美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
夏休み。
この日は皆で海水浴場に来ていた。
弘世、ひびき、小春、霧乃、陽鞠、海莉の六人でだ。
やってきたのは一般的な海水浴場。多数の客でにぎわい、家族連れから学生、ナンパ目的のようなチャラついた人たちまで見えた。
そんな海水浴場に持ってきたのは霧乃が用意した大きなテントやパラソルにテーブル。海を楽しむためのグッズを今日のために揃えてくれたらしい。
「弘世〜! 塗って〜!」
「わかったよ。ちょっと待ってて」
そのパラソルの下の敷いたシートにうつ伏せになっていたのはひびき。
弘世に日焼け止めを渡して、全身を塗ってもらおうとしていた。
そうして手に取った白い液体。
両手にまんべんなく広げてから、太陽の日差しで熱くなったひびきの背中から塗っていった。
「んん〜。弘世の手気持ちいい〜♪」
「それはそれは……」
ぬちゃぬちゃっと日焼け止めを塗る度にひびきの肌と液体がこすれる音がする。
普通の行為のはずなのに、男性が女性に塗るという行為がどこか普通ではない雰囲気を醸し出していた。
「じゃあ次は前も……♡」
「皆が見てる場所でできるわけないでしょっ」
「あはは、だよね〜ほら、他の人も待ってるからやってあげなよ」
「全員やるの……?」
「待ってるんだから早くしてくれ〜」
「そうだそうだ〜」
待っていたのは、ひびき以外の女子。陽鞠と海莉がヤジを飛ばしてくる。
このあとさらに四人も日焼け止めを塗ることになった弘世は遊ぶ前に疲れてしまっていた。
「ひ、弘世くん……どう、かな……?」
もじもじしながら美しい水着姿を見せてくれたのは霧乃だ。
彼女は『育乳』スキルによってBカップからCカップへとサイズアップしていた。
他の面々と比べれば差はあるが、それでも大きくなったことには変わりなかった。
「うん。似合ってるよ。……なんというか、霧乃……良かったね」
「……はいっ!」
胸のサイズが大きくなったことについてなんと声をかければ良いかわからなかったが、何を言っても霧乃は喜んでくれただろう。
そして、ひびきたちは海に遊びに来ていた人たちからも注目されることとなる。
ツヤツヤの髪、つるつるの肌、小さくて美しい顔。
体型は皆違うが、それでも全員が美少女だった。
それが五人集まりでもすれば、それはもう注目の的だ。
ビーチボールでぽんぽんバレーをし、きゃっきゃしているだけでも男たちの視線を釘付けにしていた。
「ふう……ちょっと休憩しよっか」
しばらく遊んで疲れたので、一旦テントに戻って休むことになった。
テントに戻るとそこは天国。
なぜなら霧乃が作ってくれた溶けない氷を四方に設置しており、ひんやりとしていたのだから。
「うお〜〜っ! 最高だ霧乃っ!」
「やば……もう外出たくないかも……」
「まさか海で霧乃のギフトがここまで役に立つとは」
「霧乃ちゃん様々だね」
「霧乃ありがとう!」
それぞれ霧乃にお礼を言って、テントの中でドリンクを飲んだりして休憩していった。
ただ、途中から皆の様子がおかしくなっていた。
それは陽鞠が話題にした話が原因だ。
「なあなあ知ってるか。ナンパ目的で海に来てる男ってさ、絶対テント持ってきてるらしい」
「そうなの?」
「それでな、声をかけた女をテントの中に連れ込んでヤるらしいんだ」
「うわ〜、チャラ〜」
「でも、女側も連れ込まれてるんだから、合意してるってことだ」
「じゃあナンパ待ちの女性もいるってことだ」
「そうそう」
――テントの中でヤる。
陽鞠のその言葉が、テントにいる女性陣の脳裏に一つの考えを過ぎらせた。
五人の女性の視線は次第に弘世へと集まっていた。
「え……何? なんで皆見てるの?」
テントとは檻。猛獣を閉じ込めるための檻なのだ。
そしてその中には五人の猛獣と狩られる側の弱い獣が一頭。
ただ、さすがに人数が多いと考えたのか、五人がアイコンタクトして頷く。
