※この作品はR-18です。

美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】   作:pelca

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第33話 貧乳な後輩の悩み

「霧乃を取り押さえろー!」

「ラジャー!」

「弘世くん! 弘世くん! 私の、私の胸をどうかっ!!」

「あばばばばばばっ!?」

 

 スキルの名前を聞いた瞬間、ひびきが即座に反応。スキルを使ってくれと霧乃が懇願することが目に見えていたため、前のめりになっていた霧乃を小春と一緒に取り押さえることにしたのだ。

 

 その様子を見ていた麻未は恐怖の顔をしていた。そんな麻未の胸は霧乃よりワンサイズだけ大きく見える。

 

「霧乃! あなたの胸が大きくなったら私たちどこも勝てなくなるの!」

「そうだよ! 霧乃ちゃんはそのままで……そのままでいて!」

「私も……私も弘世くんに色々してあげたいんです! 胸で挟んであげたいんです……!」

 

 ひびきと小春は弘世のスキルが必要ないほど大きい。

 しかし霧乃のように小さいことを長く気にしている存在だっているのだ。

 

「前にも言ったけど、俺はそのままでも良いと思ってる」

 

 これは弘世が何度も霧乃に対して言ってきたことだ。

 体を重ねている時だって、胸以外の部分が良すぎていつも圧倒されている。

 

「な、なら! ひびきちゃんと小春ちゃんのを小さくして私のを大きくしてください! そのスキルは小さくすることもできますか!?」

「それはもう『脂肪燃焼』でできるけど……」

「なっ! なんてこというのよ! 私から胸とったら何残るのよ!」

「大きな胸が私のアイデンティティ!」

「ほら! やっぱり貧乳になるのは嫌なんじゃないですか! 私の気持ちわかりましたよね!?」

 

 徐々にヒートアップしていく三人。巨乳貧乳論争が起きていた。

 蚊帳の外になっていた麻未は、胸のサイズなどどうでも良く、三人が怖くて弘世の後ろに隠れていた。

 

 しばらくこの論争は続くことになるのだが、結局、霧乃の胸はワンサイズだけ大きくすることに落ち着いた。

 

 ちなみに弘世が覚えた『育乳』スキルの詳細はこうだ。

 

<育乳>

方法:対象の部位を揉み込む

効果:胸のサイズアップ、形の整形

反動:一定時間体が火照る、敏感になる

 

 育てるという意味合いなのだから、その通りでサイズアップだ。ただ、見た目の変化が大きいからか、一度にワンサイズしか調整できないそうで、施術時間も一回三十分。他のスキルより時間がかかりそうなことが判明した。

 

 このスキル一つで胸に関する全てを網羅するというものではないが、大きくできるというだけで女性にとっては夢のようなスキルなことには変わりない。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ――七月になり、夏が来た。

 

 放課後。とある中学校の体育館では様々な部活がスポーツをする音が聞こえる。

 

 その中でも他の部活よりも一際目立っていた部活があった。

 

 茶髪ボブの少女が顎先まで滴る汗を飛ばしながらダムダムとボールをつく。俊敏な動きで相手ディフェンスを翻弄して切り込み、そのままレイアップ――するかと思ったのだが、引き付けた相手ディフェンスの裏を掻いて味方の少女にパス。

 

 少女のお陰でドフリーとなった味方の少女は誰もいなくなったがら空きのリングへと丁寧にジャンプシュート。パサッとリングにボールが吸い込まれ得点が生まれた。

 

「いえーい!」

「ナイス葵っ!」

 

 ラストパスをした葵と呼ばれる少女とシュートを決めた少女がハイタッチをした。

 

 

 

 ――休憩時間。

 

 一人、水道の水を飲もうと外に出た葵。首にはタオルをぶら下げている。

 水道の蛇口をひねって水をごくごく飲むとバシャッと顔に水をかけた。

 

「〜〜〜〜〜な!」

 

 すると近くから声が聞こえてきた。

 気になって近づくと、角を曲がった先で男子バスケ部二人が休憩をしていた。

 

「速人……」

 

 覗きながら、葵は一人の男子に視線を奪われていた。

 

