美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
「――という感じで、我ながら酷い話があってね……」
自分の身におきた反動の影響を説明したひびき。自分で話しておいて恥ずかしくなったのか、少し顔を赤らめていた。
「あば……あばばばっ……」
反動の話を聞き、目の瞳孔が開いていた麻未。ぷるぷると体を震わせて、恐怖のようなものを感じていた。
「大丈夫そうかな? あ、でも今回の場合はもし気絶したとしても、その間は何も覚えてないから、すぐに施術時間が終わると思うよ!」
必死の説明である。
「だ、大丈夫、です……聞いた時からやりたいって、思ってたので……」
「そう!? なら――」
「一つ、聞いておきたいんですけど」
承諾をもらったので、ひびきが弘世たちの元へ行って、話を通そうと思ったのだが、その前に麻未が遮る。
「私にはメリットがありますけど、皆さんにはメリットなくて……だから……」
「それは大丈夫! 私たちは善意だけでやってるから! 実際に施術するのは弘世だし、私がこんなこと言ってもしょうがないけど……でも、弘世も人を助けたいって気持ちがあると思うよ!」
「それでも、無料でやってもらうのは……」
普通なら麻未のように思うだろう。
しかし、今までも無料でやってきたし、弘世たちはこれからもそうするつもりだ。
「うーん。じゃあ、もし本当に麻未ちゃんが思う通りに髪質が改善したとして、麻未ちゃんが恩返ししたいって思った時に何かしてくれたら良いよ! こっちからは特に求めないからさっ!」
「えっと……それなら……考えておきます」
「うん! 可愛い後輩のためだもん!」
「…………ありがとう、ございます」
この時麻未は、この世にここまで優しい人たちがいるのだろうかと感動した。
だからもし、本当に自分の髪質が改善した暁には、彼女たちに必ず恩を返さなくてはいけない――そのことだけは忘れず心に刻むことにした。
◇ ◇ ◇
「――あ、あばっ……こんにちは」
「いらっしゃい! 麻未ちゃんっ」
その週の土曜日、お昼時にひびきの家にやってきた麻未。
出迎えたひびきの案内で部屋の中へと入る。
「八木沼さんこんにちは」
「麻未ちゃん、こんにちは!」
「こんにちは」
「あっ、あっ……こんにちは」
中では既に弘世、小春、霧乃が待っていて、それぞれ麻未へ挨拶をした。
ただ、美少女ばかりの空間に気圧されて、一気に緊張の汗が体から噴出したような気分になった。
そこで麻未が視線を動かした先は――
(高梨先輩はなんだか落ち着く……)
失礼な話だが、肌が綺麗になったとはいえ、弘世はこの中では圧倒的に平凡な顔をしていた。だから麻未はその顔を見て心を落ち着かせたのだ。
その後、ひびきが用意したハーブティーなどを飲んで麻未が落ち着くと、施術に入っていく。
ひびきのベッドに横になった麻未。施術に入る前にひびきが話しかける。
「失神するかもしれないけど、それだけは覚えておいてね?」
「あば……大丈夫、です。私、失神しないと思います……」
「え……」
麻未の言葉にはなぜだか真実だと思わせるような力があった。
実はこの日がくる前、小春と霧乃の髪を綺麗にするために先んじて施術をはじめていたのだが、二人ともちゃんと失神した。
それを見る限りは、とても麻未が失神を防げるとは思えないのだが……。
「そっか。なら良かった。じゃあ始めよっか」
あまり深く考えず、ひびきは弘世に合図を出した。
今までのような体への施術とは違い、服を着たままの施術となる。
だから、これまでのような心配は必要ない。必要ないはずだ……。
「じゃあ始めるね――スキル『髪質改善』」
弘世の両手に白く淡い光が灯る。
さすがに膝の上に頭を乗せるのはマズいと思い、麻未の頭は現在枕の上だ。その枕の前に弘世が座り、施術を開始する。
「あばぁ…………」
指が頭に触れると、麻未から軽く声が漏れた。
気持ちよさそうな顔をしている。
ここまでは想像通りだ。
弘世はゆっくりと麻未のもじゃもじゃの毛をかき分け、指を滑らせていく。
(難しい……)
