※この作品はR-18です。

美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】   作:pelca

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第43話 恩返しと救いと⑤

 弘世たちが転移した先は、とある廃工場の入口だった。

 

 周囲も廃れており、治安は良くなさそうな場所で、怪しいやつらの潜伏先にもなりえそうだった。

 

「み、皆さん……これ」

 

 麻未が何も無い空間から取り出したのは、五つ分の動物の被り物だった。

 そこには黒ヤギや青ジカ、白トラ、赤ザメ、桃タカ……色合いは明らかに普通ではなかったが、顔を隠せるのは弘世たちにとっても好都合だった。

 

「私はヤギで氷堂先輩はシカ……あとは好きに選んでください」

 

 既に二人の愛用品となっていた二つの被り物を除き、弘世たちが選ぶことになった。結果、弘世が赤ザメ、ひびきが桃タカ、小春が白トラとなった。

 

 そうしてここに珍獣戦隊『ストレンジビースト』が誕生した。

 

「見えるには見えるけど……麻未ちゃんよくこんなの被って戦闘できるね」

「ええと……目をつむってもやれるので、あってもなくても変わらない、です」

「最強かよ」

 

 麻未の強さは底しれないものだった。

 

「あと……一応かけておきます――『擬態』」

 

 すると、麻未から送られた魔力は自分含む五人を包み、背景に同化するように姿が消えた。ただ、自分たちの姿は確認できている。

 

「これで……相手には気づかれにくい、後は他にも色々かけておきます」

 

 さらに麻未は次々といくつかのギフトの効果を皆へとかけていった。

 

 準備が整うと、麻未が一人前に出る。

 後方には弘世とひびきを守るように霧乃と小春が配置されている。

 

「行きます――」

 

 麻未が一人で、廃工場の中へと足を踏み入れた。

 

 足音が響く、広く天井の高い廃工場の中には、そのまま廃棄されて残ったいくつかの見慣れない機械が残っていた。

 

 埃っぽく歩く度に小さくそれが舞い上がり、しばらくの間手を付けられていないとわかる。ただ、やはりというか人の足跡で一部埃がない場所も見えて――

 

 しばらく歩き、とある扉の前に到着した麻未。

 中から話し声が聞こえてきたことで、動きを止めた。

 

「あばぁ……」

 

 後ろを振り返る。

 弘世たちは着いてきていない。決めた通りに入口近くに立っているようだ。

 

 確認し、麻未はゆっくりと扉を開けた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「……いつまでそうしているつもり。私は話さないわよ」

 

 半日近く椅子に拘束されたままの冬月がそこにはいた。

 さすがに同じ格好でご飯も食べず、水も飲まずにいた影響か、少し衰弱している様子が伺える。

 

 ただ、それなのに肌や髪はツヤツヤのままで、衰弱していると見られるのは表情だけ。普通ではあり得ない美しさを保っていた。

 

「竜威さんが戻るまではそのまんまだ。静かにしとけ」

「それにしても……ぐへへ……あんた良い体してるよなぁ」

 

 縄で締め上げられた体。そのせいかより胸が強調されて見える。

 スーツの中の隠しきれない巨乳が、下っ端冒険者の目が捉えていた。

 

「おい、やめろ。竜威さんに怒られるぞ」

「でもよ……少しくらいは良いだろ。あと少しは帰ってこないはずだ」

 

 二人の見張り。

 その一人が両手の指先を動かしながら、冬月に近づく。

 

「傷つけられないかもしれないが、触ることはできる」

「…………っ」

 

 冬月は男を睨む。しかし男の手は冬月の胸に伸びていき――

 

「あ゙ぅっ…………」

「あ……?」

 

 瞬間、力が抜けたようにバタリと男が倒れた。

 その異変にもう一人の男が周囲を警戒。誰か侵入者がいるのかと、背後を振り返る。

 

「あ゙っ…………」

 

 しかし何もできないまま首に衝撃が伝わり、膝が折れるように地面に倒れ込んだ。

 

「ぇ……ぇ……何が起きたの?」

 

 呆然とする冬月。しかし目の前には何も見えず、いきなり二人の男が倒れた事実しかわからなかった。

 

 すると次の瞬間には黒ヤギの被り物を被った小さな体躯の人物が現れたのだ。

 