「最初はグー! ジャンケンポン!」
「は!? なんでジャンケンしてるの?」
ただ、一人だけ状況がわからない弘世は、いきなり始まったジャンケンに動揺する。
そしてそのジャンケンの結果、ひびき、陽鞠、海莉チームと霧乃、小春チームとなった。順番は先にひびきチームだ。その間、霧乃チームは外で過ごすことになった。
「とりあえず三十分経ったら戻ってきますね」
「短くない!?」
「それ以上お外にいると、干からびちゃいます」
「よし! じゃあひびき早くヤるぞ!」
「はいはーい」
霧乃の時間制限に異を唱える陽鞠だったが、確かにずっと外では大変だ。
パラソルの下で休憩していても良いが、二人だけでは暇を持て余すことだってあるだろう。
そこで霧乃と小春は海水浴場を色々見て回ることにした。
「ぐへへ……」
「ちょっと?」
「弘世もわかってるだろ?」
「そうだそうだ〜」
「まあ、諦めるのね――最初は私からね」
「わかってるよ〜」
海パン姿の弘世にひびきが四つん這いになって近づく。その体勢だからか、彼女の胸がより大きく見える。
そうして、顔を近づけられたひびきは弘世にキスをし、そして次にリップ音を響かせながら首筋や胸に口づけをしていった。
その過程で仰向けになった弘世。
陽鞠と海莉も近づくと、ひびきが触れていない場所へと手を伸ばす。
そして弘世の海パンはガバっと下ろされた。
「――ワオ。弘世もやる気じゃんっ♪」
状況を把握した弘世は下半身が元気になっていた。
◇ ◇ ◇
一方二人きりで歩き出した霧乃と小春。
ナンパから声をかけられると思っていたのだが、思いの外声をかけられなくて特に小春は安心していた。
そんな時だった。
「あ……あの子って」
ソフトクリームでも買おうかと思い売店に行こうと歩いていた時、同じくソフトクリームを購入していた少女たちが目に入った。
そのうち一人が薄緑の髪を持った少女で、霧乃と小春はその子に見覚えがあったのだ。
「ん……?」
するとその子がこちらに気づき、ハッとする。
霧乃と小春の顔を覚えていたのか、ソフトクリームを片手にこちらに走り込んできた。
「――以前、ダンジョン観光で一緒になったお二人ですよね? 気絶していた私を運んでくれた……」
「あ、そうだね……久しぶり!」
「お久しぶりです」
互いに挨拶を済ませると、その子は自己紹介を始めた。
あの時は色々あって、自己紹介の暇などまるでなかった。ダンジョンの外に出て目を覚ましてからも、ギルド職員や警察の事情聴取などで忙しかったから。
「私は宝来美鳥《ほうらいみどり》と言います。今は高校二年生です」
「わ、同い年だ! 私は九島小春《くしまこはる》! で、こっちが――」
「氷堂霧乃《ひょうどうきりの》です。よろしくお願いします」
美鳥と名乗った彼女。
どこか霧乃に似た雰囲気を持っており、清楚で礼儀正しい。一緒にいた友人もそんな雰囲気を纏っていた。
「氷堂……霧乃……さん?」
「ええ…………もしかして私のこと知っていますか?」
「もちろんです! 私たちの業界では有名ですから――」
「有名……」
以前霧乃は美鳥のことを見知ったような反応を見せた。そして今名乗ると美鳥の方が霧乃のことを知っていると話したのだ。
訝しげに霧乃は美鳥のことを見つめると、その答えを教えてくれる。
「私の父親が『トレジャーネクスト』という冒険者専門の芸能事務所をしていて、私はその父の娘なんです」
「あ……」
「冒険者ギルド協会とも提携させていただいていて、霧乃さんのお祖父様ともお会いしたことがあるんですよ」
「はい……理解しました……」
霧乃の祖父である氷堂源六は、どこに行っても孫のことを言いふらしている。
恐らく『トレジャーネクスト』の事務所と関わった時も霧乃のことを話していたのだろう。そして、忘れてはいるが美鳥がいる社交界などに連れて行かれたことがあったのかもしれない。
「お祖父様のお話と遜色ない美しさですね。羨ましいです」
