完全解呪のプリースト〜状態異常完治スキルで呪われた美少女を救うたび、俺への依存度がカンストしていく件〜【7/24第2巻発売】 作:pelca
「シュウ。今日も稽古お疲れ。はい、タオル」
「……ありがとう」
さらに数日後。魔物との戦闘訓練もあるが、基本的には家の前での稽古も続けている。戦う相手は魔物だけではない。人と戦うこともあると言われ、対人戦についても教わっていた。
そして、稽古が終わり、家の前の水場で汗を流していた俺にタオルを持ってきたのはアミリアだった。
彼女は治療を終えた当日から元気いっぱいで、本当に病気だったのかと思うほど元の生活に戻っていた。
ただ、それからというもの、アミリアの様子がどこかおかしいのだ。
今日だってそうだ。教会の仕事をする前だとはいえ、こうして朝、タオルを持ってきてくれたり、とにかく優しいのだ。
今までこんなこと一度もなかったはずなのに……。
汗を拭き終わり、適当な切り株に腰を下ろすと、同じく隣に腰を下ろしたアミリアに一つ聞いてみた。
「なあ、どうしたんだよ。アミリア、お前ちょっと変だぞ」
「へ、変じゃないわよっ」
しかし、アミリアは答えを教えてくれないのか、そっぽを向いてしまった。
「前まではこんなことしてくれなかったじゃねーか」
「そ、そうかもしれないけど…………わかるでしょ。私、あなたに命を救われたんだから……」
アミリアは俺に恩を感じているらしい。
彼女は巫女候補で、ババアの後を継ぐ存在。
この村には他に巫女候補はいないようで、もしアミリアがいなくなれば、この村を守護する聖獣ケリュネイアとの盟約の更新もできなくなる。
アミリアはそういうプレッシャーがあったのかもしれない。
「俺はこのスキルを持ってるからな。だからそのお役目みたいなもんが、俺に回ってきただけ。もし俺じゃないやつがこのスキルを持っていたなら、そいつがやっていただろう。だから俺はお前を助けたのはたまたまだ」
「シュウって時々面倒くさいよね」
「な、なんでだよっ」
スキルがすごいだけで、俺はすごくない。
だからそこまで感謝しなくてもいいと伝えたつもりだったのだが、アミリアからは思ったものとは違う言葉が返された。
「…………私のおっぱい……たくさん揉んだんだよね」
「えっと……うん」
「密着して、汗だくの私の匂いをたくさん嗅いだ」
「そ、それはしょうがなくて……」
「扉の外にまで、私の恥ずかしい声が漏れてた」
「それは俺のせいじゃなくて……」
「シュウは、私の恥ずかしいところ、たくさん見た」
「そうだけど……」
自分で言っているのに、恥ずかしそうに頬を赤らめるアミリア。
いつもならもっと怒ったりして俺を叩いたりしてくるくせに、今日はそれがない。
「どう、だったのよ……」
「どうって……」
「わ、私の体――胸よ……三十分も揉んだんだから、わかるでしょ」
「え、えっと……そりゃあ、柔らかくてすごかったけど」
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
感想を言った瞬間、アミリアの頭からプシューッと湯気が吹き出たかのように顔が真っ赤になった。
人に言わせておいてこいつは……。
「へ、へえ……そうなんだ。私のおっぱいを揉みしだいて、いい思いをしてたんだ」
マジでなんなんだよこの会話。
恥ずかしいなら話題にするなよ。
アミリアはまだこの会話を続けるつもりらしい。
そう思っていたのだが、その話は別の方向へとカーブして――
「…………シュウってさ、この村から出ていくの?」
「まだ、わからねえ。……でも、出ていく可能性の方が高いだろうな」
この世界に来てからというもの、俺は前世での小さな頃を思い出すかのように好奇心がくすぐられることばかりだ。
この村だって、世界でいうと端っこにある辺境の村だって言うし、せっかく異世界に来たのなら、他の街や国だって見てみたい。
でも、ずっとこの村にいてはそれは叶わない。
今は村を出るきっかけがないだけだが、きっかけさえあれば、俺は出ていくだろう。
「……じゃあさ、シュウが村を出ていくまで……出ていくまででいいから…………私とたくさんデートしてよ」
「…………マジ?」
「マジ……だよ」
こちらをまっすぐに見つめるアミリアの瞳は揺れていて、恥ずかしがっている表情を含めて、あまりにも可愛かった。
ウィンプルから覗くストレートの青髪が、朝日に照らされて、いつもより綺麗に見えた。
村で一番可愛いアミリアにそう言われて、嬉しくないわけがない。
「出ていかないで」とは言わなかった……言えなかったのかもしれない。
本当のところの気持ちなど俺にはわからない。
でも、そう言ってくれたアミリアの気持ちには応えたいと思った。
「わかった……いいぜ、デートしよう。でも俺、そういう経験なんてないに等しいから、変なことをしても怒るんじゃねーぞ」
「ふふ、ありがとう…………じゃあ――」
次の瞬間、俺の左頬に柔らかな感触が伝わった。
アミリアからのふいのキスだった。
「デートって、そういうこと、すんのか……」
「いつか離れるなら、恋人とか恋人じゃないとか、そんなことどうでもいいの。私は巫女の役目があるから、結局は長くこの村を離れられない。――だから、シュウがいる間だけでも、こういうデートっぽいこと、たくさんしたいな……」
あまりにも可愛いアミリア。
もじもじしている様子がさらに俺の心をキュンとさせる。
「手、出して……」
「こうか?」
「うん……」
すると出した左手に触れたアミリアは、そのまま指を絡め、恋人繋ぎをした。
アミリアは満面の笑みを浮かべ、この日の朝は、しばらくこのままでいるのだった。
この時から俺とアミリアは、正式な恋人……とは言えなかったが、村や森でデートを繰り返し、仲を深めていった。
俺に転機が訪れるのは、それから二年後のこと。
ある人物が村にやって来たところから、俺の運命は大きく動き出すのだった。