美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
一週間後。
溝辺綾は、予選大会が行われている水泳競技場に立っていた。
「溝辺、調子はどうだ?」
「完璧とは言えません――ですが、悪くはないと思います!」
数日にわたる競技の中、この日、綾はすでに百メートル自由形の予選を泳ぎ切り、一位で通過していた。残すは決勝のみ。
「なら、必ず勝って全国を決めてこい!」
「はい!」
すでに競泳水着に身を包んだ綾は、ジャージ姿の女性コーチに力強く背中を押され、会場へと向かう。そして自分の番が近づくと、係員に呼ばれ、プールサイドへ向かう列に並んだ。
「――溝辺綾! 今日こそは私が勝つわ!」
決勝に進出した少女の一人が、綾に向かって挑発的に言い放つ。彼女はこれまで何度も予選で顔を合わせてきた相手だが、綾は一度も敗れたことがなかった。
「今日は……もしかしたら負けちゃうかも」
「アンタが弱気なんてどうしたのよ! でも、勝負は勝負よ。大会までに体調を整えるのも、練習を積み重ねるのも、勝つ人が当然やってること。それはアンタが一番わかってるでしょ?」
少女は、綾に何があったのかを知らない。綾がまともに泳げたのは、たった一週間。それで勝てる保証などどこにもなかった。
それでも――
「ふふ、そうだね。そうだよね。みんな頑張ってきたから、ここに立ってるんだもんね」
「な、なに笑ってるのよっ!」
「ああ、ごめんね。あなたを笑ってるわけじゃないの」
綾はその場で体を伸ばし、軽くストレッチをしながら、穏やかに微笑む。
「努力って、長く積み上げてきたからこそ、土壇場で力になる。――それは、私が一番知ってるから」
「……わかってるじゃない」
最後にそう言葉を交わし、それぞれがスタート位置へと進む。水泳帽を整え、ゴーグルの位置をしっかりと合わせた。
「Take your mark」
準備の笛が鳴り、その合図に従って膝を曲げ、両手を前へ。
そして――
ピッ、というスタート音と同時に、選手たちは一斉にスタート台を蹴った。
魚のように水中へと潜り、ドルフィンキックで加速する。水面へ浮上すると、すぐにクロールへ移行する。
綾は――二番手だった。
(溝辺綾! その程度!? 私は先に行くわ!)
ライバルの少女が先頭を泳ぐ。ぐんぐんとスピードを上げ、その差を広げていく。
やがて五十メートル地点でターン。残り半分。
「先輩! 頑張れ!」
観客席から、同級生や後輩たちの声が響き渡る。綾の耳には届かない。それでも、いつも背中を押してくれていた部活の仲間たちの存在は確かにそこにあった。
水に入れなかった間も、何かできることはないかと何人もの仲間が支えようとしてくれていた。
必死の声援。だが、先頭との差はまだ縮まらない。流れとしては、このまま順位は変わらず、ゴールを迎える――そう思われてもおかしくはなかった。
しかし、綾は違った。
水に入れなかった時間のハンデは確かに大きい。だが、それと同じだけ――いや、それ以上に変わったものがあった。
(――息が吸いやすい! それに、頭の動きも軽い!)
競泳において、息継ぎの回数は速度に直結する。ゆえに肺活量は重要な要素だ。
だが、綾の肺活量そのものが増えたわけではない。変化したのは、取り込める空気の効率だった。
<口歯改善>によって歯並びや噛み合わせが整い、顎の形にも微細な変化が生まれた。その結果、呼吸の通りが良くなり、一度に取り込める空気量が大きく増していたのだ。
つまり――息継ぎの回数を減らし、腕の動きに集中できる。
綾は、最小限の呼吸で泳げていた。
(ここから――!)
