※この作品はR-18です。

美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】   作:pelca

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第27話 弘世、バレる

「ねえ、やっぱりおかしいよね?」

「うん、そうだね。絶対におかしい」

 

 ゴールデンウィークが明け、この日はファミレスに二人のお洒落女子高生が集まっていた。ひびきの友人である元矢陽鞠(もとやひまり)井原海莉(いはらうみり)である。

 

 今日、二人だけで集まったことには理由があるのだ。

 

「小春も霧乃も髪が綺麗になってるし……絶対おかしい」

「この前、ひびきが綺麗になったばっかなのに、ゴールデンウィーク挟むだけで二人とも一緒に綺麗になるわけないもんね」

 

 二年生になり小春と霧乃とも同じクラスになった陽鞠と海莉は、ひびきの友達ということで話すようになっていた。

 

 そして一ヶ月が過ぎた今、その二人にも明らかな髪質の変化が訪れていた。

 これまではひびきだけだったので、本当に美容を頑張っていたのだと思っていたが、さすがに二人同時にひびきと同じような変化があるとなれば疑うしかなかった。

 

「それに……ひびきが変わったのも弘世と関わるようになってから。小春はひびきの元からの友人だって話だけど、霧乃まではおかしい」

「弘世を中心にその三人が一緒にいて……それで、三人とも髪が綺麗になったってことならもう――」

 

 二人は一つの結論に至っていた。

 

「「――弘世のギフトしかないよね」」

 

 同時に答えた。

 

 そして、その結論は正しいものだった。

 しかし問題がある。それはひびきがずっと教えてくれなかったことだ。

 

 一年間仲良くしてきたひびきが教えなかったとなれば、二人にもいくつかの考えが浮かぶ。

 

「ひびきが弘世のギフトを独占したいのか」

「もしくは、弘世のために広めずにいるのか」

 

 ただ、二人もひびきの性格をよーく知っているつもりだ。

 ならば答えは一つ。

 

「…………弘世のため、だよなぁ」

 

 陽鞠が顎に手を当てて呟く。

 

「ひびきのギフトのことを考えると、弘世に引き寄せられたんだろうね」

「…………でも」

「うん」

 

 結局のところ、二人は美に対しては好奇心を抑えられないのだ。

 

「「――私たちも綺麗になりたい!!」」

 

 陽鞠と海莉は行動に出ることにした。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 翌日の放課後。

 

「弘世〜! ちょっと良いかー?」

「ん? うん」

 

 この日はそれぞれ用事があり、弘世は一人で帰宅しようとしていた。

 すると校舎を出たところで陽鞠に声をかけられたのだ。隣には海莉も一緒にいて、手招きをしている。

 

「少し時間もらうよ」

 

 弘世は、二人の後に着いていくこととなった。

 

 徒歩十五分くらいだろうか。

 世間話をしながら辿り着いたのは陽鞠の家だった。

 

「え、家に入るの?」

「うん。嫌?」

「嫌じゃないけど……」

「ちょっとひびきのことで聞きたくてさ」

「それなら……」

 

(二人は友達だもんな。話をするくらいなら)

 

 弘世は勘ぐったが、何か思い当たったというわけではなかった。

 二人はひびきと仲の良い友人だ。変なことにはならないだろうと弘世は陽鞠の家に上がった。

 

「お邪魔します……」

「緊張してるの?」

「ひびきの家にも行ってるのに」

「初めての家は誰だって緊張するもんでしょ」

 

 ギャルっぽい陽鞠の部屋は、甘く良い匂いがした。

 ひびきの家よりも女の子らしい匂いが濃く、その空間いるだけで少し緊張してしまう。

 

 陽鞠が飲み物などを用意し、少し落ち着くと話が始まった。

 

「単刀直入に聞くけどさ、ひびきたちにギフトで髪とか綺麗になる能力使ってるでしょ?」

「――――!?」

 

 いきなりの指摘に弘世も驚いてしまう。確かに予想できたことではあったが、まさか今日今この場所で言われるとは微塵も思っていなかった。

 

「うーん。ビンゴじゃん。その表情」

「な、何のこと? 俺、そういうギフト持ってないよ」

 

