美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
「昨日までこんなのなかったよね!?」
モニターで<綺羅璃隊ギルド>のメンバーたちがローションまみれになっていく姿を見ながらそう言ったのは弘世だ。
驚くのも当然。
実際にこのエリアは弘世たちが事前に現地調査で通った場所であり、その時は一面草原が広がっていたはずだった。
しかし蓋を開けてみればどうだ。いきなり斜面になっていて、そこにはローションが敷き詰められていた。
「ふふっ、ごめんごめん……私がエコアにお願いしてやってもらったんだ。だって、普通じゃないダンジョンに挑みたいっていう冒険者なら、自信満々な人たちが一番最初に来ると思ってさ。その鼻をへし折るくらいびっくりさせたいと思って」
「まあ、確かに自信満々に挑んではいたね……」
ひびきの説明に小春が同意する。
「あれは天野グループの天野綺羅璃……<綺羅璃隊ギルド>は最近有名なギルドの一つで、高飛車な性格でも有名だね」
「へえ……ちょうど良かったじゃん。あ、ちなみにあれってただのローションじゃないから。ほら――」
弘世が冒険者の知識を披露したところで、ひびきがまだこれで終わりではないようなことを言い出す。
そうして一同は再びモニターに目を向けた。
◇ ◇ ◇
「な、なんなのよおおおおおっ!!」
斜面の一番下まで滑って流された綺羅璃たち。六人全員がピンク色のローションまみれになっていて、防具もねちょねちょになっていた。
「綺羅璃様! 大丈夫ですか!?」
「もう、大丈夫じゃないわよ! せっかくの綺麗な防具なのにこれじゃあ……って、きゃああああ〜〜〜!?」
綺羅璃が部下と話している途中だった。
自分の防具を見ると、いつの間にかお腹や胸の部分が溶け出し、徐々にその下にある肌が見えはじめていたのだ。
「これは特殊な防具で、簡単に溶けるようなものじゃ……水! 早く水を、本郷っ!」
「藤木! 水を綺羅璃様にかけるんだ!」
「わ、わかりました! 『放水』!!」
すると綺羅璃の部下の一人が手を前に出すとそこから直径三十センチほどの水を放出した。
それが綺羅璃の体めがけて飛んでいくと、
「おぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ!? いき、息が……おぼぉ!?」
「藤木! 放水中止だ!」
「は、はいっ!」
藤木の放水の威力が大きすぎて、綺羅璃は顔面から水を浴び、それが口の中に次々と入っていった。結果、息ができなくなり綺羅璃は死ぬ思いをした。
「ぜえ、ぜえ…………ちゃ、ちゃんと体だけを狙いなさい……よね……っ」
「す、すみません…………って、俺たちも防具がっ!?」
「うおっ、これはっ!?」
「水だ! 全員に水をかけてくれええっ!!」
綺羅璃の部下たちも同様に防具が溶けていっており、あらぬ部分が露出しかけていた。
すぐにローションを落とそうと全員に水をかけることになった。
「――綺羅璃様、どうしましょう? このままでは防具が……」
「進むわ! だって……ほら、見なさい」
ダンジョンで使える特殊な対魔物用の防具がなければダメージが多く入る。
その防具が今ところどころ溶けており、完全には機能しなくなっていた。
しかし、綺羅璃が指を差す先を見るとそこには――
「『ホーンラビット』……!」
「Fランク、ですか」
「ええ! あのレベルの魔物がいるんですもの! この階層はFのはずよ!」
「わかりました。綺羅璃様の指示に従います」
「そうと決まれば行くわよ!」
「「はいっ!!」」
綺羅璃たちは低ランクの魔物の姿を見て、装備を整えてなくてもいけると判断し、先に進むことを選択した。
◇ ◇ ◇
「な、なんなのよここは…………っ」
綺羅璃たちは土まみれ、泥まみれ、防具は擦り切れてボロボロ。
簡単に魔物を倒して進みはしたのだが、それ以外が大問題だった。
「ここまで人をバカにしたようなトラップははじめてよ……! この私の綺麗な髪がぐちゃぐちゃに……っ!」
綺羅璃は草原で地団駄し、怒り狂っていた。
彼女らを襲ったのは、事前に用意していた罠の数々。
ひびきを中心として面白い案を考え、それを各所に設置したのだ。
落とし穴からの入口転移、泥沼地獄、空からの砂かぶり、横殴りの水の激流……。
魔物は弱いのに、子供が考えるような数々の罠によって、かなりの体力が奪われていた。
しかし、それでもだ。
「やっと三階層……あれがフロアボスね……!」
数時間後。Dランク下位の三階層まで進んだ綺羅璃たちはフロアボスである『オーガ』の前まで到達していた。
「綺羅璃様、あの岩場を見てください」
「ん……扉が埋め込まれてある……?」
