完全解呪のプリースト〜状態異常完治スキルで呪われた美少女を救うたび、俺への依存度がカンストしていく件〜【7/24第2巻発売】 作:pelca
あれから一週間が経過した。
俺はまだカナンと同室だった。
そして、そうなるだろうとは思っていたが、その通りになっていた。
カナンは露骨に距離を縮め、俺にくっついてくるようになり、毎晩のように求めてきたのだ。
正直、嫌なわけがなかった。
カナンは優しいし、可愛いし、性行為だって上達してきて、性的にも申し分なかった。
けれど、やはりこのままではいけない――そんな思いが胸をよぎった、その矢先だった。
「――もう我慢ならないわ! シュウ、カナン! 私の部屋に来なさい!」
ある日の放課後。授業が終わるや否や、アリーシャが声を張り上げ、俺たち二人を呼び出すと、そのまま女子寮へと連行した。もちろん、そこにはミュウミュウの姿もある。
なぜアリーシャが怒っているのか見当もつかない俺たちは、顔を見合わせて首をかしげつつも、とりあえず大人しく後をついていくしかなかった。
◇◇◇
「呼び出された理由、わかっているのでしょうね?」
相変わらず鋭い目つきのアリーシャ。
その横で、ミュウミュウが静かに紅茶を淹れてくれていた。
「えっと……わからん」
「ボ、ボクも、まったく心当たりが……」
アリーシャは、ミュウミュウの淹れた紅茶を王女らしい優雅な所作で一口含む。
静かにカップを置いてから、ゆっくりと口を開いた。
「カナン。あなた――シュウと性行為したのでしょう?」
「アリーシャちゃん!?」
突然、とんでもないことを言い出すアリーシャ。
カナンは目を見開き、今にも飛び出しそうな勢いで彼女の名を叫んだ。
「気づかれないとでも思ったの? あなた、先週からシュウにべったりでしょう。教室でも明らかに距離が近いのよ。見ていればすぐにわかるわ」
「な、何を言ってるんだアリーシャちゃん。ボ、ボクは男の子なんだよ? シュウくんだって男の子で……同性の趣味なんて、ボクにはないし」
「どうせシュウから聞いているのでしょう。私とミュウミュウが、入学当初からあなたの性別に気づいていたことを」
「あっ……う…………」
図星だった。
カナンは、あの日を境に明らかに距離が近くなった。教室でも、それは隠しきれていなかったのだろう。
けれど、まさかこうして真正面から指摘されるとは、思ってもいなかった。
「その反応……認めるのね。どちらにせよあなたが女性だって知ってるんだから、さっきの言い訳は通用しないわ。それに――ミュウミュウは前日に性行為したかどうかくらいは匂いでわかるらしいの」
「ああっ……」
ミュウミュウの顔を見てみると、少しだけ顔を赤らめていた。
この手の話題は、今でも少し恥ずかしいようだ。
「それに、あなた毎日してたでしょう!? さすがにお盛んすぎじゃないかしら!? それに、首元にギリギリ見えるかどうかのキスマークがあるのよ! 隠すなら徹底的にやりなさい!」
「あぅぅ…………」
怒涛の詰め寄りに、カナンは何も言い返せず、それだけで全てを認めているようなものだった。
とはいえ、だからといってアリーシャがここまで怒る必要があるのだろうか――
「そこの男!」
「はいぃっ!?」
そう思った瞬間、矛先がいきなり俺へ向いた。
「あなたもあなたよ……」
「な、何がだよ……俺が何かしたか?」
「……詳しくは聞いていないけれど、あなたがカナンを救ったのは事実なのでしょう。その点は素晴らしいことだと思うわ。流れで一線を越えてしまった、というのも……あなたのスキルを考えれば想像はつく」
「なら……」
正直、まだ何を責められているのか理解できない。
だがアリーシャは、みるみるうちに頬を赤く染め――
「わ、私とミュウミュウにも手を出しておいて、いつまで放っておくつもりなのよっ!!」
「……は」
アリーシャの言葉に、俺は口を開けて呆然とした。
