美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
「――別れちゃいましたっ」
涙ながらに私が先輩たちにそう話したのは、速人と付き合ってから二ヶ月後のことだった。
――速人は私の憧れであり、切磋琢磨し合うライバルでもあった。
ジュニアバスケをしていた私は、都大会でも上位に食い込む強豪校に進学した。
そこで出会ったのが速人だった。
一年生ながら、レギュラーとはいかなかったが、ベンチに入り交代要員として試合に出るくらいにはバスケが上手かった。
そして、それは私も同じだった。だからどこか彼に親近感を感じていたのかもしれない。
合宿などを通して男子部員とも交流するようになり、そこで初めて速人と喋るようになった。
彼はバスケに真摯であり、真面目でストイックで、笑った顔が可愛くて、それでいてシュートやドリブルをしている姿がカッコよかった。
二年生になった頃だろうか。
速人が急にモテだした。
私は急速に身長が伸びたからだと思っているが、色々な噂があるため、それはわからない。一つだけわかることと言えば、顔は元々カッコよかったということだ。
速人との交流は部活後のファミレス、休日のカラオケ、色々なところで接触する機会が増えていった。
私の瞳には速人しか見えていなかった。
そう思うくらいだ。私と同じように他の女子生徒も速人のことが好きになったのかもしれない。
でも、速人は誰とも付き合うことはしなかった。
実は私のことが好きなんじゃないだろうか。
だから速人は誰とも付き合おうとせずにいたのではないか。そんな妄想を膨らませたことだってあった。
恋愛に対して奥手な私は、それでも見た目は可愛くいようと髪を綺麗に保ったり、匂いに気を遣ったり、それなりに頑張っていた。
三年生の夏。
バスケ部最後の大会を控えていた私は、たまたま体育館の外で休憩していたところ聞いてしまった。
『なー、速人は巨乳と貧乳どっち派よ?』
『…………巨乳』
『ほら、涼川とか! あいつぜってーAカップだぜ? 顔は可愛いけどな!』
『葵か。確かに胸はないけど……俺は――』
わかっている。わかっていた。
男の子のほとんどが大きな胸が好きだと。
でも、好きな人の口から"巨乳"という言葉は聞きたくなかった。
だからこの瞬間、私は速人の恋愛対象外の女なんだと決めつけてしまった。
こんな貧相な体。女として見てもらえるはずがないと、やっと理解したんだ。
なぜずっと私が速人に告白できなかったのか。
それは、自分に自信がなかったから。女としての魅力がないとわかっていたから、告白できなかったのだ。
そんな心の痛みを抱えていた時、久しぶりに尊敬している先輩と再会した。
林道ひびき先輩。
可愛くて胸も大きくて、文化祭実行委員会の時には、私にも優しくしてくれて。
再会した瞬間、先輩の大きな胸にダイブしていた。
ムカつくほどに大きな胸が羨ましくて、私は先輩に自分の胸のコンプレックスや速人のことを相談した。
私には無縁だと思っていた『ギフト』。
ひびき先輩の彼氏が、胸を大きくするスキルを持っていると聞き、私はこれしかないと思った。
胸を触られることには抵抗があったが、どうせこのままの私では告白なんてできないと思っていたので、施術をお願いすることになった。
ひびき先輩の彼氏——高梨弘世先輩。
速人より身長も低いし顔もそれほどかっこよくもないし、スポーツだってしていなさそうな人だった。
温厚で優しそう……ただそれだけの人。
言っちゃ悪いが、ひびき先輩に釣り合っているとは思えなかった。私じゃなくてもそう思うだろう。
そのはずなのにひびき先輩が弘世先輩を見る目は女の目で、本当に好きなんだとすぐにわかった。
私も速人の前ではあんな感じになっていたのだろうか。
もしかしたら、私の恋心はバレバレだったのかもしれないと思ってしまった。
