美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
「亜澄……っ! 亜澄……っ! 亜澄……っ!!」
「よかった……よかったね……亜澄っ」
とある病室で二人の大人びた少女が、病院着を着た黒髪の少女に泣き縋っていた。
それも――焼けた左半身が全て元通りに……いや、それ以上綺麗になって。
小春の時と同じように傷跡一つ残らず、肌が生まれ変わったかのように綺麗になっていた。弘世の『肌質改善』は『呪い』に勝ったのだ。真っ向から打ち倒したわけではないが、消えたのであれば勝ったも同然だ。
そうして亜澄が目覚め、最初に発見された時のことだ。
点滴を持ち運びながら、空いたお腹を満たすため食べ物を求めて病院の通路を一人でうろついていた。
しかし、一ヶ月近くもベッドの上で寝ていたため筋肉が衰え、歩くことがうまくできずに転んでしまったのだ。
亜澄が転んで床でダウンしていたところを看護師の一人が発見し悲鳴を上げたのは笑い話だが、その後すぐに瑞希たちに連絡が行き渡り、全員が病室に集まった。
これまでギルド職員としての仕事が忙しかった冬月沙織も一緒だ。今回は冒険者ギルドからの正式な指示でこの場所に来ている。『鑑定』で『呪い』が消えていることを確かめるためだ。
ただ、冬月は現在、基本的に仕事はお休み中だ。自宅謹慎処分に冒険者情報の記録禁止、タブレット没収、ボーナスカットなど他にもいくつかの重いペナルティが課されていた。
今回判明したことで一番危険視されたのは、自分が担当した一般人のギフト情報をタブレット端末に記録していたことだ。担当した人物のプロフィール情報は冒険者ギルドのシステムには登録されるが、ギフト情報は登録されずギルド内では共有されない。
しかし、冬月は善意でいつか何かの役に立てるのではと思い、タブレットにギフト情報を記録していたのだ。実際には今回役に立ったのだが……。これは冒険者ギルドでも明確に禁止されていたことではなかった。禁止されていたのは情報を漏洩することだからだ。
そこで今回の件を重く見た冒険者ギルドでは、ギフト情報の記録の保存も全面禁止となった。逆に言えば日本中の冒険者ギルドの支部で働いていた職員はこれまで性善説を信じ『鑑定』の仕事をさせていたことになる。これまで漏れたという事例は運良くなかったが、これからはないとはいえない。
情報漏洩の件で冒険者ギルドが安心したのは、冬月のタブレットが誰かに奪われる前、拾われる前に没収できたことだった。もちろんパスワードロックはかかっているが、プロに任せれば解読できないわけではない。
結果的に情報を悪用しない二人への漏洩だったので、本来であればここまでの処分はされない。ただ、タブレットへのギフト情報保存の件に加え、情報漏洩には善悪関係なく規律上処分しないといけなかったため、このように重い処分となった。
そんな冬月が、『鑑定』で亜澄の状態を視ると――
「ありません……何も、状態異常がありませんっ!」
「よがったぁぁぁぁっ!!」
それを聞き、さらに瑞希が泣き喚く。
ただ、当の本人はまだ状況が飲み込めておらず、不思議な顔をしていた。
「――――そうだったんだ……」
その後、一通り自分に何があって、誰がどう命を繋ぎ止める尽力をしてくれたのか、火傷の呪いを回復させるためにどんなことをされたのかを説明された。
「皆、ありがと……私、お腹減った以外は元気だよ」
元々亜澄は大きな声を出さず落ち着いたタイプ。
これでも亜澄は十分に感謝をしていた。
もちろん冒険者御用達の医者も亜澄の状態を診察した。
体力や筋力が落ちていること以外は何も問題はなく、健康体とのお墨付きをもらった。
ただ、亜澄が最初に求めたお肉はいきなり食べられるわけもなく、病院食から徐々に固形物の摂取を慣らしてくとのことで、本当に完治したかの経過観察含めとりあえずは二週間の継続入院となった。そこで問題なければ晴れて退院となる。
「四人とも……こっちきて」
亜澄はベッドの上、体を起こした状態で自分を救ってくれた弘世たち四人を呼んだ。そうしてベッド際に横一列に並ぶ。
「ひびき……久しぶり。なんか綺麗になってる……今回はありがとう」
「うん……亜澄ちゃんも……元気になって良かった」
脈絡のない感謝だったが、亜澄とひびきはぎゅっとハグをした。
「助けてくれたお礼、何でもする……何でも言って」
