※この作品はR-18です。

完全解呪のプリースト〜状態異常完治スキルで呪われた美少女を救うたび、俺への依存度がカンストしていく件〜【7/24第2巻発売】   作:pelca

106 / 115
第101話 誓いますか?

「――この感じだと、消えてから二十分は経ってるねぇ」

 

 魔力の残滓――あるいは魔族にしか察知できない何かを感じ取ったのか、ドロテイアがそう告げた。

 

「今から追うのは厳しいか……」

「ど、どうしよう……カナンに何かあったら、私……」

 

 カレンさんが不安を滲ませる。

 このまま何もせず帰るなんて、できるはずがない。だから俺は、彼女に向き直った。

 

「カレンさん、ここからは俺たちに任せてくれ」

「でも……」

「必ずカナンを見つけ出して、連れて帰る」

 

 カレンさんがいると、全力では動けない。

 なりふり構わず探すなら――言い方は悪いが、彼女の安全を気にしている余裕はない。家で待っていてもらうほうが、むしろ助かる。

 

「……本当に、連れ帰ってくれる?」

「ああ、約束する」

 

 俺の言葉を信じ、カレンさんは用意してあった馬車で家へ戻っていった。

 

「さて……ドロテイア、手はあるか?」

「方角だけなら大まかな位置は掴めてるよ。転移はできる。でも、そこから先の特定はアタシでも難しいね」

「メディナなら、もっと絞れるか?」

「近くまで行ければ、あるいは……」

「やるしかないな――ドロテイア、頼む」

「あいよ」

 

 今は二人の力にすがるしかない。

 少しでもカナンに近づければ、道は開けるはずだ。

 

 一度レストラン内へ戻り、俺たちはドロテイアの<アビスゲート>で転移した。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ここは――」

 

 気づけば、俺たち三人はどこかの屋根の上に立っていた。

 人目につかない位置なのは幸いだが、眼下に広がるのは見覚えのない景色だ。

 

「あっちにルミナパレス……こっちが――王城か」

 

 大きな建物の位置関係から察するに、ここは北地区。

 王城の周囲に広がる、いわゆる貴族街だ。

 

 実際、足元の屋敷も相当な広さがあり、周囲を見渡しても同じような邸宅ばかりが並んでいる。

 

「……広すぎるな」

 

 あまりに広大で、どこに何があるのか見当もつかない。

 だが一つだけ確かなことがあった。

 

「イカーンの屋敷も、この中にあるってことか……?」

 

 北方辺境伯。莫大な資産を持つ男だ。

 ならば、この中でもひときわ大きな屋敷を構えているはずだが――ここから先はメディナ頼みだ。

 

「――どうだ、わかりそうか?」

「…………」

「おい小娘、主さまが聞いているだろう!」

「ひゃい!?」

 

 ドロテイアに一喝され、集中していたメディナが飛び上がる。

 

「あんまりいじめるなよ。仲間歴でいえばメディナのほうが先輩だぞ。お前は後輩だ。ちゃんと敬え」

「ぐっ……小娘ぇ……」

 

 命令には逆らえないドロテイアが、悔しげに歯を噛みしめる。

 

「あ、あの……正確な場所までは……でも、転移を繰り返せば、レストランと同じ気配を辿れるかもしれません」

「よし、スピード勝負だ。ドロテイア、この一帯を転移しまくってくれ!」

「……あいよ」

 

 こうして俺たちは何度も転移を繰り返し、メディナが反応を示すのを待った。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「おお……これは、カナン嬢。見違えるほど美しい……」

 

 イカーンの別邸、その大広間。

 小規模ながら、催しが開かれていた。

 

 純白のドレスに身を包み、ヴェールを被った美少女が、二人の少女に裾を支えられながら中央へ進む。

 

「イカーン様。あなたのために、ウェディングドレスを纏いました」

「……素晴らしい。言葉が見つかりません」

 

 高揚を隠しきれない。

 穢れなき心も体も、これから自分のものになる――そう思うだけで、笑みがこぼれる。

 

 イカーンもまた、白のタキシード姿だ。でっぷりとした腹が目立つが、本人は意に介していない。

 

「イカーン様、式をはじめてもよろしいでしょうか?」

「ええ、お願いします――はじめましょう。私たちの結婚式を」

 

 簡易的な机の前には、神父風の衣装を纏った少女が立つ。

 手にした聖書を開き、新郎新婦へと静かに問いかけた。

 

「女神アルテミシアのお導きのもと、健やかなるときも病めるときも、互いに支え合い、高め合うことを誓いますか?」

「誓います」

 

 イカーンは即座に答えた。

 そして、カナンは――

 

「…………っ」

「カナン嬢?」

 

 カナンの唇が、小さく震える。

 本来なら、ここで迷いなく「誓います」と口にするはずだった。イカーンの思惑通りであれば。

 

 だが、その言葉が出ない。

 

「ぁ……う……っ」

「カナン嬢、私との結婚を拒むと?」

「…………でき……な、い……っ」

 

 イカーンは目を見開き、次の瞬間には高らかに笑い出した。

 

「はははははっ!! あれほど準備し、強力な『秘蹟』を施したというのに、それに抗いますか! 見事だ……さすがはベルクハルト殿の娘。その精神力、実に素晴らしい……!」

 

 しかし、このままでは目的は果たせない。

 この結婚の儀式によって、カナンを完全に縛るはずだったのだ。

 

 一度、女神アルテミシアの名のもとに婚姻を誓えば、それは強固な誓約となる。

 口約束や書面とは違い、神への誓いは容易に破れない。

 

「イカーン様、いかがなさいますか?」

 

 神父役の少女が問う。

 

「ああ……穏便に済ませたかったのですが、やむを得ません。――カナン嬢を寝室へ。ドレスを脱がせなさい」

 

 低く冷たい声。

 控えていた二人の少女が、従順にカナンへと近づく。

 

 拒絶の言葉を口にしたとはいえ、カナンはなお『秘蹟』の影響下にあり、抗えない。

 

 ――その時だった。

 ガシャン、と窓ガラスが砕け散る轟音が、大広間に響き渡る。

 

「何者だ――! 全員、集まれ!!」

 

 異変を即座に察知するあたり、辺境伯の座に上り詰めた男の勘は伊達ではない。

 別邸とはいえ、護衛は十分に配置していた。

 

 次々と扉が開き、現れたのは正装の少女たちとは異なる装いの者たち。

 黒衣に身を包み、長短さまざまな武器を手に、侵入者へ備える。

 

 割れた窓から姿を現したのは、二人の人物。

 

「――私が誰かわかっているのですか! ただでは済みませんよ! 必ず仕留めなさい!」

「「はい!!」」

 

 号令とともに、少女たちが一斉に襲いかかる。

 本来なら、その二人は瞬く間に討たれていたはずだった。

 

 目の前の少年が、静かに呟くまでは――

 

「――<完全解呪・反転>」

 

 瞬間、時が止まったかのように。

 襲いかかった少女たちが、次々と崩れ落ち、床へ倒れ伏した。

 

 

 

 

 

 

 






【★宣伝★】

7月24日に書籍第2巻が発売します!!
ぜひともご購入お待ちしています!

Amazon
楽天ブックス
一二三書房公式サイト
以下サイトはえっちな特典付きです!
ゲーマーズ
メロンブックス


作者のXのフォローもお待ちしています!
藤白ぺるかのX
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。