※この作品はR-18です。

美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】   作:pelca

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第64話 ダンジョンのランク

 日曜日。

 今日は昼過ぎから弘世の家に集まり、『マスタールーム』に繋がるゲートの設置場所を決めていた。

 

 だが、早速ひとつ問題が持ち上がった。

 

「『ダンジョン・コア』が中にあるのに、どうやってゲートを設置するの……?」

 

 すでに『ダンジョン・コア』は起動済みで、『マスタールーム』の中にある。

 昨日帰るときにはゲートは閉じており、出入りはできなくなっていた。

 

「エコアにすら連絡取れないじゃんっ」

『――呼びましたか』

「はわっ!?」

 

 弘世がそう呟いた瞬間、エコアの声が脳内に響き渡った。

 

「え、弘世どうしたの?」

 

 弘世の反応に、ひびきが不思議そうな顔を向ける。

 

『マスターと私は既に登録により繋がっているため、こうして離れていても通信が可能です』

「へぇ……不思議な感覚だけど、すごいね。あ、えーっと。皆、エコアとは離れてても連絡取れるみたい」

 

 傍から見ると、弘世は一人で話しているように見える。

 

「ってことは、ゲートも作れるってこと?」

「エコア、離れた場所からでも『マスタールーム』に繋がるゲートって作れる?」

『問題ありません。場所を指定していただければ』

「できるらしい」

「八方塞がりになるところだったね。でも、麻未ちゃんがいるから大丈夫そう」

「あばっ……多分、『転移』ならできる……」

 

 さすがは麻未だ。

 彼女がいれば、大抵のことはなんとかなる――それがこの場にいるメンバー全員の共通認識だった。

 

「じゃあ設置場所だけど、この壁しかないよね?」

「まぁ……庭でもいいんだけど、通行人に見られる可能性あるし」

「麻未ちゃんの『擬態』で隠すこともできると思うけど、毎回それってわけにもいかないですしね」

 

 『マスタールーム』に入るには弘世の家を経由することになるが、外から見える場所に設置してバレるリスクを上げるよりはマシだ。

 

「エコア、ここにお願いできる?」

『かしこまりました。それでは――』

 

 次の瞬間、部屋の白い壁に縦長のゲートが出現した。

 魔力の奔流が渦を巻き、異質な空間が広がる。

 

「……そういえば、このゲートって冒険者ギルドに検知されないの?」

「されると思います……」

 

 沙織が弘世の呟きに同意し、眉間に皺が寄る。

 

『――その点はご安心ください。このゲートは魔力の範囲を極めて小さく抑えております。一般的なギフト使用と大差ありません』

「沙織さん、魔力はごく小さいらしいので大丈夫みたいですよ」

「そうなんですか。それなら安心ですね」

 

 沙織は安堵の表情を浮かべる。

 街中で使われるギフトにも魔力は使われているが、ゲート出現時の魔力と比べれば微々たるものだ。

 今回のゲートは、それと同程度に抑えられているという。

 

 一同は設置されたゲートをくぐる。

 

「――『マスタールーム』……だよね、ここ!?」

 

 約半日ぶりに訪れた『マスタールーム』は、様変わりしていた。

 

「こんにちは。マスター、皆様」

「エコア、これって!?」

「はい。マスターの記憶をもとに、雰囲気良くインテリアを整えてみました」

 

 部屋は二十平米から三倍ほどに拡張され、今や二、三人が余裕で暮らせる広さになっていた。

 

 インテリアにも目を見張るものがあった。

 『ダンジョン・コア』が乗った台座とホログラムモニターはそのままだが、中央には六人掛けのテーブルと椅子。

 白を基調とした壁紙、ガラス棚に食器類、観葉植物や絵画、フロアライトも配されており、まるでホテルのような空間だ。

 

「お気に召しましたか?」

「すごい! ダンジョンっぽくない!」

「ね、ねぇエコア! ビーチとかも作れたりする!?」

 

 ひびきが目を輝かせて尋ねた。

 

「――そう思いまして、あちらに」

 

 エコアが視線を向けた先には、昨日までなかった扉がある。

 

「マスターの記憶に、海での遊びがございましたので」

「……記憶見られてるのは気になるけど……ちょっと行ってみよう」

「レッツゴーっ!」

 

 ひびきが勢いよくドアを開けると――

 

「――海だぁぁぁぁ〜〜〜っ!!」

 

 そこには青い空と海、白い砂浜、そしてビーチチェアやパラソルまで揃ったビーチが広がっていた。

 

