずれ、もっと多くの人に弘世の力は必要になる。だから、一番身近な自分は弘世の活躍を邪魔せずに応援すると。
「私、弘世に好きって言われて、吹っ切れたから……もう大丈夫!」
そう言いながら、ひびきは小春の手を取り、立ち上がらせる。
そのままぎゅっと抱き寄せ、小春の体を包んだ。
「別に喧嘩したわけじゃないけど……これで仲直りね、小春っ」
「ひびきちゃん……っ」
小春はひびきの腕にしがみつき、ふるふると震えた。
良かった。こんなに優しい親友がいて良かったと、心の底から小春は思った。
「じゃあ、今日の放課後、うちに集合ね」
「え?」
「昨日、小春としたんでしょ?」
「いや……そうだけど……」
「今日は三人でするよ!」
「はぁ!?」
「ほえ!?」
吹っ切れたひびきは、理解を超えることを言い放つ。弘世も小春も素っ頓狂な顔をしていた。
「それって、別にスキルを使うわけじゃ……ないよね?」
「別に、スキル使っても良いんじゃない? だって……気持ちよくなるし……」
「その使い方は……」
「ひ、ひびきちゃんっ! 実は……ごにょごにょ……」
すると小春がひびきに何かを耳打ちした。
弘世は眉を潜めると、そのすぐ後にひびきがニヤリと笑った。
「やっぱり、スキル使ってもらおう——ね、弘世?」
「な、なんだよ……なに企んでるんだよ!」
「しーらないっ。今日うちにくればわかるんじゃない?」
「なんなんだよ……もう」
小春は昨日のことをひびきに耳打ちしていた。
その内容は、スキルを発動した弘世の手を自分に当てさせること。それにより、弘世自身の体が熱く、敏感になること。
ひびきはそれを聞いて、驚き、そして弘世がどんな顔をするのかと笑ったのだ。
「あー、今日は楽しみだな〜♪」
「ちょっと、変なことはしないでねっ!」
「ふふふふっ」
ひびきと小春は笑顔で屋上から出ていき、それを追った弘世は笑顔ではなかった。
二人の企みを恐れ、午後の授業を過ごすことになったのだから。