美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
四月下旬。
ゴールデンウィーク初日。
弘世たちは『マスタールーム』に集まり、完成した『美容ダンジョン』を解放するため、待機していた。
解放の時間はお昼十二時。
多摩川にあるゲートを出現させることで、『冒険者ギルド協会』が各所に設置している魔力探知機で探知され、ダンジョンの出現が知らされる。
あらかじめ、霧乃の祖父である氷堂源六に伝えているため、ダンジョンの出現は冒険者専用サイトに掲載され、それをもって『美容ダンジョン』が冒険者たちに知らされる流れとなっている。
「ドキドキしてきた……」
「って言っても、あとは見るだけで私たちがやることってないんだよねー」
ここまで約四週間会議し、構築してきた『美容ダンジョン』。
自分たちが考えたダンジョンが現実になるというのは、とてもじゃないが、言葉ではなかなか言い表せない。
弘世は元々冒険者を目指していた。
ただ、ギフトに恵まれず、別の道を歩んでいくことになったが、なんの因果か、こうして冒険者に関わることになった。
立場は違うが、冒険者に関われることが嬉しいのだ。だからワクワクして当然だった。
「――時間になったようです」
そうして、その時がやってくる。
エコアが十二時になったのを確認すると、何もない場所で手をかざす。
「じゃあ、頼んだ」
「はい、マスター。ゲート、オープンします」
かざした手で何かを操作すると、モニターに映っていた最初のフロアにゲートが出現した。
◇ ◇ ◇
「――緊急! 多摩市多摩川近辺にて、膨大な魔力を感知! これは……以前現れた巨大ゲートと同じ反応です!!」
冒険者ギルド協会の本部『ダンジョンゲート管理局』。
その場所で以前と同じように、職員の一人が地図が映し出されている巨大モニターを見ながら、ゲートの出現を報告した。
「会長! こちらは――」
「ああ、そうだ。情報を解禁しろ」
後ろに控えていた氷堂源六は、霧乃から伝えられていた通りに、今回は情報の秘匿ではなく、情報を冒険者専用サイトに告知するよう指示した。
そうして約十分後。
地図に表示されていたゲートの出現場所が、冒険者専用サイトに投稿された。
◇ ◇ ◇
冒険者が扱う、アングラな掲示板。
そこでは、新たなダンジョンゲートの出現について、既に大賑わいだった。
それもそうだ。
今回解禁された情報はいつもの内容とは全く違っていたのだから。
『多摩市にゲートだぞ!』
『は!? ランクはFからS……? どういうことだよ!』
『なんだこれ。ランクが可変しているのか? こんなダンジョンはじめてだぞ!』
『でも、いきなりSランクのダンジョンに繋がったら……』
『もしそうなら、冒険者ギルドがちゃんと告知するだろ』
『ってことは、下層に行くにつれてランクが上がるダンジョンかもしれねえ!』
冒険者専用サイトに流された情報から、考察をしはじめる冒険者たち。
通常、サイトに公開されるダンジョンには、一つのランクが表示されている。
それを見て、冒険者はどのゲートに挑むのかを選択するのだ。
しかし今回はFからSというはじめての表示。驚くのも当然だった。
◇ ◇ ◇
「――お前たち、新しいダンジョンが出現したわ! 行くわよっ!」
東京都内に構えられた大きな屋敷。
ここはダンジョンで使える武器を専門とし、製造・加工・売買まで行う『株式会社ソードアックス』を傘下に置いている天野グループの屋敷だ。
元々は別のビジネスを行っていたが、ダンジョンが現れてからはこちらの会社を作り、大きく儲けていた。
霧乃の父親が経営する『株式会社日本ダンジョンギルド』とも取引している。
その屋敷の中で一人の少女が雇っていた五名の冒険者に声をかけた。
「綺羅璃様。聞く話によればランクがFからSとされていて、よくわかっていません。大丈夫でしょうか?」
「構わないわ! 私がもっと上のランク上がるためには、誰よりも早く新しいダンジョンを攻略し、中にあるアイテムを奪取することが大事よ! だから入れるダンジョンであれば、どんなダンジョンでも入るわ!」
腰までの長い金髪をドリル状のツインテールにした少し幼い顔の少女。
彼女は天野綺羅璃《あまのきらり》――天野グループの会長である父親の娘であり、Bランク冒険者。
年齢は十七歳。<綺羅璃隊ギルド>という自分のギルドを作っており、金の力で雇った冒険者の力で高校生ながらたった一年でBランクまで駆け上がってきた人物だった。
そして、綺羅璃の命令で、自身と雇っている冒険者たちに準備を整えさせると、多摩川のゲートへと誰よりも早く向かった。
「なっ、なんなのここは……っ」
見て驚いた。
通常、ゲートの大きさは、人一人分が通れればよいくらい。
しかし、多摩川に出現したゲートは、縦横五メートルほどの巨大なものだったのだ。
「魔力がすごい……」
分かる人にはわかる。目の前のゲートは尋常ではないくらいの力を秘めていると。
そう思わざるを得ないほどの魔力の奔流がそこに渦巻いていた。
「っ! 怖気づいていてもしょうがないわ! 行くわよ!」
「わかりました!」
綺羅璃が身につけている防具は全て高級で布地が薄いが、それなりに効果の付与されているもの。
他の五人の冒険者も、綺羅璃から与えられた上質な武具を持っており、新品同様キラキラに輝いている。
そうして綺羅璃含めた六人がゲートに入る。
「――これは驚きね……ゲートに入ったら、さらに扉が八つあるなんて……普通じゃないことはわかったわ」
通常のダンジョンは、ゲートを通ると大自然や洞窟などが広がっている。
しかしこの『美容ダンジョン』は、小さい部屋が用意されていた。
綺羅璃は一番右の扉に近づく。
するとすぐ横に設置されていた箱に気づいた。
「え……五百円? 入場料ってこと? …………ほんとね。入れないようになってるみたい」
試しに扉を開けてみようとしたのだが、固く閉ざされていた。
鍵穴のようなものもないので、箱にお金を入れて開く仕組みだとすぐに気づく。
「綺羅璃様、なんだか人が作ったみたいなダンジョンですね」
綺羅璃隊の大男が言う。
「確かに……五百円を入れるなんて、今までじゃない仕組みだもの……まあいいわ。人数分のお金を入れてちょうだい」
「わかりました」
そうして六人分――三千円を入れた綺羅璃たち。
すると、次にドアノブに触れた時、ドアが開いているのがわかった。
「じゃあ、あなたたち――行きますわよ!!」
「「「はいっ!!」」」
満を持して綺羅璃たちはドアを開け、扉を潜った。
「へ?」
しかし、その瞬間だった。
「っ!? きゃああああああ〜〜〜〜!?」
足を踏み出した途端。そこは急斜面になっており、中に入った全員が斜面に滑り落ちていった。
「きっ、綺羅璃様〜〜〜っ!?」
しかも斜面にはぬめぬめしたピンク色の半透明な液体が散布されており、どうやっても止まらない。
加えて体にはその液体が付着し、綺麗な防具のみならず顔までもがぐちゃぐちゃのぬめぬめになってしまっていた。
「ぎゃあああああああ〜〜〜〜!? これっ、止まらないっ!? なんなんですのぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜!?」
◇ ◇ ◇
「あははははははっ!! ローション作戦大成功★」
『マスタールーム』では、モニターを見ていたひびきが腹を抱えて笑っていた。