ひびきの髪と違って麻未の髪は言わばアマゾンのジャングルだ。
指が頭皮に触れるには、草木をかき分けて進まなくてはいけないため、別の場所に移るためにも時間がかかった。
(苦労してきたんだな……)
触るとよくわかる麻未の苦労。
これは、女子でなくとも男子でも大変な髪質だ。
「あばっ……あばっ……」
反動が強くなりはじめたのか、少しずつ麻未の息遣いが荒くなっていく。加えて体も熱くなってきたのか、じっとりと首元に汗が見えはじめた。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫……続けて……ください」
そしてついにやってくるターニングポイント。
他の三人はこの一分が経過した頃に気を失ってしまい、施術が終わるまで目覚めなかったのだ。
「――あ゙ばっ♡」
ビクンと体が跳ねた麻未。
だめだったか……と思いながら、四人は麻未の顔を見つめたのだが――
「あれ?」
麻未はまだ体をひねらせたり、息遣いが変わらなかったり……ともかく反動の影響は出ていたのだが、気を失っていなかったのだ。
「あばっ……あばっ……あばぁ……っ♡」
ただ、どんどん声が酷くなっていた。
失神を耐えているだけでも凄いが、頭部が小刻みに震えていた。
頭に電気ショックが加えられているのではないかと思うように小刻みに。
「あばばばばばばばばっ♡ あばばばばばばばばっ♡」
その振動に合わせて、麻未の声を震えていた。
「これ……起きてて大丈夫?」
ひびきが心配して言った。
実は失神していたほうが、良かったのではないかと。
「ど、どうなんだろう」
「麻未ちゃん、大丈夫ですか?」
小春と霧乃が心配すると、麻未がなんとか返事をした。
「あばばばっ……だいっ、じょうっ……あばばばばばばばっ♡」
(ぎもぢいいっ……ぎもぢいいっ……ぎもぢいいっ……)
返事になっていない返事だったが、まだちゃんと意識はあった。
ただ、頭部への刺激と快感が強すぎて、麻未はかなり限界に来ていた。
電気ショックが十分近く続く間、人間は意識を保っていられるのだろうか。そんなチャレンジを麻未はしていた。
そうして、もうすぐ終わる時間になると、麻未の体に変化が起きた。
「あばっ!? あばっ!? あばばばばばっ!?♡」
「ぁ…………」
そしてひびきが気づく。
これはいつかのデジャブだと。
麻未の下半身がぷるぷると震えだし、自分でも手で股間辺りを抑えていたのだから。
「――――あばぁ〜〜〜〜〜〜っ!?♡」
そして弘世の施術が終わる瞬間、麻未が履いていたスカートの中から、透明な液体がぷしゅっと漏れ出したのだ。
まさに鯨の潮吹きの如く、パンツ越しに…………。
ベッドシーツがその液体で濡れていくのを四人が見ていた。
「………はぁ……はぁ……あばぁ……………」
麻未にはまだ意識はあった。
ただ、疲れ果ててしまったのか、ぐったりと体から力が抜けて動けないようだった。
「――ひっ、弘世っ!!」
「はい!?」
「退出!!」
「はい〜〜〜っ!!」
ひびきの声で弘世が急いで部屋から退散した。
◇ ◇ ◇
「あばぁ…………」
その後、ひびきの服を借りた麻未。体が小さくサイズが合わないのでぶかぶかだが応急処置だ。
「麻未ちゃん。あと五回継続できそう?」
弘世は今、一階のリビングで一人くつろいでいた。その間に麻未との会話を他の三人でしている。
「やり、やります……髪が綺麗になる、なら……」
「覚悟は霧乃ちゃんの時と同じだね」
「はい……私も漏らしたので気にする必要ないですよ」
「霧乃のは別のものだけどね……」
「あの時はお目汚しを……本当にすみませんでした」
同じ液体でも色が違った。
霧乃はあの時たくさん水を飲んでいたため、確かに色は薄かったが、完全に透明ではなかった。
ただ、今回の麻未のものは本当に無色透明。比べるものではないが、見た目的には麻未の方が被害は少ない。
「じゃあ、これから五回頑張ろう」
「はい…………っ」
そうして、麻未が帰宅する時、リビングの前で弘世とすれ違う。
「あ、あの…………今日はありがとうございましたっ!」