施術による反動は、この世のものとは思えない快感で、私の全身を支配した。
でも、それでも。私は気丈に振る舞い、耐えきったと、そう呟いた。
夜な夜な。弘世先輩に触れられた乳房の感触を思い出し、速人のことを考えながら、自らを慰める日々が続いた。
そうして耐えきった施術。
『はは……ははは……大きくなってる……っ』
私の胸はAAAカップからCカップになっていた。
なかなか実感できず、何度も何度も自分の胸を揉んで、ようやく信じることができた。
今までではあり得なかった、ふにょふにょとした感覚。
これが胸なんだ、おっぱいなんだと感動に震えた。
そうして望んだ中学最後のバスケの大会。
全国大会には出場できなかったけど、仲間たちと涙を流しながら都大会四位という結果で私のここでのバスケ生活は終わりを告げた。
バスケ部を引退し、部活の時間がなくなったことで時間ができ、心にも余裕を持つことができた。
今しかないと思い、私は速人を公園に呼び出し、意を決して告白をした。
『俺も葵のこと、好きだったよ』
私のことが好きなんじゃないかという妄想が現実になった。
こんなに嬉しいことが本当にあって良いのかと。それくらい喜び、涙を流した。
付き合ってからは、色々と早かった。
毎回のように私から求めていたので、速人からしたらとてもえっちに見えただろう。
ただ、次第に気づいていってしまった。
『ねえ、イッたことってある?』
仲良くしている彼氏持ちの友人に聞いた内容だ。
『なになに、葵。もしかして速人くんに満足してないの?』
『そ、そんなことっ』
すぐに見抜かれてしまい、洗いざらい話した私。でも、話したと言っても、それで何か変わるわけではなかった。
そんなイケない性行為が続いたある日。
私の体は限界を感じていた。
速人とのえっちの後、夜は一人で慰め、いつの間にか考えていたのは、あの優しい弘世先輩のこと。
いけないとわかっていても、考えずにはいられなかった。
『お願いします……私を気持ちよくしてください……! 毎日毎日悶々として……こんなの……他のことに全く集中できないです! 一度で……一度で良いですから……っ』
私はいつの間にか、弘世先輩の家に足を運び、懇願していた。
直前のことを全く覚えておらず、ただ、自分の体の赴くままに行動していたのだ。
弘世先輩はひびき先輩の彼氏だ。
そんなこと頼むなんてあり得ないこと。でも、体の疼きは止められなかった。
弘世先輩もひびき先輩も困っていた。
でも、これまでにも似た事例はあったようで、『戻れなくなっちゃうかもしれないよ』とまで言われてしまった。
『――お願いします……私を……むちゃくちゃに……してください………っ』
私のパンツの中は、弘世先輩の家にきた時からぐしょぐしょだった。
◇ ◇ ◇
狂いに狂って、初めて速人以外の人との性行為を経験してしまった。
私はまだ速人と別れていなかったらしい。
純粋にバスケを頑張っていた私が、まさかこんなことをしでかすなんて、思いもしなかった。
ギフトで胸を大きくしようだなんて安易な考えに飛びついたからだろうか。
それでも、胸が大きくならなければ、ずっと告白なんてできなかった。
どちらにせよ、私は速人と長続きはしなかったのかもしれない。
私が弘世先輩と関係を持ってしまったからだろうか。
天罰が下ることになった。
十月中旬頃のことだ。
――速人が同級生の女子生徒の家に入っていくのをたまたま目撃してしまった。
遊ぶとか、何か用事があるとかそういった理由で入るならまだ良い。
でも、手を繋いでいたのだ。
私は何が起きているのかわからず、ただ立ち尽くすしかなかった。
これは、後からわかったことだ。
速人は私との性行為に悩んでいたらしい。
私が気持ちよくなっていないことがバレていたようで、なんとか気持ちよくできないかと、彼なりに考えていたとか。
その話自体は嬉しかった。
でも、その後が問題だった。
