美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
「も、もう限界です……死んじゃい、ますっ」
息も絶え絶えな晶が、体をベッドに委ねて天井を見上げていた。
「はじめてだったのにやり過ぎたね……最近ちょっと性欲が強くて……ひびきにも迷惑かけちゃってるくらいなんだ」
「謝らなくても大丈夫です。ボクも体力には自信があったんですけど……さすがは先輩……」
ダンジョンマスターになって以降、弘世の性欲は留まることを知らなかった。
それが理由か、初体験だった晶に対しても、弘世は一度で終わることはなく、何度か行為を繰り返した。
はじめてにしては晶も必死についていったものの、最終的には自分からストップをかけることとなった。
それから十数分ほどが経過した。
「――弘世先輩がはじめての人で、本当に良かったと思ってます」
互いに裸の状態で毛布にくるまっていた二人。
弘世より少しばかり身長の高い晶は、彼に腕に頭を乗せていた。
終始、自分を女の子扱いしてくれた弘世。今までは経験できなかったことだからか、晶はそれがとても嬉しかった。
「でも、逆に言えば、ボクのこれからの恋愛は、どうしようってなっちゃいましたけど」
「っ……だよねぇ……」
「ふふ、すみません。困らせるつもりで言っちゃいました。今は陸上のことしか頭にありませんから。――でも、先輩は色々な女の子を虜にしてしまって大変ですね」
「それで大変って言ったら皆に失礼でしょ」
「こんな状態になるとわかっていても、スキルを使ってもらうことを選択したのは自分……だから先輩が責任を感じる必要はないと思いますよ」
ぎゅっと顔を弘世の首元へ近づき、恋人のように寄り添う。
そんな甘え方をしている晶だが、今、一番大事なのは陸上だった。
「……してた時に、すす、好きって言ったのは……えっと……その、すみません」
「大丈夫だよ。それが晶ちゃんの本心でも、そうでなくても、ちゃんと受け止めるから……」
「受け止めて……横に流すんですか?」
「本当に真剣なら、俺も向き合う……それだけのことをしてるから……でも、ひびきとかにもちゃんと認めてもらわないといけないけど」
「先輩は本当にモテモテですね……ああ、先輩の匂いも癖になりそうです……」
くんくんと鼻を擦り付け、犬のように首の匂いを嗅ぐ。そうして徐々に上へと上がっていくと、弘世が軽く顔を下に向けた。
近づけて――晶は弘世の唇に自分の唇を接触させた。
「…………しちゃうと、またムラムラしてきちゃったんですけど……」
「あはは……まあ、俺もだけど…………する?」
「ど、どうしようかな……」
すると、弘世の腕枕していた手がもぞもぞと動き、晶の胸に触れた。
「あっ……ズルいです……こんなのされたら……」
「晶ちゃんも凄い体力だよね、さすがというか」
「どれだけ自分の体をいじめて陸上頑張ってきたと思うんですか……ボク、これでもかなりストイックなんですからね」
「わかってるよ……」
「……いつか、先輩をひいひい言わせてみせるんですから――」
言いながら晶は、弘世の上に跨がり、もう一回だけ、体を重ねるのだった。
◇ ◇ ◇
弘世に施術をしてもらったその翌日――。
晶はいつもより少しばかり早く目が覚めていた。
「…………体が、軽い?」
陸上の為に規則正しい生活をしていた晶は、基本的には前日の疲れを残さないように調整してきた。
激しいトレーニングをしたとしても、ゆっくりと休息を取ることが大事だとわかっているからだ。
でも、今日は少し違った。
股関節が少しだけ筋肉痛なことは置いておいて、疲れが残らないにしても、あまりにも体が軽かった。
「…………」
ベッドから起き上がり、姿見の前に立った。
そして、服の上からゆっくりと両手で自分の胸に触れたのだ。
「っ……!」
晶はパジャマ代わりに着ていたTシャツをばっと脱ぎ捨てた。
同時にブラも取り外し、その状態で鏡を見た。
「凄い……本当に、小さくなってる……っ!」
Iカップあったはずの胸は半分ほど――否、半分以下になっていた。