 弘世は話し方も辿々しくなっていた。

 二人以外が見ても、明らかに不自然な態度だった。

 

「とりあえず、事実から言うと。ひびきは元々イケメン好き。でもある時から弘世と仲良くなったっていうじゃん?」

「今は本当に好きってのは認めるけどさ、そのきっかけが弘世、君しかいないわけ。で、そうしたらいきなり肌が綺麗になったり痩せたり……終いには髪まで」

「私たちもひびきと変わらない努力してるつもりなんだけどさ、普通じゃあそこまで綺麗にならないよ」

「女性のことについてはあまりわからないけど……そうなのかな」

 

 陽鞠も海莉も一年の時はカーストトップでどちらも顔が良い。しかし、ある時からひびきとは差がついてきていた。そのことについて何度ひびきに聞いてもはぐらかされ、それっぽい理由を聞かされてきたが、今ではその差は絶大だ。

 

「吐いた方が楽だよ」

 

 陽鞠が捕らえた犯人を諭す刑事のようなことを言う。

 

「私たちだって、ひびきとずっと友達やってきたから、無理やり聞いたり嫌なことしたくないんだよ」

「でも……女の子ってさ! 綺麗になりたい生き物なの! この気持ち、ひびきだって、絶対にわかってくれる!」

「それは……」

 

 実際に弘世がひびきから出会った当初言われたような言葉に近い。

 弘世のギフトやスキルについて聞いた時のひびきは、踊る勢いで喜んでいたくらいだ。この二人だって同じなのだろう。

 

 自分のギフトを公開するしない、使う使わないは弘世が判断するものだ。

 でも、今やひびきが彼女となっており、皆の意見を通して使う相手は決めている。その相手というのは、基本的に手が届く範囲でひびきのスキルで光った人。

 今まで、陽鞠と海莉が光ったという話は聞いたことはないのだが……。

 

「うーん」

「まだ教えてくれないか〜」

「じゃあ、しょうがないよね」

「へ?」

 

 すると突然、陽鞠が弘世を後ろから羽交い締めにし、両腕を拘束した。弘世の背中に陽鞠の柔らかなモノの感触が伝わる。

 一方の海莉は手をわきわきさせており、弘世に前から近づいていった。

 

「ちょっ、何をする気!?」

「はぁ……はぁ……ほんのちょっとだけだから……」

「なっ――あはははははっ!?」

 

 次の瞬間には、海莉の十指による脇腹へのこちょこちょ攻撃が始まった。

 途端弘世はどうしようもないくすぐったさに大声を上げて笑い出す。

 

「ほら弘世! 教えてくれたらすぐに終わるよ!」

「あははっ!? だめっ!? これだめっ!?」

「ここがいいのか!? ほれほれっ! 脇もがら空きだぞー」

「ちょっ海莉っ!? あははっ!? だめっ!? だめ死ぬっ!?」

 

 弘世は涙目になるほどくすぐったさを感じており、暴れて逃げようとするも二人相手ではなかなか逃げることはできなかった。

 

(なんか楽しい……私の手で男子が感じてる……)

 

 こちょこちょしていた海莉が何かに目覚めていた。

 

「どうだ! ここか!? ここか!? ほら、お腹とか乳首もやってやる!」

「だめっ!? あはははっ!? 変になる!? 変になるからぁ!?」

 

 止まらないこちょこちょ攻撃。

 はじめは二人共ギフトのことについて聞こうとしていたが、次第に目的は変わっていっていた。

 

「うみりん交代!」

「ラジャー!」

 

 すると今度は海莉が弘世を後ろから掴み、陽鞠が弘世をこちょこちょしはじめる。

 密着する二人の良い匂いに包まれながらも弘世の顔も紅潮し、おかしくなっていた。

 

「耳か!? 首がいいのか!? やっぱり脇腹が一番だなっ!」

「あはははっ!? ひっ、陽鞠っ!? もうだめっ! 笑い死ぬって! おかしくなるっ!!」

「いいぞ弘世……良い顔してる……! はぁ、はぁっ……」

 

 しかし、続ける方も疲労は溜まってくるのである。

 

