美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
『てめぇ! 俺に口答えする気か!!』
――それは、ある日を境に始まった。
私が、本気で笑えなくなった日のことだ。
『やめて! お母さんをいじめないで!』
大好きなお母さんと年の離れた弟。そして――お父さん。
恐らく、会社のストレスだったのだろう。
お酒を大量に飲み、自分を抑えきれなくなると、家族に当たり暴れまわる。
お父さんがそんな人だとは思わなかった。
だって、それまではとっても優しくて理想のお父さんだったから。
最初は痛くて痛くてしょうがなかった。
でも私はお母さんも弟のことも守りたくて、自ら進んで前に出た。
そんな私の体に変化が起きたのはDVが始まってすぐのことだった。
『あれ……痛くない?』
思い切り殴ったり蹴ったりしてくるが、何故か痛みを感じなくなったのだ。
私の想いが届いたのだろうか。
お母さんと弟を守りたいという強い気持ちが、私に力を与えてくれたのだろうかと。
テレビで流れる冒険者に関する番組。
それを聞いていくうちに、これは自分のギフトが発動しているのだと思ったのだ。
意識せずに発動する人もたまにいるらしく、私はその特別な例だと理解した。
そして、それを意識して使っていくと、ちゃんとスキルのオンオフもできるようになっていった。
――お前なんて怖くも恐ろしくもない。
痛みを感じなければ、何も怖くないことに気づいた。
だから、私はどんどん自分の体を傷つけるように前に出ていった。
小学生までは、女の子らしい明るい服装も好きで着ていた。
でも、お父さんに殴られるようになってからは、痣を見られたくなくて、肌を露出しない暗くて目立たない格好をするようになった。
それのこともあり、中学生に上がってからは、わざと友達を作らないようにしていた。
そのはずだったのに――
『――ごめん! 図書室で本探してるんだけど、どこにあるか一緒に探してもらえない!?』
とっても可愛い子が私に話しかけてきた。
話しかけてきたと言っても、私が図書委員をしていた時、ちょうど当番で貸し出しカウンターにいただけで私個人にということではない。
でも、キラキラした桃髪の彼女から話しかけられて、同じ女子なのになぜか舞い上がってしまった。
『どの本を探していますか?』
『…………てか、よく見たら可愛いね! 何組の子!?』
本探しは後回しになり、彼女と関係ない話をすることになった。
しかも私の容姿を褒めてくれて嬉しかったのか、まんざらではない自分がいた。
あとで気付いたが、彼女は学年でも人気の女の子だったらしい。その後、たまに告白されているところを見かけたくらいだ。
でも、図書室で会話をしはじめた時から、彼女は定期的に私がカウンターにいる時に図書室にやってくるようになった。
彼女によると、私は話しやすいらしい。
話せば話すほど、趣味も性格も違って、仲良くなれる要素などないのに、私も次第に彼女と話すことが楽しくなっていった。
『ねえ、メガネ外さないの? コンタクトにしたら絶対可愛いよ!』
そう言われた時、私は迷った。
彼女とはもう仲良くなっているし、信頼もしはじめている。
でも、意図的にメガネをしている理由は伝えられていなかった。
一つだけ思うことがあるとすれば、女の子は陰湿で怖いということだ。
たった一つの弱みを見せることで、それを使って簡単に陥れる。私が読んできた漫画でもよくそういった流れからのいじめを見ていたから、私がその対象になるかもしれないと思ったのだ。
明るくて可愛い彼女がなぜ私に話しかけてくれたのかわからない。
そんなキラキラした人種の考えが私にわかるわけもない……でも——
『――私、父親にDVを受けてるの。だから化粧とメガネで隠してるんだ』
彼女を信じ、意を決して伝えてみることにした。
『………………』
まさかそんなことを言われると思わなかったのか、彼女は少しだけ無言になり、言葉を選ぶように時間とった。
『うん! 頑張った! 小春偉い! 私は味方よ!』
思った答えと違った。
なんかこう、もっと『そうなんだ……』とか『お父さん許せない』とかそういった返事が来ると思っていた。
でも、私は何を言われても嬉しかっただろう。
この人は他人をいじめるような人ではない。だから私ももっと自分をさらけ出して友達になろうと思った。
それが今の私の親友――林道ひびきだ。
高校に上がると、やっとのことでお母さんとお父さんの離婚が成立した。
