※この作品はR-18です。

完全解呪のプリースト〜状態異常完治スキルで呪われた美少女を救うたび、俺への依存度がカンストしていく件〜【7/24第2巻発売】   作:pelca

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第31話 冒険都市ハレスへ

 最後の村を出立した俺たち。

 

 ある程度の時間を共に過ごせば、旅の在り方も自然と変わっていく。

 当初は俺がすべての魔物を倒していたが、ある時、グレンから真剣な提案があった。

 

「――シュウ。今まで君が知らないうちに片づけてくれていたんだろうが、せめて俺たちにも戦わせてくれないか。ハレスの事件に関わる以上、協力は当然だ。俺たちの力を知っておいて損はないはずだ」

「……なるほどな。じゃあ、これからは魔物も普通に襲ってくるだろうし、しばらくはグレンたちに任せるとするか」

「助かる。正直、休み過ぎて体が鈍りそうで困ってたんだ」

 

 そんなやり取りがあったのは数日前のこと。

 それ以来、魔物が現れた時は『銀の刃』の面々に任せるのが、俺たちの決まりとなっていた。

 

「――グリーンリザードだ! 数は四! 戦闘態勢!」

 

 ハレスまで残り一日という距離に迫った頃。

 御者台にいたグレンが魔物を発見し、仲間たちに声を飛ばすと同時に馬車から飛び降りた。

 

 グリーンリザード――それはワイバーンから翼を失わせ、小型化させたような魔物。

 人間の二倍近い体躯を誇り、鋭い牙と長大な尾が凶器そのものだった。

 

「――<プロテクト>、<ストロング>!」

 

 神官エリナが光属性の防御支援と攻撃支援の魔法を展開する。

 

「来るぞ、ガロ!」

「うおおおおっ!」

 

 二体のグリーンリザードが正面から突っ込む。それを迎え撃つのは、大盾を構えたタンク・ガロ。

 衝撃音とともに二体は弾き飛ばされ、左右に躱した別の二体がリシア目掛けて突進する。

 

「させるか!」

 

 グレンが駆け出し、鋭い足さばきで一体の懐へ潜り込むと、宝剣を振るって前脚を斬り払う。

 体勢を崩した一体は隣の個体に激突し、突撃は失敗に終わった。

 

「グレン、下がって! ――<フレアボム>!」

 

 リシアの詠唱とともに、灼熱の火球が生まれる。

 下級魔法の<ファイアボール>をはるかに凌ぐ、中級火魔法。

 放たれた巨大な火球は、二体のグリーンリザードをまとめて呑み込み、爆炎と共に焼き尽くした。

 

「――――ッッ!!」

 

 断末魔の咆哮を残し、二体は黒煙に溶けて消えた。

 残るは、ガロに吹き飛ばされた二体のみ。

 

「――行きます! <ホーリーランス>!」

 

 エリナが空に手を掲げると、光の槍が空中に幾本も生成され、一直線に敵へと放たれた。

 鋭い閃光が一体を貫き絶命させるが、もう一体は血を流しつつも致命傷を逃れ、逃走を試みる。

 

「逃がすか――!」

 

 グレンが追撃。だが距離はまだある。

 その瞬間、彼は宝剣を振りかぶり、低く呟いた。

 

「魔技――<虚刃《きょじん》>」

 

 次の瞬間、空間そのものが断ち切られたかのように、グリーンリザードの身体が左右に裂け、地に崩れ落ちた。

 

「おいおいおい、なんだ今の! ズルだろ、ズル!」

 

 遠目に見ていた俺は、あまりの光景に目を見開いた。

 あれは、剣の間合いを無視した不可視の斬撃。魔力の刃そのものじゃねえか……!

 

「皆、お疲れ。いい動きだった」

 

 戦闘を終えたグレンが仲間を労い、馬車へと戻ってくる。

 

「なあ、さっきの技……どういう仕組みなんだよ」

「<虚刃>のことか。あれは、剣そのものを魔力で延長し、間合いを無理やり伸ばして斬る魔技だ」

「でも刀身が見えなかったぞ」

「魔力は本来、目に見えるものじゃない。見えるのは魔法として具現化された時だけだ。魔技は身体や武器に纏わせるものだから、基本的には不可視なんだ」

「……今ので五メートル以上はあったように見えたが」

「そうだな。俺の限界は六、いや七メートル程度だろうな」

 

