※この作品はR-18です。

完全解呪のプリースト〜状態異常完治スキルで呪われた美少女を救うたび、俺への依存度がカンストしていく件〜【7/24第2巻発売】   作:pelca

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第24話 想像外

「――なあ皆。俺を助けてくれた、あのシュウって呼ばれていたヤツは、一体何者なんだ?」

 

 自分の剣を取り戻し、魔石の回収を終えたグレンは仲間たちに問いかけた。

 感謝の念は当然ある。命を救ってもらったのだから、頭を下げても足りないほどだ。

 だが、それ以上に――あの存在は異常だった。

 

 自分たちが力を尽くしても歯が立たなかったゴブリンクイーンを、あの灰髪の少年は、まるで子供の相手でもするかのように一人で圧倒していた。

 長い冒険者生活の中で数多の強者を見てきたが、あれほどの存在は記憶にない。

 それなのに名前も聞いたことがなければ、冒険者ギルドに登録されていた形跡もない。

 修道服姿で剣を振るうというちぐはぐさも、なおさら得体の知れなさを際立たせていた。

 

「私たちも、昨日初めて会ったんだよ」

「ポワンの飯屋でな。グレンの話をしていたら、イリスって子が声をかけてきて……」

「聖女候補だと聞きましたので、神のお導きに違いないと……」

「――聖女候補? あの白い服を着ていた子か。……でも戦闘中、何もしていなかったように見えたが?」

 

 グレンの記憶にあるイリスは、戦場の端でじっと様子を見ていただけだった。

 魔法を使う素振りもあったが、シュウが一瞬で敵を戦闘不能してしまったため、その必要すらなかったのだ。

 

「そうですね。ですがグレンも見たでしょう? ――すべては、あのシュウさんによって終わったことを」

「ああ。……だからこそ不思議なんだ。イリスが聖女候補というのは納得できる。けれど、あの少年の正体は……」

「イリスさんによれば、東の果てにある魔郷の森から来たそうです」

「は……? 魔郷の森だと?」

 

 エリナの言葉にグレンの眉が跳ね上がった。

 強力な魔物しか棲まないとされるその森は、冒険者の間では近づいてはならない禁域として有名だった。

 人が住むどころか、生きて帰ることすら難しい場所。

 これまでは空想上の話だと思っていたが、シュウの実力を見せられると、途端に現実味を帯びてくる。

 

「はい。あの力を見れば、納得せざるを得ません。……会話した感じ、森の外の常識はほとんど知らないようでした」

「ふむ……。だが悪いヤツには見えなかったな」

「そうだね。むしろ、不器用だけど真っ直ぐな感じがした」

「何者かは、あとで本人に聞けばいいさ」

「同感だ」

 

 グレンを含め、一同は興味津々という顔を隠さなかった。

 しかし、その興味をさらに上回る驚きが、彼らを待っていた。

 

 ◇◇◇

 

 牢から救い出された女性たちの治療が終わり、俺は一息ついていた。

 そこへ大量の魔石を抱えて戻ってきたグレンたちが現れた。

 その中でも、グレンが腕に抱えていたのは、ダチョウの卵ほどもある紫色の魔石。おそらくゴブリンクイーンのものだ。ワイバーンの魔石よりも一回り大きい。

 

「ど、どういうことですか……!?」

 

 解放された女性たちの姿を目にして、一番に声を上げたのは神官のエリナだった。

 彼女らの顔は本来の美しさを取り戻し、呪いの影はどこにも残っていなかったからだ。

 

「俺が治した。全部な」

「イリスさんは呪いだと……故に術者以外には解呪できないはず。そんな呪いを解けるだなんて……」

「――俺には<完全解呪>ってスキルがある。どんな状態異常でも回復できる。それで治したんだ」

 

 簡単に告げると、場にいた全員が息を呑んだ。

 反転の指輪の効果は言えないが、このスキルだけでも十分常識外れだ。

 

「そんなスキルが……やはり、あなたは……」

「エリナ、どういうことだ?」

「彼女たちが受けていた呪いについて説明します――」

 

 エリナが、囚われていた女性たちが受けていた仕打ちを語る。

 聞くにつれて、グレンの表情は険しくなり、握りしめた拳が震えていた。

 

「……許せねぇ」

 

 怒りを押し殺すように呟いた。

 