「美鳥ちゃん……って呼んでもいいかな?」
「あ、はい。もちろんです。私は小春さんと霧乃さんと呼ばせていただきます」
「私からすれば美鳥ちゃんも結構な美人に思うんだけど……」
「ええと……ありがとうございます……っ」
小春から褒められた美鳥は少し恥ずかしそうにあたふたした。
今の今まで自信あるような出で立ちだったにも関わらず、一瞬にして顔を赤らめた美鳥。そのギャップを小春は可愛いと思った。
「もしかしてその事務所って<天地ギルド>とも関係ありますか?」
「もちろんです! 有名な冒険者様は他の事務所に取られまいと好条件でスカウトしていますから。あの御三方は見た目も実力も素晴らしいですからね。弊社も張り切ってお声がけしました」
やはりという感じで小春と霧乃は頷いた。
実はこの『トレジャーネクスト』という冒険者専門の芸能事務所。冒険者業界では一番有名な事務所で、ほとんどの芸能に関わる冒険者がこの事務所に所属している。
冒険者に興味がなかった小春でも名前だけは知っている事務所。
となれば、この美鳥も多数の冒険者と関わっているのだろう。
「美鳥ちゃんも会社のお仕事を手伝っているんですか?」
「はい。実はその仕事の一環でダンジョン観光に参加させていただいたのですが……」
(あの時のターゲットは美鳥ちゃんでした。とすれば、やっぱり彼女の会社――芸能系の関係者が暗殺を依頼した……?)
霧乃は知っていた。なぜあの事件が起きたのか。
暗殺で狙われたのはこの宝来美鳥。そしてそれに巻き込まれたのが、自分たちだということを。
犯罪者集団だった<蛇空ギルド>のボスが持っていた写真。そこに美鳥の姿が映っていたことからターゲットが発覚した。
ただ、麻未に『鑑定』などで調べてもらっても、暗殺の依頼者だけはわからなかったのだ。
(一応、あとで麻未ちゃんに教えておきましょうか)
霧乃は心の中で一人思案し、先の行動を決めた。
「せっかくの機会ですし、連絡先を交換しませんか?」
「あ、良いね! ぜひぜひ!」
「では……」
「それに、私の目に狂いがなければ小春さんはグラビアアイドルになれる素質があると思います!」
「ええっ!?」
連絡先交換の最中、驚きの言葉を美鳥にかけられて小春は目を丸くする。
仕事柄なのか、美鳥はそんな感じで売れる人売れない人を見分けられるのか、小春は売れると判断したらしい。
「ええと……素晴らしいプロポーションに色白の肌……つるつるの黒髪に肌だって綺麗……売れます……っ!」
「ちょ、ちょっと美鳥ちゃん……さすがに……」
「興味あれば、言ってくださいね。うちは冒険者専門ですが、一般的な芸能事務所とも繋がりがありますので」
「普通に生活してるだけで幸せだから、頭の片隅にね……っ」
小春にとっては、とても嬉しい言葉だった。
なぜなら、痣があった時には考えられない話だったから。これも全部ひびきと弘世のお陰だ。だから小春はあの時の感謝を忘れないよう、再び二人のことを大切にしようと決意したのだった。
「ちなみに霧乃さんの美貌なら写真集なんて出せば飛ぶように売れるはずです。ただ、ご家庭にそちらの繋がりもあるでしょうからも私がお誘いするまでもありませんね」
「私も小春ちゃんと一緒ですよ。今の生活で満足しています」
「そうですね。お二人の表情を見ればわかります。ちょっと羨ましいです」
「……?」
少し含む言い方だったが、連絡先を交換したあとは、美鳥と別れることになった。
会話に夢中になっていた美鳥。去り際には手に持っていたソフトクリームは全て溶けていた。
「戻ったよー!」
ソフトクリームを堪能した後、テントに戻った小春と霧乃。
テントの入口のジッパーを開けた途端、ムワッとした濃密な香りが立ち込め、驚くこととなった。
「な、なんですかこれ……」
そこにいた四人は全裸で、全員が果てていたのはわかるが、体が何かに塗れていた。透明なとろとろの液体のように見えたそれは、汗と混じり光っていたのだ。
