美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
――翌朝。
「……………あ」
弘世は、ふとした体の違和感に気がついた。
違和感、と言っても悪い意味ではない。むしろ、それは定期的に訪れる“反応”だった。
「……覚えた、か」
弘世は新たなスキルを手に入れていた。
それを頭の中で反芻しながら、どう活用するかを考える。
今日は月曜日。登校日だ。
それに加えて、メンバーの予定が合わなかったため『マスタールーム』での会議は休みとなっていた。
「ま、俺もちょうど用事あるしな」
弘世は委員会活動にも参加している。いや、正確には“させられた”という方が近い。
ホームルームで委員会を決める際、陽鞠の巧妙な誘導に乗せられ、うっかり手を挙げてしまったのだ。
そして入ったのが、なんの因果か――『美化委員会』だった。
◇ ◇ ◇
――その日の放課後。
新年度の始まりということで、今日は花壇の空きスペースに花を植えたり、雑草を抜いたりと、校内の花壇の整備が行われることになっていた。
美化委員長の指示のもと、一年生から三年生までの美化委員が手分けして作業を進めていく。
「ふう……こんな感じでいいかな。いや、こっちの向きの方が綺麗かも」
普段あまり体を動かさない弘世にとって、しゃがんで花を植える作業はなかなかの重労働だった。
それでも、今の弘世は何事も楽しめていた。
すべては『美容』というギフトを手にし、ひびきたちと出会ったからこそだ。
そんなとき、不意に目の前に影が差し、視界が遮られる。
「――そんなに真面目にやって、楽しいんですか?」
振り返ると、そこには見知らぬ少女が立っていた。
ジャージの色からして一年生だとわかる。
胸元まで伸びた黒髪、少し目付きの悪い切れ長の目が印象的な彼女は、どこか不機嫌そうに見えた。
「ん? 楽しいよ。花を植えるのなんてはじめてだけど、一つ一つ違ってて面白いよね」
「先輩みたいに真面目にやってる人なんていませんよ。……ほら」
少女が目を向けた先には、他の美化委員たちが愚痴をこぼしながら、ダラけて作業していた。
「まあ、人によってはめんどくさいって感じるかもね」
「なんで先輩はそんなに楽しそうなんですか?」
(なんだ。よく質問してくる子だな……)
不思議に思いつつも、弘世は素直に答える。
「なんでだろうね。今の人生が楽しいから、かな。心に余裕ができたというか」
「ふうん。――のんきですね、ヤリチンのくせに」
「は? なっ、なにそれ!?」
聞き捨てならないワードが、彼女の口から飛び出した。
「知りませんっ!」
そう言い残して、彼女は足早にその場を離れていった。
「……どういうことだ……? 一年生の間で俺がヤリチンって広まってるのか?」
確かに複数の女性と関係を持っているのは事実だ。だが、それは彼女であるひびきの公認のもと。
弘世にとって単なる“ヤリチン”呼ばわりは心外だった。
作業を終え、日が傾きはじめた夕暮れの中、弘世は手と靴の汚れを落とすため、水道場へと向かった。
「あーっ! 弘世先輩じゃないですかーっ!」
「ん……?」
声の方を振り向くと、そこには見覚えのある少女がいた。
茶髪を伸ばし、明るく活発な印象――一年前よりも大人びて、美少女としての存在感を強く放っていた。弘世がかつて、彼女の要望に応えて“胸を大きくした”相手――涼川葵だった。
「葵ちゃん。お疲れさま」
「ほんっと疲れましたよー! 高校の練習って、中学と比べ物にならないぐらいハードで……って、先輩こそ何してるんですか?」
葵はバスケ部の練習を終えたばかりのようで、練習着姿に汗をかき、タオルを持っていることからも、顔を洗いに来たのだろう。
一方、弘世はジャージ姿で、汚れた手を洗っている最中。普段の弘世とは違うその姿に、葵は目を丸くする。
「美化委員の活動でね。けっこう土まみれになっちゃった」
「へえー、先輩って委員会にも入ってたんですね!」
「入ったというか、無理やり入らされたというか……」
思い出すたび、陽鞠への恨みがよみがえる。
だが、触手スライムにやられていた彼女の姿を思い出すと、少しだけ溜飲が下がった気もする。
そこで、弘世はふと思い立ち、葵に提案する。
「ねえ、葵ちゃん。このあと、ちょっと時間ある?」
「部活はもう終わったので、時間はありますけど……。もしかして私を襲う気ですか!?」
「違うって。ちょっと試したいことがあってさ。今日は皆の予定が合わなくて」
嬉しそうにする葵の顔を無視しつつ、弘世は否定する。
「ほんとかな〜?」
「葵ちゃんは俺と話す時、すぐそっちの方向に持ってくよね……。で、どこか二人きりになれる場所ってある?」
「やっぱり襲う気だ〜っ!」
「だから違うってば!」
弘世の言動が言い訳になっておらず、誤解を招いているのは否めない。
