美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
「じゃあ、また明日ね」
「うん。今日はありがとう——ってなんで俺がお礼言ってるんだ」
「お礼言うべきこと、しちゃったからじゃない?」
「ひびき……」
「てへっ」
林道ひびきにスキルを使用した高梨弘世。そのあとはひびきの強引さに負けて、最後まで致してしまっていた。
ひびきは自分の可愛さを知っている。一方の弘世は自分のような人間がひびきというカースト上位の人間と肌を重ねられたことは奇跡だと思っている。だから『ありがとう』なんて言葉が出たのかもしれない。
ひびきだって初めてだった。終わったあとは終始お腹が痛いと言っていたが、表情はずっと笑顔だった。お互い裸で毛布にくるまり、ひびきから弘世の腕にくっついて、自分たちのことを話した。
弘世がずっと冒険者を目指していて、その夢が断たれてしまったこと。
ひびきはそれを聞くと「よしよし」と慰めの言葉はなかったが頭を撫でてくれたのだ。
一方のひびきは小学生の頃、容姿をバカにされたことがあったらしい。今思えばただの僻みだったのかもしれないと言っていたが、当時はとても気にしてしまった。
それからは自分なりに努力して髪型やメイク、服装まで全部変えて今の可愛い姿になったそうだ。だから美意識は人一倍高いとのこと。
「スキルの効果が出たら、改めてありがとう言うね」
「あぁ」
弘世はひびきの家を出て帰宅した。
◇ ◇ ◇
そうして、週に二回——いや、実際はひびきが誘い半分近くは彼女の家で遊びを含めて通うようになっていた弘世。
途中、スキルの同時使用ができることに気づき『肌質改善』と『脂肪燃焼』を同時に使いながら約一ヶ月間、続けていった。
その一ヶ月後の朝のことだ。
「——へ?」
起きて、洗面所に向かったひびきは鏡を見て驚いた。
ぺたぺたと自分の顔に触れ、そして現実なのかを確認するようにほっぺたもつねる。その上でやっと気づく。——弘世のスキルの効果が現れたのだということを。
「赤ちゃんじゃん!!」
肌の細胞がそっくり入れ替わったようにきめ細かく、瑞々しい肌になっていたのだ。まさに赤ちゃんのような肌と言ってもおかしくないくらい、ぷるぷるになっていた。
「毛穴も吹き出物も……赤みだって消えてる……そのお陰か白くなってる気がする」
手を頬に滑らせると、昨日の夜との違いがよくわかった。
すべすべで脂ぎった感じがなく、本当に自分が思い描いたような最高の肌になっていたのだ。
「ってことは……」
ひびきはパジャマを脱ぎ捨て、下着姿になった。
「やっぱり!」
腕や足、お腹などをぺたぺたと触り、変化を確認する。
体重計に乗らなくてもわかるほど、体が細くなっていた。
「やった! やった!」
しかし、痩せたと言っても健康的な程度。
弘世の思考がスキルに伝わったのか、痩せ過ぎは良くないと考えていたため、女性らしい曲線は保ちつつも素敵なスタイルになっていたのだ。
◇ ◇ ◇
「ねぇ、ひびきどうしたの? めっちゃ可愛くなってない!?」
「しかも痩せた気もするし……肌ぷるっぷるじゃんっ!」
学校へと登校したひびきは、仲良くしている元矢陽鞠《もとやひまり》と井原海莉《いはらうみり》に言い寄られていた。
ひびきの姿を見た瞬間、目を丸くし、次の瞬間には顔や足、お腹までべたべたと触りはじめた。
「ちょっ、くすぐったい! そんな触らないでっ!」
「いや……だってさぁ……ね、うみりん?」
「そうそう、何かしたの?」
見ればわかるひびきの変化に二人は興味津々だった。
クラスカーストトップの三人は全員が可愛い。しかし、今回のひびきの変化はその可愛さに拍車をかけるもの。気になるに決まっている。
「前に言ってたでしょ。化粧品変えたとか……あと、ダイエットとかも。これでも結構頑張ってたんだよ?」
大嘘である。
ひびきはベッドに寝ていただけで何もしていない。失ったものと言えば処女だけ。
それも、自分から積極的に失いに行ったので、ひびきとしてはお金もかからず、食事もそれほど我慢してはいなかった。
「嘘だぁ。それだけでこんなに変わる?」
「もしかして…………ねえ、ひま! うみ気づいちゃったかもしれない!」
「えっ……」
そんな時、海莉が何か思いついたように陽鞠の肩を揺らした。
ギフトによるものだとバレた? と思ったひびきは少し焦る。
「————ズバリ、彼氏できたんでしょ?」
「「はっ?」」