「これか……? 私が持ってきたんだ……ローション。すっげえ良いぞ……でも、滑りが良すぎて量に注意な……」
「でも時間経つとカピカピに固まるから、そこも注意」
倒れていた陽鞠がローションが入ったボトルを持ち上げながらそう言った。
そう、全員の体に塗れていた何かの正体はローションだったのだ。
「良さそう……」
「確かに……」
今までローションを使ったことのなかった小春と霧乃。ちょっと羨ましそうに皆を眺めた。
「じゃあ交代だね。皆は出て」
「俺に休憩時間は?」
「休憩時間とってたら、すぐに夕方になっちゃう。ローションだけタオルで拭いてから私たちと二回戦目だよ。ね、霧乃ちゃん?」
「はい。私も弘世くんと汗だくローションセックスしてみたいです」
弘世は逃げることができない。
体力が有り余っている二人は、もう十分に我慢しているのだ。
「うおお……霧乃からそんな言葉が出るとか、めっちゃエロいな」
まさかの霧乃の言葉に陽鞠も目を丸くする。
こんなに清楚で綺麗に見える人物からの発言だ。驚いて当然だった。
「ひびきちゃんも起き上がって」
「小春〜腰がつらいよ〜」
「ほら……って、うわ!? すっごいぬるぬるしてる!」
「これが良いんだよ……弘世とぬるぬるになって体が触れるといつもと全然違うんだよ」
「ゴクリ……」
それを聞いて小春は下半身がムズムズしてきたのを感じた。
同じく霧乃もそう感じたようで、すぐに行為に取り掛かれるように濡れたシートをタオルで拭いていき、弘世に水を飲ませたりした。
そうしてひびきたちがテントから出ていくと、小春と霧乃のターンがやってくる。
「弘世くん。いつもありがとう」
「急にどうしたの?」
「まあ……気にしないで感謝を受け取って」
小春は先ほど美鳥に誘われたグラビアの話を思い出し、弘世に感謝をしたが、詳細は伝えるつもりはなかった。
「うん。俺だって小春にはいつも感謝してるよ」
「……もう。女たらしですね本当に」
その一言だけで小春は嬉しくなってしまう。
それに負けじと霧乃も想いを伝える。
「私もですよ……だからこれ、あげます――」
「――んっ……」
霧乃は生成した氷を口の中に入れて、口移して弘世に与えた。
「
「ふふ……可愛い」
「じゃ、霧乃ちゃん」
「はい」
二人はローションのボトルを取り、手のひらに取り出して使い始めた――。
◇ ◇ ◇
海水浴も終わり、夏休み中盤のこと。
「――霧乃ちゃん。ちょっといいかしら?」
「お母さん……なに?」
氷堂家では、霧乃の母親である氷堂霞《ひょうどうかすみ》が娘に話しかけていた。
何の用事だろうと不思議な顔をしていたが、次に出される名前にハッとすることになる。
「弘世くんって……前にうちで霧乃と遊んでたじゃない?」
「えっと……うん」
「霧乃の彼氏さんってわけじゃないのよね?」
「そう、だけど……」
ひびきの許しを得て保っている関係。
彼氏ではないが、体の関係ではある。霧乃は皆のことが大好きなため、付き合えていなくても今の関係でもとても満足している。
「今度またうちに連れてきてくれないかしら――――***ちゃん」
「……お母さん、弘世くんに用事があるの? ――んっ」
その瞬間だった。
霧乃の視界が一瞬だけブレて、目眩がしたような感覚になった。
ただ、それはコンマ一秒ほどの短い時間で、さほど気にするようなことではなかった。
「うーん……そうね。**で****に****から、お願いできる?」
「…………わかった。連れてくるね。なら、お父さんたちがいない日の方が良いよね」
「ありがとう。さすがは私の娘だわっ……!」
霞の言葉はあまり聞こえなかった。
でも霧乃はそれに答え、承諾した。
笑顔になった霞は、霧乃をぎゅっと抱きしめた後、その場から解放する。
「――――」
霧乃は自分の部屋に戻り、スマホを取り出した。
そうして、連絡先から弘世のチャットを検索し、簡単なメッセージを送った。
『弘世くん。お願いがあるのですが――』