 葵と同じ中学三年でイケメン高身長の男子バスケ部のエース。いつも周りからカッコいいと言われているが、バスケに集中したいからか、今まで彼女がいたことはないという。

 

 葵はバスケ部に入った当初からずっと速人のことが好きだった。

 同じ部活ということもあり、葵は速人とはよく話す。ただ、その関係が心地よくてもし告白すればその関係を崩れてしまうのではないかと思い、この三年間何もできなかった。

 

「なー、速人は巨乳と貧乳どっち派よ?」

「あ? 何言ってんだよ」

 

 葵が覗いている中、速人ともう一人のバスケ部員がそんな会話をはじめた。

 

「ちなみに俺は巨乳〜っ! で、速人は?」

「…………答えない」

「良いから答えろよ〜〜」

 

 下ネタはあまり得意ではないのか、イケメンなのに恥ずかしそうな表情をする速人。その純粋さも葵が速人のことを好きな理由でもあった。

 

 しかし――

 

「…………巨乳」

「だーはっは! やっぱりか! 女は巨乳だよな! 貧乳なんて存在価値ねーよな!」

 

 速人の肩を揺らしながら、もう一人の男子がケラケラと笑う。

 

「――――っ」

 

 まさか誰が聞いてるとも思わない二人はそのまま会話を続けた。

 

「ほら、涼川とか! あいつぜってーAカップだぜ? 顔は可愛いけどな!」

「葵か。確かに胸はないけど……俺は――」

 

 その瞬間、葵――涼川葵《すずかわあおい》の中で何かが壊れた気がした。

 そしてもう速人の言葉は耳に届いていなかった。

 

(貧乳じゃだめなんだ……貧乳じゃ速人に選んでもらえないんだ……っ)

 

 ぎゅっとタオルを握り締め、ふるふると体を震わせた葵。

 

「あーおーいっ!」

「――わ」

 

 すると後ろからガバっと抱きつかれた。

 同じ女バスの部員だった。

 

 そしてその瞬間、ふにゅっと葵の背中に柔らかなものを感じた。

 

「………………」

 

 葵は振り返り、その子の手を取って真剣に言った。

 

「ど、どうすれば巨乳になれるの! 教えて! 緊急事態なの!!」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 とあるファミレスにて。

 

「かんぱーい!」

 

 三人の女子高生がポテトフライを囲みながらジュースを飲んでいた。

 

「ねえ、霧乃が胸大きくなりたいって言うの。まあ……ワンサイズだけは認めることになったけど……」

「確かにあの容姿で巨乳とかもう完全無欠だよな」

「あはは。ひびき体で負けちゃうね?」

「うみりんそんなこと言わないでよ〜」

 

 ひびき、陽鞠、海莉の三人だった。

 つい先日、弘世が新たなスキルを覚えたということで、その話は陽鞠、海莉にも共有されており、霧乃の胸についても話しあっていた。

 

「てか私ももうちょっと欲しいんだけど」

「私も欲しいー!」

「二人はDでしょ? それ以上必要?」

「いるでしょ!」

「今度弘世にやってもらおー。そしたらついでに挟んでやる。ニシシ」

「もう……」

 

 ひびきは二人が胸が大きくなる分にはそれほど気にはしていなかった。

 弘世は二人に対して好きという気持ちはないということがわかっているため、安心しているのだ。

 

 ただ、霧乃は別だ。弘世も好きになっていると話しているし、それに加えて体までもっと良くなったとするなら……。

 

 ひびきはそんな危機感を小春と共に感じてはいるが、実際はそうはならない。

 弘世の優先順位はどう考えてもひびきが一番だし、それは揺るがない。ひびきが心配するほどのことにはならないのだ。

 

 と、ファミレスで会話している時だった。

 

「――ひ、ひびき先輩!?」

「え……?」

 

 突然名前を呼ばれたので、声の主を確認してみると――

 

「――葵ちゃん! わー、久しぶりだーっ!」

 

 そこには中学三年生の涼川葵がいた。

 ひびきは立ち上がり、葵に手を向けてハイタッチをした。

 

「て、てか……ええ!? なんですか!? もう一年くらいかな……その間に超綺麗になってるじゃないですか!」

「えへへ〜わかる?」

「わかりますよ! 美少女過ぎて本当にひびき先輩なのか疑いましたもん!」

「そこまで褒めなくても〜」

 

