※この作品はR-18です。

美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】   作:pelca

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第二章
第23話 あばばばばっ!


 窓から差し込む光には、桜色の景色が混じりこみ、それを通して春の陽気を感じ取ることができる。

 

「わ、きれい……」

 

 ぽつんと一人、校舎内の廊下の窓際に立っていた銀髪の少女が、視界の先にいた桃髪の美少女を見て呟いた。

 

「ひびきちゃん、とっても髪綺麗になったね!」

「でしょでしょ〜!」

「私の長い髪でもできるでしょうか」

「そりゃできるでしょ〜」

 

 ふと校内で見かけた三人組の美少女。

 

 一人は会話の中心的存在で、艶めく桃髪と笑顔がとびきり可愛い美少女。隣には一見もの静かそうだが、喋ると意外と明るい一部アレンジを加えた黒髪を持つ美少女。さらに隣には長い青髪を持ちお淑やかで言葉遣いも丁寧な学校一の美少女。

 

 その三人が少女がいる方向へと歩いてくる。

 恥ずかしくなり、あわあわと慌てだした少女は、さらに廊下の隅に寄って自分の存在を消した。

 

「あば、あばばばばっ」

「ん?」

 

 震えた口から飛び出た謎の呪文。それに気づいた桃髪の美少女は、ちらりと窓際に視線を向ける。

 

「あ、弘世〜! ご飯食べに行くよー!」

 

 しかし、目的の人物を見つけたのか、すぐに興味を失う――

 

 そのはずだった。

 

「あれ………………?」

「あばっ!?」

 

 なぜか桃髪の美少女は窓際の少女を二度見し、前方の男子との視線の往復を何度か繰り返したのだ。

 見られた少女は恥ずかしくなり両手で顔を隠した。

 

「あばばばばばばばぁっ!?」

 

 居ても立っても居られなくなり、少女はその場から走り去ってしまう。

 

「おーい八木沼! 廊下は走っちゃだめだぞー!」

「あばぁ!? ご、ごめんなさい〜っ!」

 

 しかし、近くには教師がいて、走ったことを注意されてしまっていた。

 

「………………あの子、光ってた……よね?」

 

 桃髪の美少女にとって、校内では三人目となる"光った"存在だった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ――四月になり、彼らは高校二年生となっていた。

 

 去年の秋。高梨弘世は十六歳の誕生日を迎え、『鑑定』を通して『美容』のギフトを授かっていることを知った。

 

 しかし、冒険者を目指していた弘世は、冒険者になることのできないギフトだと知ったことで一時的に落ち込んでいた。

 

 そんな時、声をかけてきたのが、クラスメイトでカーストトップの位置にいた桃髪の美少女――林道ひびきだった。

 

 彼女のお願いでギフトを使うことになった弘世だったが、その反動によって彼女のあらぬ姿を見てしまうことになり、そして体を重ねるまでに至ってしまった。しかしギフトの効果が現れはじめると見た目や肌が変化し、彼女も大喜びしていた。

 

 その後もひびきの友達である九島小春やお昼休みに連れてきた学校一の美少女の氷堂霧乃とも出会い、彼女たちの悩みを解決していった弘世。

 

 今ではひびきは彼女となり、さらになぜか小春や霧乃とも定期的に体を重ねる関係となってしまったわけだが、今のところは四人幸せに過ごしていた。

 

 

 二年生になりクラス替えが行われたことで、なんと弘世とひびき、さらに小春や霧乃までもが一緒のクラスとなった。

 

 三人は一緒のクラスになったことで、ハイタッチしながら喜んだ。

 

 それを傍目で見ていたのが、ひびきと仲の良い友人である元矢陽鞠と井原海莉だ。彼女らも一緒のクラスだった。

 

 このクラスは他のクラスと比べても美少女が多いクラスとしてすぐに話題になったらしく、他クラスから教室を見に来る生徒もいるくらいだった。

 

 そして、二年生になって少し経った頃、ひびきには目立って変化が訪れていた。

 

「ちょっとひびき……その髪どしたん?」

「そうだよ……ツヤツヤのトゥルトゥルじゃん!」

 

 陽鞠と海莉が目を丸くしながらそう聞いた。

 

「えっへん。綺麗でしょー」

 

 ひびきの髪は元々かなり綺麗だった。

 多少お金はかかるがお小遣いの範囲で定期的に美容室でトリートメントをしてもらっていたし、普段から気を遣っていたため、綺麗なのは当たり前だった。

 

 しかし、今日のひびきの髪質は一日前と比べてさらに綺麗になっていたのだ。

 

「どこの美容室に行ったのさ〜!」

「私にも教えろーっ!」

 

 陽鞠と海莉はひびきに詰め寄り、トゥルトゥルの髪を触りながらきゃっきゃする。 

 

 なぜ、ひびきの髪が綺麗になったのか。

 その理由は彼女たちがまだ一年生の頃――春休み前まで遡る。

 

 

「――スキル覚えた」

 

 その日はひびきの家に皆で集まって遊ぶ日だったのだが、突然弘世がそう言い出したのだ。

 