速人が相談してしまった相手。それは彼氏を取っ替え引っ替えしていると噂があったイケイケのクラスメイトの女子だったのだ。
私は裏で情報を集めていった。
すると、色々なことが判明した。
ぽろっと私との性行為について漏らしてしまったことが原因だったのか、その子は『私が女の子を気持ちよくさせる方法を教えてあげる』なんて言い出し、速人は最初は拒否していたものの、次第に私のためになればと思い直し、誘いに乗ってしまったらしい。
その真面目さに付け入られたのか、速人は彼女の虜になってしまった。……その彼女が私より大きいおっぱいを持っていたからかもしれない。
私だって性行為を覚えたてだし、速人のことを気持ちよくさせていたのかわからない。まだ付き合って二ヶ月ほどで、色々な面で私たちには会話が足りなかったのだ。
これは結果論だけど、私も速人も浮気をしていたということになる。
私が浮気してしまったことは速人には言わなかったけど、速人の浮気は一方的に知ってしまった。
もう、私たちの行く末は決まっていたのだ。
「なんで……!? まだ付き合ったばかりで……! 俺、葵のことが……っ」
「うん……私も速人のことが好き。好きだよ……」
お互い好きなはずなのに、お互いいけないことをして。
言葉では通じていても、体では通じていない。
――私たちは別れた。
最後まで速人は別れようとしなかったけど、そこで私は言ってしまった。
速人が体を重ねてしまっていた相手の名前を。
その名前を言った瞬間、速人の額から冷や汗が噴出し、私が調べてきたことが事実となった。
「ごめん…………それでも、俺は葵が好きだ」
その言葉を最後に、私は速人と別れた。
結局は自分が悪い。
速人から好意を持たれていたことにも気づかず、胸にばかりコンプレックスを持って。
スキルの効果に頼り、反動に耐えられず弘世先輩の手で気持ちよくされてしまった。
胸が大きくなったことは嬉しい。
それがなければ勇気は持てなかったし、速人と付き合うこともできなかったはずだから。
私は一週間だけ、たくさん涙を流し、吹っ切れることにした。
「――別れちゃいましたっ」
そうして訪れたのが弘世先輩の家だ。
実際に自分で言って、また少し涙を流してしまった。
その場にはひびき先輩もいて、複雑な表情をしていたけど、私を否定せずにぎゅっと抱きしめてくれた。
「これは葵ちゃんを誘った私のせいでもある。だから、責任持てるところは持つからね」
「いいんです。結局、決断したのは私なので……」
「二歳も年下なのに……葵ちゃんは強いね」
「弱いです。だからこうしてひびき先輩の胸に顔をうずめてるんです」
どこまでも優しい先輩に、私は寄りかかる。
隣で見つめる弘世先輩の眼差しもずっと優しい。
この二人は、そういう人たちなんだ。
過ちを犯しても、ちゃんと向き合ってくれる優しい先輩たち。
「じゃあ、今日はぱーっと気持ちいいことする?」
「ぱーっとって変な表現ですね。パーティーじゃないんですから」
「ふふ、そうだね。でも、葵ちゃんもそのつもりできたんでしょ? フリーになったから」
「…………はい」
速人と別れてからは、弘世先輩やひびき先輩のことしか考えられなくなっていた。
だからこうして報告がてら、家にまでやってきたのだ。
「弘世」
「うん。……じゃあ、こっちに来なよ、葵ちゃん」
「はい……」
ひびき先輩と弘世先輩に誘導され、私はベッドへと上がる。
そうして、自ら上着を脱ぎ彼に大きくしてもらった胸を露出させる。
「葵ちゃんは綺麗で可愛くて、私の大事な後輩だよ」
「うん。俺もそう思う。だからこれからも、何かあったら相談してね」
「先輩たち……!」
二人一緒にベッドで横になった私に近づく。
今はもう人に見せても恥ずかしくない胸。先輩たちが優しく触れていく。
そうして私の複雑な想いを、言葉通りに体で受け止め、ほぐしていって――。