※この作品はR-18です。

完全解呪のプリースト〜状態異常完治スキルで呪われた美少女を救うたび、俺への依存度がカンストしていく件〜【7/24第2巻発売】   作:pelca

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第33話 冒険者ギルド

「――デケェ……」

 

 ここ、エインフィリア王国で四大都市の一つに数えられているという冒険都市ハレス。

 

 遠目に見たときから圧倒されていたが、門の前まで来ると、その巨大さはもはや壁のようで、思わず直角に首を反らすほどだった。

 

 俺たちが辿り着いたのは東門らしい。どうやら東西南北それぞれに門が設けられているそうで、それだけでもこの街の規模がいかに桁外れかが分かる。

 

「ん……? グレンか! グレンじゃないか! それに、『銀の刃』の皆まで!」

 

 門の警備に立っていた衛兵の一人が、御者台に座るグレンを目にすると、驚いたように声を張り上げて駆け寄ってきた。

 

「ジルべ。久しぶりだな」

「お前たちがゴブリン討伐の依頼から戻ってこないって、街もギルドも大騒ぎしてたんだぞ!」

「ああ、色々あってな……だが、なんとか無事に帰ってこれたよ」

 

 ……どうやらグレンは相当顔が広いらしい。それも単なる知り合いの多さではなく、人望そのものが厚いのだろう。

 Bランク冒険者ともなれば、この巨大都市の中でも上位に位置する存在だという。グレンたちがこれほど有名なのも納得だ。

 

「そっちの若いのは……お前の知り合いか?」

「ああ。こいつは俺たちを助けてくれた恩人だ。名をシュウという」

「そうか! 君が! 本当にありがとう! 俺からも礼を言わせてくれ!」

「あ、ああ……」

 

 ……すげえな。

 他人の生還をここまで全力で喜んでくれるとか、グレン、お前どんだけ慕われてんだよ。

 気づけば俺はジルべって衛兵に両手でガシッと握手されていた。

 

「それと……その馬車……どこかで見た覚えが――って、これは盗難被害にあった馬車じゃないかっ!?」

「ぁ…………」

 

 一瞬でバレた。

 そう、この馬車はイリスが逃走の際に奪ったものだ。森の近くに馬ごと放置されていたのを見つけ、俺たちはそのまま使いここまでやってきた。

 正直、これは……かなりマズい。

 

「わっ、私の馬車ーっ!!」

 

 そこへ現れたのは、少しふくよかな体型をした男。

 ゼェゼェと息を切らしながら駆け寄るや否や、俺たちの乗っている馬車を指差して叫んだ。

 

「……盗まれた本人――商人のモグモさんだ」

「この野郎! 貴様らが私の馬車を盗んだ犯人かぁ!」

 

 ジルべの説明のあと、モグモという男が怒りを爆発させる。確かに怒るのは当然だ。

 けど、俺はこうなることを想定して、あらかじめ準備しておいたものがある。

 

 ――商人なら、尚更好都合だ。

 商人が好きなものは決まっている。金だ。多分。

 

「悪い……俺の仲間が事情あって盗んじまった。だが、これで許してもらえないか?」

 

 俺は革袋を差し出した。

 

「……私を買収しようってんですか? そんなものに乗るとでも――って、どええええええっ!? な、なんですかこれは!!」

「ワイバーンの魔石だ。これで手打ちにしてくれないか?」

「ゆ、許すも何も……これ一つで馬車どころか、商会を拡張できてしまいますよ! そ、それに……まさか、あなたがこの魔石を……?」

 

 袋の中身を見た瞬間、モグモが仰天した。

 ワイバーンの魔石――それ一つで馬車が何十台も買えるほどの価値があるらしい。

 

「ああ、俺が仕留めた。もし足りないなら、もう一つ渡してもいいぞ?」

「も、もう一つ!? な、なな、なにをおっしゃいますか! これ以上は逆に困ります! これ一つで十分、いや、それ以上です! もし余分にいただいたら、こちらからお返しをしなくてはならなくなりますよ!」

 

 ……やっぱりワイバーンってすごい価値なんだな。

 まだ少し手持ちの金はあるが、この街で換金しておくべきかもしれない。

 

「なら良かった。馬車はこのまま借りても構わないか?」

「もちろんですとも! それどころか、今後はぜひ私とお付き合いください! この馬車はモグモ商会が責任を持って管理します。あなた様が必要とあれば、いつでも無料でお貸しします! 南地区に商会がありますので、部下たちにも伝えておきますから」

「本当か。それは助かる。モグモ、これからよろしく頼むよ」

「ええと……」

「俺はシュウだ。シュウ・ミレイスター」

「シュウ様……! こちらこそ、よろしくお願いいたします!」

 

 力強い握手を交わし、俺は馬車をモグモに託した。

 必要な荷物だけ取り出し、俺たちは徒歩で街の中へと進むことに。

 

「イリス……お前、今にも捕まるところだったぞ」

「は、はい……本当に助かりました。シュウ様には、いつも……」

「まあ、でも良かったよ。盗んだ相手が、まともな商人で」

 

