美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
――翌日。
その日は土曜日。弘世を含む六人の男女は夜の帳が下りるのを待ち、多摩市にある多摩川沿いの静かな河川敷へと足を運んでいた。
人通りのない砂利道を進んでいくと、視界が開けた何もない場所が現れる。
弘世たちは、そこに立ち止まった。
そして、麻未が異空間から一つの物体を取り出した。
――『ダンジョン・コア』。
手のひらほどの黒い球体。その内部では、魔力の波動が渦巻くように蠢いており、見る者によってはその強大な力を直感できる代物だった。
「高梨先輩、これを」
「ありがとう」
麻未から受け取った弘世は、慎重に『ダンジョン・コア』を手のひらに乗せた。
「じゃあ、始めようか」
五人に目を向けると、皆が静かに頷いた。弘世は小さく息を吸い込み、
「――『ダンジョン・コア』起動」
と、静かに呟いた。
すると封じられていた魔力が一気に解放される。漆黒の結界が周囲に広がり、六人を包み込むように出現した。
気がつくと、弘世たちは二十平米ほどの空間へと転移していた。
中心には、先ほどの『ダンジョン・コア』が鎮座する台座。壁は黒く何もなく、天井からは謎の光が降り注いでいるだけの、静かな空間だった。
「ここが……『マスタールーム』……」
弘世はゆっくりと『ダンジョン・コア』が置かれている台座の前へと近づいた。
「なんにもないね」
「これから作っていくんだよ」
ひびきの呟きに、小春がさらりと返す。
そのとき、スーツ姿の沙織が弘世の隣に並び立った。
「起動したのは弘世くんですが、マスターとして正式に登録するには、もう一度コアに触れる必要があるようです」
「わかりました」
弘世は静かにうなずき、心の中で思う。
(まさか、冒険者としてダンジョンに入れなかった自分がダンジョンを創る側になるなんてな……)
弘世は『ダンジョン・コア』に右手を置き、静かに宣言した。
「俺は高梨弘世――ダンジョンマスターとして登録してくれ」
次の瞬間、白い光が彼を包み込む。その光は一気に強さを増し、マスタールーム全体を満たしていった。
そして光が収まったとき、そこに一人の女性が現れた。
「誰……!?」
そこにいたのは、長い金髪と切れ長の瞳を持ち、黒い装束に身を包んだ美しい少女だった。その容姿はどこか幻想的で、物語に登場するエルフのように長く尖った耳が印象的だった。
「初めまして、私は『ダンジョン・コア』の守護者。あなたが我がマスターとなる者ですね」
「俺がマスターだけど……守護者って……?」
少女の説明に、周囲は驚きを隠せない。
「『ダンジョン・コア』そのものとお考えください。私はマスターを支援するために存在しています」
沙織も驚いたように小さく首を傾げる。
「……『鑑定』では、そのような存在が現れるとは確認できませんでした」
「そうだったんですね……まさかこんな存在がいるなんて」
『鑑定』でもわからなかったのが、この守護者の存在だった。
「――では、今後のために、私に名前を与えてください」
少女の言葉に、弘世は少し困ったように仲間たちを見る。
霧乃がそっと声をかけた。
「マスターは弘世くんです。なので弘世くんが決めるのが一番です」
「うん、わかった……ダンジョン・コア……コア……エルフみたいな見た目のコア……『エコア』! どうかな?」
「『エコア』……素敵な名前です。さすがは我がマスター」
安直ではあったかもしれないが、エコアのその返答に弘世は少し照れながらも微笑んだ。
「じゃあエコア、これからよろしくね」
「はい。ただ、正式なマスター登録には儀式が必要です」
そう言ってエコアは弘世に近づき、その顔を両手で包み込む。
「えっ……?」
そして突然、彼に深く口づけをした。
「ひ、弘世ぇぇぇ〜〜!?」
ひびきの叫びが響く中、エコアは長く情熱的なキスを終えた後、淡々と言った。
「――粘液の接種、完了。これにてマスター登録が完了しました」
そう言いながら唇を拭ったエコアに、ひびきは怒りを爆発させる。
「てかその服!? な、なんでメイド服!?」
いつの間にか黒い魔力の霧に包まれて変身していたエコアは、胸元の開いたクラシックなメイド服姿となっていた。
「マスターの願望を感知し、最適な姿に変化しました」
「違うっ! 俺そんな願望持ってないよっ!?」
「弘世ぇぇっ! 言ってくれれば私だって着たのにぃ〜〜〜!!」
騒いだひびきを一通り落ち着かせた後、弘世は気になっていた点を尋ねた。
「ゲートって、今どうなってる? 開きっぱなし?」
「ご安心を。今、閉じました」
エコアがパチンと指を鳴らすと、外との繋がりは断たれたようだった。
「ありがとう。じゃあ、ここからが本番だね」
弘世が名付けた『エコア』というダンジョン守護者と共に、これから本格的なダンジョン作りが始まる。
次なる工程は、階層とフロアの設計だった。