二人きりの場所を探し、予定を聞く――それだけで、今の二人の関係性からして連想するのは一つしかなかった。
「……まあ、そうですねー。部室なら空いてるかも。皆が着替えるまで少し待ってもらえれば、私が最後に残って鍵を受け取ってきます!」
「いいの? なんか迷惑かけちゃうな」
「可愛い私がこんなことしてあげるの、弘世先輩だけなんですからねっ」
自分の魅力にしっかり自信を持つようになった葵。
聞けば、教室でも既に“クラス一の美少女”として注目されているらしい。
そんな彼女が、付き合ってもいない先輩と――秘密の時間を過ごすなどと、誰が想像できようか。
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えるね」
――三十分後。
弘世を迎えにきた葵は、女子バスケ部の部室まで連れて行ってくれた。
中は制汗スプレーを使ったのか、それらしい匂いが立ち込めており、それと同時に女子特有の甘い匂いが混ざっている空間でもあった。
両サイドにはロッカーがあり、中央には二台の背もたれなしのベンチが設置。ちゃんと掃除されているのか、放置されているようなゴミも見当たらなかった。
「てか、女子の部室に入るって、今思えば結構やばくない?」
「あはは。人によっては下着とか忘れてる人いるかもですねー」
「まじか」
葵の冗談だと思うが、そういう忘れ物がないとは言えない。
「で、何をするんですかー?」
「うん。実はさ、新しいスキル覚えたんだ。だから葵ちゃんに試してもらいたくて」
「ええー! 私が最初ってことですか!? 超嬉しいです!」
弘世の話に大喜びする葵。
葵は弘世とか変わっていくうちに、彼のモテモテ具合をよく認識することになった。
元々会っていたのはひびきだけだったが、ひびきが以外とも会う機会はあって、そこで、小春や霧乃、麻未など複数の美少女をはべらせている弘世の姿を見たのだ。
はべらせている、とは葵の個人的印象だが、実際はその通りだ。
そして、他にも色々な女性と関係を持っているとひびきからは聞いていたので、自分の優先順位はそれほど高くはないと思っていたのだ。
しかし、今回最初にスキルを試せると聞いて、葵はちょっとした特別感を感じたのだった。
「新しいスキルは『リンパマッサージ』って言うんだけど、疲労回復とか色々な効果があるみたいなんだ。葵ちゃん部活で疲れているからちょうど良いと思って」
「え、マッサージ! 今までのやつとは違うんですよね! 疲労回復ってめっちゃすごいです!」
キラキラと目を輝かせる葵は教室ではなかなか見れない姿だ。
スキル『リンパマッサージ』の詳細はこのようになっている。
<リンパマッサージ>
方法:対象の部位を揉み込む
効果:体力回復、疲労回復、むくみ解消、免疫力向上、リラックス効果、冷え性の改善、生理痛の緩和、便秘改善
反動:一定時間体が火照る、敏感になる
そして、弘世はわかっていた。
このスキルは今までのスキルとは全く違う部分があることに――。
「じゃあさ、そこのベンチに寝てもらってもいいかな?」
「はいっ」
弘世が言わずとも葵は練習着を脱ぎだし、あっという間に下着姿になった。
(おお、スポブラだ……案外いいものだなぁ……)
今日の葵の下着はグレーのスポブラだった。
あまり見ない下着に、弘世はグッと来てしまう。
ベンチは冷たいのか葵が自分でタオルを敷いて、その上に仰向けになった。
「てかさ……汗とか拭いてないの?」
弘世はずっと気になっていた。
着替える時間はあったはずなのに、弘世を迎えにきた時から葵は練習着のままだったことに。
「ふふふふ。弘世先輩ってえっちじゃないですかぁ?」
「いや……俺だけじゃなくて男はみんなえっちだと思うけど」
「私知ってるんですよ〜。小春先輩とか霧乃先輩とかとすごいプレイしてるって」
「皆そんなことまで葵ちゃんに話してるの!?」
弘世は恥ずかしくなった。
普段は温厚で真面目なのだ。そういう時だけちょっと変態的になり、彼女たちの要望に応えているだけで。
「ほら、女の子の汗も好きだって聞いたから……だから、わざと拭かないで臭いままにしておいたんです」
言いながら葵を両腕をあげて、汗艶めく綺麗な脇を見せた。
「…………っ」
「あ、今ドキっとしたでしょ。先輩はわかりやすいなぁ」
「しょ、しょうがないだろ! ほとんどの男は女性の脇が好きなんだよ!」
「ほら、舐めたいなら舐めていいですよ〜?」
「バカ。今日はスキル使うためだって言ったでしょ」
「いたぁ……わかりましたよぉ」
いやらしいポーズで煽る葵に対し、弘世はムラムラしたが、流されずに彼女の頭をチョップ。頭を抑えた葵は少しだけ痛がった。
「じゃあ、やっていくよ」
「はーい」
「――スキル『リンパマッサージ』」
弘世の両手に白く淡い光が灯った。