「まずは全員を村に連れて行きましょう。少し休みをとってから、彼女たちの身に何が起きたのかを私が聞きます。教会を頼れば一時的な保護もしていただけるでしょう」

「君がイリスか」

「はい、及ばせながら聖女候補と呼ばれています」

「……助けてくれて感謝する」

「私は何もしていません。感謝するならシュウ様へ」

「そうか……だが礼は言わせてくれ」

「律儀な方ですね」

 

 簡潔なやり取りの中にも、互いの信頼が芽生えていくのを感じた。

 

 彼女たちは心身ともに消耗しており、歩くことも大変だろう。

 俺たちは彼女たちを交代交代馬車に乗せて休ませながら、徒歩で村へ戻ることを決めた。

 

 ◇◇◇

 

 道中、俺は一人の少女に声をかけた。

 

「なあ」

「ひゃいっ!?」

 

 話しかけただけで跳ねるように驚かれる。

 俺は苦笑して肩をすくめた。

 

「別に何もしねえよ。治したのは俺だろ?」

「は、はい……。助けてくださって、とても……嬉しかったです」

 

 小さな声だったが、ちゃんと会話はできそうだ。

 

「名前は?」

「……メディナ、です」

「いい名前だな。人を助けるような響きだ」

「人を……助ける?」

 

 彼女はこれまでゴブリンを操り、人を傷つけてきた。

 だからこそ俺の言葉は意外だったのだろう。

 

「俺の故郷にはメディカルって言葉があってな。医学や医療を意味するんだ。お前の名前はそれに似てる」

「医療……」

「俺も昔は医者を目指してたんだが、頭が足りなくてなれなかった。でも今はプリーストだ。……お前を治したスキルを授かってな」

「……すごい、お方です」

「すごいのはスキルだ。俺はただの一般人だよ」

「それでも……すごいです」

 

 メディナは頑なに首を振った。

 聞けば十四歳だという彼女は、俺より三つ下だが、ずっと幼く見えた。

 

「親は?」

「いません」

「……俺も今は同じだ。けど、親代わりはいる。お前も、そういう人を見つけられるといいな」

「……見つかるでしょうか」

「お前は可愛いからな。きっとすぐだ」

「かっ……可愛い!?」

 

 顔を真っ赤にし、慌てて手で隠す姿に、俺はつい意地悪したくなった。

 

「可愛いぞ。メディナは可愛い」

「や、やめてください……っ」

「かわいい、かわいい。かわいい」

「やぁぁぁっ!?」

 

 その様子を面白がっていると――

 

「シュ・ウ・さ・まぁぁぁぁっ!!」

 

 背後から鋭い声。

 振り返ると、イリスが物凄い形相で仁王立ちしていた。

 

「お前、いつから見てた!?」

「最初からです! ……シュウ様は幼い子が好きなのですか?」

「いや、お前だって背低いし似たようなもんだろ」

「つまり私のことも好きだと!?」

「好きとは言ってねえ!」

 

 妙に突っかかるイリスに頭を抱える。

 イリスはおそらく百五十センチほど。それに対しメディナは百四十センチ後半といったところだろう。

 俺からすれば似たりよったりの身長だ。

 

「それでも! ……あんなに私のお胸を吸ったのに」

「お胸……?」

「ばっ……バカかお前は! こんなところで言うなよ!」

 

 余計なことを暴露され、顔が熱くなる。

 メディナはきょとんとしながらも、自分の小さな胸を見下ろし、暗い顔をした。

 

「……私、小さい……」

「これから成長するさ」

「ふふふ……やはり私の方が圧倒的ですね」

「年下相手にマウント取るな。ほんとに聖女候補かよ……」

「聖女級のお胸、と呼んでください!」

 

 まさか本物の聖女も胸がデカいとか言わないよな……。

 やれやれ、とため息をつきながらも、妙に和やかな空気が流れていた。

 

 ◇◇◇

 

 数時間歩き、ようやくポワンの村が見えてきた。

 

「…………なあ、なんで魔物が一体も出ないんだ?」

 

 道中、魔物が一体も現れなかったことにグレンが首を傾げたが、それは俺が<完全解呪・反転>を即座に発動していたせいだ。

 近づく魔物は俺に気づかれた途端、その場に倒れていることだろう。

 

 村に入った俺たちは、一つしかないという教会へと向かった。

 ――これからが本番だと、胸の奥で小さく呟きながら。

 

 

 

 

 

 





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