 ――とんでもねえ。

 俺の<エアスラッシュ>も遠距離攻撃は可能だが、風魔法ゆえに緑色の斬撃が可視化されてしまう。

 だが<虚刃>は完全に見えない一撃。奇襲力という点では上かもしれない。

 

「言っておくけどシュウ、魔技は誰でも使えるものじゃないの。魔法とは違って、完全にオリジナル……個人の鍛錬と才能次第。グレンの<虚刃>も、これまで積み上げた努力の賜物よ」

「へえ……そういうもんなのか」

「そうだ。俺のように魔法を扱えない人間が、必死に鍛えて辿り着く境地だ。シュウのように魔法の才がある者は、普通なら必要としないだろう」

 

 リシアの説明に、グレンが静かに頷いて言葉を添える。

 

 ――オリジナルの技。人によって形が異なる一撃。

 

 俺の胸は、ぞわりと熱くなった。

 これは……鍛えれば、俺にしかできない魔技を編み出せるってことだよな。

 

 ……面白そうだ。

 やってみる価値はあるかもしれない。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 それから俺たちは、時折現れる魔物を討伐しつつ、数時間ほど歩みを進めていた。

 

 もうそろそろ、目的地である冒険都市ハレスに到着する。

 そう思った矢先だった。

 

「――ねえ、ちょっと寄り道してもいいかしら? もうすぐハレスだし、少しぐらいなら構わないでしょ」

 

 そう言ってニヤリと唇を吊り上げたリシアは、馬車の進路を左へと切り替える。

 俺たちは顔を見合わせつつも従い、さらに三十分ほど馬車を進めると、目の前に現れたのは大きな山の麓だった。

 

「リシア、どこまで行くつもりなんだ?」

 

 すでに俺たちは急ぎの旅程から外れ、多少の余裕を許す空気になっていた。だが説明もなく山道へ連れ込まれれば、さすがに問いたださずにはいられない。

 

「ふふ、黙ってついてきなさい。もうすぐ着くから。絶対驚くわよ」

 

 まったく人を焦らすのが得意な女だ。だが、危険な気配がまったくないことから悪いものではないと判断し、俺は大きなため息をつきながらも、結局リシアの後を追うことにした。

 

 そして数分後――。

 ふいに視界が開けた瞬間、空気の温度がわずかに上がったような感覚を覚えた。

 

「シュウ! 着いたわよ!」

 

 リシアが声を弾ませる。その視線の先を見て、俺は思わず叫んだ。

 

「おっ、温泉だとぉぉぉぉっ!?」

 

 もわりと立ち上る白い湯気。

 直径二十メートルはありそうな乳白色の泉が、静かに湯気を吐き出している。

 天然の温泉――まさかこの世界でお目にかかれるとは思っていなかった。

 

「ふふふ。ハレスに着く前に一風呂浴びましょ。スッキリしてから行った方が気持ちいいじゃない?」

「最高だよ、リシア!」

 

 村では火魔法で温めた水浴びや、川で体を洗うことはあったが……。

 やはり温泉の存在は俺にとって特別らしい。

 

 中央にそびえる大岩を境に男女別で入浴するとのことで、見張りは「シュウがいるから必要ないわ」とリシアが即決。こうして全員そろって湯に浸かることとなった。

 

「あ゙あ゙〜〜〜……これぞ極楽……」

「そうか、シュウは知らないんだったな」

 

 隣で肩まで湯に沈めるのはグレン。そして、さらにその横には、圧倒的な筋肉量を誇るガロ。岩のような腕と胸板に湯が流れ落ちるさまは、まるで獣神の像だ。

 

「温泉ってのはな、穴場にこうして点在してるけど……水園都市ラグアに行けば、街中にいくつも天然温泉があるんだ」

「なんだって!? そんな夢のような街があるのか……!」

「ははっ、ただし誘惑も多い。王国内一の風俗街に、カジノ、悪質な勧誘……大金を持ち込んだ旅人が一晩で身ぐるみ剥がされる、なんて話もザラさ」

 

 歌舞伎町とかラスベガスみたいなイメージだろうか。

 ともかく誘惑が多い街のようだ。俺は温泉だけ楽しめりゃ十分だ。

 

 

「……イリス、本当に大きいのね。よくこのサイズで普通に生きてこられたわね」

「ふふ、聖女候補ですから……」

「いや、それ関係ある?」

 

