美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
「…………絶対に許しませんからっ!」
葵の友人と思しき少女が、施術を終えたばかりの弘世を突き飛ばし、ゴミでも見るような目で睨みつけた。
どうやら葵が弘世に襲われていたと勘違いしたらしく、必死になって葵に声をかけていたが、当の本人は絶頂直後でまだ意識が朦朧としていた。
「ちょ、ちょっと君! なにか勘違いしてる!」
「勘違いってなんですか! 私は見たままを信じただけです! あなたが葵を襲った――それ以外に、何があるって言うんですか!」
確かに、葵の発していた声には「ダメ」とか「いやぁ」といった言葉が混ざっていた。
それを断片的に聞いていれば、理央の言うように、弘世が襲っていたと誤解されても仕方ないかもしれない。
「本当なんだ! 葵ちゃんは部活で疲れていて、俺は癒やすために施術していただけなんだ!」
「施術? 施術って……葵のどこを触って施術してたって言うんですか! こんなの……施術とは言えません!」
確かに、今回の施術とは関係ない部分に触れてしまった。
だが、それは葵自身の懇願によるもので、弘世から求めたわけではない。
たとえ触れていなかったとしても、葵は似たような状態になっていたかもしれないが……いずれにせよ、今回は合意の上であり、弘世に非はない。
「それはそうかもしれないけど……葵ちゃんに頼まれたんだ! ……いや、最初に頼んだのは俺だけど……でも、大事なところは俺からじゃなくて……!」
「な、なにを言ってるんですか! あなたの言葉、意味がわかりません! ただの変態の言うことを信じる人なんているわけないでしょ! どうせあなたが、葵をうまいこと口車に乗せて……っ」
どう釈明しても、理解される気配はない。
つい口から出てしまう施術に関するいやらしい響きの言葉が、かえって信憑性を損ねていた。
そんな時だった。
ついさっきまでビクビクと震えていた葵が、ついに意識を取り戻したのか、理央の手を取り、ベンチの上でゆっくりと体を起こした。
「理央ちゃん……」
「葵……葵……! 良かった、気がついたのね。でも……私、葵を助けられなかった……っ」
理央――葵の友人と思われる少女の名前が明らかになった。
理央は葵の手を強く握りしめ、悪魔の手から守れなかったことを悔やんでいた。
「ふふ……理央ちゃん、勘違いしてる」
「……なんのこと?」
「――私がこうしてって、弘世先輩にお願いしたんだよ?」
「…………へ?」
理央の表情が固まる。ありえない言葉だった。
葵の口から聞かされたことは、先ほど悪魔と断じた弘世が言っていたことと同じだったからだ。
「だ、だって……この人は、葵がヤリチンで危険だから近づかないほうがいいって言ってた人で……だから、騙されたんだって思って……」
「……なんて?」
聞き捨てならない言葉に、弘世は床に転がっていた体を起こし、心の中で突っ込んだ。
(葵ちゃんがヤリチン呼ばわりしてたのかよ!)
「あはは……まさか、本当に理央が弘世先輩に近づくとは思わなかった」
「……え、どういうこと? じゃあ、まさか……葵はこの人と付き合ってるってことなの?」
「ううん――私は先輩のセフレだよ」
「や、やっぱり葵が騙されてるんだ! こ、このクズ! 葵をたぶらかして汚したクズ!」
葵の言葉の選び方が悪かったのか、理央はさらに誤解を深めてしまう。
弘世はそれを目の前で聞き、頭を抱えた。
どう説明すれば理解してもらえるか。
葵は『誓約』のギフトにより、他人に弘世のギフトを話すことができない。
説明するとすれば弘世の口からしかないが、こんなに敵意をむき出しにされている状態でギフトを明かせば、変に噂が広がり、教師にまで目をつけられる危険がある。
「……あれ?」
その時だった。
ベンチに座っていた葵が突如立ち上がり、自分の体を確認するようにぺたぺたと触りはじめた。
「葵? なにしてるの?」
不可解な行動に、怒りでこわばっていた理央の表情が少し緩んだ。
「先輩! なんだか体が軽いです! 筋肉痛もないし、疲労が全部吹っ飛んだみたい! ……今日はもう一回部活してもフルで動けます!」
「ほんと!? 俺の思った通りの結果だ! これは凄いことかもしれない! 今までになかったことだから!」
「先輩の役に立てましたかね?」
「もちろん! 皆にも教えないと……!」
理央の心配をよそに、二人は謎の会話を楽しげに続けていた。
葵はパンツも履かず、弘世とハイタッチしている。
その様子を見て、理央は再び怒りを燃やした。
「な、なんなの!?」
「理央。まだ怒ってたの? だから言ったじゃん。弘世先輩はセフレだって」