一気にスピードが上がる。
ぐんぐん、ぐんぐんと差が縮まっていく。残り二十五メートル。
「いけ! いけえええ!」
「抜けええええ!」
水泳部の仲間たちの叫びが、観客席から弾ける。
まだ体力は残っている。ここで――ラストスパート。
水を掻く腕に、これまで積み上げてきたすべてを乗せるように、綾は前へと進む。
そのストロークは、まるでイルカのようにしなやかで力強く、会場の中でひときわ美しく輝いていた。
――結果から言おう。
綾は出場した個人自由形百メートル、二百メートル、そして百メートル×四のリレー、そのすべてで優勝し、地区予選三冠を達成した。
本来なら練習量の不足が響くはずだった。だが、歯の改善による呼吸効率の向上がそれを補い、綾はこれまで以上の実力を引き出すことに成功していた。
「もう、なんなのよぉっ!」
ライバルの少女は悔しそうに声を上げる。確かに差はあったはずなのに、そのすべてを後半でひっくり返されたのだ。
そうして綾は――全国大会へと駒を進めることになる。
◇◇◇
――そんなとある日のこと。
部活を終えた休日の午後。
溝辺綾は、家に一人の男子を呼んでいた。
「男の子を呼ぶのは初めてなんだけど、あんまりじろじろ見ちゃだめだよ?」
「わかってる。でも、賞状とかいっぱいで凄いよね」
「お母さんはリビングに飾ろうって言うんだけど、私はそこまでしたくないから、部屋に飾ってるんだ」
綾の部屋に訪れていたのは高梨弘世だった。
彼女に言われた「良い結果出たらご褒美をくれますか?」という、願いを叶えるためにやってきていた。
綾は終始顔を赤らめながら、落ち着かない様子で、座りもせずに部屋の中をぐるぐる回っていた。
心を落ち着かせようと眼鏡を外し、拭き拭きしながら歩いていたところ、「いたっ!?」と小指をテーブルの端にぶつけてしまい、転びそうになる。
「委員長!?」
「きゃっ!?」
綾は弘世を巻き込んでベッドへと倒れてしまい、しかも眼鏡がどこかへ飛んでしまっていた。
「ぁ……」
綾は視力が悪いが、近くであればちゃんと見える。
眼の前には弘世の顔があって、しっかりとその視界に映っていた。
ふわりと、塩素混じりの爽やかな香りが弘世の鼻腔をくすぐった。
部活終わりで、ほんの少しだけ毛先が濡れていた綾の髪。
今は普段着だが、そのどれもが色っぽく見えた。
「あ、あの!」
「うん、なに?」
弘世の上に乗ったままの綾が言う。
「な、舐めてもいいですか!?」
「す、凄いお願いの仕方だね……」
直接的すぎる言動に弘世は困惑するも、このくらいは慣れたものだった。
「あはは……突拍子もないよね私。でも、高梨くんの指がずっと忘れられなくて……家に誘った時点でもう気づいてたとは思うけど……」
「うん。いいよ。委員長の好きに好きにして。俺に何かしてほしいなら、それもしてあげる」
「た、高梨くん……」
そうして綾は弘世の手を取り、それを口元へと運ぶ。
でも、そのまま咥えようとはしなかった。
「スキル発動したまま、舐めたいな……」
「じゃあ――<口歯改善>」
綾の言う通りにスキルを発動すると、彼女は弘世の指を咥えていった。
「わ、私の指も――っ」
「え、あっ……わかった……んあっ」
そして弘世にもしてもらおうと思っていたこと。
自分の指を舐めさせること。
綾は右手の指を弘世の口元へ運び、彼に舐めさせた。
「ん、ちゅ……じゅる……ん、ふぅ……あ、これ……この感覚……頭が痺れ……ん、あぅ……はぁ♡」
やがて綾は、口内が敏感になり、その気持ちよさに思考が奪われていく。
一心不乱に弘世の指を舐め、ねっとりと舌を絡めてどろどろにしていく。
一方の弘世の綾のすべすべの指を咥え、ちゅぱちゅぱと舐め取っていく。
その初めての感覚も加わり、綾はもうおかしくなっていた。
「あ、指……変っ……うそ……これ……口と指が……あ、ダメ……これ、私……あ、あぁっ……い゙っ……あ゙っ……や、もう……ん゙ん゙ん゙ぅっ!?♡」
綾の体が電流が流れるようにびびっと跳ね、口の中の動きが止まる。
弘世の体の上にぐったりと体重をかけると、綾の胸の膨らみと上昇した体温が伝わってくる。
「はぁ、はぁ……私……これだけで……」
「委員長……えっちだ……」
