※この作品はR-18です。

美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】   作:pelca

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第100話 寄り添う力

 先輩であるひびきが恋人――そのはずなのに。

 目の前に現れた弘世は、両隣に並ぶ女子高生と、まるで恋人同士のように距離が近かった。

 

 晶は思わず目を疑い、次の瞬間には胸の奥がざわめいた。

 けれど視線が合ってしまった以上、無視するわけにもいかない。

 

「あ、晶ちゃん。こんにちは。もしかしてシューズ見に来たの?」

「はい……そろそろ新しいものを、買いに来なくてはいけなかったので……」

 

 返事はしたものの、晶の視線は定まらなかった。

 弘世に話しかけながらも、やはり隣にいる二人の女子の存在が気になって仕方がなかったのだ。

 

「あきらちゃん……? …………って、あれ、もしかして駿河晶先輩!? えっ、王子じゃん! 王子じゃんっ!」

「あ、本当だ。背も伸びて、さらにイケメン度が増してる」

 

 弘世と一緒に歩いていたのは、鈴川葵と小塚莉央だった。

 

 晶は、ひびきの中学時代の後輩だった。

 葵と莉央は晶とは直接の接点がなかったが、同じく後輩にあたる。

 一年生の頃、晶は二年生で、ひびきは三年生。

 そして晶はその頃から既に有名で、王子と呼ばれていたこともあり、在校生なら誰もが知る存在だった。

 

「ボクのこと、知ってるの?」

「認知されてなかった! 私、同じ中学で一年後輩の鈴川葵ですよー!」

「私は小塚莉央です」

「この二人はひびきの後輩なんだよ」

「ああ、そうだったのか」

 

 二人が自分と同じ中学出身で、さらにひびきとも繋がりがあると知り、晶はわずかに胸をなでおろした。

 

「てか先輩、王子とも知り合いなんですか?」

「ああ、ひびきから紹介されてね」

「ってことは……王子も何か悩みがあるってことか〜」

「えっ、わかるの?」

 

 葵の言葉に、晶は驚いて目を丸くする。

 すると彼女はニッと笑って――

 

「ひびき先輩の紹介で知り合ったなら、それしかないじゃないですか。私も同じですし」

「鈴川さんも?」

「葵でいいですよ!」

「じゃあ葵ちゃん。君も弘世先輩に、悩みを解決してもらったんだね?」

「はい……」

 

 そう言いながら、葵は自分の胸に両手を添え、いたずらっぽく笑う。

 

「私の場合は――って、『誓約』でこれ以上喋れないんですけど!」

「はは、晶ちゃんは全部知ってるから大丈夫。葵ちゃんが言いたそうだから代弁すると、胸を大きくしたんだ」

「ああ、そういうことだったんですね……」

 

(なるほど……見せてくれた画像は、彼女のだったのか。――今の彼女は本当に笑顔だ。多分、ボクと同じように悩んでいた時期があったけど、こうして明るくなれたんだろうな)

 

 葵の表情を見ながら、晶はそう想像する。

 

「じゃあもう一人の君……小塚さんは?」

「私も莉央でいいです。私は……まあ、葵の付き添いみたいなものです。先輩のギフトについては知ってます」

「そうか、なら施術を受けたわけじゃないんだ」

「あ……いえ……その……」

「だよね。莉央ちゃんも肌がものすごく綺麗だし、とっても美人だ」

「ちょっ……王子、やめてください。私なんて……」

「莉央、照れてる〜」

「葵、うるさい!」

 

 晶に褒められて頬を染める莉央。

 施術によって元々の鋭い目つきが今ではクールな美少女の印象に変わり、実際、彼女は誰もが認める美人になっていた。

 

「……じゃあボクはスパイクを見に来たから、君たちはごゆっくり」

 

 そう言って立ち去ろうとする晶を、葵が引き止める。

 

「よかったら、話聞きますよ? なんだか迷ってる顔してますし」

「……よくわかったね」

「施術前の私と同じ顔してますからねっ!」

「経験者は語る、か……じゃあ少しだけ頼もうかな。実際に見てもらった方が早いし。更衣室でいい?」

「もちろんです!」

「ってことで、先輩と莉央はゆっくり回っててくださいねー!」

 

 葵の勢いに押され、弘世と莉央は二人きりで残されることになった。

 

「今日は葵のバスケシューズを買うつもりだったのに……まあ、少し待つくらいならいいか。先輩もいるし」

 

 元々この日は、葵の新しいバスケシューズを購入するためにスポーツ店に来ていたのだ。

 葵はどうやら弘世に買ってもらうつもりで、ねだって連れてきたらしい。

 