「……や、やっぱり。アリーシャちゃんとミュウミュウちゃんにも手を出してたんだ……」
「えっと…………すまん」
「そんなことはどうでもいいのよっ!」
「いいの!?」
カナンはどうやら察していたらしい。
ひとまず謝っておいたほうがいいと思い、俺はカナンに軽く頭を下げる。だが、その様子を見ていたアリーシャが、すかさず横から鋭く突っ込んできた。
「……あなたね、私とミュウミュウをあんな状態にしておいて、放っておいたらどうなるか想像つかないの?」
「……いや……ど、どうなんだろう……」
「こっちはね、あなたが気持ちよくしてくれたお陰で、悶々悶々とした毎日を過ごしているの! わかる!?」
「あっ、あぁ〜…………」
確かに一度性行為をしてしまえば、そうなってしまってもおかしくない。
実際カナンは毎日のように求めてきたのだ。アリーシャたちだってそんな気持ちだったのかもしれない。
たとえ解呪の流れでそういった関係になってしまったとしても、責任の一端は俺にもあるだろう。
でも、今まで出会ってきた相手は、アリーシャのように感情を強く前に出して迫ってきた人はいただろうか…………思い返したら自分でも自信がなくなってしまった。
「今日、私から伝えるべきことがいくつかあります!」
ビシッと俺たちに指を突きつけるアリーシャ。
何を宣告されるのかと、思わず身構える。
「一つ。カナンは男子寮を出て、私とミュウミュウと同じ部屋で生活すること!」
「えええええっ!?」
寮は基本的に二人部屋のはずだ。
三人でどうやって暮らすつもりなのか。
「二つ。あなたの事情までは深く詮索しないけれど、どうせ男除けで男装しているのでしょう? けれど明日からは女性用の修道服を着て、女性として教会学校で生活してもらうわ!」
「えええええええええっ!?」
カナンの悲鳴がさらに大きくなる。
男装していた理由まで見抜かれていたらしい。
確かに女子寮で暮らす以上、女性に戻るのは当然の条件ではあるが……。
「そして三つ、シュウと毎日のように性行為するのは禁止! 私たちにも時間を取りなさい! 独占なんて許さないわ! それに、この男……これでも他にも女がいるらしいじゃない。どうせ毎日なんて無理になるんだから!」
「そ、そんなぁぁ……って、それアリーシャちゃんに言われる筋合いあるぅぅぅ!?」
性行為の回数については、アリーシャに言われる筋合いはないだろう。
でも、それ含めて一つ目と二つ目の措置があるのだろう。
「ちなみに、一部屋に三人で住む件は問題ないわ」
「どうするつもりだ?」
「隣の部屋をぶち抜いて四人部屋にするのよ! もう校長先生の許可も取ってあるわ。明日の授業中に業者が入って工事することになってるの。カナン、これで気兼ねなく私たちと一緒に暮らせるわね!」
「ええええええええっ!?」
アリーシャの行動力は常軌を逸していた。
王女だからこそ許された荒業なのだろう。
だが、カナンが一歩踏み出すためには、こういう強引さも必要なのかもしれない。
俺が幼児化していた頃、カナンは店に飾られたウェディングドレスをじっと見つめていた。
あれは、女性として生きたいという本心の表れだったのではないか――今ならそう思える。
将来、女性の神殿騎士を目指すのなら、女性として生きる覚悟も必要になる。
今回の件は、そのきっかけになるのかもしれない。
……ただ、カナンが男子寮からいなくなるのは、少しだけ寂しい。
「シュウくぅぅぅん……」
名を呼びながら、カナンが名残惜しそうにこちらを見る。
そのとき、アリーシャがすっと立ち上がった。
「私の言いたいことは言ったわ。――ミュウミュウ、シュウを押さえなさい」
「はっ?」
突然、意味不明な指示が飛ぶ。
だが、先ほどの発言を思い返せば――これから何が起きるのか、想像はついてしまった。
「ちょ、ミュウミュウ!?」
「シュ、シュウくん……ああ、久しぶりのこの匂い……♡」
「おまっ……」
ミュウミュウに後ろから羽交い締めするように押さえつけられると、近づいたアリーシャが俺の修道服を脱がせてきた。
