※この作品はR-18です。

完全解呪のプリースト〜状態異常完治スキルで呪われた美少女を救うたび、俺への依存度がカンストしていく件〜【7/24第2巻発売】   作:pelca

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第2話 前世

「――ねえ、修治ったら聞いてるの!? ここ、間違ってるよ」

「聞いてるって! うるさいなぁ……もうちょっと静かに言えよ」

「わ、私はあなたのために教えてるんだからねっ! あなたがちゃんと聞いてないからいけないのよっ」

 

 大声を出してはいけない図書室の机に並んで座る男女。

 高校最初の中間テストで赤点を取った俺――灰島修治は、幼馴染で同級生の日下部六花に勉強を見てもらっていた。

 

 昔から優等生で、男女問わず人気のあった六花は、なぜかいつも俺の面倒を見てくれている、姉のような存在だった。

 口が悪く、勉強も運動もさほどできない俺。漫画やゲームくらいしか取り柄はない。

 

 そんな俺に、彼女はいつも付き合ってくれていた。

 

「…………」

 

 隣で真剣に勉強する六花。その横顔はまさに美少女という言葉を具現化したような存在で、長いまつ毛が影を落とす。

 

「なぁに? ……ずっと私の顔見て」

「……お前の横顔――綺麗だと思って」

「は、はぁ!? いきなり何を言うかと思えば……修治らしくないっ」

 

 六花は顔を真っ赤にして俺をポコポコと殴る。

 そんな彼女は、俺にとって――ずっと憧れだった。

 だからこの先も太陽みたいに輝いていくものだと思っていた。

 

 けれど、運命はあまりにも理不尽で――

 

「あ〜、ははは……。私、ガンだって。ステージ四! もう治らないみたいっ」

 

 真っ白な病室の中、ベッドに横たわる六花が冗談みたいに笑って言った。

 

「は……なにお前笑ってんだよ……なんだよ、なんなんだよっ!!」

 

 悲しいはずなのに笑顔を浮かべる彼女の気持ちが理解できなくて、俺は怒鳴ってしまった。

 

「ふふ。ごめんね修治。もう、一緒に学校通えないや」

「……クソっ! クソ、クソっ! なんで、何もできない俺じゃなくて……何でもできるお前なんだよっ!」

 

 神様を、本気で恨んだ。

 

 六花には未来があった。

 良い大学に行って、稼げる仕事をして、素敵な恋をして――幸せになるはずだった。

 

 それを全部奪ったのが神様で。

 何もできない俺だけが取り残された。

 

「――修治、私の分もたっくさん生きてね。もう、最後だから言うね…………そのぶっきらぼうな口調も、たまに見せる笑顔も、実は優しいところも……全部、大好きだったよ……」

 

 六花が最後の遺した言葉は、最高の贈り物でもあり、呪いのようでもあった。

 

 一ヶ月後、六花はこの世を去った。

 俺はその喪失を胸に、涙を振り払い、勉強をはじめた。

 

 ――医者に、なるために。

 

 よくある理由だ。

 助けられなかった人の代わりに誰かを助けたいという、そんな気持ち。

 故に俺は医者を目指した。

 

 けれど、三浪しても医大には届かなかった。

 自分の無力さを痛感した。

 

 だからだろうか。

 最後、何もできない俺が誰かのために生きたいと思ったのは。

 

 その日、横断歩道を歩く一人の女子小学生にトラックが突っ込んでいった。

 俺は咄嗟に飛び出していた。小学生を突き飛ばし、俺が代わりに――――

 

 次の瞬間、耳に届いたのは、まるで女神様のような優しい声。

 神様なんてクソ喰らえだと思っていた俺に、なぜか届いた。

 

 

 ――お医者さんになりたかった優しいあなたに、次の人生を与えます。

 

 ――プリースト。それが次の人生の、あなたの職業です。

 

 ――特別にあなただけが使えるスキルを授けました。

 

 ――ただ、本当に特殊な力なので、少しだけあなたから対価をいただきました。

 

 ――研鑽を積み、一人でも多くの命を救いなさい。

 

 ――あなたの歩む道が、天の導きと共にありますように。

 

 

 気がつけば、知らない森の中で目を覚ましていた。

 

 すぐ近くにあった綺麗な川から反射した自分の姿を見た。

 そこに映っていたのは十二歳頃の小さな自分の姿だった。さらに髪は黒から灰色に変わっていた。

 

 そんな俺を拾ってくれたのは、近くにあった辺境の村・イアシスに住むミレイスターという老夫婦だった。

 

 厳しくも優しい二人の愛に包まれながら、俺はこの世界で、人を救う者として――新たな人生を歩み始めたのだった。

 

 

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