美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
私――林道ひびきは普通の女の子だった。
いや、今も普通の女の子かもしれないけど、どこにでもいるような女の子には変わりなかった。
姉妹がいないはずなのに、物心がついた時には姉となる存在が当たり前のようにいた。従姉妹というらしいが、彼女は私の憧れだった。
小学生になると、できた女の子の友達は幼稚園の時と比べて目に見える形でマセているように感じた。それに流され、私も恋愛の話や美容の話、可愛い物の話など、女の子としての感覚を身に着けていった。
そんなある日のことだ。
『――ひびきちゃんって、ちょっと地味だよね』
恐らく、その後に続いたのは『もっとこうすれば可愛くなれると思うのに』そんな言葉だったはず。
けど、その時の私にはマイナスの言葉しか印象に残らず、それ以降も何か言われる度に自分の容姿が貶されていると思うようになってしまった。
言った本人たちは原石だと褒めていたかもしれない。しかし、その時の私は前向きに捉えられなくなっていた。
『――瑞希姉! 私を可愛くして!』
頼れる身近な存在――二歳年上の従姉妹である法坂瑞希に懇願するようにお願いをしにいった。
瑞希姉は小さい頃から可愛くてかっこよくて、お洒落で、綺麗だった。
なんというか、立っているだけで人の中心的存在になれるオーラを持っており、いつも自信満々。
内面が外側にも出ている。もちろんそれもあるだろうが、あの時の私は瑞希姉の見た目に憧れていた。
『ひびき、私に任せて! 私と血が繋がってるなら絶対に可愛くなるから!』
私はそんな瑞希姉の言葉が嬉しくて、彼女に色々なことを教わっていった。
中学生になると、私の状況は一変した。
『――林道さん、好きです。付き合ってください』
告白だ。
自分でも変わっているとわかるくらいには容姿を改善でき、お洒落にもなった。
その変化が内面にも現れていたようで、私はいつの間にかクラスの中でも一番可愛い存在として、目立つようになっていた。
マイナス思考な性格も影を潜め、徐々に瑞希姉のようなポジティブな性格に変わっていった。
だから、男子に告白された時は嬉しかった。
小学生の頃から、恋愛話に花を咲かせていた身としては、それはそれは衝撃的な出来事だった。
ただ、告白されたからといって付き合うことはなかった。
なぜなら、私はその男子のことを全く知らないし、そもそもタイプではなかったから。
私が好きなタイプはもっとイケメンで、王子様っぽい人。
汗臭い部活をしている人よりも、汗を掻かないくらいクールな人。それが私のタイプなのだ。
それからも定期的に告白されはしていたが、誰とも付き合うことはなかった。
そんな話をいつも聞いてくれていたのが、九島小春――今の私の親友だ。
彼女も彼女なりに重い話を持っていたが、それでも毎日元気に話してくれていた。
趣味も見た目も正反対なのに、なぜか私たちは仲が良かった。
『ひびきちゃん、もうちょっと相手のことを知ろうとしたら良いんじゃないかな。確かに見た目は大事だけど、一番大事なのは性格だよ?』
私とは反対の意見をくれる大事な存在。
小春以外の友達は、皆私の意見に肯定的で、私に話を合わせることでしか会話できない人たちだった。
それでもタイプはクールなイケメン。
そこに性格が加わればと思っていた。
高校生になると、私以外にも可愛い子がたくさんいる学校に入学することになった。
ただ、それでもクラス内でのポジションは、自然と上位になり、その中でも可愛い二人が新しい友達になった。
『合コンに行こう!』
友達になった元矢陽鞠と井原海莉に誘われて、初めての合コンに行くことになった。
結果から言うと、最悪だった。
ひまもうみりんも帰る時には怒りを堪えきれない表情をしており、相手の男子と別れた瞬間、その怒りは爆発した。
『もう最悪! なんなの! キモすぎ!!』
