美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
第60話 ダンジョン・コア
――『ダンジョン・コア』。
それを手にすれば、瞬く間に億万長者。
自由な場所にゲートを設置でき、ダンジョンマスターとなって自分の思うようにダンジョンを創造できるもの。
海外でも発見された事例はほぼない。
手に入れたのは誰なのか、という情報も日本でも共有されていない。
そんな世界でも希少な『ダンジョン・コア』。
どんな運が巡ってきたのかわからないが、宝くじで大当たりを手にする確率よりも低いそれを手にしたのはとある高校生だった。
◇ ◇ ◇
桃色の花びらが咲き誇る季節。
高校三年生になった高梨弘世はいつも通りに学校へ登校し、授業を受けて帰宅するといった生活を繰り返していた。
「せんぱいっ」
「わっ……葵ちゃん。入学おめでとう」
「へへ。ありがうございますっ」
放課後、一人で廊下を歩いていると弘世の胸にダイブするように飛び込んできたのは、つい先日まで中学三年生だった涼川葵だった。
彼女はスポーツ推薦によって弘世が通う高校へと進学していた。
あれから時間が経過し少し大人っぽくなっていた葵は、どこか今までにない色気を纏っていた。
茶髪ミディアムだった髪は現在、ポニーテールにしないとバスケがプレーできないほど伸びている。
弘世のスキルで大きくなった胸も健在だ。
「ひびき先輩はどうしました?」
「うん。このあと合流する予定だよ」
「へえ〜、楽しそうですね。でも私はこれから部活なんですっ」
「葵ちゃんならすぐにレギュラーになれるよ。頑張ってね」
「はいっ。頑張ったらご褒美くださいね〜?」
「あはは……頑張ったらね」
エナメルバッグを背負っていた葵は弘世に手を振りながら体育館へと向かっていった。
「ふう。まさか葵ちゃんが入学してくるなんてなー」
一息ついた弘世は、そういえばうちの学校は女子バスケが強かったなと思い返していた。
良いのか悪いのか、葵とはあれから良好な関係を維持している。
本人はとっくの前に吹っ切れていて、部活にも精を出していた。
高校生活が最後となる新しい一年が始まり、弘世も心機一転、心を入れ替えて過ごそうと考えていた。
そして今日は、その第一歩。
ひびきたちから提案があるとのことで、彼女の家に集合することになっていた。
「やっほー!」
「やっほー」
やってきたひびきの家で出迎えてくれたのは、ひびき本人だ。
少し長くなった綺麗な桃髪を揺らし、元気いっぱいに笑顔を振りまいた。
既に交際してから二年近く経過するが、ひびきの明るさに引っ張られることなく、弘世のテンションは一定だ。
よっぽどのことがない限り、テンションが上がることはない。
慣れた人の前でも「やっほー!」と大きな声で発することは恥ずかしいままだ。
「あ、弘世くん、お疲れ様」
「待ってましたよ」
「あばっ……こんにちは」
部屋に入ると中で待っていたのは四人の女性。
弘世と同じ学校に通う女子生徒で、一人は長い黒髪が特徴的な色白の九島小春。
二人目は全校生徒の中でも圧倒的美少女の氷堂霧乃。
三人目は外国のお人形さんのように可愛い八木沼麻未だ。
「こんにちは、弘世くん。今日はよろしくお願いします」
「さ、沙織さん!?」
そして最後の一人。
なんと冒険者ギルドの職員である冬月沙織が他の皆と一緒になって座っていたのだ。
「なんだか、今日は人が揃ってるね」
「まあまあ、座りなよー」
なぜ五人の女性はひびきの家に集まっているのかまだわからない。
弘世はひびきに言われるまま、ローテーブルの前に座ると、早速話が始まった。
「――弘世くん、『ダンジョン』を作りましょう!」
と、声高々に言ったのは霧乃だった。
「えっ、ええええええっ!?」
それに対し、弘世は目を大きく広げて驚く。
ただ、他の四人は既にその話を知っているようで、弘世のように驚くことはなかった。
「私から説明させていただきます」
すると沙織がぶるんと大きな胸を揺らしながら話し始めた。
「『ダンジョン・コア』、覚えていますね?」
「えっと……捕まったギルドから奪ったやつですよね」
冬月沙織の施術が終わり、会う予定だったはずが彼女の持つ『鑑定』を利用しようと拉致したのが<水竜ギルド>という犯罪者ギルドだった。
そのギルドを麻未らが協力して倒したことで、沙織を救出することができ、そして<水竜ギルド>が沙織に『鑑定』させようとしていたのが『ダンジョン・コア』だった。
「はい。その『ダンジョン・コア』の所有権は今皆さんにあります。そして私はあれからずっと考えていたんです」
「それが――ダンジョンの運営」
