美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
「ん……はぁ♡ これ、お口だけなのに……頭に電流が流れてくるみたいに、おかしくなっていく……」
春も後半。場所は高梨弘世の部屋。
そこでは九島小春が、弘世の指を口に含み、スキルの施術を受けていた。
「はぁ、はぁ……ひびきちゃん、これ……ヤバいよ」
「で、でしょ……早く終わらせて……ほら、次は霧乃だよ」
その場にいたのは、いつものメンバー。
ひびきに小春に霧乃。そして既にひびきと小春は施術を終えていた。
「弘世くん、お願いします………んぁ」
弘世の前に座った霧乃は、小さな口を大きく開けて、彼の伸ばした指を咥えこんだ。
「ん、ぁう……んぅっ……あ、ぁ……ちゅぷ、ん、ちゅぷ……」
生え揃った白く整った歯並び。霧乃は裕福な家庭の出身、ずいぶん前に歯の矯正を済ませていたという。
以前、ひびきが弘世に説明していた通り、上下の歯の矯正には通常百万円ほどかかるのが相場だ。幼い頃なら多少は安いかもしれないが、それでも歯にかかる費用は決して小さくない。
だが、女性の美への追求はとどまることを知らない。
すでに弘世の数々のスキルによって綺麗を重ね、色気すら増していた三人。
もともと学年一の美貌と評されていた霧乃も、さらに磨きがかかっていた。
そんな彼女も、弘世の新たなスキルには興味津々だ。
ひびきと小春が受けたのなら、自分も――
そうして『口歯改善』のスキルを受けたのだが、その反動はこれまでのものとはまた違う種類のものだった。
(口の中が気持ちいい……? 歯に沿って弘世くんの指が触れて、私の口の中をおかしくっ……)
『口歯改善』のスキルは、このようになっていた。
<口歯改善>
方法:口の中を指でなぞる
効果:歯列改善、ホワイトニング、噛み合わせ改善、欠歯再生、口臭改善、歯周病改善
反動:一定時間体が火照る、敏感になる
正直、あり得ないどころではない。
こんな物が広がれば、歯医者など不要――それほど強力なスキルだった。
そして他のスキルと同じように反動があったが、口内というのが特にポイントだった。
今の霧乃は口内を指でなぞられているだけで気持ちよさを感じていた。
「あぅっ……んっ……や、こんなの……あぁっ……弘世くんの指……ん、んっ……ちゅぱ……美味しい……♡」
はじめは弘世の指の動きに任せていたが、いつの間にか自ら口を動かし指を奥に咥え込むように舐めていた。
それはまるで擬似的なフ◯ラのようで、施術している弘世の指にも舐められている気持ちよさは伝わってしまう。
「あぁ、霧乃もこうなっちゃった……ん、んっ」
「しょうがないよ……ん、早く弘世くんの指がほしい……」
横で霧乃の施術の様子を見ていたひびきと小春は、口が寂しいのか自分の指をちゅぱちゅぱと咥え、霧乃の施術が終わるのを今か今かと待っていた。
どこかを舐めていたい、そんな衝動が二人を支配していた。
「――ふぅ、これで終わりだよ。お疲れ様」
「あぁっ……」
数分後、施術が終わった霧乃の口から指を離すと、口惜しそうに彼女は声を漏らした。
見れば弘世の指は霧乃の唾液でベトベトになっていた。
そうして近くに用意していたウェットティッシュを使い、それを拭き取り指を綺麗にしていく。
「弘世……もういいよね?」
「弘世くん……!」
霧乃の施術が終わったことで、ひびきと小春が迫る。
ずっと我慢していたのだ、もう抑えがきかない。
「ちょっ、少しは休ませ――」
「「だーめ♡」」
ひびきは弘世の唇を奪い、小春は弘世の左指を咥えて、ちゅぱちゅぱと舌を絡めていった。
「じゃあ、私も失礼しますね」
「霧乃!? そっちは……っ」
この流れなら空いている右手の指――弘世はそう思っていたのに、なぜか霧乃はズボンのチャックを下ろしていた。
「あぁ……もう、たまりません……私のお口が、弘世くんを求めてしまっています……♡」
そう言いながら、霧乃は弘世の下半身に顔をうずめたのだった。
◇◇◇
「溝辺! 残り五十メートル! まだまだいけるぞ!」
とある日の放課後。校舎に隣接する屋内プールで、女子水泳部の女性コーチが声を張り上げる。
(ここから、ラストスパート……!!)
ターンして壁を強く蹴った少女は、水を切り裂くように前へ前へと腕を回し、ゴールへと向かう。
無駄のない美しいクロール。女性にしてはやや高めの身長を活かした伸びやかな泳ぎ――彼女は水泳部のエースだった。
ピー!!