「もうだめっ!」

「わぁっ!?」

 

 一瞬の隙をみて弘世はその場から離脱。そして両手に光を灯らせた。

 

「――スキル『肌質改善』!」

「ひゃん!?」

「あんっ!?」

 

 陽鞠と海莉の耳を同時にスキルを発動した手で触れると、二人の体がビクンと飛び上がり震えたのだ。

 

「ひ、弘世お前……っ」

「わ、私らから変な声を出させやがって……」

「これはそっちが先にはじめたことで……! だから――」

 

 そんな時だった。

 

 ――ピンポーン。

 

「ん?」

 

 ――ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!

 

「な、なんだ!? 誰だこんなにインターホン連打するやつは!」

「お、俺行くから! またねっ!!」

「あぁっ…………」

 

 弘世は耳への攻撃で一瞬動けなくなった二人を振り切ってカバンを持ち、玄関の外へ出た。

 するとそこにいたのは――

 

「えっ、麻未ちゃん!?」

 

 超絶銀髪お人形美少女――八木沼麻未がちんまりと立っていたのだ。

 制服姿がとても似合うようになった麻未は、家に帰る途中だったようでカバンも持っていた。そして、弘世も今では下の名前呼びだ。

 

「どうしてここに!?」

「あ、あばっ……た、高梨先輩が、ピンチだって思ったから……」

「なんで……?」

「で、でも……必要なかったなら、大丈夫……です。それじゃあ……」

「待って!」

 

 会話の内容はさっぱりわからなかったが、弘世は麻未を引き止めた。

 

「せっかくだから途中まで一緒に帰ろう」

「あば!?」

「それと……心配してくれたんだよね。ありがとう」

 

 弘世は手を伸ばして、麻未の頭を優しくなでなでした。

 

「あ、あばぁ…………」

 

 頭をなでた瞬間、麻未の表情がふにゃっとスライムのように溶けて、気持ちよさそうな顔をした。

 

「き、気持ちいい……」

「麻未ちゃんこれ好きだもんね」

 

(本当に可愛い……自然と撫でたくなる存在っているんだな)

 

 それほど麻未の頭は撫でやすく、そして自らのスキルによって綺麗なストレートの髪になった彼女の髪は手触りが最高だった。

 

「ねえ、麻未ちゃんに聞きたいんだけど……『ダンジョン観光』って行ったことある?」

 

 以前、温泉旅行中にひびきに提案された『ダンジョン観光』。弘世は行くかどうかまだ迷っていた。だから誰かに意見を聞きたかったのだ。

 

「あば……ある、かも?」

「そうなんだ。どんな感じ?」

「あばば……場所によるけど……日本にはない場所。海外みたい。大きな草原、綺麗な湖、クリスタルだらけの山……あとは、洞窟とか」

「色々知ってるんだね」

 

 まさか今言った全てに行っているとは思わないが麻未は詳しかった。

 

「楽しかった?」

「楽しい……どうだろ……楽しいと言えば、楽しいのかも?」

「はは。そこ疑問形なんだ」

「高梨先輩行きたいの?」

「悩んでるんだ」

「……魔物、怖い?」

「それもあるけど……俺、元々冒険者目指してたんだ」

「あば……」

 

 弘世はまだ麻未には冒険者になりたかったことを話していなかった。

 でも、なんだか麻未には話しても良いような気がしていた。妹っぽいからだろうか。

 

 今はもう冒険者にはなることはできないが、『ダンジョン観光』でなら、合法的にダンジョンに入ることができる。そしてひびきは弘世のトラウマのようなものを克服させようとしてくれている。

 

「安心、して良い……(私が、守るから)」

「え? よく聞こえなかったけど」

「あばっ……『ダンジョン観光』楽しい。高梨先輩には恩がある。色々な楽しいこと知ってほしい……です」

「麻未ちゃん……」

 

 麻未も弘世に恩があるのだ。

 弘世が前に一歩踏み出したいと思うのであれば、麻未はその背中を押すだろう。

 心配ごとは全て彼女が取り払うのだと――そう言って。

 

「ありがとう――今度行ってみようかな」

「それが良い、です」

 

