美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
この日、高梨弘世は一人でとあるマンションにやってきていた。
インターホンを鳴らすと玄関から出てきたのは、キリッとした顔つきの二十代前半の美人女性。
茶髪ロングの髪をバレッタでまとめた彼女は、いつものスーツ姿ではなく、私服なためか雰囲気は少しだけ柔らかい。
高めの身長に支えきれないのではないかというほど大きな胸の膨らみ。今からこの体を施術すると思うと、少し緊張するが、今日彼女には恩を返しにきたのだ。
「――お久しぶりですね。どうぞ上がってください」
「はい。お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」
かしこまったやり取りになってしまったが、今日は仕事など関係ない。
冒険者ギルド職員の冬月沙織は、弘世を迎え入れ部屋へと案内した。
冬月の部屋は彼女の印象通りの大人っぽい部屋だった。
線香型のお洒落な香や背の高い観葉植物、ショールームではないかと思うほどの整ったデザイン的空間だ。
「コーヒーでも用意するので、そこの椅子に座っていてくれますか?」
「あ、はい」
目の前には腰の高さの丸テーブルに二脚の椅子があった。
弘世はその一つに腰掛けた。
数分後用意されたのは温かいコーヒー。
目の前に砂糖とミルクも用意してくれて、弘世はどちらも使い、ズズッといただいた。
「はぁ……美味しいです」
「ふふ。良かったです……それにしても、私の家に高梨さんがいること、不思議ですね」
同じく向かい側の椅子に座った冬月が、優しい笑みで弘世を見つめた。
職場では絶対にしないプライベートな表情だった。
「ええと……僕もです。不思議ですね」
「時間は経ちましたけど、こうやって声をかけてもらって嬉しいです」
「はい……僕は冬月さんのちょっとした言葉に勇気をもらいましたから」
あの言葉がなければ、もしかしたらひびきの言葉にだって聞く耳を持たなかったかもしれない。
事前に冬月に女性に求められる、素晴らしいギフトだと聞かされていたからこそ、受け入れられた――今ではそう思っている。
「まあ、私はただの私欲でそう言ったつもりだったんですけどね。でも高梨さんは、色々な人の悩みを解決しているようで、何よりです」
「はい……だからこそ、今日はここにきました」
もちろんひびきにも了承済み。
そして弘世には彼女にまだ自分が覚えてきたスキルのことを全て話していない。だから、やってもらおうとしていたことがあった。
「あの、僕に『鑑定』使ってもらえますか? 前よりも色々とスキルを覚えたので。実際見てもらった方わかりやすいと思いますから」
「そうですか……では――『鑑定』」
弘世に言われて発動した冬月のギフト。
その眼に見えたものは――
「あ……凄い……こんなに増えているなんて……夢のような力です」
『肌質改善』『脂肪燃焼』『脱毛』『髪質改善』『育乳』……。冬月に鑑定してもらってから、一年ちょっと経過したが、三つのスキルが増えている。
「増えなければ、霧乃にも出会わなかったでしょうね」
「そうでしたか……」
そんな話をしつつ、今日の施術についての話に入っていく。
事前にやる施術は決めていたものの、増えたスキルの詳細はまだ話していなかった。
「ええと……まずは全身の『肌質改善』をしたいという話でしたけど、改めてどうしますか?」
「そうですね。個人的に医療脱毛に通っていますが、やってもらえるなら『脱毛』、そして『髪質改善』も……」
「わかりました。では、その三つやりましょう。ただ、『髪質改善』と『脱毛』は同時にできないので、こちらに通う回数が増えます。それだけ理解してもらえたら」
「ありがとうございます……でも、高梨さんがそこまでしてくれるは、もらいすぎではないかとちょっと気が引けますね。こちらとしてはとても嬉しいのですが……」
会話の中で疑問を持つ冬月。やったことと言えば、アドバイスしただけ。なのに、ここまでのことを無料で受け取って良いのか。ギブアンドテイクの比率が合っていないように思うのだ。
「大丈夫ですよ。これまでに施術した人からも何ももらっていませんから」
「高梨さんが言うなら良いのですが……でも、何か欲しいものなどあれば言ってほしいです」
「はい……」
そうして施術内容が決まると準備に入っていく。
弘世は冬月の準備が完了するまで、部屋の外に出て、トイレで待つことにした。
その間冬月は服を脱ぎ、ベッドの上へと上がり、準備を整えた。
もちろん冬月だって裸を見られるのは恥ずかしい。
でも、亜澄を救った時の彼の力と真剣さを見ている。だからこそ、彼に体を委ねることができる。そうとも思っていた。
「――入ります」
「はい、どうぞ」
冬月に許可をとってから再度入室。
弘世がドアを開けるとそこにはタオル一枚持った冬月がベッドの上で待っていた。
タオルで前を隠しているのみで、何も身につけていなかった。
「ええと……水着とかは……」
「少しでも高梨さんがやりやすいように準備するのがこちらとしても礼儀だと思いまして……」
少しだけ冬月の顔が赤い。
普段のクールな表情が崩れ、それがギャップとなり、弘世も少しドキっとしてしまった。
弘世はベッドに近づくと、冬月はタオルをかけた状態で、仰向けになる。
「じゃあ、冬月さん。上から順番にやっていきますね。これは他の人にも言っているんですけど、止めて欲しい時があったら言ってもらえたら手を止めるので。それだけ反動が……」
「本当に優しいんですね。では、その時は言わせていただきます」
その言葉を聞くと、冬月の頭部に近づき、弘世はベッドの上に腰を下ろした。
そうして、スキルを発動した。
「――スキル『肌質改善』」