「きゃあっ!?」

 

 恐ろしい黒ヤギの被り物に冬月も悲鳴を上げる。

 

「あばぁ……もう、大丈夫……」

「え…………」

 

 黒ヤギの少女――麻未は冬月のロープを手刀で切断。

 口を開けたまま驚いていた冬月は、「あ、ありがとう」とおそらく敵ではないと思い、麻未に感謝を伝えた。

 

「人が少ない……」

「ん? 他の人? 他の人は昼休憩で外に出ていったわ。少なくともあと五人はいる」

「――『鑑定』」

「ぇ――」

「そういう、ことだったか……」

 

 麻未は冬月の状態を『鑑定』で確認。一人で何かを納得した。

 

「ここにいて。後は私たちでなんとかする。じゃあ――『転移』」

「えっ……ええっ!?」

 

 何がなんだかわからないうちに冬月は解放され、そして突然いなくなった麻未の姿にずっと口が開きっぱなしだった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 一方、廃工場の入口に残っていた弘世たち。

 声を潜め、その場から動かないように最新の注意を払っていた。

 

 なぜなら目の前には――

 

「――竜威さん、どうしますか?」

「アァ、今日は水攻めをしてやろうと思ってな。単純にあれはキツイ」

「さすがは竜威さん。あの女が泣いて懇願するのが楽しみ――」

「――おい、止まれ」

 

 部下四人と共に外から戻ってきた竜威。

 しかし、何かの気配に気づき、立ち止まった。

 

 すぐ傍には弘世たちが息を呑んで固まっていた。

 ひびきは弘世の服の袖を掴み怯えた様子だ。

 

「ウォータージェット!」

 

 そう言った瞬間、竜威の右手から直径五センチほどの細い水が噴射され――それが弘世たちのすぐ横を通って、廃工場の壁を難なく貫いた。

 

「…………」

「どうしたんですか?」

「アァ、俺の勘違いだったようだ」

 

 竜威は頭を傾げたものの、再び廃工場へと向かっていった。

 しかし――

 

「ウォータージェット!」

 

 そう見せかけ、再度水を噴射した竜威。

 

「ははァ…………やはり俺の勘は正しかったようだ」

 

 その水が空中で霧散し、何もない場所で弾かれていたのがわかった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 防いだのは小春の『軽減結界』。

 不可視の防御壁が展開されたことにより、弘世たちへの攻撃を防いでいた。

 

 位置がバレた。しかしバラバラに動いてはさらに危険になる。

 まだ『擬態』の効果で弘世たちの姿は見えていないが、既に竜威たち五人が武器を手に取り、戦闘態勢に入っていた。

 

「――凍れ」

 

 次の瞬間、霧乃による絶対零度の氷撃が五人を穿つ。

 目の前で巨大な氷塊の攻撃を受けた相手がそのまま動けなくなる――しかし、そうはならなかった。

 

 次の瞬間には、先ほど竜威が使った水の噴射により霧乃の氷が切断。仲間たちも一部凍傷にはなっていたが、まだ動けるようだった。

 

「――小春ちゃん。二人を任せます」

「わかった……!」

 

 霧乃が一人前に出る。

 頭部は青いシカの被り物。そして、手には氷の剣を二振り持っていた。

 

 そこからは一方的だった。一人。また一人と、意味のわからないまま地面に倒れていった――一人を除いて。

 

「ほォ……なかなかやるようだ。じゃァ……これはどうかな――」

 

 すると両手から水で作り出された巨大な竜が出現。

 それが無差別に当たりを暴れまわる。

 

「くぅっ……」

「小春っ!」

「大丈夫……こんなのミノタウロスロードに比べたら……!」

 

 水竜の攻撃を受け、小春の結界に衝撃が加わる。しかし小春はまだ耐えていた。

 

「はぁっ! ていっ! これで――!」

 

 霧乃は持っていた氷剣で次々と水竜の一部を凍らせ、砕く。

 しかし竜威はそれでも、再び水竜を作り出し、攻撃を繰り返していった。

 

「戦闘経験が少ないのがバレバレだぜ……ほらよっ!」

「きゃあっ!?」

 