 二人の帰路はしばらく続いた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「や、やっちまった…………」

「ひびきに怒られる……」

 

 一方、正気に戻った陽鞠と海莉は、自分たちがしでかしたことを悔いていた。

 

 元々会話だけで終わらそうと思っていたのだ。しかし、いつの間にか羽交い締めにしてこちょこちょまでしてしまっていた。それに、弘世の顔を歪ませることが楽しくなってしまい、自分まで興奮することになったのだ。

 

「それに、あいつ『肌質改善』って言ってたよな」

「言ってた……でも、私らの耳に触れた時……」

「うん。ビクってしちゃった」

「あれ、何なんだろう」

 

 弘世のスキルの一部を垣間見えることになった二人だったが、なぜ耳を触れられただけでそうなったのかは理解できていなかった。

 

 ただ、どちらにせよ――

 

「明日謝るか……」

「そうだね……」

 

 ひびき、そして弘世に謝ることに決めたのだった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「ひーびーき〜〜〜」

「ど、どうしたのよ二人共」

 

 翌朝、陽鞠と海莉の二人は、学校に登校してきたひびきを廊下で見つけると、涙ぐんだ様子で縋り付いた。

 

「ひびきごめん〜〜〜」

「ごめん〜〜」

「いきなり謝ってどうしたの?」

 

 何がなんだかわからないひびきは、自分の制服を掴む二人の頭を撫でであげた。

 

「えっと……俺がギフトのこと教えちゃったんだ」

 

 すると、背後から近づいてきたのは弘世だった。

 そして事の経緯を話すはずだったのだが――

 

「二人がひびきたちの髪が一気に綺麗になったことが気になってたみたいでさ。二人はひびきの大事な友達でしょ? 俺も隠してるのが申し訳なくなって……だからごめん」

 

 ――キュン。

 

 その瞬間、陽鞠と海莉は自分の胸がぎゅうっと締め付けられたのを感じた。

 

(え、なんで私らが無理やり言わせようとしたって言わないんだ?)

(あれは私たちが百パー悪いことなのに)

 

「だから勝手に言ってごめん。二人が謝ったのは、隠していたことをひびきを通さず聞いちゃったからだと思う」

「そっか……でも、弘世も謝ることじゃないよね?」

「そう? 俺のギフトはもう俺だけのものじゃないから。一応ひびきを通したくてさ」

「弘世……本当にお人好し」

「はは……」

 

 弘世は頭をカリカリしながら、苦笑いをした。一方のひびきは特に怒った様子は微塵も見せなかった。

 

「ひま、うみりん。まあ私も色々嘘ついて隠してたのは悪かった。ここまでバレちゃったんじゃ仕方ないよね」

「ひびきぃ〜〜」

「ひろせぇ〜〜」

 

 二人の優しさに触れた陽鞠と海莉は涙を鼻水をひびきの制服に擦り付けた。

 

「ちょっとさすがにそれは汚いからやめて!?」

「だって〜」

「そうだよ〜」

 

(ま、本当は二人が無理やり弘世に迫ったんだろうけど……ほんと弘世ってば……)

 

 ただ、ひびきにも本当はこうだったのではないか、という考えがあった。

 一年も仲良くしてきた友人だ。これまでにも美容について色々聞かれたし、嘘もついてきた。

 

 弘世を見つけるのが、自分でなかったらこうはなっていなかったかもしれない。

 ひびきが弘世のギフトをどうするという権利もそもそもないのだ。しかし、弘世はひびきのことが好きで、信頼している。だからこそ、筋を通していた。

 

 それなら、もう隠す必要はない。

 ひびきは弘世に確認を取ることにした。

 

「弘世……」

「うん。良いよ……というかひびきが良いの?」

「私は……うん。これでも二人は友達だからさ」

 

 言葉は少ないが、ひびきと弘世は通じ合った。

 

「じゃあ、二人とも。次の土日どっちか空いてる日にうちに来なよ。――でも、大変なことになるから、覚悟だけはしておいてね?」

 

 こうして、陽鞠と海莉の弘世のギフトによる施術が決まったのだった。

 

 

 

 

 

 




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