「え!? なになに! 何覚えたの!?」

「今度はなんだろう……弘世くんのギフトを考えると何覚えても最高のスキルしか思い浮かばないや」

「私、気になります……!」

 

 それぞれ弘世のスキルに期待し、互いの膝が触れ合う距離まで近づき彼の言葉を待った。

 

「――『髪質改善』」

 

 弘世がそう言い放った時、女性陣三人は発狂した。

 

「「きゃああああああああ〜〜っ!?」」

 

 弘世はひびきたちの強烈なボイスウェーブ攻撃に驚き、両手で耳を塞いだ。

 

「ねえ! どんな効果があるの! ほら言ってみなさい!」

「そ、そうだよ! 弘世くん、早く……早く!」

「知りたいです! どんな効果が……っ!」

 

 手を伸ばし、ぐらぐらと弘世の体を揺らす三人。普段こういった行為をしない霧乃までもが興奮していた。

 

「言うから! 今言うから……! とりあえず、色々な効果があるみたい……発毛に育毛……潤いとかツヤコシとかも……ともかく頭皮や髪が綺麗になるらしいよ」

 

「凄い凄い! 髪だけに神スキルだわっ!」

「とんでもないスキル! 弘世くん……本当に凄いね!」

「私の枝毛もなくなるのでしょうか……!」

 

 弘世が覚えたスキルの内容は以下だ。

 

<髪質改善>

方法:対象の部位を揉み込む

効果:髪質調整、毛量調整、毛根再生、発毛育毛、抜け毛予防、潤い、コシツヤ、枝毛処理、血行促進

反動:一定時間体が火照る、敏感になる

 

 ともかく髪が綺麗になるスキルだ。

 毎日毎日髪のケアをする女子にとっては夢のようなスキルであり、髪が薄い人にとっても、とんでもない効果のスキルだった。

 

「女の子って髪が命って言うもんね」

「そうだよ! どれだけ髪にお金をかけて、毎日ケアしてるか……!」

 

 ひびきと仲良くなった当初は肩までのボブヘアだったが、今では伸びて鎖骨下で整えている。髪は長くなればなるほどケアも大変だ。

 

 髪の短い男子と違って乾かすのだって時間がかかるし、ヘアパックやトリートメント、ヘアオイルをつけたりブラッシングで髪を梳かすことも綺麗に髪を保つために気を遣っていることだ。

 

「今でも綺麗に見えるのに、これ以上綺麗になったらどうなるんだろう」

「私にもわからない。これが限界だと思ってたんだけど……」

「ちゃんとコントロールはできるみたいだからさ、どんな髪質になりたいか、画像とか見せてもらえたらその通りに近づけると思う」

「最っっっアンドっっっ高っ!!」

 

 ひびきはガバっと弘世に抱きつき、彼の覚えた新スキルを早く施してほしいと願うのだった。

 

 

 四週間後――否、三週間後。

 

 弘世はスキルを使いまくっていた影響か、スキルの効果が出るまで八回の施術が必要だったものが、今では三週間である六回にまで縮まっていた。

 

「ひびきちゃん、とっても髪綺麗になったね!」

「でしょでしょ〜!」

「私の長い髪でもできるでしょうか」

「そりゃできるでしょ〜」

 

 こうして、冒頭に戻る。

 

 まずはひびきが試して、どんな効果が得られるのかを見定めてから小春と霧乃も施術してもらうという流れだったので、今回『髪質改善』の効果を実感したのはひびきだけだった。

 

 この日ひびきたちは、いつものように弘世と昼食を食べようとトイレに寄ってから声をかけようとしていた。

 

 そんな時だ。

 

「あば、あばばばばっ」

 

 特徴的な声が聞こえたので、ひびきはなんとなく声の主の方に視線を送ってみた。

 すると窓際にいたのは小柄で、銀髪でぐるぐるの天然パーマが目立つ女の子だったのだ。しかも毛量も多く、目までもが毛で隠れていた……もしくは隠していた。

 

(一年生の子かな。それにしても凄い髪……羊さんみたい)

 

 ひびきはそう思いながら、弘世を見つけたあとなんとなく『叶者探索』のスキルを使ってみたのだ。

 『髪色改善』により綺麗になった髪――だからだろうか。女の子なのにアフロに近い某北海道の人気タレントの寝起きの直後のような髪型をしていたので、気になりスキルを発動してみたのだ。

 

(えっ!?)

 

 ひびきは立ち止まり、一年生の少女と弘世を交互に見ながらスキルの光を確認すると、なんと光っていたのだ。その少女と弘世が同時に。

 

「おーい八木沼! 廊下は走っちゃだめだぞー!」

「あばぁ!? ご、ごめんなさい〜っ!」

 

 少女はひびきの視線が怖かったのか、そのまま逃げ去ってしまうも、強くひびきの印象に残ることになった。

 

「………………あの子、光ってた……よね?」

 

 それが、八木沼と呼ばれた一年生の女子生徒だった。

 

 この瞬間、一年生の彼女は弘世が願いを叶えてあげられる三人目の"光った"存在となったのだ。

 

 

 

 

 





今回から第二章開始です!

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