 水は竜威の手元から出るはずだった。しかしそれは一端であり、突如霧乃の後方から別の水竜が出現――咄嗟に氷壁を作るも、水竜の勢いに壁まで吹き飛ばされてしまう。

 

「――霧乃っ!?」

「だめ! 二人とも動かないで!」

 

 霧乃を助けに行こうと動こうとした弘世とひびきを止める小春。

 離れ離れになれば守りきれない。麻未との約束はその場から動かないことだから。

 

 だから、信じて待つしかない――

 

「その程度か? 結構なギフトを持っているようだが、まだまだ甘い……おこちゃまあらしいなァ……」

 

 霧乃が吹き飛ばされた場所へとゆっくりと近づく竜威。

 そして再び水竜を作り出し、それを霧乃がいる場所へと放って――

 

「はァ?」

 

 ――水滴となって霧散した。

 

 練り上げられた魔力で作り出した水竜。

 少し前に凍らされたことには驚きだったが、今度はそれ以上――魔力自体が解け、

形を保っていられなくなったのだ。それは、ただ破壊されたのとは、全く違う現象。

 

「あ、ばぁ…………」

 

 吹き飛ばされた霧乃の横。入口付近に突然何者かが現れた。

 バフォメットのような黒ヤギの被り物を被った首から下は可愛い女物の服を着ている謎の人物――

 

「お前は楽しめそうだなァ」

 

 何を感じ取ったのかはわからないが、竜威は禍々しいナイフを腰から取り出し、ターゲットを変更。

 今、黒ヤギの少女は『擬態』を解き、姿を表していた。

 

「――『ハイヒール』」

 

『擬態』により見えない霧乃に近づき、黒ヤギの少女――麻未は回復魔法をかける。

 すると動けなくなっていた霧乃がすぐに起き上がった。

 

「ご、ごめんなさい……油断しました」

「大丈夫……これから強くなっていく……氷堂先輩はそれだけ素質がある」

 

 簡単に会話を交わし、霧乃はそれ以上前には出なかった。

 そうして麻未が竜威にゆっくりと近づく。

 

「じゃァ――行くぜ!」

 

 竜威は麻未に接近しナイフを突き立てる。

 しかし、ガキンと甲高い音が鳴り、弾き返された。

 

「は――まさかあの女と同じなのか?」

「浅はか……私は違う」

 

 冬月の状態『ゴールデンタイム』と同じ原理で跳ね返されたのかと思ったが、麻未は否定。

 すると次に竜威は再び水竜を作り出す。ただ先程までのものとは全く違っていた。

 

「ヤマタノオロチって名前をつけてるんだが……これはどうかなァ?」

 

 ヤマタノオロチは八つの頭を持つ日本神話の怪物。

 ただ、竜威が作り出した水竜の数はざっと数えて三十は下らなかった。

 

「いけっ、ヤマタノオロチっ!」

 

 先ほどは霧散されたかもしれない。しかしこの数。捌き切れるはずがないと、一斉に三十の水竜が麻未に襲いかかった。

 

 しかし麻未は動かない。

 動く必要はなかったのだから。

 

「――『反射』」

 

 次の瞬間、一斉に麻未を襲った三十の水竜が方向転換。しかもスピードと威力が倍増され、そのまま竜威に襲いかかったのだ。

 

「なっ――そんなことが許されていいわけ――ぐはあああっ!?」

 

 攻撃が倍返しされた竜威はそのまま呼吸もできず水の奔流に呑み込まれ蹂躙されていく。そして、しばらくして水竜の攻撃が止むと地面には水浸しになり意識を失っていた竜威が転がっていた。

 

「あばぁ…………」

 

 その場には一時の静寂が流れた。

 

「おわった……の?」

 

 ひびきが小さく声をこぼす。

 

「そうみたいだね……はは、麻未……本当にすごいや……っ」

 

 弘世は麻未の強さに感動していた。

 この、物語の主人公のような圧倒的強さ。冒険者を目指していた者としては、憧れてしまうほどの最強勇者だったのだから。

 

「――『安眠《グッドスリープ》』」

 

 念の為麻美は倒れている五人に心地よい眠りに誘う睡眠魔法を放った。

 

「『擬態』――解除。高梨先輩……」

 

