※この作品はR-18です。

完全解呪のプリースト〜状態異常完治スキルで呪われた美少女を救うたび、俺への依存度がカンストしていく件〜【7/24第2巻発売】   作:pelca

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第80話 選択授業・修道士コース

「な、なぜアタシがこんな格好を……」

「わ、わたしも……すっごく恥ずかしいです……っ」

 

 翌日の昼。

 必要な書類の確認もひと通り終わり、ドロテイアとメディナを教会学校へと呼び出していた。

 

 そして、二人がそろって困惑しているのには、当然ながら理由がある。

 彼女たちにはメイド服を着てもらっていたのだ。

 

 アリーシャの侍女であるリゼットが使用人として学校に出入りしている。

 その話を聞いたとき、暇を持て余しているこの二人にも、俺の使用人として学校生活を手伝ってもらうのがいいと判断した。

 

 ドロテイアに関しては……まあ、半分はお仕置きのつもりだ。

 細かい雑務をするなど、彼女にとっては屈辱以外の何ものでもない。

 ――はずなのだが、俺の言うことなら嬉しそうにするので、結果としてほとんど罰になっていないのが現実だった。

 

 一方メディナには、<隠密>スキルがある。

 学校内で何かトラブルが起こった時、近くにいてくれれば確実に助かる。

 なので二人には離れた家ではなく、使用人用の寮に泊まり込みで俺の身の回りをサポートしてもらう方針にした。

 

「主さま……この服、分厚くて動きにくいよぉ……」

「下着みたいな格好で校内うろつかせるわけにはいかないだろ。我慢しろ」

 

 ドロテイアの普段の服は、胸と下だけ隠したほぼ下着同然の格好。

 神聖を重んじる教会学校で、魔族がそんな姿で歩くなんてあり得ない。

 

 用意したメイド服は、メディナの方はクラシックな長い丈のもの。

 だがドロテイアは体格に合う服がなく、コスプレに近い、少し露出多めのメイド服になってしまった。

 それでも普段の姿に比べれば、比喩抜きで常識的になったのだから、十分マシと言える。

 

「ってことで、悪いが……さっそくこの服、洗濯お願いな」

 

 <ピュリフィケーション>で服を洗うことはできるが、匂いまで完全に消えてしまう。

 できれば柔軟剤の良い匂いがした方が嬉しい。

 便利な魔法にも、普通の生活の良さが失われる欠点はあるのだ。

 

「メディナ。ドロテイアが変なことしたら遠慮なく言えよ」

「は、はいっ」

「ふんっ。こんな小娘に何かしやしないよ。……主さまがお仕置きしてくれるってんなら、しなくもないけどねぇ」

「……面倒くさいこと言うなよ。じゃ、逆にしばらく放置してやるか」

「そ、それだけはやめてくれぇ! 身体がおかしくなっちまうよぉ!」

 

 定期的に精気を摂らないと不調になる――魔族としてのドロテイアの特性。

 他人から吸わせるわけにはいかないので、俺が管理するしかない。

 

「それと、学校の飯はタダらしい。好きに食っていいぞ」

「はいよぉ」

「わ、わかりましたっ」

 

 そんなわけで、洗濯物第一号として、俺は自分の服を二人に託したのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 「――今日は特別講師として、かつて成績トップを維持し続けていたエリナ・クラインさんに指導していただきます」

 

 翌日。選択授業――俺は回復魔法が中心の修道士コースを受講してみることにした。

 

 そこにはアリーシャとミュウミュウも参加しており、さらに驚くことに特別講師としてエリナが現れたのだ。

 冒険者をやっている身で大丈夫なのかと心配になるが、実際に本人が壇上に立っている以上、問題ないのだろう。

 

「皆様、はじめまして。エリナ・クラインです。理由があって教会学校は中退しましたが、在学中は成績だけは常にトップにいました。今日は皆様のお力になれるよう、できる限り指導したいと思いますので、どうぞ遠慮なく質問してくださいね」

 

 エリナは今年二十歳。冒険者歴は五年と言っていた。

 つまり学校に在籍していた期間は短い。それでもトップだったというのだから、本当に努力家だったのだろう。

 教会で働いていた経験もあると言っていたから、学業と仕事を両立していたわけだ。そう考えるとますます凄まじい。

 

「ふふっ」

 

 俺の存在に気づいたエリナは、控えめに微笑んでこちらに視線を寄越す。

 

「エリナ先生……美人すぎる……」

「なあ、今こっち見たよな!? 俺の方見たよな!?」

 