海莉の指摘に陽鞠とひびきが同時に驚く。しかしその驚きは全く違う意味を持つ驚きだった。陽鞠の驚きは彼氏ができたということに対してだが、ひびきの驚きは予想外の指摘をされたから。
「ひびき! ほんとなの!?」
「違う違う。できてないって……もう、うみりんったらできたらちゃんと言うもん」
「で、でもさ! 彼氏ができたら女は綺麗になるっていうじゃん!」
「確かにそれは聞くけど……私は————いないし」
ひびきは目線を外した。
彼氏はいない。けど、近しい人はいる。
あれからひびきは弘世と体を重ねたのは一回ではなかった。家に来る度にしていたのだ。ただ、どちらも『付き合おう』なんて言葉はでなかった。恐らく、言えばちゃんとした交際にはなるが、なぜか言えないでいたのだ。
「あ! 今ちょっと間があった!」
「これはこれは……今日はみっちりとファミレスで問い詰める必要があるな〜」
「何もないって! ……てか、今日は予定あるから無理だし」
「ほらー! 今日は彼氏とデートなんだ!」
「だから違うってぇ!」
そこからはもうほとんど決めつけのようなものだった。
絶対に男を隠していると思った陽鞠と海莉は、とことんひびきを問い詰めた。
学校にいる間、ひびきは二人の猛攻にへとへとになった。
◇ ◇ ◇
「待ってたよ——弘世っ♪」
放課後、弘世はひびきの家を訪れていた。
呼んだのはもちろんひびきの方から。
その理由は——
「弘世ありがとうっ! スキルの効果出たよ! どう? 私どう!? 可愛くなった!?」
玄関先で飛び跳ねるように喜んだひびき。
嬉しそうな顔を見て、弘世まで嬉しくなる。
「うん。とっても可愛いよ。前も可愛かったけど、今も可愛い。……それにメイク今日は薄い? なのに綺麗に見える」
「あ、気付いた? そうなの! 前はさ、吹き出物とか赤み隠すのにコンシーラーとかで隠してたんだけど必要なくなったし、毛穴もなくなったからほんと軽いメイクで良い感じにできるようになったの!」
これは、陽鞠や海莉も指摘していたことだった。
二人共羨ましいと言いつつ、何度もひびきの頬をぷにぷにと指で押した。
「そっか。ひびきが嬉しそうで何よりだよ」
「うん。だからさ……今日は弘世にご褒美あげようと思って……」
「え?」
すると弘世の手をとり、二階にある自室へと連れて行く。
部屋に入ると、ひびきは何も言わずに制服を脱ぎはじめ、そして下着姿となった。
「ええと…………」
「もう何度も見てるのに、今更恥ずかしがるなんて、変な人」
「今日はスキル使ってないじゃん。なのにいきなり……」
「弘世に見て欲しかったんだ。顔だけじゃなくて、体も綺麗になったよって」
「ぁ————」
そこにあったのは、先日とは全く違う美しいボディだった。弘世はその体に見惚れてしまう。つるつる、すべすべ、ぷにぷに、さらさら、ツヤツヤ……色々な表現があるが、その全てを網羅したような美体になっていた。
「そ、そんなにじっくり見られると、恥ずかしい……」
「見てって言ったのはひびきだよ」
「ふふ、そうだね。——弘世……本当にありがとう」
すると、ひびきは下着姿のまま弘世を抱き締めた。
一瞬驚いた弘世だったが、ひびきの体温と柑橘系の香水の匂いを感じながら抱き締め返した。
「じゃ、脱いで?」
「え?」
「ご褒美って言ったでしょ」
「あ……」
今から何をするのか、すぐに想像がついた。
制服のブレザーを脱ぎ、弘世のシャツのボタンに手をかけて丁寧に脱がしていく。
「今日はスキル使ってないから、体力余ってるよね?」
「確かに……言われればそうだ」
ひびきと会う時は必ずスキルを使う時だった。
だから今はスキルを使用したあとの疲労感がまだなかったのだ。
そして、今日はスキルを使う予定は——ない。
弘世の上半身が裸になると、二人は目を合わせる。次第に顔の距離が近くなり、お互いの瞳が震えるのが見えた。——唇が重なる。
そう思った瞬間だった。
——ピンポーン。
「あ…………」
直前で、インターホンが鳴ってしまったのだ。
「えっと…………行っておいでよ」
「あーん……ひろせぇ……」
がっくりと肩を落としたひびき。
何度もひびきの家に通ってきた弘世だったが、こうやって家に誰かが訪ねてきたのは初めてのことだった。
「わかったよ。行ってくるから、部屋で待ってて」
「うん」
ひびきは制服を着直し、玄関へと向かい、「はーい」と扉を開けた。
「やっほー! 久しぶりに来たよ!」
そこにいたのは、ひびきがよく知る人物だった。