児童相談所もうまく機能せず、時間がかかってしまったがついに別居することになったのだ。
『お前……なんなんだよ! なんで痛がらねえんだよ! この化け物!』
離婚が成立し、別居する前に言われた言葉だ。
――勝った。
私の完全勝利だ。
衝撃でふっ飛ばされはしたが、スキルによって痛みなど感じなかった。
何度も立ち上がって向かってくる私のことがいつしか怖くなったのか、最後にそう告げて、お父さんはどこかへ行ってしまった。
その後、三人で抱き合い、涙を流した。
お母さんには何度も謝られた。
私が前に出るべきなのに、何もできない自分が許せなかったと。
でも、それで良かった。私はお母さんや弟が傷つくことが一番嫌だったから。
そうしてこの時初めてお母さんに自分のギフトとスキルの効果を話した。
それで安心してくれると思っていたのだが、そうではなかった。
痛くないからといって、自分を傷つける行為はしてほしくないと、守ってくれたのは嬉しいけど、小春が傷つくのも本当に辛かったと。
私は結構愛されていたらしい。
でも、これからは大丈夫。もし、あいつが戻ってきても今の私には友達がいる。
相談できる友達がいる。
巻き込むことはないと思うけど、誰にも相談できなかった頃とは違うのだから。
と言っても、私の体の痣はもう消えることがないのではないかと思うくらい青黒い傷となっていた。
服装は変えられないし、肌も晒せない。
私の生活はさほど変わらなかった。
そんな時だった。
久しぶりにひびきちゃんと遊ぶことになり、カフェでお話することになった。
お父さんとの離婚が成立し別居したことを報告すると、彼女は私の痣が治るかもしれないと言い出し、一人の男の子を呼び出した。
お父さんの影響もあり、多少は男の子に対しても思うところがあったが、私はあいつに勝利したので、思った以上の恐怖は心に残っていなかった。
それでも、比べてしまう。どの男の子もあいつと似たような存在ではないかと。
紹介された人はひびきちゃんの趣味ではない平凡な男の子だった。
身構えていたのに拍子抜けしてしまった。
けど、彼女が彼に向ける目線が色々と訴えていた。ああ、好きなんだなと。
私は安心した。イケメン好きのひびきちゃんが選んだ、イケメンではない人。
前に私が言ったことを覚えていてくれたのだろうかと嬉しくなったのだ。見た目よりも中身が大事。それは私がお父さんから身を持って教わったことだったから。
まずは顔合わせということで、彼のことが信用できそうなら、彼のギフトのことを教えてもらうという流れになった。
結果、私はひびきちゃんが信じる彼のことを信じることにした。
それにひびきちゃんのスキルも反応していたと聞き、より痣が治るかもしれない期待が高まったから。
反動のことは聞かされていた。
肌を見せることにはさすがに抵抗はあったが、痣から解放されたくて私は覚悟して行った。
施術が始まると、肌を見せる見せないとかそういう恥ずかしい気持ちはどこかにいってしまった。なぜなら、そんな事を考えられないくらい気持ちよくさせられてしまったから。
彼の手が温かい。彼の手が気持ちいい。ああ、もうだめ。
私は最後、お尻で達してしまった。
バレてないかな、バレてないかなと思いながら、呂律は回らず、まあバレてもいいかと思った。
それから二回目の施術の日。
ひびきちゃんなしで二人きりで会うことになった。
その日は、顔の痣も治してもらおうとメガネを外した。すると彼はメガネなしの方が可愛いと言ってくれたのだ。ひびきちゃんと同じことを言う彼のことが、好意的に思えた。
今日は我慢しよう。ひびきちゃんがいないのだから我慢しよう。
そう覚悟して望んだはずなのに、私ではない――彼が間違いを犯してしまった。
本当に最後だった。先日と同じお尻で終わったところ、汗で手が滑ったのか、彼の親指が私の一番大事な部分に触れてしまい、五十分ほど前戯で溜め込んだものが、一気にきてしまった。
気持ち良すぎて、自分一人でやるのとは比べ物にならないほどの快感だった。
『はぁ……はぁっ♡ ひ、弘世くんがいけないんです……私をこんな状態にして……しかも……大事なところに触れるなんて……もう、我慢なんて……っ♡』
『弘世……くん…………ひびき、ちゃん……ごめん……我慢、できなかった……っ♡』
数々の恋愛小説や漫画を読んできた私からすれば、ファーストキスは男の子からするものだと思っていた。なぜか私は自分からしていたのだ。漫画や動画で覚えたいやらしいキスを最初から彼の舌を引っこ抜く勢いでしてしまった。