 馬車の中に隠れていたイリスも、ホッと胸を撫で下ろしている。変装しているとはいえ、彼女は聖女候補。そんなヤツが逮捕でもされたら、かなりの汚名だろう。

 

「ジルべ。この三人の身元は俺が保証する。問題ないな?」

「グレンが言うなら……だが、身分証は持っているか?」

「いや、ないな。まずはギルドで発行してもらおう」

 

 この街では身分証が必須らしい。

 けれどイリスは元々この街で暮らしていたはず。どうしていたんだろう。

 

「私は服と杖が身分の証明代わりでしたから……身分証の発行は必要ありません」

「ってことは、それだけで信じられてたのか。やっぱり聖女ってのは特別なんだな」

「私はまだまだです。名ばかりですから……」

 

 謙遜するイリス。

 けど、やっぱり聖女候補ってのは桁違いに扱いが違うんだな。

 

 

 そうして検問をクリアした俺たち。

 門を抜けた先に広がっていたのは、石畳の大通り。木造の建物はほとんどなく、整然と並ぶ石造りの建築物ばかり。これまで訪れた村々とは比べ物にならないほど洗練されていて、まさしく都市と呼ぶに相応しい光景だった。

 

「まずは冒険者ギルドに行こう。身分証の発行もあるしな」

 

 グレンに先導されて向かったのは、大きな木製の扉を構えた建物。

 扉を開けば、中には冒険者たちが溢れ、依頼書を吟味する者、仲間と打ち合わせをする者……それぞれが思い思いに過ごしていた。

 

「おい、グレンじゃないか!」

「本当だ! 『銀の刃』が揃ってるぞ!」

「生きてたのか!」

「やっぱりゴブリンなんかにゃやられねえと思ってたぜ!」

 

 瞬く間に人だかり。冒険者たちが次々と駆け寄り、グレンたちの無事を喜んでいる。

 ……衛兵にも慕われていたが、冒険者の間でもこんなに人気があるらしい。

 

「皆、心配をかけた。俺たちは無事だ」

「本当に死んだんじゃないかって噂が流れてたんだぞ!」

「……色々あったんだ。まずはギルドマスターに報告したい。通してくれ」

「ああ、わかった――ん? 連れがいるのか?」

 

 冒険者たちの視線が俺たち――いや、俺へと注がれる。

 グレンや『銀の刃』の面々に向けられていた温かい眼差しとは違い、俺にだけはどこか刺すような視線だった。

 

「……その服。お前、教会関係者か?」

「ん、どういう意味だ?」

「中に着てるの、修道服だろ?」

「まあな」

 

 修道服くらい誰でも着てると思うが……何か違うのか?

 

「おい、お前ら。変な目で見るな。シュウは教会には所属していない。事情があって特殊な生まれなんだ。俺たちの恩人だ。……まあ、ちょっと目つきは鋭いけどな」

 

 一言余計だが、グレンはしっかり俺をかばってくれた。

 

「シュウがいなかったら俺は死んでいたかもしれない。いや、絶対に死んでた。だから、シュウとも仲良くしてやってほしい」

「そ、そうか……グレンにここまで言わせるとは……悪かったな、あんちゃん。俺たち冒険者はな、教会関係者ってだけで敏感になっちまうんだ」

「敏感?」

「ああ。奴らは信用ならねえ。治療費は高額、寄付金は強制、裏じゃあくどい商売をしてるって噂も絶えねえ」

 

 恨みが滲む口調だった。

 ……まあ、その通りだ。ブルドグの性ビジネスに、ゴブリン運用。既にあくどいの域を超えている。

 

「ともかくだ。シュウは俺の恩人だ。こいつを侮辱するなら俺が黙っちゃいないからな」

「グレン、よくわかったよ。……シュウと言ったな、これからよろしく頼む」

「俺の方こそ、よろしく」

 

 その男と固く握手を交わしたところで、ようやく受付へと辿り着く。

 

 

「――グレンさん! それに皆さんも……! 入口が騒がしいと思っていましたが……あなた方なら納得です!」

 

 対応してくれた受付嬢は、興奮した様子でこちらを見た。

 オリーブ色の長い髪を赤いリボンでまとめ、落ち着いた雰囲気の中に華やかさを兼ね備えている。受付嬢の中でも特に目を引く美人だった。

 

「リーナ。心配をかけたな。俺たちは無事だ」

「本当に……ギルドマスターなんて、あなた方のことが心配で奇声を上げていたくらいなんですよ」

「……それは悪かったな」

 

 グレンは苦笑しながら頭を下げる。

 そして後ろを見ると――リシアの表情が露骨に曇っていた。グレンが別の女性と親しげに話しているのが気に入らないらしい。……それに、胸のサイズも負けてるしな。

 グレンはイケメンだし、さぞや女性にモテることだろう。リシアも大変そうだ。

 

「じゃあ、リーナ。まずは依頼完了の報告と――」

 

 そしてグレンが俺に視線を送り、口にする。

 

「――身分証の発行だ。こいつを冒険者登録してやってくれ」

 

 

 

 

 

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