 ひびきと葵は同じ中学校でひびきが三年生の時、葵は一年生だったのだ。

 

 二人の出会いは文化祭実行委員で、一緒に行動した時があった。

 葵はその時何度もひびきに助けられたことで、大好きな先輩となったのだ。

 

 それに加え、当時ひびきは校内でも美少女として有名で、リーダーシップもあった。葵が憧れるには十分だった。

 

「あ、あの! ひびき先輩に聞いてほしいことがあるんです!」

「なになに? でも……お友達もいるんじゃない?」

 

 葵は女子バスケ部員と一緒にファミレスに来ていた。

 それを見て、迷惑ではないかと思ったのだ。

 

「あ、あの……私たちのことは忘れていると思いますが……葵の話を聞いてあげてください。こちらはお気になさらず」

「ふふ、覚えてるよ。玲奈ちゃんと小夏ちゃんでしょ? いっつも葵ちゃんと一緒にいたからね」

「覚えてくれてる……すごい」

「ありがとうございます!」

 

 まさか覚えてくれてるとは思わず、二人の女子バスケ部員は目を輝かせて喜んだ。

 ひびきは有名人だった。女子の中でも一部憧れていた存在がいたのだ。

 

 そうして、陽鞠と海莉がいるなか、そこに葵を加えて彼女の話を聞くことになった。

 

「…………おっぱいだ、おっぱいがいっぱいだ……羨ましいです! 私にも少しください〜! うわーーーんっ!」

 

 葵の悩みを聞いてしばらくすると、突然ひびきの大きな胸に顔をうずめながら泣きはじめたのだ。

 

「話をまとめると、好きな人が巨乳好きで、自分は貧乳だから選ばれない……かぁ」

 

 この時点でひびきは胸の大小で好き嫌いを決める男はよろしくないと考えていた。

 ただ、それを口に出すことはしない。葵の好きな相手なのだ。下げるような発言は避けるべきだ。

 

「なぁ……やっぱ弘世に言うしかないんじゃないか?」

「それしかないよね。その子が本気なら」

「まあ……ね」

 

 ここまでくれば、ひびきのスキルを使うまでもなく、胸を大きくしたいという想いが強いのだろう。この悩みは葵だけではない。世界中に同じような悩みを持った人もいるだろう。

 

 それに今、成長期だからこそ不自然ではない。

 大人の胸がいきなり大きくなるのと、子供が大きくなるのとでは、周りから見られる意味合いも変わってくる。

 

「葵ちゃん……一応聞くんだけど、お母さんは胸大きくないの?」

 

 まだ中学三年生。これからまだ大きくなる余地だってあるだろう。

 だからひびきはこんなことを聞いた。

 

「えっと……はい。遺伝だと思います」

「そっか……これからも大きくなる見込みはないってことか……」

 

 遺伝が全てではないが、遺伝によるものが大きい。

 葵の母親がそうであれば似る可能性だってある。

 

「私、AAAカップなんです。こんなの男と変わりません……だから男の子にだって胸をバカにされるんです」

 

 葵は壁と変わらない自分の胸を見下ろしながら言った。

 

「葵ちゃん可愛いのにな……まあ、可愛い後輩の頼みだし――」

 

 ひびきは少しだけ考えた。そして視線は向かいの席へ。

 

「――うみりん、ちょっと協力してもらえる? 今回は学校外の人だし、ちゃんとしたいから」

「あー、そゆこと。もちろんっ」

 

 全ては言わずとも海莉は理解した。

 そして視線を葵に戻す。

 

「――葵ちゃん。本気で胸を大きくしたい?」

「え……はい。ずっと悩んできたので……少しでも良い……大きく、したいです……!」

「わかった……」

 

 ひびきは葵の頭を優しく撫でた。

 

 一年間会っていなくても自分を慕ってくれている可愛い後輩だ。

 だから――

 

「――今週どこかで時間作れるかな。そこで、私の彼氏に会ってほしいの」

 

 ひびきは葵を『育乳』スキル持つ弘世に会わせることにした。

 

 

 

 

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