ひびきちゃんに申し訳ない気持ちがありながらも、もう止まることなんてできなかった。彼のスキルの反動はそれほどのもので、もっと気持ちよくなりたいと思ってしまうのだ。
男の子は好きな相手以外にも反応してしまうものだとは知っていた。それでも彼が痣だらけの私の体に対して欲情してくれていることが嬉しくて、夢中になってしまった。
痛みを軽減する私のスキルを使った。
彼に説明をし、そして、初めてを奪ってもらったのだ。
確かに違和感はあったが、痛みがない分、彼のスキルの反動で残った快感だけが私の体に刻まれた。
翌日、ひびきちゃんに土下座をした。
自分が自分じゃないくらい、彼をむしゃぶりつくして、暴れまわった。
時間が経過すると、やっぱり罪悪感が出てきてしまって、私には謝る選択肢しかなかったのだ。
けど、ひびきちゃんは許してくれた。
恐らく、許されたのは、正式にひびきちゃんと彼――弘世くんが交際することになったから。
これで、良い。私は痣を治してもらえるだけでも、十分だから。
そう思っていたのに、なぜかひびきちゃんはこれからも彼とえっちすることを承諾してくれたのだ。
正直、私もあの快感を知ってしまってから、もうできないなんて思いたくなかった。けど、ひびきちゃんは凄かった。最初に私に図書室で声をかけてくれた時から変わらず、私のことを知ろうとしてくれて、大切に思ってくれていたのだ。
――痣が消えた。
四週間に渡る施術が終わり、ある日の朝。
シャワーを浴びようとお風呂場に向かった時、体中の痣が綺麗さっぱりなくなっていた。
『いいんだ……これからは……好きにお洒落して……素肌を出して……人の目を気にしなくていいんだ……っ』
お父さんがいなくなることよりも嬉しかった。
まあ、そのお父さんが原因なわけだけど、今まで我慢してきたことがしなくても良いとわかり、自然と涙が流れた。
『じゃーんっ!』
私はお母さんに体を見せた。私の体に痣があることはもちろん知っていて、だから肌の露出をしない服装をしていたことだって理解してくれていた。
『小春? その体……どうしたの? 綺麗……綺麗よ……っ』
お母さんは泣いて喜んでくれた。
弘世くんのギフトのことについては言わなかったけど、素敵な友達ができたんだと、それだけを伝えたのだ。
そうして、私の体をひびきちゃんと弘世くんに見てもらった。
もう、人に肌を晒すことが怖くなくなっていた。
それ以上に以前よりも肌が綺麗になっていて、人に見せたいくらいだった。
だからその日は、私ができる最大の奉仕をひびきちゃんと一緒に弘世くんにしてあげたのだ。自分の武器である、大きなおっぱいを使って。
私は変わった。
メガネを外しコンタクトをつけ、髪のアレンジはそこまで変わらないけど、前よりは自信がみなぎるようになったのだ。
すると、いつもは話しかけてこないクラスメイトとも話をするようになった。
今までの私は極力友達を作らないようにしてきたのだが、もうそれは必要ない。
私は、本当の笑顔を学校で見せられるようになったのだ。
そうして時が過ぎ、霧乃ちゃんとも仲良くなったあと迎えたクリスマスの日。
――まさか私が人を救える日がくるとは思っていなかった。
その日は衝撃的な出来事の連続だった。
ひびきちゃんの知り合いでもある有名な<天地ギルド>のメンバーの一人が死にそうだと聞いたり、弘世くんに看板が落ちてきそうになったり、霧乃ちゃんがものすごいギフトを持っていたり。
私に何ができるのかわからない。でも、病室に入った瞬間すぐに理解した。
痛みに苦しむ宍戸さん。つい先日覚えた新たなスキル『軽減付与』を使った。
このスキルは痛みを軽減させる『痛覚軽減』を他者に付与できるもの。あとから、私がこのスキルを使わなければいつまで持つのかわからないと聞き、驚いた。
私はひびきちゃんや弘世くんに救われた。
なら、自分が関わる範囲の相手だけでも救うべきだと思い、毎日病室に通い、スキルを使うことにした。
正直とても大変だった。
魔力全開の『軽減付与』は体力がごっそり抜け落ちたような感覚になるし、魔力回復ポーションだって美味しいわけではない。
朝、学校に行く前に体力が失われるのは結構きつかったけど、その頑張りもあって、宍戸さんは本当に呪いの火傷から回復した。
弘世くんも同じように魔力回復ポーションを飲んでいたのだが、霧乃ちゃんだけは飲まずともできていたようだった。彼女の潜在魔力量が多いのか、それとも冷気だけだったからそれほど魔力を使わなかったのかもしれない。
