美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】 作:pelca
――天野綺羅璃が体の変化に気付いたのは、美容ダンジョンの『肌質改善』の施術部屋に通い詰め、看板に表示されていた回数、施術をした翌日のことだった。
「…………これ、本当なの?」
目覚めた瞬間から、何かが変わっていた気がした。
なぜならルームウェアと肌が衣擦れする感覚さえも違っていたから。
普段ならこんなことはありえない。
これまでは朝起きると多少なり寝汗だってあったはずなのに、今はどうだ。
どこに触れてもさらさらでスベスベだったのだ。
完全に汗をかかなくなったわけではない。
それでも、明らかに変化したとわかるほど体感があったのだった。
「あのハレンチな施術に耐えただけあったということね……っ!」
ダンジョンに通うたび、施術室で絶叫を上げていた綺羅璃。
通い続けているうちにそれが癖になっていたことは自分でも理解していない。
すぐにまた通いたくなり、気持ちよくされて、ヘロヘロの状態で『リンパマッサージ』の温泉に入り、また気持ちよくされながら体力を回復させて帰る。
施術の効果に期待していたのは当然として、施術で気持ちよくされることにも期待していたのだ。
「ふう……ひとまず、綺羅璃隊に報告してから、掲示板に書き込みましょうか」
――その日書き込まれた冒険者専用の掲示板。
新しいダンジョンで施術効果が出たというはじめての事例が、施術前との比較画像と共に投稿された。
その結果、画像でもはっきりと確認した冒険者たちがその掲示板で大盛り上がりし、美容ダンジョンへと足を運ぶ冒険者が一気に増えたのだった。
「もしかして、私のおっぱいが大きくなる施術なんてあったりしてね」
綺羅璃は、これから幾度となく美容ダンジョンへと挑み、様々な美容効果を得るため、絶頂回数は軽く数百回を超えることになる……それはまた別のお話だ。
◇ ◇ ◇
「――マスター。そろそろ入場料だけで五百万円に到達します」
「ま、まじか……」
美容ダンジョンの効果を知れば、それはたくさんの冒険者がやってくるとわかっていた。
しかし、それよりも前に同じ冒険者が何度も出入りするだけで、それだけで一人五百円を徴収できる。
そのため、リピーターだけで簡単に儲けることができていたのだ。
「いきなりお金持っちゃうと、なんだか怖い……」
「そういやこのお金ってどうするの?」
「……皆にも協力してもらってるから、均等に分配しようと思ってる。どうかな?」
入場料の扱いを決めていなかったため、この場で決めようとしたが、弘世は最初から分配はしようと考えていた。
「いいんじゃないかな」
「いいのではないでしょうか」
「そうですね。分配が良いと思います」
それぞれ意見が合ったため、入場料の儲けは分配することになった。
ただ、全てが五百円玉か百円玉なので、現時点でも一万枚以上。
それは霧乃と沙織を通して、冒険者ギルド協会で両替してもらえることとなった。
しかし、ここまでの美容ダンジョンの運営は、順風満帆だったとは言えない。
実は挑む冒険者の中には、真面目にダンジョン攻略をしない野蛮な冒険者もいたのだ。
他の冒険者の邪魔をしたり、施術室の看板を破壊したり……全てエコアの魔力で創り出したものなので、すぐに復元はできるが、正直黙っているわけにはいかなかった。
当初の予定では、エコアが結界を張って出禁にする予定だった。
話し合いの結果、二度目はないとして、次の入場までは許可することにしたのだ。
「へっへっへ……」
「姉御ぉ。今回こそやってやりましょうぜ」
「当たり前だ! わけのわからないクソダンジョン。美容効果のある施術だとぉ……? 俺らには、どうだっていい! 宝さえあればなぁっ!」
モニタールームの画面に映し出されていたのは、五人組の女性冒険者だった。
姉御と呼ばれた人物は自分のことを『俺』とは言っているが、れっきとした女性だった。
「あー、来たね。あの様子だと……」
「指示をいただければ、すぐにでも排除いたします。もしくは――」
「あばっ、私、が……いき、ます……!」
モニターを眺める弘世。
一度は許した冒険者たちだったが、発言からして再びダンジョンの破壊行為を行うのではないかと思われた。
それに対しエコアが弘世に指示を仰ぎ、次いで麻未も戦闘の準備を整えていた。
近頃、麻未と霧乃は冒険者として頭角を現してきていた。
そんな中、霧乃への指導と評して、麻未も違反した冒険者を排除するため、たまにダンジョンへと身をおいていたのだ。
麻未は、ダンジョンと戦いが好きだった。
つまり戦闘狂だったのだ。
なので、麻未がお願いをする時、弘世も彼女の要望に従って、ダンジョンへと送りだすのだった。その際はいつもとは違う被り物などをつけている。
「とりあえず様子見して、破壊行為が行われたらお願いね。それと、準備していたもの、使おうか――」
「かしこまりました」
◇ ◇ ◇
「五層……! へへ、この辺の魔物ならまだ楽勝だな!」
「そうですね姉御!」
武器を片手に目の前のフロアボスを討伐した、女性冒険者たち。
それなりの実力を持っているのか、まだまだ余裕そうだった。
当初ひびきの提案で仕掛けた色々な罠。
直接的痛みが生じる被害は少ないものの、冒険者が先に進むにはかなり時間がかかってしまうため、見直すことになった。
そのため、以前よりもずっと冒険者は先に進みやすくなっていた。
暴走族、ヤンキー、ギャル。
彼女ら五人はそういった言葉が似合う女性冒険者たちだった。