 冒険者であることは伏せているのだろうが、その人気は凄まじい。

 登場した瞬間から、男子たちは完全に浮き足立っている。

 

「では、今日はエリナ先生と一緒に授業を進めていきますからね」

 

 担当の女性教師の声が響き、俺たちは説明の場から移動することになった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 辿り着いたのは、学校内にある治療室のような広い区画だった。

 ずらりと並んだ数十台の治療用ベッド。その上には――見慣れない“何か”が横たわっている。

 

「なんだ、あれ……」

「みゃっ、それは治療人形ですよっ。魔物の皮膚で作られた特製の訓練用人形なんです。ああしてあらかじめ傷がつけてあって、回復魔法をかけると実践練習になるんですっ」

「へえ……そんな便利なのがあるのか」

 

 てっきり治療院に手伝いに行く程度だと思っていたが、まさか専用の人形まで用意されているとは。さすがは教会学校というべきか。

 

「では、今からグループごとに訓練を行います。私が呼んだグループに分かれてください」

 

 案内された先で、俺は同じ特別クラスだからか、アリーシャとミュウミュウと同じ班になった。

 

「あぁもう……あなたと一緒だなんてツイてないわ」

「ア、アリーシャちゃん……」

「気にすんな、ミュウミュウ。いつも通りでいいぞ」

 

 アリーシャは俺を見た瞬間、露骨にそっぽを向く。

 理由がわからない以上、追求しないのが正解だろう。

 

 それに、アリーシャはエリナの存在を知っているはずだ。

 言葉を交わしてはいないだろうが、王都までの旅は一緒だったからな。

 

「では、一人ずつ順番に回復魔法を使いましょう。他の人はその回復速度、効果範囲、威力……あらゆる項目を十段階で評価し、最後にアドバイスをしてあげてください」

 

 ふむ、そういう形式か。

 けど俺、回復魔法なんて全部適当でやってきたぞ……?

 光らせて傷塞いで終わり、みたいな。不安しかない。

 

「じゃ、じゃあ……わ、私からいきますっ!」

 

 ミュウミュウが勇気を振り絞って手を挙げ、治療人形の前へ進んだ。

 

「い、いきます――<ヒール>!」

 

 光がぱっと広がった瞬間、俺は目を疑った。

 

「……なんだこれ。めっちゃ可愛いんだが」

 

 ミュウミュウの<ヒール>は、俺の知る回復魔法とまるで違った。

 手元に生まれた光が、まるで肉球みたいな形になっている。

 光が可愛い。癒やし系のビジュアルだった。

 

「シュウくん、知らないんですか? 回復魔法って、光の形をイメージすると効果が伝わりやすいんですよ」

「マジで……?」

「あなた、本当に知らなかったの? これだから田舎者は……っ」

 

 田舎者は認めるが、ババアやアミリア、そんなことしてたっけ……?

 

「お、終わりました! ど、どうでしょう……?」

「ミュウミュウ。光の形は可愛いし悪くないわ。でも狙いが一点に集中しすぎ。ほらここ、まだ傷が残ってるでしょう?」

「あっ、本当だ……アリーシャちゃん、ありがとうございますっ!」

 

 王女だから授業なんて流していい立場だろうに、彼女は驚くほど的確に指摘する。

 この完璧主義……生まれつきなんだろうか。

 

「で? あなたはどうなの。ミュウミュウにアドバイスしなさいよ」

「……俺?」

 

 やべえ。考えが一つも浮かばねえ。

 とりあえず思いついたことを言ってみる。

 

「えーと……その……レベルって、大事だよな?」

「あなた……ぶち殺すわよ?」

「す、すんませんでしたぁ!」

 

 王女の気品など一切ない。

 鋭い瞳で射抜かれた瞬間、俺は反射的に謝ってしまった。

 

 レベルの暴力でここまで戦ってきた俺にとって、剣ならまだしも回復魔法は専門外だ。威力と速度だけはあると思うが、肝心の技術というものがまるでわからない。

 

「じゃあ次は私がやるわ。あ、さっきのミュウミュウは六点ね」

「はいぃぃっ!」

 

 ……あれで六点? 思っていたより高いじゃないか。

 それで俺はいったい何点を付けられるのだろう。

 

「いくわよ――<ヒール>」

 

 アリーシャが別の傷に手をかざし、回復魔法を放つ。

 すると、その光がふわりと形を取りはじめた。

 

「へえ……」

「な、何よその顔っ。文句でもあるの?」

「いや、ないない」

 