信じられない変化に晶は自分の胸を見下ろした。
今までにこれほど自分の胸を見つめたことはあっただろうか――いや、なかった。
「ふふっ、ふふふっ……弘世先輩……あなたは本当に凄い人だ……」
晶は急いで準備をした。
もちろん朝練をするためだ。
今日は少しだけ早く朝練に向かいたかった。
自分のスピードに変化があるのか、それを確かめたかったから。
◇◇◇
「――うぅ…………こ、股関節が……」
しかし、前日の弘世との性行為の筋肉痛が思いの外残っていたのだ。
晶はもし今後するのであれば、ちゃんと時期を見計らってしようと心に刻んだのだった。
「なんだか今日は調子悪そうだったね……って、あぁーーーーーっ!?」
朝練が終わり、トレーニングウェアから制服に着替えている途中のことだ。
同じく陸上部で幅跳びを専門としている本庄若菜が、突然大声を出した。
視線の先は晶の胸だった。
「そ、その胸どうしちゃったの!? ええ!? ええええっ!?」
「若菜、声が大きいよ」
「だ、だって……晶の超巨乳が見る影もないんだもんっ!?」
毎日のように見てきた晶の胸だ。反応しないわけにはいかなかった。
「まあ、色々あってね。若菜であっても詳しく伝えることができないんだけど、言えるのはボクはこれからもっと速くなるってこと」
「あぎらのむねがあああああ〜〜〜っ!!」
「ちょ、ちょっと!?」
泣きながら晶の胸にダイブした若菜。
いつもの感触とは違い、物足りなさを感じていた。
「ボクがどれだけこの胸に悩んでいたか知ってるでしょ?」
「そうだけどお…………」
「まあ、最悪元に戻せるみたいだし……」
「え、なに?」
「な、なんでもないっ!」
『育乳』のスキルを使えば、元には戻せる。
でも、晶はもうIカップに戻ろうとは思えなかった。戻すとしても少しだけだ。
陸上をやっている間は、これ以上大きくしようとは思わない。
今日は筋肉痛ではあったが、それが治った時、どれほどのスピードが出るのかとても楽しみだった。
「――若菜、ボクは今から楽しみなんだ。どれだけ速くなるのか、自分でも怖いんだからね……」
「ひっ……晶、今のその顔怖いよ……」
「ああ、今のボクは燃えているからね。今月末に控えた代表予選……絶対に……」
ぎゅっと拳を握り締めた晶は、早く本気で走りたくてうずうずしていた。
◇◇◇
「あきらー! 頑張れー!!」
観客席から、大きな声で叫んでいたのは、ひびきだった。
「晶ちゃーん! ファイトー!」
「晶先輩頑張れー!」
「がんばれー」
同時に隣には弘世、そして葵、次いでに莉央も並んでいた。
いわばここにいるのは晶の乳に関わった乳調整チームだった。
「あ、気付いた」
スターティングブロックに向かって歩いていた晶は、ひびき達の声に気づくと軽く手を振った。
「「きゃああああああっ!! 晶様〜〜っ!!」」
だが、そのタイミングで、別の席に座っていた晶の学校の女子生徒が一斉に声を上げた。
「うわっ、あきらの人気すごっ」
「あれだけイケメンだと、ああなってもしょうがないですよねっ」
晶の人気、そのファン達の熱量にひびきは驚き、葵はそれに同意した。
「さあ、はじまるよ」
弘世がそう言うと、選手たちがスターティングブロックに足をかけ、クラウチングスタートの準備をした。
会場が静かになる。
そして――パン! と大きなスターターの音が鳴り響き、百メートル走がスタートした。
代表予選の決勝。これで一位を勝ち取ると、大きな世界大会への出場切符が得られるのだ。
低く沈んだ体勢から徐々に起き上がり、トップスピードへと至る。
八人中、晶はまだ四位だった。それでも――
「あきらー!」
「いけっ! いけっ!」
「あああっ! まだ、まだですっ!」
「走れ! はしれええええええっ!!」
先ほどまでは一番静かで、乳調整にほとんど関わっていなかった莉央。
クールな印象の彼女が、四人の中でも一番大きな声を出していた。
すると晶は徐々に順位を伸ばし、ついには二位にまで上がる。
残り五十、四十――三十メートル。
(軽い……体が軽い……どこまでも、どこまでも速く……っ!!)