 姿が見えるようになった弘世たち。

 

 麻未に感謝を伝え、霧乃の無事を確認してから、五人で廃工場の中へと向かった。

 

 

「――きゃああああああっ!?」

 

 中に入ると、拘束が解かれた冬月が、一人で椅子に座っていた。

 そして五人の珍獣の姿を見た時、冬月はつい声を上げてしまったのだ。

 

 普通ではない。怪しい被り物をした五人が自分に迫ってくるのだ。

 正体を知らない相手だと、見た目だけで恐れてしまうだろう。

 

「あっ……被ってたの忘れてた――冬月さん! 俺です! 高梨弘世ですよ!」

「へ…………」

 

 赤ザメの被り物を外した弘世が顔を見せる。

 

「ぁ……ぁ……」

 

 その弘世の顔を見た瞬間、冬月の目からは涙が溢れた。

 

 この感情はなんだろう。

 でも、どうしてか弘世の顔を見て、涙が流れてきてしまったのだ。

 

 彼のお陰で体に傷がつかず済んだからだろうか。

 それとも、窮地に助けにきてくれたヒーローに見えたからだろうか。

 

 いずれにしても冬月は安心し、ずっと張っていた気を解いたからか、腰が抜けてしまう。

 

「冬月さんっ!」

 

 弘世は走り、椅子から転げ落ちそうになっていた冬月の肩を支えてあげた。

 

「弘世くん……私……私は……っ」

「怖かったですね。冬月さんが無事で良かったです……あとは僕たちに任せていいですから、しばらく座っていてください。ほら――皆ですよ」

 

 ひびきたちも被り物を外し、笑顔を冬月に送っていた。

 

「あぁ……皆さん……なんてこと……亜澄さんを助けただけでなく、私まで……」

 

 冬月はこの出会いに感謝していた。

 

 多分あの時、『鑑定』を担当したのが自分でなければ、この繋がりは生まれなかったかもしれない。

 もしあの時、元々の知り合いであった亜澄の『鑑定』をしに行かなければ、ずっと思い出されず、ギフトを使ってもらえなかったかもしれない。

 

 だから冬月は、弘世――そしてひびきたちに感謝をしたのだ。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 その後のことだ。

 

<水竜ギルド>のリーダーである倉本竜威《くらもとりゅうい》を筆頭にした冒険者たちは逮捕された。

 

 冬月が自ら警察と冒険者ギルドに報告した結果、逮捕となり、<水竜ギルド>は解体となった。

 

 今回はプライベートでの出来事。

 だからこそ冬月は全てを警察には話さなかった。

 

 特にあの黒ヤギの少女については、事前に弘世たちから報告しないでほしいと言われていた。それ汲み、今回は霧乃の功績ということに収まった。

 

 それにより、冒険者ギルド協会の会長であり祖父である氷堂源六と冒険者ダンジョンギルドの社長であり父親である氷堂五十里には、霧乃の実力がバレることになってしまったが、霧乃自身もそろそろ正体を明かそうと思っていた――いざ、冒険者登録をするために。

 

 そして、一番扱いが難しかったのは『ダンジョン・コア』だった。

 麻未の『口封じ』のギフトにより、そのことを話せなくなった竜威たち。これを持っているのは、その場にいた六人のみとなっていた。

 

 取得したダンジョン内のアイテムは、見つけた所有者のもの。しかし竜威たちの手から離れたこれは、既に弘世たちに所有権があった。

 だから冬月は『ダンジョン・コア』の扱いを弘世たちに任せた。

 

 本来ならギルドに渡して保管してもらうのが良いとも考えたが、いつか『ダンジョン・コア』を狙って冒険者ギルドを襲撃する輩が現れないとも限らない。

 

 そのため、最終的には最強である麻未のギフト『収納』の異空間に保管してもらうことになった。

 

 

 

 ――事件から一週間後。

 

 九月に突入し、少しずつ気温が下がりはじめた時期。

 冬月も冒険者ギルド職員としての仕事に復帰していた。事件の被害者ということもあり、数日休暇をもらってから復帰だ。

 

 そうして土曜日を迎えたこの日。

 冬月はとある家を訪れていた。

 

 インターホンを鳴らすと出迎えてくれたのはひびきだった。

 