 弘世には美容ダンジョンで儲けた潤沢な資金があり、ただ、税金関係をどうしようか悩んでいた。

 そのため、沙織や霧乃との相談の上、会社設立の準備すら進んでいる。

 

「じゃあ葵ちゃん、終わったら連絡してね」

「はーい!」

 

 そうして葵と晶が更衣室へ向かい、残された弘世と莉央は顔を見合わせる。

 

「……俺たちはここに用はないし、せっかくだからアイスでも食べに行かない?」

「えっ、アイス!?」

「うん。この商業施設の上にジェラート屋があるんだ。美味しいらしいよ」

「い、行きます!」

 

 莉央はぱっと顔を輝かせた。

 さらに言えば、弘世と二人きりで行動するのは初めてで――心の奥がじんわりと熱くなるのを、自分でも感じていた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 一方、更衣室に入った晶と葵。

 閉じたカーテンの向こうは外のざわめきが遠のき、二人だけの静けさに包まれていた。

 

「こ、こういうわけなんだ……」

「……でかぁ……。イケメン顔にこの巨乳って、ギャップえげつなっ」

 

 特殊なチューブトップを外した瞬間、解放された晶の胸が重たげに揺れる。

 視界いっぱいに広がるその存在感に、葵は思わず息を呑んだ。

 

「この大きさが嫌で、ずっと悩んでるんですもんね?」

「そうなんだ。男子に見られるとかはまだ我慢できる。でも……この胸があるせいで、短距離のタイムが伸びなくて……それだけは、どうしても許せなくて……」

 

 真剣な表情で語る晶。

 葵はじっと爆乳を見つめながら思考を巡らせる。

 

(王子は私のときと違って、恋をしたいわけじゃない。……問題は、男である先輩に直接触れられることへの抵抗かな……)

 

「施術の内容は、もう聞いたんですよね?」

「ああ、ひびき先輩から全部聞いた」

「じゃあ……私で試してみませんか?」

「え……?」

 

 返事を待たず、葵はそっと晶の背後へ回り込む。

 

「実際に揉んでみれば、施術がどういうものか想像できます。先輩は真面目ですから、余計なことなんて絶対しません。だから安心してください」

「……そういうことなら……少しだけ、お願いしようかな」

「じゃあ、いきますね」

 

 葵はためらいなく両腕を伸ばし、後ろから晶の胸に手を回した。

 そして――ブラの中に、素手で滑り込ませる。

 

「な、中まで……!?」

「だって、本番は直接ですよね?」

「そ、それは……そうだけど……」

「我慢してください。慣れれば自然になりますから」

 

(――おっき……! なにこれ!? イケメン顔にこんなとんでもないサイズがついてるの!? うわ……ヤバ……ふわっふわ……これ、メロン? スイカ? いや、もう表現できない……!)

 

 葵は心の中で叫びながらも、一心不乱に両手を揉み込む。

 当然、指先は先端へと触れてしまう。

 

「あっ、葵ちゃんっ……そこは……」

「王子、我慢してください。そこも施術では触れられるんです。私も同じでした。……最初は色々あったけど、最後には幸せだって思えるようになったんですよ」

「んっ……あっ……そこ、はぁっ……」

 

 堪えきれず、晶の口から甘い声が漏れ出す。

 それでも葵は手を止めず、むしろ胸の奥に隠していた想いを言葉に乗せた。

 

「……私、好きな人がいたんです。でも、その人は大きな胸が好きだって言ってて。まあ、胸なんて本当は関係ないんですけどね。それでも、告白のために少しでも自信を持ちたくて……」

「あお、あおい……ちゃんっ……も、もうっ……」

「あっ、ごめんなさい……つい喋りすぎちゃった」

 

 やっと手を離すと、晶はぐったりと床に崩れ落ち、肩で荒い息を繰り返した。

 

「はぁ……はぁっ……弘世先輩のは、これ以上に反動があるって……」

「私は詳しいことは言えない決まりなので……ただ、ひとつだけ。施術を受けたあとは、えっちな気分になっちゃいます」

「……じゃあ、葵ちゃんは……ひびき先輩がいるのに……?」

「変な関係に見えますよね。でも、ひびき先輩は弘世先輩が色んな人を助けられるならって受け止めてくれてるんです。あの人たちの周りは、ほんとにみんな良い人で」

「そうなんだ……」

 

 少しずつ、晶は弘世とひびきを取り巻く不思議な空気を理解し始めていた。

 

 やがて息を整え、ふらつきながら立ち上がると、慌ただしく服を着直す。

 

「……葵ちゃん、さすがにボクの胸の匂いを嗅ぐのはやめてほしいな……」

「あっ……つい! だって王子の胸の匂いなんて、ファンにとっては家宝ですよ!」

「葵ちゃんはファンじゃないだろ?」

「可愛い子は大体好きなんでっ!」

 