「そ、そんなの普通じゃない! 前までの葵はそんな子じゃなかった! 私にあれだけ相談して悩んでたのに……いきなり人が変わったみたいに明るくなって……!」
「あ〜……あの時は理央にはお世話になったよね……うん、とっても感謝してる。でも私、今の自分が好きだからさ、切り替えたんだ」
胸の小ささに悩み、好きだった男子に一歩踏み出せずにいた。
そんな時、弘世の存在を知り、施術を受けて胸を大きくしてもらったあと、告白した。
――しかし、その後は泥沼。
弘世の施術のせいで付き合えた彼氏とは満足できず、弘世の元に舞い戻った。
その彼氏も、相談相手を誤り、言いくるめられて体を重ねてしまい、結果として葵は彼氏と別れることに……。
全てではないが、その頃の悩みを相談していたのが、小塚理央《こづかりお》だった。
同じ中学の同級生で、部活のない時はよく遊んでいた仲だった。
だからこそ、弘世の存在は隠しつつ、葵は理央にある程度のことは話していたのだ。
「この人のせいなんだ。葵がおかしくなったのは、この人のせいなんだ!」
「理央……色々あったけどさ、今の私って、どう見える? 不幸せに見えるかな? 速人と付き合ってた時と比べて、どう思う?」
「…………」
理央は言葉を失った。
言うまでもなく、今の葵の方が幸せそうに見えた。
だからこそ、認めたくなかった。
「私は……速人と付き合う前の葵の方が……好きだった」
「じゃあ、友達やめる?」
「っ! そんなこと言ってない! 私は葵の親友で、これからだって――葵?」
葵は感情を露わにしていた理央を、優しく抱きしめた。
「説明は難しいけど、弘世先輩は悪い人じゃないよ。むしろ、いろんな人に振り回されてる方だし」
「ヤリチンって言ったのは、葵の方じゃん……そんなの聞いたら印象悪くて当たり前で、現にこうして――」
「あれは、冗談みたいなものだよ。この無害そうな顔の人が、本物のヤリチンなわけないじゃん。なんて言えばいいかな……そうだ、皆が弘世先輩を借りチンしてるんだよ」
「そ、そんなチンチンチンチン言わないでよ……」
抱きしめながら説明する葵。
その温もりが影響を与えたのか、理央の怒りは徐々に鎮まっていった。
「先輩、今日はこれで失礼しますね。本当はもっと一緒にいたいですけど、理央がこうだから……」
「あ、うん。このお礼はまた――」
その瞬間、理央が弘世に鋭い視線を向けた。
「私、まだあなたのこと許してませんから」
「あー、はは……まいったな……」
「先輩、理央のことは私に任せてください」
「うん……」
ヤリチンと友人に話していたことを問い詰めたかったが、この状況では仕方ない。
弘世は理央の対応を葵に任せ、女子バスケ部の部室を後にした。
◇ ◇ ◇
「――即効スキルってことだよな……」
部室を出た弘世は帰路につきながら、葵に施した『リンパマッサージ』の効果について思案していた。
今までのスキルは、効果が現れるまでに数週間の時間を要した。
しかし今回のスキルは、それまでとは全く異なる性質だった。
施術が終わってから、一分も経たないうちに効果が現れたのだ。
ダンジョンに入る資格である戦闘系ギフトは、攻撃系も補助系も基本的に即時効果が現れる。
弘世のスキルも、施術に時間はかかるが、効果としては補助系に近い即効性を持っていた。
「ま、今から冒険者を目指すつもりはないけどな」
だが、この『リンパマッサージ』があれば、冒険者になる資格は得られるかもしれない。
冒険者に同行し、休憩時間にスキルを発動して体力や疲労を回復させる。
戦闘に疲れた冒険者を癒やす、立派な補助スキルだ。
「とりあえず、次に『マスタールーム』に集まった時、みんなに共有しよう――」
弘世は、このスキルの存在をまだ葵以外に話していない。
だから、次のダンジョン構築会議の場で伝えるつもりだった。
「それにしても、あの理央って子、大丈夫かな……俺、めっちゃ印象悪かったよな……」
こんな展開になるとは思っていなかった。
けれど、理央の立場からすれば、言われた通りの“クズ”に見えても仕方なかった。
「ひとまずは葵ちゃんに任せるとして、他の人にもヤリチンって言ってないかは確認しないと……」
弘世はスマホを取り出し、その一点だけは確かめようと、葵にメッセージを送るのだった。
そうメッセージを送りながら、弘世は自分の下半身を見た。
「……なんか、収まらない……確かに葵ちゃんのあの姿には興奮したかもしれないけど……今までこんなことは――」
ギンギンに膨らんでいた弘世の下半身は、今までにない膨張を果たしていた。
まるでバイアグラでも飲んだかのように全く収まらない。
弘世はなんとかチンポジを整え、通行人にバレないようカバンを抱きかかえるようにして下半身を隠し、家まで歩いていった。