美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
『<天地ギルド>所属のAランク冒険者の三人がまたしてもダンジョン踏破! 今回は東京新宿区の『A級下位ダンジョン』。その美しい見た目と冒険者としての強さから、巷では話題がもちきりです!』
翌日の朝。登校前にリビングでご飯を食べているとテレビから冒険者に関するニュースが流れてきていた。
映し出されていたのは、<天地ギルド>というギルドに所属している三人の美少女。全員が強力なギフトを持ち、少し前から弘世の憧れでもあった存在。まだ見た目は若く年齢は不明だが、高校生から大学生のような容姿に見える。
ギフトは才能そのものと言っても良い。成長するのはその人の努力次第ではあるが、上限は決まっているも同然。聞く話によれば、剣に関するギフト、炎に関するギフト、雷に関するギフトを持った三人だとか。
回復役のヒーラーがいないパーティーでいつも挑んでいるようだが、火力だけで魔物を殲滅しているとわかる。
「…………」
一昨日までは、冒険者に関するニュースを見ることが毎日の楽しみだった。
いつか自分もダンジョンで戦い活躍してお金稼ぎするのだと思っていたのだから。
「まーた悩んでる。『メンタルヒール』」
ダイニングテーブルの向かいに座っていた弘世の母親、穂香がちょんと指を動かしてスキルの魔法を飛ばした。優しい緑の光が弘世の頭に降り注ぎ、陰鬱な考えを吹き飛ばしてくれる。
「母さん、ありがとう」
「良いのよ。でも、我慢はしちゃだめよ。悩みは吐き出さないと」
「うん」
穂香が持つギフトは『精神安定』。そこから派生するスキル『メンタルヒール』は、対象の暗い気持ちを癒やし、すっきりとさせるもの。精神的に不安定な時には持ってこいのスキルだった。穂香はそのギフトを活かし、不定期ではあるがメンタルクリニックでの仕事もしている。
穂香は弘世のギフトをまだ知らない。しかし、『鑑定』から帰ってきた時の顔で察しがついていた。冒険者になれないギフトを授かったのだと。
小さい頃から夢見ていた冒険者。その夢を叶えられないと理解し、穂香は言わずともこうして癒やしてくれていた。
(俺もこのギフトで他人を癒やすことができるのかな……)
少しずつ弘世の考えは変わってきていた。
冒険者にはもうなれない。しかし、母親が自分にしてくれたように、誰かの役に立てるのではないかと。そしてそれは、昨日自分のスキルで喜んでくれたひびきが証明していた。
◇ ◇ ◇
学校では顔を見ても弘世と林道ひびきは言葉を交わさなかった。高校に入学してからの約半年間、学校では一度も会話したことがなかったのだから、これが普通だった。
ただ、弘世が教室に入ってきた時には軽く目が合い、何か通じ合ったような気がしていた。だからか、その後すぐに弘世のスマホに通知音が鳴った。
『今日も放課後よろしくね』
スマホを見て驚いた弘世。なぜなら効果が出るのに必要な回数は一週間に二回だったから。今日でなくても良かったのだ。
弘世は少し考えたあとに返事をした。
『わかった。待ち合わせ場所教えて』
『私の家に直接来て』
『わかった』
美少女の家に直接行くということに慣れない弘世。しかも二日連続向かうことが決まり、心が落ち着かない。
返事をしたあと聞こえてきたひびきたちの会話。
「ねえ、私の肌っていつもと変わらない?」
「んー、変わんないけど」
「どしたん? 化粧品変えたとか?」
「ふふ……そんなとこ♪」
カースト上位の女子たちと会話するひびきは自分の肌の変化を気にしていた。
ただ、昨日も彼女に説明していた通り、しばらくは続けないといけない。だから翌日に変化が出るなんてことはあり得なかった。
笑って会話するひびき。弘世はいつの間にか彼女から目を離せないでいた。
◇ ◇ ◇
そうして放課後。
待ち合わせ場所のひびきの家にやってきた。
一軒家の玄関でインターホンを鳴らすと出てきたひびき。
「やっほー、入って入って!」
「お邪魔します……」
招き入れられた弘世はそのまま二階にあるひびきの自室へと案内された。
しかし、今日は昨日とは違っていたことがあった。
「あ、これ……? 今思えばタダでスキル使ってもらってたじゃん? 高梨くんもスキル使って疲れただろうし、飲み物とお菓子くらいは用意しなきゃと思って」
ローテーブルの上に置かれていたのはポテトチップスなどのスナックと二リットルのジュースに二つのコップだった。
「ありがとう。でも、何かを対価にもらうとかは考えてなかったから、あんまり気にしないで良いよ」
(美少女と関われるだけで対価をもらってるようなものだし)
弘世にとっては、この状況こそが既に大きな対価だった。
それにひびきは自分を信用して部屋にまで上げ、冒険者の夢を断たれた自分が少しずつ前向きになるきっかけにもなっているから。