 揉みしだいたばかりの手を鼻先に近づけ、くんくん嗅いでしまう葵に、晶は苦笑するしかなかった。

 

 そして二人が更衣室を出ると、すぐに弘世たちと合流する。

 

「……葵ちゃん、ごめん。少しだけ弘世先輩を貸してくれないかな? 話したいことがあるんだ」

 

 合流直後、晶がそう切り出した。

 

「しょーがないですねー! わかりました!」

「葵ちゃん、いいの?」

「まー、今日はまだ時間ありますしー? 先輩がシューズ買ってくれるって話ですしー? いっちばん高いの買ってもらいますから!」

「……まあ、いいけど」

「いや、冗談ですよーっ。ちゃんと自分の足に合ったもの選びますって。……でも、先輩ってほんと甘やかしてくれるから……そんなところも、大好きですけどね♡」

 

 きゃぴきゃぴと笑う葵に、弘世もまあいいかと肩をすくめた。

 

 ――そして二人きりになった晶と弘世。

 個室はなかったので、コーヒーを買い、近くのベンチに並んで座る。

 

「――弘世先輩……私、どうすればいいですかね?」

「……すごい質問きたね」

 

 晶の揺れる心に気付いていた弘世。

 だがそれは胸を触られることへの戸惑いにほかならない。

 

「実はさっき……葵ちゃんに胸を触ってもらって。……練習っていうことで」

「……大丈夫だったの?」

「体験は、できたと思います。でも、まだ踏ん切りがつかなくて」

「そうか……。でも俺からはやろうなんて絶対に言えない」

 

 それは、自身のスキルが危険だと十分に理解しているからだ。

 

「まだ知り合って間もない相手の体に触れるんだ。俺から勧めたら、それはただのセクハラになる。だからこそ、晶ちゃん自身に決めてもらわないと」

「先輩……」

 

 一歩間違えれば訴えられてもおかしくない。

 これまで無事だったのは、誰もが自分の意志で施術を望んだからだ。

 

「――私、告白されたんです」

「えっ……」

 

 晶の口から出た不意打ちの言葉に、弘世は思わず目を見開いた。

 

「今まで女子からしか告白されたことなかったんです。でも、今回はじめて男子に……」

「へぇ……晶ちゃんみたいに魅力的なら、男子だってずっと声をかけたかったんだろうね」

 

 女子に囲まれることが多いと聞いていたが、実際に目の前にいる晶は――女性らしい顔つきで美しくて、まさに特別な存在だった。

 

「……それで、その男子は私の胸のことを知ってて、全部受け止めるから隠さなくていいって言ってくれて」

「でも、その言葉は……晶ちゃんが陸上に懸けてるってことを、無視した発言だったわけか……」

「先輩は、わかってくれるんですね」

「俺は直接話を聞いてるから……。これまでも色んな人を見てきたけど、晶ちゃんがどれだけ真剣に陸上を考えてるかは、十分伝わった」

 

 夢を追う人々――冒険者、アイドル、モデル……。

 病を克服してまで続けたい者もいた。

 

「せっかく先に進めるかもしれないのに、道半ばで諦めなきゃいけないのは辛いよね」

「……先輩も、何か諦めたことが?」

「実は冒険者になりたかったんだ。昔から憧れてた。でも授かったスキルは『美容』で……」

「だから夢を諦めるしかなかったんですね」

「そう。でも晶ちゃんは、まだ諦めるには早い。……あ、これ勧めてるわけじゃないからね!」

「ふふ、わかっています」

 

 焦って否定する弘世に、晶は小さく笑った。

 冒険者の夢を諦めざるを得なかった彼だからこそ、今まさに岐路に立つ自分の痛みを理解してくれるのだろう。

 

「だから、何度でもひびきに相談してみなよ。俺でもよければ、話は聞くから」

「……先輩は、本当にかっこいいですね」

「この容姿を見て、それ言える?」

「ふふ、中身の話です」

 

 自分より背も低く、顔立ちも整いすぎているわけではない。

 それでも弘世には優しさと人に寄り添う力があった。

 ひびきが惹かれたのは、きっとそこなのだ。

 

「……ボク、もう少しだけ考えてみます」

「うん、それがいいよ」

 

 そう言って、弘世は立ち上がり、葵たちに連絡を入れて歩き出す。

 晶も立ち上がり、スパイクを見に行こうと足を進めながら、ふと弘世の背中を見つめ、小さく呟いた。

 

 

「――もし、先輩みたいな人から告白されていたら、もっと嬉しかったのかな」

 

 

 

 

 

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