「あ、アリーシャちゃんっ!?」
「見てないでカナンも手伝いなさい!」
「あ……うん」
それを横で見ていたカナンは驚いたものの、アリーシャの言葉でなぜか加勢する。
俺はあれよあれよといううちに、パンツ一枚になってしまった。
「ふふ……今日は逃さないわよ」
「逃げたつもりはないんだが……」
「う、うるさいわね。いいから今日は私たちを相手しなさいって言ってるの! このバカ!」
言いながら、アリーシャは俺のお腹に触れ、すすすと指を這わせて胸元に触れた。
俺の鍛えた筋肉を楽しむように触れていったアリーシャは、最後に俺の顎を掴み、そのままキスをした。
「わ、わっ……アリーシャちゃんが……」
カナンも他人と俺が絡んでいる姿を見ることになるとは思わなかったのだろう。顔を赤らめつつも、目が話せないようでじっと見つめていた。
「ふふ、カナン。あなたも自由にしていいのよ。さすがに三人相手じゃ、このバカも屈服するしかないでしょう?」
コイツ、いつSになったんだ。前にした時はあれほどMだったくせに……。
「ああ、もう好きにしてくれ」
俺は力を抜き、アリーシャに従うことにした。
するとミュウミュウは耳や首元にくんくんと鼻を近づけて舌を伸ばし、カナンも俺の胸元に顔を寄せていった。
こうして俺は三人の女子に弄ばれ――この日は疲れ切った後に寮へと戻った。
◇◇◇
翌日。
この日は俺一人で登校し、教室でとある人物を待っていた。
アリーシャもミュウミュウもすでに登校している。
だが、いつも俺の隣に座っているはずの人物だけが、まだ姿を見せていなかった。
『うおおおおお……っ』
『誰だ? あんな子いたか?』
『とっても可愛い子……』
教室の外がざわつく。
理由は、俺にもわかっている。
やがて、静かに教室の扉が開いた。
その人物は、もじもじと落ち着かない様子で、ゆっくりと中へ足を踏み入れる。
「――は……おいっ……お前……っ」
俺たち三人が静かに見守る中、後方の席にいたガイツが思わず声を上げた。
彼女の正体には気づいていなかったらしい。
「え……!?」
「嘘だろ!?」
取り巻きのダッドとモリスも同様だった。
「あはは……カナン・アルトリアです。みんな、改めてよろしくね」
「「「はああああああ〜〜〜っ!?」」」
特別クラスは少人数だ。
だが、その場にいた全員が、挨拶したカナンに驚きの声を上げた。
無理もない。
カナンが身に纏っていたのは、女性用の修道服。
さらに薄く施されたメイクも相まって、どう見ても美しい少女になっていたのだ。
とことこと歩み寄り、カナンはいつも通り俺の隣の席へ腰を下ろす。
「シュウくん。今日でボクは男子寮にはいられなくなるけど……最後の日もよろしくね?」
「ああ。よろしくな、カナン」
恥ずかしさを滲ませながらも、彼女は晴れやかな笑顔を見せた。
「カナンちゃん、とってもお綺麗ですっ」
「メイクはまだまだね。週末にいろいろ教えてあげるから覚悟しておきなさいっ」
「ふふ。二人とも、ありがとう」
男装していた頃と変わらず髪はまだ短めだ。
それでも、圧倒的な美少女が現れたと、噂はあっという間に校内へ広まった。
もっとも、アリーシャが常に隣にいるせいか、軽々しく話しかけてくる男子はほとんどいない。教会学校とはいえ、王族に気安く声をかけられる者は少ないらしい。おかげでカナンも余計な相手をせずに済んでいた。
アリーシャは女性の友人が一人増えたことが嬉しいようで、どこか笑顔が増えた。
これから三人での寮生活がはじまるのだろうが、五年間共に過ごしてきた仲だ。心配はいらないだろう。
こうしてカナンは男子寮を去り、女子寮での新しい生活をはじめた。
カナンがいなくなった俺の部屋はガランとしていて少し寂しいが、結果的にこれで良かったのだろう。
――と、思っていたのだが、カナンはちょくちょく俺の部屋を訪れては、そのまま平然と泊まっていくのだった。