 想像はしていたが、実際に目の当たりにすると圧巻だった。

 『ダンジョン・コア』が、いかに特別なものであるかを再認識させられる。

 

「気温も夏って感じ!」

「これ、海水浴もできるってことだよね?」

「すごい……」

 

 ひびきは早速ビーチチェアに寝転がり、夏気分を満喫する。

 

「今度、水着持ってきて遊ぼうよ! 私たちだけだから、邪魔も入らないし絶対楽しい!」

「かき氷とかも用意したいね」

「弘世、たまには良いこと言うじゃんっ!」

「たまには、って……!」

 

 しばしビーチ空間を堪能した一同は、『マスタールーム』へと戻り、ダンジョン制作の続きを始めた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 八つのスキルと十階層の地形を決めたあとは、罠と魔物の設定だ。

 弘世たちはテーブルを囲み、案を出し合っていた。

 

「うーん、最低ランクをどこにするかだよね……」

「十階層なら、下に行くほどランクが上がっていく構成が自然ではないでしょうか?」

 

 沙織が提案する。

 この『美容ダンジョン』は、通常のダンジョンとは異なり、階層ごとに出現する魔物のランクを変えることができる。

 

「Fランクから始めると、簡単だと思われて大勢の冒険者が押し寄せるかも……」

「でもそれでいいんじゃないでしょうか。最初に訪れた冒険者が『美容』の効果に気づけば、興味のある人だけが更に攻略していくでしょう。特に男性は減っていくはずです」

 

 このダンジョンは消えない特別な存在だ。

 次第に話題になり、訪れる者は増えるだろう。

 とはいえ、弘世としては、冒険者が殺到してトラブルになるのが心配だった。

 

「でも、悩みを持つ人のためのダンジョンなら、一般人が冒険者を雇って挑む形もアリかもね」

「うん。それなら、ランクを下げすぎるのも考えものだし――」

「――はーい! ちょっといい?」

 

 話が進む中、ひびきが手を挙げる。

 

「何か案があるの?」

 

 正直、ひびきはダンジョンについて詳しくない。

 だが、これまでにも意外な着眼点から提案をしてきた実績がある。

 

「ダンジョンのランクって、魔物の強さで決めてるんでしょ?」

「そうだよ」

「それ以外の“攻略の難しさ”を使ってもいいんじゃないかな?」

「どういうこと?」

「例えば――ツイスターゲームをクリアしないと進めないとか!」

「――ぁ」

 

 全員が魔物の強さを基準にしていた中で、全く違う視点の発想だった。

 これは、ダンジョンに詳しくないひびきだからこそ思いついた案だ。

 

「……面白いかもしれません」

 

 沙織が顎に手を当てながら言う。

 

「でっしょー! 他にも、落とし穴に落ちると防具が一個ずつ外れるとか、魔物と徒競走するとか!」

「ははっ、やっぱり凄いな、ひびきは」

「敬いたまえ……!」

 

 鼻息荒く胸を張るひびき。

 

「――もしよろしければ、ゲーム性のあるイベントは私がいくつか用意しておきましょう。魔物のランクは下層に行くほど上がる形にして、冒険者の反応を見ながら調整するのが良いかと」

「うん、実際に運用してから変えるっていうのはアリだね」

「八スキル分のダンジョンがあるようなものですからね。一旦この方向で進めるのが良いと思います」

 

 一同はその案に頷いた。

 

「――じゃあ、今日の話はここまで?」

「うん。まだ細かいことはあるけど、今日の予定は終わりだよ」

「ちょうど良いタイミング――あ、もう着いたって」

 

 ひびきがゲートの外へ出ていき、数十秒後、二人の少女を連れて戻ってきた。

 

「うっわ! なにここすごーい!」

「わー! ダンジョンなのにお部屋じゃん!」

 

 やってきたのは、ひびきの友人である元矢陽鞠と井原海莉。

 ギャル風の陽鞠と、ショートカットが似合う海莉は目を輝かせる。

 

「情報漏洩対策で海莉を呼んだってのもあるけど、ダンジョンでの弘世のギフトの効果を試すためにもね」

「ってことは、もしかして……」

「この二人には、施術に協力してもらいまーす!」

 

 明るく言うひびきだが、二人には施術の詳細は伝えていない様子。

 

「なんだか分かんないけど、楽しそうだし早くやろー!」

「最近楽しいことなかったから超楽しみ〜!」

「…………」

 

 施術に使うのは、恐らくあの触手スライム――

 弘世は内心ドキドキしていたが、誰も止める様子はなく、実験はそのまま始められることになったのだった。

 

 

 

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