しかし、美容についてほとんど興味がないのか、派手な髪色をしながらも、肌艶は悪く、メイクも適当に見えた。
「なあ、姉御。施術室あるけど、どうする?」
フロアボスを倒したことで見つかった五層の施術室の扉。
「へっ、宝箱がなければ、破壊して次の層に行くだけだ」
「そうか。わかった……」
姉御と呼ばれるリーダー。
他の四人は会話の内容から、同年代もしくは後輩といった構成のようだった。
姉御の武器は槍。相当に使い慣れているのか、くるくると回しながら大道芸でもするように自在に操っていた。
そうして、五人は施術室に入り、中を確認した。
施術室には宝箱は設置していない。
ここはあくまで施術室だからだ。
そして姉御たちが入ったダンジョンのフロア――そこは『肌質改善』ではなく、なんと『育乳』だった。
「お前ら! 隅々まで探せ!」
中に入ると、姉御の声で仲間たちが動き出す――そのはずだった。
しかし、四人は動かずに固まっていた。
「おい! お前らどうした! 早く宝箱探すぞ!」
「あ、あ……姉御…………」
「なんだ」
「『育乳』って、書いてます……」
「だからどうした?」
姉御は爆乳だった。
『育乳』には全く持って興味がなかった。
それに対して他の四人は、それほど大きくない。
貧乳の仲間もいれば、貧乳とも言えない微妙なラインの大きさの仲間だっていた。
ただ、姉御と比べれば、それは明らかに小さくて――
「『育乳』したいです! おっぱい大きくしたいです!」
「あ? 何言ってんだ?」
「ひっ」
後輩の言葉にドスをつく勢いで姉御は睨みつける。
それを恐れた後輩は後ずさる。
「姉御……アタシも興味ある。だって見ただろ? ちゃんと効果が出たって書き込み。しかもこの『育乳』……アタシらがはじめてだと思う」
「お前まで……」
姉御にタメ口を聞ける唯一の存在だった女性。
実際に同級生だったのだが、皆が姉御と呼んでいるので、同い年ではあるが姉御呼びしている。
「…………クソ! いい、宝は俺一人で探す! お前らは勝手に施術でもなんでもしてろ!!」
「あっ…………」
「姉御ぉ……」
姉御は槍をぶん回し、四人を置いて、施術室の中を見てまわることにした。
残った四人は呆然と立ち尽くしていたが、姉御がいなければ、これまで冒険者としてやってこれなかった。
中でも姉御は特に強く、槍関係のギフトを所持していた。
その力によって、この五層だって軽々と攻略できたのだ。
「ど、どうします……?」
「あいつ……しゃーねえ、一旦あいつを追いかけるぞ。施術は後回しだ」
「わ、わかりました!!」
そうして、姉御を探しはじめた四人。
しかし、その場では姉御は見つかることはなかった――
◇ ◇ ◇
「ん…………あ…………?」
見知らぬ場所で目覚めた姉御。
そこは洞窟のような土や岩が広がる場所で、薄暗い光で照らされた空間は、物音一つしなかった。
すると、ツカツカと足音がしたのだった。
「これから、あなたに特別なごうも――いえ、施術をさせていただきます――」
「あ……? って、なんだこれっ! おい! 離せ! 解放しろ!!」
前から歩いてきた全身黒のぴっちりとしたボディスーツを着た女性と思われる人物は、仮面をしており、素性が全くわからなかった。
そして今になって気づく。
姉御は、手足共に鎖で拘束されており、衣服は全て剥ぎ取られ、全裸になっていたのだ。
「施術が終われば解放されます」
「今すぐ解放しろって言ってんだよ! このクソアマ!」
見れば、出口などありはしなかった。
姉御はこめかみから汗がたらりと流れ、自分が絶対絶命の状況だと、次第に気づいていった。
「スンスン。臭いですね。ちゃんと髪は洗っていますか? 顔だってシミだらけで、日焼け止めなんて塗った痕跡もないようです」
「て、てめぇに俺の何がわかる」
「ふふふ……」
不敵な笑いをした謎の人物は姉御に近づき、髪の匂いを嗅いだ。
そして肌を確かめるように凝視し、肌ケアを怠っている姉御のことを見抜いた。
「あなたは前回、強制的にダンジョンの外へと排除されました」
「ああ?」
「それについては許しています。しかし先程の行為は許せません」
「はんっ、ダンジョンなんざ、公共の建物とは違って、壊したって、どうってことないだろうが!」
「ええ、一般的にはそうでしょうね。しかし、このダンジョンは特別なのです。――あなたが先程、お仲間からの言葉で怒り、激情のままに温泉施設や看板、壁などを破壊しました」
「だからなんだってんだよ……」
底しれない何かが姉御に迫る、そんな感覚が両腕両足に走った。
「はい。ですから今回は二度目。許されないという判断がくだされました。ここは美容ダンジョンです。綺麗になりたい人が来るためのダンジョン。故にあなたには特別な施術をさせていただきます」
「――なっ!?」
姉御の手足に絡みついたのは、水色で透明なスライム状の物体だった。
「ス、スライムか!?」
「今回は実験的な行いです。特別、と言ったでしょう。ですから、たった一度の施術で、あなたの全てを綺麗にしてみせましょう」
「っ! 俺は綺麗になんかならなくてもいい! はずせ! 鎖をはずせっ!」
「では、小一時間……施術をお楽しみください――」
そう言うと、地面に溶けるようにして、黒いボディスーツの女性が消えた。
残るのは、全身拘束された全裸の姉御と、スライムだった。
「お、おい……やめろ……俺は……そんなの求めてねぇ……っ」
スライムは忍び寄るように、手から腕に絡みつき、そして、足から太ももへ。
徐々に局部へと触手のようなものを伸ばして――
次の瞬間、『拷問部屋』に姉御の嬌声が響き渡った。