「話が早くて助かります」
冒険者関連の話はなんでも詳しい弘世。
ただ、『ダンジョン・コア』に関しては、都市伝説扱いでもあったので、知っている情報は少なかった。知っていたのは、ダンジョンを作りだせるということくらいだ。
「今までに弘世くんのギフトで、たくさんの人を助けてきたと思います。ただ、一方でその反動によって、振り回されてきたことも事実」
「ま、まあ……」
反動があったからこそ、美少女に囲まれているとも言えるが、さすがにこのまま増え続けるのも大変だと思っていた。
そこで麻未にも手伝ってもらい、最近は反動の影響が出ないように協力してもらったりもしていた。
「そこでですっ! 手の届かない多くの人を助けながら、弘世くんが反動に振り回されないような仕組みづくり――それが『美容ダンジョン』です!」
いつになく熱くなっていた沙織。
右手に拳を作って力説した。
「ダンジョンなので一般人が入ることは難しいでしょう。その辺は冒険者を連れて入っても良いことにするなど追々決めるとして…………どうでしょうか!?」
沙織はバンっとテーブルを両手で叩き、弘世に聞いた。
「確かに反動は大きな問題……それに、俺が手を加えなくても誰かを救えるのならそれが一番良いのかもしれない……」
「なら――」
「ダンジョン、作りましょうっ!」
「決まりですねっ!!」
沙織はキラキラとした目を向けて喜んだ。
「――って言っても、何から始めれば良いのかわからないんだけど、皆は知ってるの?」
弘世の疑問も最もだ。
そもそも世界的にも希少な『ダンジョン・コア』は、所有者が『鑑定』することでしか、使い方はわからない。
「それは『鑑定』でおおよそのことはわかっています。もちろん手探り始めることになりますが――実は既に霧乃さんに色々と進めてもらっているんです」
「そうなの?」
「はい――おじいちゃんに連絡して、裏で協力を取り付けました」
「わお。さすがは孫……!」
霧乃は祖父の氷堂源六という最大の切り札を使い、既に『ダンジョン・コア』の扱いを相談していた。
最初は驚かれたものの、孫が扱うということと監視下にも置けるということで、協力してくれることになった。
「では、これから何をしていくのか、順を追って説明しますね――」
霧乃から説明された内容はこうだ。
・ゲートを設置する場所決め
・階層の深さやフロアの設計
・罠や魔物の設置
・踏破者への美容スキルの付与方法
・入場料や利用条件
・宣伝
大まかにはこの六つ。
ゲートの設置と階層・フロア決めの他は好きな順番に進めても良いそうだ。
「――じゃあ最初はゲートをどこに設置するかってことだね」
「それについては、既にこちらで候補を絞っています」
すると沙織が紙の資料を取り出してテーブルの上に広げる。
「ここ、東京都を中心に離れすぎず周辺住民に迷惑がかからない場所という条件で絞り込んで、土地の所有者が国になっている場所です」
紙の資料には東京を中心とした地図が描かれており、その中にいくつか丸がついていた。
ただ、よく見なくてもすぐに候補の法則性が見てとれた
「全部、多摩川沿いの河川敷……?」
「はい。その中で人が立ち入る可能性が低い場所です」
「…………ひびき、どこが良さそうとかある?」
じっと地図を見つめていた弘世だが、どこが良いのか、正直わからなかった。
そこでひびきに聞いてみることにした。
「普通に学校から一番近い場所で良くない?」
「いえ、これは冒険者が入るゲートを設置する場所です。私たちが『ダンジョン・コア』を設置してから最初に作られる部屋『マスタールーム』に入れる場所とは別なんです」
「何それ!?」
――マスタールーム。
『鑑定』によれば、『ダンジョン・コア』を起動させた際に一番最初に作られるのが『マスタールーム』という部屋。
その『マスタールーム』は、ダンジョンを作っていくための操作部屋だそうだ。
そして、この『マスタールーム』に出入りするためのゲートを別に設置できるとのことだった。
「ふーん。ならそっちはマスターになる弘世の家にしたらどう?」
「……俺は構わないけど……良いのかな?」
「私は問題ないよ」
「私もです」
「あばっ、私も、です……」
「私も問題ありません」
全会一致だった。
「とりあえず、その『マスタールーム』のゲートは弘世の家に設置することにして、冒険者専用のゲートはやっぱり一番近い場所で良いでしょ」
「皆はどう?」
他の四人を見渡すとコクリを頭を縦に振った。
「なら、決まりね! 場所は――多摩市。ここがゲートの設置場所!」
楽観的なひびきの意見で決まったゲートの設置場所。
それは、東京都多摩市だった。