『連絡先速攻ブロックした!』
相手はそれなりにイケメンだった。タイプと言われれば違うかもしれないが、イケメンの部類に入るのではないかと思う他校の同い年の生徒だった。
ただ、その相手が下ネタ全開だったり、距離感が近かったり、初対面なのにボディタッチをしてこようとしてきたり、明らかに私たちの体狙いという行動をとってきた。自分の顔面にかまけて、簡単にヤれるだろうと思っていたのだろう。
それがあってか、恋愛に憧れは抱く一方、どこかで男はクズだとも思うようになった。自分はこんな連中のために美容を頑張り、綺麗を極めてきたわけじゃないのだから。
ひまやうみりんも、それからはしばらく男と遊ぼうとはしなかった。
もちろん私もそうだ。二人や小春と遊んでいれば十分に楽しかったから。
そんな私にも転機が訪れた。
十六歳の誕生日を迎え、自分のギフトの『鑑定』ができる年齢になったのだ。
冒険者になりたいなど一度も思ったことはなく、生活に役立つものを持ってればいいなーと、軽い気持ちで『鑑定』をしにいった。
すると私が授かっていたのは『願望』というギフト。そして『
このスキルは、私が潜在的に求める人が光り輝くといったもの。
私が何を求めているのか、自分ではよくわからなかった。
本物の王子様でも見つかるのかなーとも思っていたが、しばらく『叶視』は反応しなかった。
高校一年生の秋になった。
『なあ弘世、ギフトどうだったよ?』
『はは、残念な結果だったよ』
そんな声が教室から聞こえてきた。
なんとなくだ。本当になんとなくだった。私はスキルを使ってみた。
「――――っ」
瞬間、強く光り輝いた。
「ひびき? どうした?」
「ん……何でもない」
動揺し、目を奪われた。
ただ、彼は半年一緒に過ごしたこのクラスでも、全くといって印象がなかった。
下の名前はわからず、名字だけはギリギリ覚えていたくらいだ。
それなのに、スキルを使った瞬間、私の中の何かが変わった。
私は放課後、光った高梨くんの後をつけてみることにした。
彼と対面し、声をかけた時――私は女の子になった。
絶対に逃してはいけない、そう思った。そして、彼のギフトとスキルを聞いた時、もう抑えきれない興奮が私の体を支配した。
無理やり部屋に連れ込み、勢い余って服を脱ぎだしたのは、本当に恥ずかしい。でも、少し冷静になると、私は彼の気持ちを考えず動いていたのかもしれない。あの合コンで出会った男たちと似たようなことをしているのではないか。
そう思ったのだが、彼は全く怒っていなかった。
だからと、あざとく彼に近づきお願いをした。
結局スキルを施してもらうことになり、既に覚悟できていた私は、服を脱いで下着姿になった。彼からの視線、恥ずかしかったけど、嫌ではなかった。他の男とは違う――そう思ったのだ。
だからだろうか。
すぐに彼の手を受け入れてしまったのは。
異性に初めて素肌に触れられたはずなのに、優しくて、気持ちよくて……本当に気持ち良すぎておかしくなってしまった。
それはスキルの反動のせいだとは知ったけど、私の体はその時から彼を求めてしまっていた。
彼は驚いていた。
私だって、そんなつもりはなかったから。
でも、どうしても抑えきれなくて、彼の手が気持ちよくて、彼に気持ちよくしてほしくて……襲ってしまった。
自分が自分じゃないみたいに獣になって、初めてで痛いはずのに、これでもかと彼を求めてしまった。
彼のギフトとスキルを聞いて、自分が綺麗になる嬉しさが一番だと思っていたはずなのに、彼と交わったことで心が満たされ、幸せな気持ちになってしまった。
結果論だけど、彼は喜んでいた。
彼からすれば、私は高嶺の花だったらしく、嫌ではなかったということだ。まあ、私も自分の可愛さを理解していたから、それを十分に使わせてもらったけど……。
もう、彼を色々な意味で離すつもりはなかった。
スキルを施すため、会う度に体を重ね、それをしていくうちにどんどん好きになっていくのがわかった。