麻未は弘世に百八十度くらいの角度でお辞儀をした。
「うん。髪、綺麗になると良いね」
「あ……あば…………っ!」
◇ ◇ ◇
そうして、なんとか全六回の羞恥心を乗り越えた麻未。
ゴールデンウィークに突入していたため、この日は休みだったのだが、朝目覚めた瞬間にはもう気づいていた。
「髪が……軽い……?」
いつも目覚めた時は、頭にボンバーヘッドの髪の重さを感じていた。しかし今日はそれがなかったのだ。
麻未はベッドから起き上がり、自室にある鏡の前に移動した。
「――――」
前が、見えなかった。
それは、元々ボンバーヘッドで前髪を隠すくらい見えなかったということでもあったが、そのくるくるの髪が解けて真っ直ぐになっていたから。
麻未は自分で前髪をかき分けて、視界を良好にした。
「あば……あばばばばばばば…………」
鏡に映っているのは誰だろうか。こんなに綺麗でツヤツヤで透き通るような銀髪を持つ少女は誰だろうか。
「――わたし、だ…………」
そう認識した時、麻未の瞳から一雫の涙が溢れた。
祖父から受け継いだイギリスの血が入った証拠であるターコイズブルーの瞳。それが今、綺麗な銀髪に似合う素敵な瞳としてここに完成したのだ。
「あっ、あっ……あばぁ〜〜〜〜〜っ」
両目から涙が溢れ、拭ってもしばらく視界が塞がったままだった。
麻未はリビングに向かった。
「おはよう。今日は少し遅いのね」
「麻未〜、もう朝食の準備できてるぞー」
自分と同じ銀髪で、ターコイズブルーの瞳に美しい容姿を持つ母親がキッチンで朝食の準備をほぼ終えた状態で出迎え、次いで少し前までの自分と同じアフロヘアーの父親が出迎えた。
「お、おはよう……」
とことこと歩いてダイニングテーブルの椅子に座る。
「ん……ん……!?」
「えっ!?」
両親がやっと違和感に気づいた。
「わ、私の髪、綺麗……かな?」
麻未は震える声で両親にそう聞いた。
長い前髪で二人の顔は見えなかった。
「えっ! 麻未!? どうしたのその髪! すっごい綺麗じゃない! 私みたい……いえ、私以上に綺麗だわっ!」
「ま、まさか! ギフトなのか!? またギフトなのか!?」
「ち、違う……詳しくは言えないけど……こうなった」
娘の髪質の変化に目を見張った両親は麻未の座る席に近づく。
「凄いわ……本当に綺麗…………」
「あぁ、本当にお人形さんみたいだ……今までごめんな。俺がこんな髪質のせいで……麻未には苦労かけたよな……」
「ううん……良い……」
麻未の髪はどう見ても父親からの遺伝だった。
それでずっと悩み、女の子らしいことはできてこなかったが、今はもうそんなことはどうでも良かった。
麻未はこれから、女の子として綺麗な髪で生きていけるのだから。
(違う……全然違う……)
両親が麻未の頭を優しく撫でると感じたその感触。
アフロヘアーだった頃とは全く違った気持ちの良いなでなでの感触だった。
麻未は嬉しそうにそれを受け入れ、涙ながらに微笑んだ。
「そうと決まったら今日は美容室に行くわよ! さあ、早く朝食を済ませましょう!!」
母親は急いで美容室に電話をかけて予約。
こうして麻未は長い髪を整えるため美容室へ向かうことになった。
◇ ◇ ◇
「こ、こんにちは……」
その日、弘世の家にやってきた一人の少女。
インターホンを鳴らすと出てきたのは平凡な顔の男子。にっこりと笑い出迎えた彼は少女を部屋に案内した。
「──凄い綺麗……!」
「外国のお姫様みたい……」
ため息の出るような可愛いお人形さんがそこには立っていた。
弘世に続き、ひびき、小春、霧乃が髪質改善し美容室でその髪を整えてきた麻未を待っていた。
「あっ、あばっ……ありがとうございますっ!」
深く深く礼をした。
「ねえ、ちょっとこっちにきて! 髪触らせて?」
ひびきが手招きすると、麻未がテーブル前に座る。
「わー! とぅるとぅるだー! てか美容師さんのセンスも良くない!? ねえ!」
「本当だ……やっぱり元々持ってる人のはいくら同じく綺麗にしても差はつくんだね」
「枝毛も全然ありません。とっても素敵です」
