美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
「お゙お゙っ……お゙お゙っ……」
汗にまみれた酷い格好のまま白目を剥きそうになっていた霞はギリギリで精神を保っていた。
自分がそうさせたとは言え、弘世にスキルを使われた状態だったので、反動の効果は凄まじく、想像以上に快楽の沼に突き落とされた。
「げっぷ……おい。私はもうお腹いっぱいだ。娘を呼べ……これ以上は無理っ」
「お゙っ……お゙っ……」
「…………だめだこりゃ。なんで私が動かなきゃいけないのよ〜っ」
ふわりと宙に浮いている小さな羽の生えた魔物――『淫婦《インプ》』。
彼女は霞を通して得た精気を食事としてお腹を満たす。
霞はこれまで不倫など一度もしたことはなかった。機会はいくらでもあったが、自分の体を許したいと思う相手がなかなかいなかったのだ。
だからこれまで淫婦に渡す精気は、自分から発せられる精気のみだった。
そんな霞が目をつけた存在が高梨弘世。
娘の霧乃が連れてきた彼。すぐに体の関係だとわかった。彼が家のボディソープの匂いを漂わせていたため、察することができたのだ。
同級生の男子と接してこなかった霧乃が色々なことを許した相手。
霧乃と同じ血を引いているからか、霞もどこかで彼に何かを感じたのだ。
やっと体を許せる相手ができたのだと。
仕事バカで妻との夜の時間がほとんど取れない夫は霧乃を産んでからはずっとセックスレス。霞だって女だ。体でも愛されたかった。
そんな霞には都合の良いギフトがあった。
だから今回そのギフトを使い、性欲を満たすため彼を呼び出した。
淫婦が使えるスキルは『催淫』と『催眠』。
『催淫』では対象の人物を求めるようにし、興奮状態になり性欲が高まる。疲れていても体に力が漲り元気に動くようになる効果もある。
『催眠』は思考誘導や一部の記憶改ざん。今回の場合、弘世には不倫したという罪悪感を持たせないための記憶改ざん。もちろん霧乃についても同様だ。
ただ、霞は弘世を少し甘く見ていた。
淫婦によって高められた性欲と体力回復。『やめてって言ってもやめないくらい』と言った霞の発言により、性欲のバーサーカーと化してしまったのだ。
「――お母さん?」
そこに救世主が現れた。
「き、きり…の……お願い……弘世くんの相手を――淫婦ちゃんあとはよろしく……」
そう言うと霞はそのまま気を失ってしまった。
「対象変更――」
淫婦が呟くと、霞に覆いかぶさっていた弘世が立ち上がり、霧乃に近づく。
「弘世……くん? きゃあっ!?」
弘世は霧乃の腕を掴むと、そのまま霞が寝ていた布団に押し倒す。
「霧乃……ごめん……なんだか今日は止まらない……抑えきれないんだ……っ」
「ふふ……弘世くんになら何をされてもいいです。私は今、全てをあなたにあげてるんですから……」
驚いたものの、霧乃はいつでも弘世を受け入れる心持ちだった。
だから押し倒されながらも自らの服を脱ぎだし、透き通った素肌を見せた。
しばらくするとなんとか回復した霞は、霧乃と一緒になって弘世に求められることにした。複数人同時に相手をすることに弘世は慣れていたため、霞も彼のテクニックに驚きつつ再び快楽の底へと意識を飛ばした。
時は空に夕焼けが見え始めた頃。
「――今日はありがとう。弘世くん、気をつけてね」
「はい。お邪魔しました」
「近くまでお見送りしますね」
まだ顔が火照っている霞は、腰を震わせながら玄関で弘世を見送った。
その弘世は軽く別れの挨拶をしたあとに霧乃と一緒に途中まで帰路についた。
そして氷堂家から五十メートルほど離れた路地に差し掛かった時、どこか違和感を覚えた弘世はハッとして、その場に立ち止まった。
「…………霧乃」
「はい、なんでしょうか」
「俺って、今日霧乃の家で何してたんだっけ?」
ふと頭に浮かんだ疑問。
ついさっきまでいたはずの霧乃の家での出来事が思い出せない。
思い出せるのは、霧乃に呼ばれて家に行き、案内された客室で会話していたところくらいだろうか。
「…………お茶……でしょうか?」