体からの関係など、お花畑だった頃の私の頭では考えられないことだった。友達から仲良くなり、そこから徐々に好きになっていく……それが普通のはずだったのに、その過程など一度好きになってしまえばどうでもよくなっていた。
彼の顔は平凡だし、これと言って特徴はない。全くもって顔もタイプではない。
それなのに好き……好きの気持ちがどんどん溢れ、高まっていき止まらなかった。
そうして、ついに私の体にスキルの効果が現れた。
信じられない。人生を一度やり直し、そのまま赤ちゃんからはじめたのではないかというくらい肌が綺麗に生まれ変わっており、嬉しすぎて発狂した。
だから、綺麗になり、痩せた肌を見てほしくて、また彼に抱いてもらった。その時は邪魔が入ったけど、後々仕返しをしたから許してはいる。
それから小春、霧乃と悩みを持っている人に弘世を紹介し、その悩みを解決してもらっていった。
小春の時は嫉妬した。
ちゃんと付き合ってもいないのに、言える立場ではなかったけど……。
でも、私は先のことを考えた。
弘世は私一人に収まる人ではない。女の子にとって夢のようなギフトを持っている。しかも、綺麗になるだけではない。悩みやコンプレックスさえも取り除いてくれる素晴らしいギフトだと理解したから。
でも、譲れないところだけはあった。
『――私……弘世のこと、好きなんだ』
『好きだよ、ひびき』
正式に付き合うことになった。
泣いてしまうほど、私が人を好きになるだなんて思いもしなかった。
彼の一番になることができたのであれば、あとは受け入れるだけだった。
だから小春を受け入れ、霧乃も受け入れた。
受け入れたことによって、性の乱れは悪化したけど、私も皆も満足していたのだから、良しとした。
そんな大好きな彼が、死ぬかも知れないなど、思ったこともなかった。
彼の頭の上に看板が落ちてきた時、もうだめだと思った。けど、霧乃が弘世を救ってくれた。
私じゃ弘世を守れない。いくら考えても、彼を守る力は私にはなかった。
けど、私にもちゃんと役割があった。
彼を直接的に救うことではなかったけど、それを霧乃に教えてもらった。
瑞希姉の友人。十六歳になってからギフトを『鑑定』してもらい、パーティーを組み、みるみるうちにAランクに駆け上がった瑞希姉と友人たち。
私も仲良くしてもらっていた亜澄ちゃんが死んでしまうかもしれない状況に私のスキルが役立つ機会があったのだ。霧乃の言葉には感謝している。
彼――弘世と出会ってから色々なことを経験し、彼との交際だってクラス公認となった。
想像していた恋愛とは全然違っていたけど、それでも幸せなことには変わりなかった。
これからも私は弘世と小春、霧乃と一緒に誰かの悩みを解決していくだろう。
それに、私だけに言ってくれる言葉だって、言ってくれるようになった。
あと、私にできることと言えば、いつか弘世が悩んだ時に寄り添ってあげること。否定しないで肯定し、彼を包み込むのだ。物理的に――おっぱいでも。
それができるなら、もう、好き好き愛してるを言って気持ちよくなることだけ。
弘世と出会ってからわかったこと――それは、私がえっちだということだ。
彼だからそうなれたのかもしれないし、元々その素質があったのかもしれない。
変態性は小春や霧乃には負けるけど、弘世を求めてしまうのは、私がえっちだからでもあるだろう。
「――弘世ー! 小春っ! 霧乃〜〜っ!!」
校舎の外で待ってくれている三人の名前を呼ぶ。
私が大好きな三人だ。
彼、彼女たちは振り返り、私を認識すると笑顔を向けてくれる。
――ああ、やっぱり皆が大好きだ。
私をただの夢見る女の子から、本物の女の子にしてくれてありがとう。
――弘世…………ずっと愛してるからね。
そう思いながら、今日も三人一緒に私の部屋に向かうのだ。
ついでにぐふふと、この後するいやらしいことを考えながら、私は三人に駆け寄った。