「……ふむ。まあまあだな。だが、お前ならもっと伸ばせるはずだ!」
「はい、コーチ!」
ゴールと同時にコーチが笛を鳴らし、溝辺はプールサイドへ上がる。
ゴーグルを外し、水泳帽を脱いで頭を振ると、青いインナーカラーの入った髪が水滴を散らしてきらめいた。
「さすがは溝辺先輩……!」
「今日も絶好調ですね!」
「でもコーチはまだ満足してないみたいだけど」
「あれは先輩に期待してるからだよ。なんてったって先輩は、この学校で唯一、全国でも張り合える人なんだから!」
――溝辺綾《みぞべあや》。
後輩達からも尊敬を集める、水泳部のエースだ。
普段から真面目で、特に水泳に関しては誰よりも努力してきた。
都内では優勝が当たり前。全国大会でも上位入賞を果たす実力者で、日本代表も視野に入る逸材である。
だが、そんな彼女も完璧というわけではない。
「あだぁっ!?」
プールサイドを一人で歩いていたところ、床に置かれていたビート板に足を滑らせ、盛大に転んだ。
「おい一年! ビート板はちゃんと片付けろと言っただろう!」
「す、すみませんっ!!」
強豪校とはいえ、新人も入ってくる。ビート板を使った基礎練習も行われていた。
コーチに叱られた一年生は慌ててビート板を回収し、綾に「すみませんでした!」と頭を下げる。
「あはは、大丈夫。次から気をつけてね」
綾は笑ってそう返した。
「ああいうの見ると、先輩も可愛く見えるよね」
「ドジっ子っぽいところもいいよね!」
完璧ではない綾。
そんな一面もまた、彼女が愛される理由の一つだった。
◇◇◇
「――高梨くん。まだ進路希望調査のプリント提出していないみたいだけど、大丈夫?」
朝の教室。自分の机に座っていた弘世の前にやってきたのは、溝辺綾だった。
青いインナーカラーが入った髪が特徴的な少女で、目元には少し分厚いメガネをかけている。
綾は目が悪い。それゆえ水泳の時は度付きのゴーグルを着用していた。
しかし一旦ゴーグルを外すと視界が一気に悪くなり、床に物が置いてあっても気づきにくいことがある。
そんな彼女がなぜ弘世のプリントを回収しているのか。
それは――
「ああ、ごめんね委員長。ちゃんと書いてきたから、はい」
「もう、そうなら最初から私の机に持ってこないとダメじゃない」
「あはは……ごめんね。委員長がしっかり者で助かってるよ」
「あなたがしっかりしていないからでしょう……!?」
少しだけ苛立ったように返す綾だが、本気で怒っているわけではない。
彼女は弘世のクラスの委員長だった。
真面目な性格の綾は、小さい頃からずっと委員長を務めてきたという。
このクラスでも自ら立候補し、まとめ役としてクラスを支えている。
本当なら水泳部でも部長を務めるつもりだった。実力もあり、リーダーシップもある。
しかしコーチがそれを許さなかった。理由は、部長の仕事が水泳に影響することを懸念したからだ。
一番期待されている存在だからこそ、部長と副部長は別の生徒に任せることになった。指名された生徒達も、その判断に納得していた。
だからこそ綾は、水泳部で発揮できない分の委員長気質を教室で発揮しているのだった。
「すみませーん、弘世先輩いますかー?」
教室の扉付近に立っていたのは、バスケ部の涼森葵と、親友の小塚理央。
葵は弘世に向かって大きく手を振っていた。
「……呼んでるよ、人気者さん」
「い、委員長。その言い方ちょっと……」
「事実を言っただけですけど? ほら、待たせちゃ悪いから早く行ってきて」
「ありがとう、委員長」
弘世は席を立ち、葵のもとへ向かう。
綾はその背中を見送りながら、ぽつりと呟いた。
「高梨くん、ねえ……不思議な人」
このクラスになって初めて知った、高梨弘世という男子。
他の男子より肌がきれいだな、と思う程度で、特別男らしい魅力があるとは思えなかった。
それなのに、クラスの一部の女子だけでなく、他クラスの女子や後輩までが彼を囲んでいる。
なぜか女子ばかりに話しかけられる存在――綾にはそれが不思議でならなかった。
そしてそれは、綾以外の弘世のことを知らない生徒も――
「…………チッ」
弘世が教室を出ていく姿を見て、一人の男子が小さく舌打ちする。
「岡田くんどうかしたの? ねえ、ダンジョンのこと、もう少し教えてよっ」
弘世ほどではないが、女子に囲まれている男子がもう一人いた。
「ん、ああ、悪い悪い。確か、俺がどこまでダンジョンに潜ったか、だったな」
彼はこの学校でも数えるほどしかいない、冒険者として活動している男子生徒だった。