「そう、なんだけど……ふむ……」
霧乃も弘世と同じ記憶があった。ただ、お茶をするためだけに、霧乃の家に行くだろうか。
普段なら、行く度に霧乃と体を重ねていたはず。
でも、今日はその記憶はない。
「ええと……今日って俺、霧乃とはしてないよね?」
「は、はい……してないかと…………今から戻ってしますか?」
「ちょっ……今日は家でご飯が待ってるから」
「残念です」
しかし霧乃は既に弘世と今日体を重ねている。その時の記憶がすっぽりと抜けていた。
霧乃自身も何か違和感があったが、その違和感の正体が何なのか全く思いつかなかった。
「じゃあ、今度家に来た時は、よろしくお願いしますねっ」
「うん……そうだね」
霧乃は弘世の腕に自分の腕を絡ませるようにして、体を寄せる。
そうしてそのまましばらく歩くと、弘世の見送りが終わり、霧乃も帰路についていった。
「――本当にどういうことでしょう……なぜ……」
考えてもなかなか出てこない答え。
ただ、帰路についた時にようやく一つの違和感に気付いた。
立ち並ぶ住宅の塀の影に隠れた霧乃。そこで自分の下半身に手を伸ばした。
そうして、さわさわと軽く確認し――
「今日……私、弘世くんとした……?」
彼のモノが中に入った後の感覚。いつも感じているあの感覚が残っているような気がしたのだ。それに、体も少しベタベタしているような気がしたのだ。
しかし、霧乃にはやはりその記憶はない。ただ、弘世も同じ疑問を持っていた。
「うーん。わかりません……生活に支障がないならほうっておきましょうか……」
考えても出てこない答えに、霧乃はそのことを忘れることにした。
◇ ◇ ◇
「ふう…………」
家の中に戻った霞は、一人シャワーを浴びていた。
汗だくになった体を洗い流し、少し前の情事を振り返っていた。
十何年振りに味わった信じられないほどの快感。全身を駆け巡る電撃のような刺激。何度も失神しかけたがギリギリ耐えた。
「今日は早めに寝ましょう。体力が持たないわ」
性行為による相当な疲労が溜まっており、気を抜けばすぐに眠りそうなほどだった。
でも、それも幸せな痛みということだろう。
「次はいつにしましょうか……」
キュッとシャワーの止め、長い髪をかきあげた霞。
まだまだ女としては枯れていないその美貌。子育てや家事ばかりやってきた霞がようやく見つけた女として輝ける場所。
一方的な気持ちではあるが、しばらくは彼を借りようと、そう思うのだった。
◇ ◇ ◇
――ブブ、ブブ。
スマホのバイブ音が鳴る。
メッセージの通知が来た証拠だった。
ちょうど冒険者ギルド職員の仕事を終えたタイミング。
カバンに入れていたスマホを取り出し、そのメッセージを確認した一人の職員。
「ぁ……」
送り先の名前を見て、誰からメッセージが来ていたのかを理解する。
その相手は、約半年ほど前に連絡先を交換することとなり、それからしばらく連絡をとっていなかった。
謹慎処分だったこともあり、自分もそれで良いと思っていたから、何も思うところはなかった。
ただ、ずっと心に残っていた相手。
一人の女性として、彼のギフトにとても興味があった。
彼に興味があったわけではない。
そのギフトがそれほどの力を持つものだとわかっていたから、彼の今後を占うような言葉を贈ってあげた。
彼は私の想像通りの生き方を歩んでいた。
類まれなるギフトの力で複数の美少女に囲まれていることだ。
でも彼は、私が想像していない成長を遂げていた。
いや、あれが本来の彼だったのだろう。
あのようなギフトを持ってしまえば、男性なら悪用してしまうことが目に見えた。
その力に溺れてしまえば、いずれ捕まる。そこまではならないにしろ、ギフトの力に慢心して、女遊びばかりするのだと思っていた。
それなのに、彼の周りにいた女性たちは心の底から彼に信頼を置き、心を通わせていたのだ。
『すみません。随分連絡が遅くなってしまいました。――改めて、いつかの恩返しをさせてくれますか?』
彼からのメッセージだった。
そのメッセージを見た瞬間、心が跳ね上がり、その日が来るのを心待ちにした。