「うーん。お礼とかあんまり考えてなかったな。ただ、助けたいって気持ちだけでここに来ただけだから……でも、思いついたら言うね」
「わかった」
次に向き合ったのは小春。
「小春ちゃん……同じ黒髪の子。私の痛みを和らげてくれたって聞いてる。嬉しい。感謝」
「元気になって良かったです……」
小春の働きは相当なものだった。最初に痛みを食い止めることができなければ、いつ死んでもおかしくなかったのだから。
同じく小春ともハグをした。
続いて霧乃。
「霧乃ちゃん、すっごい美少女。……私、夢を見てた。炎に包まれてどこにも逃げられない夢。でも、途中からひんやりしてきた。多分、君のお陰……ありがとう」
「そうだったら良かったのですが……こちらこそです」
亜澄は言った。夢を見ていたのだと。
熱くて苦しくて。燃え盛る炎の中で逃げ道を塞がれ、立ちすくんでいた夢。しかしある時から、炎が目の前にあるのに熱さを感じなくなったのだとか。
現実で起きたことが夢の中に干渉する、なんてことがあるのかはわからないが、亜澄はそう言ったのだ。
亜澄は霧乃ともハグをした。
そして最後は弘世。
「弘世くん。私、酷い火傷だったみたい……でも、あなたのお陰で助かったし、綺麗になった。ありがとう……てか、周りの女の子、皆かわいい。君、ハーレム?」
感謝の次にこの中でたった一人、男だったことに言及した亜澄。
「えっと……なんて言うか……」
ひびき公認の付き合いなのだから、ハーレムと言っても良いだろう。ただ、そこにはちゃんと本命であるひびきがおり、ひびきの許しがあって小春と霧乃がいるのだ。だから弘世は一概にはハーレムとは言えないとは思っているのだが……。
「私の体の左側、なでなでしてくれたって聞いた」
「はい……」
「おっぱいも触ったって聞いた」
「はい……?」
途中からおかしいぞ、と弘世は亜澄の言動から感じとった。
「私、大事な部分に触れた異性と結ばれるって決めてる」
「はい〜〜〜!?」
「ふふ、嘘。ぎゅーだけしよ」
「それなら……」
亜澄の真面目な表情のまま冗談を言う性格。初めての会話だったので驚いたが、嘘だとわかり弘世は胸を撫で下ろした。
そうして、亜澄と弘世はハグをした。
(やっぱり少し体温が高い……ギフトの影響なのかな。今思えば、霧乃もほんのり体温が低かった気がする)
ぎゅっとした時に感じた亜澄の体温。見た感じ風邪による熱ではないようだし、火傷跡もない。それなのに、普通より体温が高いように思えた。やはりギフトがそうさせているのだろうか。
「――改めて、皆ありがとう。お金はたくさん稼いでるから、何か必ずお礼はする。欲しいものあったら言って。えっちな服着てって命令でも大丈夫」
最後に亜澄はとんでもないことを話したが、表情はそれほど変わらない。
えっちな服装をすることに抵抗がないと思える発言だった。
――こうして宍戸亜澄は目覚め、火傷の呪いは消え去った。
二週間後には退院し、一週間空けたあと、快気祝いとひびきたちへのお礼を込めた会を開くのだが、そこではとんでもないことが行われた。
瑞希が『何でもするから』と言っていたことを覚えていたひびきは、亜澄と遥も巻き込み、亜澄自身が言っていたえっちなコスプレを着てもらうことにしたのだ。
瑞希はきわっきわのハイレグバニーガールの衣装を着せられたのだが、その状態のまま、少し前に弘世との情事を見られたことの仕返しとして、椅子に拘束した状態で弘世がスキルを使い、耳責めをするといった施術を行った。
瑞希は美人系の快活な女子高生で、テレビでも紹介されるほどのAランク冒険者。そんな女性から見てもカッコいい瑞希が白目を剥き、涎を垂らし、あられもない姿を晒し、耳だけで達してしまったのだ。
いや、正確に言えば耳だけで限界まで気持ちよくなり、最後に『乳首当てゲーム』といきなり言い出した亜澄が両方の人差し指で瑞希の乳房の先端をぽちっと押した瞬間に達してしまった。
さらにバレンタインも重なっていたので、度数の高いブランデー入りのチョコでアルコールパニックが起こったり、途中からひびきたちもコスプレを着たいと言い、露出過多の衣装を着たりと、その後も色々とあったのだが――ともかくこの会はひびきや亜澄を中心に、笑いと悲鳴が交錯する狂気の祭りとなった。
そうして、亜澄の快気祝いを含めたお礼会も終わり、慌ただしかったこの一ヶ月間はようやく幕を閉じた。