実は小春と霧乃もこの時既に髪が綺麗になっていた。以前との違いがわかるほどツヤツヤである。それでも麻未のポテンシャルには目を見張った。特にターコイズブルーの瞳と小さな顔が銀髪にマッチしていて、ため息をつくしかないほどの美しさだったから。
「あば……皆さんのお陰です……」
麻未は照れながらそう答えた。
「あ、あの……一つお願いがあるんですけど……」
そして麻未がもじもじしながら言う。
「なんでも言って?」
「た、高梨先輩に……頭を……撫でてもらいたい、です」
「ワオ…………弘世に堕ちた子がまた一人増えてしまったか」
ひびきはうんうんと頷きながら呟いた。
「あ、あばば……毎回頭を揉んでもらってたからか……それからどうしても先輩の手が、恋しくて……」
「わかる。私も弘世に頭撫でてもらいたくなったもん!」
ひびきも経験済みの反動のようなものが、なでなでチャージだった。
「じゃあ弘世の前に移動して?」
「はっ、はい……」
すると、麻未がちょこんと弘世の前に座る。
「うおお……な、なんだか妹ができたみたいだ……」
体が小さいせいか、ちょうど弘世の広げた足の中にすっぽりと収まったのだ。麻未も弘世に触られ続けたせいか、今では安心できる距離感になっていた。
「じゃあ、するね……」
「はい……っ」
以前とは全く違う指通り。
スルスルと弘世の指が、絡まない細い毛を滑らかに移動し、そして髪を梳かすように優しく撫でていく。
「あばぁ……き、気持ちいいです……これ……癖になりそう、です……」
スキルは使っていないので、ただのなでなでだが、それでも弘世の手に慣れてしまっていたからか、とても気持ちよさそうな顔をしていた。
「猫なのか犬なのか、小動物が撫でられてるみたいな顔してる」
「本当だ。私も撫でられたい」
「私もです。弘世くんの手で……」
羨ましそうに麻未のことを見ていた三人。
「あば、あば……あばぁ…………っ」
麻未は弘世の優しい手を十二分に堪能した。
その後、ひびきたちも順番に撫でられていくことで、今日は猫と飼い主のような立ち場になっていた。
◇ ◇ ◇
ゴールデンウィーク明けのことだ。
一人の少女が、一ヶ月通ってきた教室の扉の前に立つ。
ゴールデンウィーク中に会えなかったクラスメイトたちが既に教室に集まっており、ガヤガヤと話しながらホームルームを待っていた。
ガララと教室の扉が開く。
「――え」
一人のクラスメイトが、入ってきた少女に気づく。
「あんな子いたっけ?」
「え、誰?」
「もしかして転校生……とか」
「綺麗……外国のお人形さんみたい」
「でも、銀髪って……」
そんな声がちらほら聞こえる中、クラスの注目は次第にその少女に集まっていった。
そして少女はとことことと歩き、いつも使っている自分の席に座った。
「あの席って…………」
「八木沼!?」
「えええええええええ!?」
ようやく気付いたクラスメイト。
あまりの変化に、教室中が大騒ぎになった。
「あ、麻未ちゃん……なんだよね!?」
一人の女子生徒が銀髪の美少女――八木沼麻未の席へ近寄ってくる。
「あばっ……うん」
「うそ……うそ……! とっても綺麗……っ」
あまりの美しさに、うっとりとした視線を向ける女子生徒。麻未は自分がクラスの注目の的となり恥ずかしそうにモジモジしていた。
「ね、ねえ! そんなに可愛いお顔だったの!? というか目が青い! ハーフ!? クォーター!?」
「可愛すぎる! どこの美容室に行ったの!? いやん、この子私の妹にする!」
「俺にも見せてくれ!」
「俺も俺も!」
「男子はだめ!! あっち行きなさい!」
「麻未ちゃんは私が守るわ!」
続々と麻未の席の周りに集まるクラスメイト。
あまりの美少女ぶりにちょっとした争奪戦が起きてしまっていた。
「あばばばばばばばばばば…………っ」
こんなことになるとは思わず驚いた麻未だったが、それでも皆が可愛い、綺麗と言ってくれて本当に嬉しかった。
だから――
「――――先輩たち。本当に、本当に……ありがとうっ」
麻未は四人の先輩たちへ向けて、小声で感謝を呟いた。
そして、必ず恩を返そうと自らのギフトを光らせた。