 アリーシャの<ヒール>は――ハートマークだった。

 可愛い。めちゃくちゃ可愛い。

 

 普段は俺の前でぷんすかしているくせに、こういうところを見ると、可愛いものが好きなのかもしれない。

 ミュウミュウの肉球ヒールよりも、精度と速度は明らかに上だ。

 

「どう? 点数をつけてもらえる?」

「は、はいっ……私的には指摘するところは……その……ありません。なので――」

「ちょっと待て」

 

 ミュウミュウは十点をつける気満々だった。

 だが、俺の目には回復した皮膚にわずかなシワが見えた。

 

「なによ」

「ちょっと傷、触るぞ」

 

 そう言って、アリーシャが治した傷に指先を押し当てる。

 ほんの少し力を込めると――

 

「あっ……」

 

 アリーシャもミュウミュウも気づいていなかった。

 一見完璧な回復に見えても、皮膚の深層までは治っていない。つまり、威力不足だった。

 

「思いっきり押したわけじゃないからな」

「っ……そんなの、わかってるわよっ…………でも、指摘してくれて助かったわ」

「お、おう……」

 

 あれ、素直だ。

 絶対に噛みついてくるタイプだと思っていたのに、真面目に受け止めてくれるらしい。

 案外、可愛いところもあるのかもしれない。

 

「ミュウミュウが六点なら……七点ってところだな?」

「……いいえ、五点よ。ミュウミュウのは完全に治ってたもの」

「アリーシャちゃん……!」

「お前がそれでいいなら、まあ」

 

 忖度はしない主義らしい。

 俺を田舎者呼ばわりしたりもするが、変な差別意識はなさそうだ。

 アリーシャのことがますます謎になってくる。

 

「じゃあ、次はあなた。やりなさいよ」

「はいはい」

 

 俺は治療人形を裏返す。

 まだ治っていない傷がいくつか残っていた。

 

「じゃあ――<ヒール>」

 

 軽く魔力を流したつもりだった。

 しかし――

 

「きゃああっ!?」

「な、なんですかっ!?」

 

 人形全体が光に包まれた。

 ミュウミュウやアリーシャのように光が形を取る暇もなく、全ての傷が一瞬で再生していく。

 

「――こんなもんだろ」

 

 所要時間三秒。

 ミュウミュウは三十秒、アリーシャは十五秒で一つの傷だけを治した。

 俺は三秒で全部だ。

 

「あ、あなた……どういうこと!? ドーピングでもしてるの!?」

「こ、こんな<ヒール>……見たことありませんっ」

 

 ドーピングってなんだよ。

 そういや、ブルドグが巨大化した時も似たようなものだった気はするが。

 

 他の生徒たちもこちらを見てざわつき出した。

 気づけば神殿騎士コースの実技みたいな空気になっている。

 

「ふふ……さすがはシュウさんですね」

「エリナ……先生」

「あら。先生と呼んでくれるのですね」

「まあ、あまり軽んじるわけにもいかんしな」

 

 セイラに言われたばかりだし、エリナの権威が落ちるのだけは避けたい。

 一応、先生と呼んでおく。

 

「話では聞いていましたが、とんでもない威力です……」

「まあ、俺のレベル知ってるなら、予想つくだろ」

「ええ……」

 

 エリナは俺のレベルを知っている。

 問題は、知らない他の生徒たちだ。

 これだけの威力を見せつけられて驚かない方が無理だ。

 

「あ、あなた……今の、何をしたのよっ」

「いや、<ヒール>だけど」

「う、嘘! そんなの……そんなの、聖女様でも……!」

 

 どうやら聖女の回復魔法を見たことがあるらしい。

 上級の<セイントヒール>は複数人を回復できると聞いたが、俺は下位魔法で同じ事ができる。

 そんなことを言ったら、アリーシャが間違いなく発狂する。

 

「アリーシャさん。彼は私と旅を共にした仲間です。……あのメンバーにいた理由、あなたも理解できるでしょう?」

「す、すみません、取り乱しましたっ……そ、それは、わかっているのですが……」

 

 エリナに言われると、アリーシャは急に敬語になった。

 わかりやすいというか、露骨というか。

 

 しかし、それはそれとして、さっきから気になっていることがある。

 俺にもあの光の形は出せるんだろうか。少しだけ興味がある。

 

「――それで、アリーシャ。俺は何点だ?」

「っ! ゼロ点よ!!」

「なんでだよっ!」

 

 忖度どころか、完全にアリーシャの私怨アリアリの点数だった。

 

 

 

 






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