四階層へ降りる階段ではない。
今まであのような扉はなかったため、不思議に思った。
「わからないけど、あの『オーガ』を倒せば、その秘密がわかるってことよね!」
ボロボロの見た目はしていたが、まだダンジョンに挑む闘志は消えていなかった。
綺羅璃は背中に背負っていた大きな鎌型の武器を構えた。
「行くわよっ!!」
――約十分後。
『オーガ』は倒れ、魔力の残滓となって宙に消えていった。
Bランク冒険者の綺羅璃たちにとって、疲れていたとしてもこのランクの魔物を倒すことは容易だった。
そうして、邪魔者はいなくなる。
綺羅璃たちは岩に埋め込まれた扉を開き、全員で中に入った。
「これはまた……意味がわからないわね」
目の前に広がっていたのは、無機質な大部屋にその中央に並ぶ複数の個室。
綺羅璃は一人先行して前を歩く。そして個室の前にあった看板を見つけた。
「ここでは『肌質改善』の施術が受けられます。効能はこちら……肌再生・潤い・毛穴収縮……完全に効果が出るまで十回挑み、施術を繰り返し受けてください……ですってぇ!?」
「き、綺羅璃様?」
綺羅璃はわなわなと体を震わせていた。そのことに心配した部下。
しかし、その心配が杞憂なものだったとすぐにわかる。
「大当たりよーーーっ!! 私のシルクのような肌がさらに綺麗になるということ……!」
綺羅璃も女性だ。美容についても人一倍関心が高かった。
だから看板を見て大喜びしたのだ。
「わざわざ看板に書いてまで説明されていることにはおかしさを感じますが……おかしさで言えば、これまでの罠で体験したこともありますし、この『肌質改善』とやらもおそらく本物と見るべきなのでしょうね」
「そうだと思うわ。では、早速――」
しかし、部下の本郷が止める。
「綺羅璃様、他にも部屋があるようです。全て調査してからの方がよろしいのでは?」
「ふむ……そうね。そうしましょう」
逸る気持ちがあったが、綺羅璃は先に調査を優先した。
「………………まとめると、ここはスパなの!?」
スパとは温泉や美容に関するものが集まったリラクゼーション施設。
綺羅璃は扉の先にあったものを見てそう言った。
シャワールームに男女別の温泉。しかも温泉には『リンパマッサージ』なる効果が付与。
ボロボロで体が汚れていた綺羅璃たちにとっては、たまらないサービスだった。
「綺羅璃様、どうしましょうか? 正直、我々男は先ほどの個室にはあまり興味がなく、ゆっくりと温泉に浸かりたいのですが……」
「そうね……いいわ。いいでしょう! あなたたちもこの一年、私に尽くしてくれたもの……じゃあ、その間に私は軽くシャワーを浴びてから一人で『肌質改善』を受けることにするわ!」
綺羅璃は早く『肌質改善』を受けたかった。
そうして男女分かれて行動することになり、綺羅璃は一人個室に入った。
「裸になって施術台に寝る……あとは、『肌質改善』を受けたい箇所を口に出してください……か」
中に設置されていた看板。綺羅璃はそれを見て、着ていた防具を脱ぎだした。
部屋の端にはタオルやバスローブのようなものも用意されていて、まるでエステのようだった。
「もう、本当に疲れたわ……ここに寝ているだけでいいのよね……?」
裸になった綺羅璃は施術台に上がって脱力。
「私が望むのは全身の『肌質改善』よ! 私の体をもっともっと綺麗にしてちょうだい!」
綺羅璃は施術台の上で宣言した。
「そういえば、『施術』って書いていたわね。具体的に何が起こるのかしら……?」
綺羅璃が宣言した直後、施術台の背後で何か蠢くものがゆっくりと出現。
彼女はそれに気づかないまま、施術台の上で身を預けていた。
◇ ◇ ◇
「だぁーーーっ!? 弘世見ちゃだめっ!!」
「ちょっ、うわっ!?」
綺羅璃が服を脱ぎだす場面は、ばっちりと『マスタールーム』のモニターに映っていた。
ほっそりとした体には小ぶりなお尻とささやかな膨らみ。
綺羅璃はどこか麻未を思わせる幼児体型だった。
そして弘世の目にも綺羅璃の裸が見えてしまったため、ひびきたちが彼の目を塞いだ。
「一応ね! あの子もさすがに男の人に盗撮されているとは思わないだろうし……」
「あっち側からはこっちの様子はわからないけど、これは女性のプライバシーだね」
「わ、わかったよ……」
弘世はモニターから目を逸らし、別のモニターを眺めた。
「エコア、男の温泉は映さなくてもいいよ……」
「かしこまりました。マスター」
ゴリゴリの男たちの裸など興味ない。
弘世はエコアにそのモニターを消させた。
すると、ひびきがモニターを見ながら呟いた。
「ぐへへへ……何時間も待ったんだから楽しませてちょうだいね……綺羅璃ちゃん?」
そうしてはじまる。綺羅璃に襲いかかる、『肌質改善』の施術が――。