――胸が軽くなった晶は、背中に翼が生えているかのような走りをしていた。
「あきら〜〜っ!」
「いけ! いけええ!!」
たった十秒間で決まってしまう、本当に短い勝負。
出場している八人の中で晶はダントツに身長が高く、足も長かった。
その長い足から繰り出される横幅の広いストライドは、グングングングン伸びていき……そして――
「きゃあああっ! あきらぁぁ〜〜っ!!」
「やったあああああっ!!」
「わああああっ!!」
「ぎゃああああああっ!?」
ひびき達四人はその場でもみくちゃになって喜びあった。
晶はダントツで一位。文句無しの一位だった。
彼女のファンの女子達もその結果に、ひびき達と同じように泣き叫びながら喜んでいた。
晶は観客席に向かって手を振り、腰を曲げて深く礼をした。
◇◇◇
「――晶ちゃん、優勝おめでとう」
大会から、一週間が経過した。
場所は晶の部屋、弘世と二人きりだった。
「これもひびき先輩を通じて出会えた弘世先輩のお陰です。先輩にいくらお礼を言っても物足りないくらいです」
「晶ちゃんが、普段から努力していたからこそだよ。俺は少しだけ手助けしただけだから……」
「本当に先輩は謙遜謙遜ですね……ボクがどれだけ感謝しているか――まあ、この体になってまだ時間も浅いので、これからもっとスピード出せるようにフォームの調整をしていくんですけどね」
上半身に重りを抱えたまま走っているようだった晶は、体の重心が変わったことで、走り方を変えざるを得なかった。
今回は、元々足の速かったのと、本来の調整能力の高さから一着を取れたが、陸上競技というのは、一着になれただけで終わりではない。
「タイムにこだわっていくのが大変だよね……」
「そうですね。男子はともかく、女子の短距離は世界的に見ればまだまだ遅いです。ボクはその壁を打ち破って、世界と戦えるような選手になりたいんです」
「晶ちゃんならなれると信じてるよ」
「はい……そうなれるように、頑張ります」
そんな会話をしていた二人だが、今日この場に弘世を呼んだのは晶からだった。
晶は、直接弘世にお礼を言いたい、ということの他に、してもらいたいことがあった。
「それでですね……ボク、優勝したじゃないですか……」
「うん、そうだね」
「だから……先輩に、ご褒美をもらいたいなって……」
もじもじしだした晶は、頬を染めてじりじりと弘世の方へと近づいた。
「いいよ。どんなことしてほしい?」
「ええとですね……ただ、いちゃいちゃするだけでいいんです……」
弘世の隣へとぴったりくっついた晶は瞳をうるうるとさせ、最後には顔をすりすりと擦り付けた。
「ふふ、くすぐったい」
「先輩の匂い……なんだか久しぶりです……ドキドキします……」
「俺もだよ……やっぱり、こうしている晶ちゃんは普段とはまた違って可愛いね」
「っ……もっと言ってください。可愛いって言ってくれるの、本当に先輩しかいないから……それ言われると、胸がきゅんとするんです」
ついには互いの体を正面にし、腰に腕を回すと抱きしめるような形になり、耳元で言葉を交わす。
弘世の吐息が耳にかかり、晶はぞくっと身震いする。
「晶ちゃん、可愛い」
「っ……ヤバいです……もう、甘えたモードになってます……せんぱい……」
「晶ちゃん……」
顔を正面に動かし、弘世の顔を両手で掴むと、晶はゆっくりと唇を近づけた。
軽く唇を接触させた後は、次第に舌を絡ませ、長く深いキスを繰り返す。
そうしていくうちに体が熱くなり、晶は上着を脱ぎながら弘世をベッドへと誘導した。
「小さくなったこの胸、見るのははじめてですよね……」
「そうだね」
「小さくなっても、嫌いにならないでほしいです」
「嫌いになんてなるわけないよ。晶ちゃんはいい子で、努力家で、周りには見せない顔を俺だけに見せてくれる……魅力いっぱいの子だよ」
「せんぱい……」
弘世を押し倒し、服を捲りあげると、晶は舌を這わせていく。
「前ははじめてで、よくわからないことだらけでしたけど、今日はボクが――」
「ご褒美がほしいんじゃないの?」
「これだってボクにとってもご褒美ですよ」
「晶ちゃんがいいなら……」
そうして二人は、以前のように体を重ね、再び深く繋がっていく。
今日の晶は、前よりさらに激しく、獣のように絡み合った。
――この日を境に、晶は徐々に女性らしく変化していく。
髪を伸ばしはじめ、服装もカッコいいことには変わりないが、今までは着なかったような服を着用し、学校での評価も変化していく。
ただ、晶の女子人気は相変わらずで、女性らしくなってもかっこいいという評価が変わることはなかった。
だが一人、一番の仲良しである若菜だけは晶の変化に「男でしょ! 絶対男だ!」と言い張り迫るのだが、晶はそれを笑って躱し、なかなか話そうとはしなかった。
こうしてまた一人、弘世のスキルによって救われ――心さえも奪われていく。
結果的にではあるが、本人達は幸せになった。
陸上一筋の駿河晶も、弘世とかかわり幸せになった一人だった。