――本当に、奇跡のような出来事だった。
誰一人欠けても宍戸さんを救えなかったし、ひびきちゃんが私を弘世くんに紹介してくれなければ、あの場にはいなかっただろう。
偶然と奇跡。色々なものが重なっていたが、宍戸さんを助けるために、私たちはあの場にいた。そう思えてもおかしくない巡り合わせだったのだ。
実はあのあと、私は個人的に宍戸さんに呼ばれていた。
「おー、小春ちゃん」
「こんにちは」
私と同じ黒髪を持ち、今は元気で痩せた体も戻ってきている。
「私のこと、あすみんとか亜澄って呼んでいいよー」
「あ……じゃあ私もひびきちゃんと同じく亜澄ちゃんって呼んでもいいですか?」
「もちー。それで今日はこれ渡そうと思って」
すると亜澄ちゃんがくれたのは、ピンポン玉くらいの大きさの黒い玉だった。
「ダンジョンでゲットしたアイテム。とりあえず持ってるだけで良い。出かける時はいつも持ち歩いてて」
「……? わかりました」
彼女はそれ以上は説明してくれなかった。
だから私はこの時からいつもこの黒い玉を持ち歩くようになったのだ。
クリスマスの出来事があったからか、私たち四人はさらに絆を深めていったように思える。
そんなひびきちゃんはたまに私と弘世くんとを二人きりにしてくれる。
私たちはいつも四人一緒というわけではない。
だから弘世くんと二人きりになった時は、必ずと言って良いほどえっちをしている。
私の性欲が強いせいか、弘世くんと二人きりになれる日には、朝から体が彼を求めてしまう。疼く身体を持て余しながらも、会う瞬間まで耐え抜くしかないのだ。
彼の部屋に入ると、喋る時間など必要ない。
彼を押し倒して、馬乗りになって、これでもかと性をぶつける。
ただ、途中で逆転されてしまう。
彼が私にスキルを使うと、もう私は抗えない。
「好きって言って? ……好きって言って?」
「……っ! 小春っ……好き……好きだよ……っ」
切なくなっている私の気持ちの通りに彼はそう言ってくれて、私の深いところがきゅんとなるのを感じた。
「私も好きっ! 弘世くん好きっ……ひびきちゃんも好きっ! 皆好きなのぉぉぉっ♡」
そうやって気持ちを伝えながら、もう一つお願いをする。
「絞めてっ! 首絞めてっ! スキル使ってるからぁっ!!」
「っ……! 小春……っ!!」
ああ、私。お父さんに鍛えられたから、ドMになってたんだ。
私は弘世くんに嘘をつきスキルを使わず、初めての痛み――首絞めの痛みを味わった。
「お゙ごっ……お゙ぐっ……お゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙〜〜〜っ♡」
腰の動きが熱を帯び、さらに深く求め合うように重なり――やがて彼の衝動が私の内に解き放たれ、その熱でどっぷりと満たされていく。
痺れるような快感が全身を駆け巡り、心の奥底まで幸福感に包まれた。
一息つき、毛布の中で私は弘世くんに呟く。
「弘世くん……何度も言ってるけど、ひびきちゃんをちゃんと一番にしてあげてね」
「わかってる……けど、小春も言いたいことがあったら、ちゃんと言って」
「うん……ありがとう」
弘世くんのことは、いつ好きになったのか本当にわからない。
ひびきちゃんとの絡みを見て嫉妬したのか。私の痣を治してくれたから恩を感じているのか。それとも、私の体を気持ちよくしてくれるからなのか。
けど、それ以上にひびきちゃんが好きで、最近は霧乃ちゃんのことも好きになった。
友達に恵まれすぎていて、自分がこんな人生を送れるなんて思いもしなかった。
「――ひびきちゃん、まだかな」
「今日は掃除当番だからね。もうすぐ来るよ」
「私も手伝えば良かったでしょうか」
「霧乃は別のクラスだろ」
そんな会話をしながら、私たち三人は校舎の外でひびきちゃんを待っていた。
「――弘世ー! 小春っ! 霧乃〜〜っ!!」
すると、元気に私たちの名前を呼ぶひびきちゃんが玄関から走ってくるのが見えた。
走ることで綺麗な桃髪がきらめき、私のヒーローが手を振って近づいてくる。
――私は幸せものだ。
ひびきちゃんは覚えていないかもしれないけど、私はあの図書室で声をかけられた時からずっと救われている。
だからあの時、声をかけてくれなければ今の私はいないだろう。
彼女には、もう返しきれない恩をもらってしまった。
だから彼女への親愛を胸に、今日も私は本当の笑顔を見せて楽しく過ごすのだ。