「冬月さん上がって上がってー!」

「失礼します」

 

 案内された部屋に行くと、そこには弘世、小春、霧乃の三人が待っていた。

 

「部屋はそんなに広くはないですけど……ベッドだけは少しだけ広いので」

「はい……」

 

 この日は一週間前にしようとしていたこと――冬月の綺麗になった肌を見せるための集まりだった。

 

「では……」

 

 四人が見つめる中、冬月はゆっくりと服を脱ぎ、下着姿となった。

 とんでもない爆乳をはじめて目の当たりにしたひびきと小春は驚いたが、実際に見たことのある弘世と母親が同じくらい大きい霧乃は冷静にできていた。

 

 それにしても元々美人だった冬月はさらに美人に拍車がかかり、頭の天辺から足のつま先まで綺麗になっていた。

 

「改めて……皆さんありがとうございます。ひびきさんも……こんなに素敵な彼氏さんを貸していただいて……」

「もー、冬月さんかしこまりすぎ! もうちょっと砕けて話しましょうよー!」

「名前呼びにしてるだけでも砕けていると思うのですが……」

 

 年下であっても冬月の対応は丁寧。

 これは色々な人を『鑑定』でさばく、冒険者ギルドの仕事では当たり前のことだったからだ。だからこれは一種の職業病だった。

 

「じゃあ私もプライベートでは、冬月さんのこと沙織ちゃんって呼びますねっ」

「それは構いませんよ」

「じゃあ私もそうしようかな」

「私もそうさせていただきます」

「俺は……ちょっといきなりは」

 

 最初色々なことに物怖じしていた霧乃ですら、名前呼びに抵抗なくなっていたのに、弘世だけは変わらなかった。

 

「弘世くんは呼んでくれないのですね……」

「ちょっと弘世〜」

「い、いや……だって年上だよ? 恐れ多いというか」

「何回もえっちしてるくせによく言うよっ」

「ちょっ……ひびきにそう言われたら何も言えないじゃん」

 

 いつもはひびきから誰々の施術をしようと提案する流れだったが、今回は弘世が冬月に恩返しをしたくて行ったもの。

 施術をするということは、高確率でえっちなことをするということだ。

 それを許した寛大なゴッド・ヒビキには頭が上がらないのだ。

 

「じゃあ……沙織さんで……」

「はい……」

 

 名前呼びをすると冬月――沙織の顔は少し赤くなる。

 

 そうして今日集まった理由は他にもある。

 もちろん外ではなく家で集まったら、やることは一つ――

 

「――じゃあ脱ごっか」

 

 ひびきの一言で、一同服を脱ぎ始め下着姿となる。

 

「私……こんな複数人でするのは初めてで……」

「沙織ちゃん。私たちに任せておいて! 最終的には弘世が一番疲れると思うけど、最近は体力もついてきたし!」

「へ、へえ……」

 

 今日は五人一緒。

 弘世の下半身は持つのだろうか。

 

 弘世本人には拒否権はない。

 ボスであり神であるひびきを筆頭に、平日に溜めてきた性欲を一気に解放するのがこの土日だ。

 

 もちろん平日だって解放しているが、その時間は短い。

 一方で土日はやろうと思えば朝から時間が使えるのだ。

 

 だから――

 

「――今日は沙織ちゃんから気持ちよくしてあげるねっ」

 

 そうして沙織をベッドに寝かせ、他の四人は彼女の体に顔を近づけていった――。

 

 

 

 ――数時間後。

 

 

「あ……覚えた」

 

 汗と性の匂いが混ざりあった濃厚な匂いが立ち込める室内。

 そこでは、五人がベッドや床に寝転がり果てていたのだが、そんな時、ふと弘世が呟いた。

 

「また覚えたんだぁ……」

 

 いつもならもっと強い反応をするはずのひびきたちも、果てていては同じように反応できなかった。ただ、内容は気になる。

 

「何覚えたのー?」

 

 ひびきが弘世の右腕に収まりながら聞いた。

 

 そうして弘世の口から紡がれたスキルは――

 

 

「――『感度改善』」

 

 

 不感症を治すためのスキルの名前だった。

 

 

 

 

 





これにて第二章が終わりです!
次回はエピローグです。


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