「そ? でも私も何かしなきゃって思ってさ」
会話する度にひびきの印象が変わっていった。
カースト上位の存在は、下位の連中を見下し、虫のように扱うと思っていたから。弘世は実際にそんな連中を他のクラスでは見かけたことがあったので、カースト上位というだけで、憧れはあったが良い印象はなかった。
しかし目の前のひびきは対等に会話してくれるし、自分のギフトを利用し搾取だけしようとする考えをしているようには見えない。印象が変わるのは当然だった。
その後、お菓子を食べ、ジュースを飲みながら今日の話題になる。
「今日は『脂肪燃焼』の方のスキル使ってほしいんだ」
ボリボリとポテチを食べながら話すひびきの発言は、言っていることと真逆なことをしている。
「…………」
「あ、今言ってることと真逆なことしてるって思ったでしょー」
「だって、お菓子とか絶対太るじゃん」
「今日は良いの! 最後の晩餐!」
あまり信じられない発言だったが、元々は弘世のために用意したお菓子だ。
今日だけだと思うことにした。
「でも……良いの?」
弘世は昨日のことを思い出す。
制服のシャツのボタンを外し、ブラと谷間が見えてしまったこと。そして、『脂肪燃焼』のスキルを使うには、直接肌に触れなければいけないということを。
「…………高梨くんだから、信用するんだからね?」
「——っ」
そう言ったひびきの顔は少し赤くなっていた。弘世はそれを見てドキっとする。
「今まで男子の前で下着姿になったことなんてないんだから……私だって恥ずかしいよ……」
「あ……ぇ……」
「あー! 今私に彼氏いないんだって思ったでしょ! そーですよ今まで彼氏いたことないですよーだ!」
聞いてもいないのに自分のことを話し出すひびき。
べーっと舌を出すが、その仕草すら可愛いと弘世は思った。
「……高梨くんさ、昨日私があんな状態になっても、変なことしなかったし……多分チャラいやつだったら、あのまま…………」
「お、俺はそんなことしないよっ! それに、スキルを悪用することは犯罪だ! 俺は絶対にしない!」
「そ、そっか……紳士、だね」
冒険者として真面目に活躍したかった弘世は、そういったスキルの悪用は絶対に許せなかった。もし見つかれば犯罪者として逮捕されるのが、人にギフトが発現するようになってからできた法律だ。
「紳士かどうかはわからないけど……俺だって彼女いたことないし、女の子の扱い方なんて知らないから」
「へぇ〜〜、ニシシ」
「何笑ってるんだよ」
彼女がいたことがないと知ってか、口に手を当てて笑うひびき。
バカにされているように思えたが、嫌ではなかった。
「私と同じじゃんっ」
「……それって良いことなの?」
「さあ? でも——女の子に慣れてない方が、今の私にとっては良かったのかも」
それは、襲われる心配がない、という意味にも聞こえた。
ただ、わかっていても昨日のひびきは目に毒だった。それほど乱れていたから。
「——やってほしいのは、腕とお腹と足。あ、腰と……お尻も……」
それを聞いてゴクリと息を呑む弘世。
「じゃあ、お願いしても良いかな」
絨毯に座っていたひびきが立ち上がり、リボンを外した。
続けてシャツのボタンを上から外していき、ばさりと床へ落ちる。最後にスカートのチャックを降ろして、下着だけの姿となった。下着の色は昨日とは違う白だった。
「————っ」
「恥ずかしい……なんか言ってよ」
「な、なんて言えば良いんだよ」
美少女の下着姿。昨日はお腹が気になると言って置きながらも綺麗なくびれがあるウエストだった。ただ、太ももは少し太めだ。逆に言えばそれが弘世を欲情させるに十分なものだった。そして、ブラに大きめの胸が収まっていて直視できない。
「可愛い……とか?」
「スキルを使うのにそれ必要なのかよ」
「うう……良いの! とにかく可愛いって言っておけば喜ぶの!」
変なことをしない紳士的な態度を弘世に期待しておきながら、自分の下着姿は可愛いと言えと言う。どこか矛盾したような話だったが、ひびきもなぜそんなことを言ってしまったのはよくわかっていなかった。
「……可愛い」
「〜〜〜〜〜〜〜っ」
「な、何赤くなってるんだよっ」
言わせたくせに恥ずかしがるひびき。
思わぬ態度に弘世の体も熱くなり、汗を掻いてしまう。
「……もう、いいから早くやって!」
「なんなんだよ……女の子ってわからん」
会話を打ち切り、ベッドへと向かうひびき。そして枕に頭を置いて仰向けになる。
弘世もベッドへと上がり、ひびきの足の方へと腰を下ろした。
「自由にやって……抵抗しないから」
「わかった」
言い方がエロいが、弘世は昨日と同じくひびきの期待に答えるように雑念を消し、集中しはじめる。
そうしてひびきの太ももに両手を当てると、
「――スキル発動『脂肪燃焼』」
白く淡い光が両手から放出され、ひびきへの脂肪燃焼マッサージが始まった。