「はぅっ!? ……私、えっちなのかな?」
「えっと、多分?」
「あぁ…………」
綾は顔を赤らめ、咄嗟に両手で隠す。
「でも、悪いことじゃないと思う。それが委員長の一部ってことだし、個性だよ」
「高梨くん……じゃあ、もう少しお願い良い?」
「もちろん」
ここからの綾は歯止めが聞かなかった。
なんでも受け入れてくれる弘世の優しさ。それゆえに、要求はエスカレートし、ついには彼の上半身を裸にしていた。
「水泳以外で、初めて男の人の裸みたかも」
「そういや水泳って皆上半身裸だもんね。でも、水泳選手みたいに良い体はしてないよ、俺」
「いいの。高梨くんの体がいいの……ほっそりとしてるけど、少しだけど筋肉もあるし……それに――」
「あっ、委員長っ!?」
綾は弘世の胸の突起に口をつけた。
舌先を動かし、ちろちろと吸い付いていく。
「ん、ちゅぱっ……わ、こんな味なんだ……ん、美味しい……高梨くんのなら、どこでも美味しい……あ、硬くなって……」
綾の弘世を舐めたいという欲求は指以外にもあった。
指だけであれだけ舐めたいと思うのだ。他の部位はどんな味でどんな感触がするのだろう。そんな妄想から、綾は弘世の体を舐めたいと上半身を裸にしていた。
「もしかして……ん、ちゅ……高梨くんだけが裸って……ちゅぱっ……失礼……?」
「あ、いや……そんなこと……あっ!? 喋りながらは、ちょっと……」
「だって離せないんだもん……ん、美味しい……もっと舐めたい、吸いたいって思っちゃう……」
言いながら、綾は着ていた服のボタンを外していく。
すると、そこに見えたのはなんと下着ではなく競泳水着――でもなく、学校指定のスクール水着だったのだ。
「委員長? その格好は……」
「ほ、ほら、高梨くんって、色々な女の子のいろんな姿を見てるんでしょ? だから、私がただ脱いでもつまらないかなって思って……ど、どうかな?」
「えっと……普通にしてる分には多分大丈夫なんだけど、この状況でみるスク水は、さすがにエロく見えてしまうというか……」
「ふふ、嬉しいかも……高梨くんにはご褒美も欲しいけど、お礼もしないとだもんね」
綾はスク水の肩紐を外した。
そして、日焼け跡が美しい、綺麗な双丘を弘世の見せつけたのだ。
「…………あはは、私、本当に変態だね。でも、これで、おあいこだね?」
弘世の上半身裸と綾の上半身裸。
これで脱いでいる部分は同じとなった。
「とっても恥ずかしいけど……触ってもいいんだよ?」
綾は弘世の手を取り、それを自分の胸へと誘う。
そして、自分は再び弘世の体に口をつけて――
「あ、あぁっ……や、そこっ……やぁっ……これ、気持ちぃっ……高梨くん、高梨くんっ♡ 私、どんどん変になる……っ♡」
綾に自由に舐めさせながら、弘世は空いた手で彼女の乳房を揉む。
口内への反動は、次第に体全体と伝播していて、綾の胸も十分敏感になっていた。
「あっ、このままじゃ……私、わたし……あ、あ゙っ……」
綾が弘世の首元を舐め、体にしがみつくようにしていた時、弘世は彼女の乳首をぎゅっとしてみた。
「あ゙っ、い゙ぃっ!? や、それ……ダメぇぇぇぇ〜〜っ!?♡」
綾は再び弘世の上に体重をかけるように倒れ、しばらく動かなくなる。
と、そのタイミングでだった。
ピンポーンとチャイムが鳴ったのだ。
「え、誰だろ。今日は両親がいないって話だったけど」
「あ゙っ……わたしが、呼んだ、の……ちょっと、待って……」
そう綾がしばらく動けずにいたからか、元々綾が指示していたからか、やってきた人物がドアを開けて、二階にある綾の部屋へとやってくる足音が聞こえてきた。
(え、これ大丈夫なの!?)
二人とも上半身裸でくっついている状態に、弘世は焦る。
しかし、時すでに遅し。
「こんにちはー……って、おっぱじめてるじゃんっ」
制服姿に背中にはラケットバッグ。
そこに現れたのは、あの事件を直接見ていた一人――
「早瀬さん……?」
「あー、委員長に呼ばれてたんだ。私もさっきまで部活だったから少し遅れちゃったけど」
テニス部での部活を終えたばかりの早瀬美咲だった。
美咲はラケットバッグを床に下ろすと、ベッドに近づいてきて、こう言った。
「委員長、興味あるんだってさ。――その、今やってることより、もっと凄いことに」