 岩を挟んだ向こう側から、女性陣の声が聞こえてきた。どうやらリシアがイリスの爆乳を見て感嘆しているらしい。

 

 俺も見たことがあるからわかる。あれはもはや人類の宝だ。大きさは言うまでもなく、肌の白さ、きめ細やかさ、そしてほのかに漂う甘い香り……。

 

「わ、私も……早く大きくなりたいです」

「ふふ、大丈夫ですよ。メディナちゃんもきっとすぐに」

「エリナ様も結構大きいです。羨ましいです」

「そ、そうでしょうか? 私なんて普通ですけど……」

「なにその自慢。私なんてこの歳になってもメディナとほぼ変わらないんだから!」

「リシアには可愛いお顔があるじゃないですか。胸なんて身体の一部にすぎませんよ」

 

 なるほど……どうやら女子陣は女子陣で胸トークを繰り広げているらしい。

 

「はは、やっぱ女も気にするんだな」

「差を突き付けられりゃ、そりゃな」

「だが結局大事なのは愛だろう? 大きさなんて関係ないさ」

 

 と、ここでグレンがリシアの惚気を語り出したので、俺は話題を変えようと口を開きかけ――

 

「ぎゃああああああっ!?」

「な、なんだ!?」

 

 突然、女性陣の方から絶叫が響いた。エリナの声だ。さらに――

 

「きゃあああっ!」

 

 メディナの悲鳴。

 

「緊急事態だ、グレン!」

「わ、わかった!」

 

 俺は即座に<エアブースト>を発動。風を纏って一気に跳躍し、岩を飛び越えて女子側へ――

 

「きゃああああああああっ!?」

 

 飛び込んだ瞬間、目に映ったのは――四人の裸体。

 不可抗力だったとはいえ、リシアとエリナまで見てしまった。

 

 ……グレン、すまん。

 心の中で謝罪を済ませると同時に、俺は叫んだ。

 

「何が起きた! 大丈夫か!?」

「ク、クモです! 岩に大きなクモがっ……! わ、私……虫がダメなんです!」

「………………」

 

 拍子抜けする理由に俺は固まった。

 虫くらいどこにでもいるだろ。

 

「ああ、これか」

 

 岩肌に張り付いていた小さなクモを手でつまみ、<エアブースト>で遠くへ飛ばしてやった。クモは殺しちゃいけないみたいな迷信があるからな。

 

「これで平気か?」

「は、はい……ありがとうございます……」

 

 言いながら、エリナの顔がみるみるうちに赤くなっていくのがわかった。

 近くにいたグレンも、イリスの大きな胸を見たからか、どこか恥ずかしげにしていた。

 

「あ、あの………………」

「終わったなら早く戻りなさいよね! バカッッ!!」

 

 エリナは俺の下半身から視線を逸らせず、頬を朱に染めてもじもじと身を縮めていた。

 一方のリシアは顔を真っ赤にしながら、堪えきれぬ衝動のまま俺の頬をパシンと叩いた。

 

 本気を出せば簡単に避けられたが――それはしなかった。

 恋人の裸を覗かれる羽目になったグレンへのせめてもの償いとして、そのビンタを甘んじて受け入れることにした。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 温泉を出た後、馬車は再びハレスへ向かう。馬車が分かれていたおかげで、気まずさは最小限で済んだ。

 

 そして――数時間後。

 

「あ……」

 

 前方に、高い城壁と巨大な門が姿を現した。

 

「あれが……冒険都市ハレス」

 

 四大都市の一つと称されるだけあり、その規模は遠目に見ても圧倒的だった。

 

 ここからはじまるのは、ウンディル・ブルドグ大司教を巡る事件。

 イリスの願いに応えるため、俺はついにこの地へと足を踏み入れる。

 

 何が待っているのか――想像もつかない。

 だが胸は高鳴っていた。

 

 この異世界での旅は、まだはじまりに過ぎない。

 待ち構える試練は容易ではないだろう。だけど仲間と共に歩む限り、恐れる理由はない。

 

 遠きイアシスの村を思い浮かべながら、俺は胸を張り、冒険都市ハレスの門へと堂々と歩を進めた。

 

 

 

 




ということで、第二章これで終了です!
ここまで読んでいただきありがとうございます!

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書籍第一巻も4月24日発売されるので、ぜひともご購入お待ちしています!

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