転生したら術式が『無為転変』だったので禪院直哉をメスオナホにする 作:禪院直哉虐待委員会
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与幸吉の治療を執り行ってから数日、お届け物でーす、なんてふざけた調子でアポもなしに現代最強がやってきて、小包を置いていった。ガムテープで包装された段ボール。箱の端っこに『GOJO』のロゴとデフォルメされた目隠しのマークが刻んであって、無駄な手の混みようにちょっとむかつきながらも箱を開けると、中身は注文通り。
「——呪胎九相図一から三番、確かに」
部屋の中一人、僕は呟く。
ガラス瓶に入れて保管された異形の胎児たち——呪胎九相図。そのうちでも特に強烈な呪いを持った一から三番。ずっしりと手に重たいガラス瓶の内側には、強烈な呪いが渦巻いている。人から外れた異形の姿は——それが単なる人の仔ではなく、人と呪霊の
明治初頭。現代から振り返れば百五十年近く前のこと。とある不幸な女性がいた。彼女は人間でありながら——恐るべきことに、呪霊の仔を孕むことができる特異体質だった。
人と呪霊の混合——あり得ざる懐妊が齎したのは人とも呪霊ともつかぬ異形の仔。それを産んだ女性は当然のように迫害され——その先で、とある寺に駆け込むことになる。
その寺こそ——明治時代、史上最悪の呪詛師として名を馳せることになる男、加茂憲倫が住職を務める寺であった。
当然のように、憲倫は彼女に目をつける。呪霊の仔を孕むことができる人間、史上類を見ない希少な体質は——呪詛師によって利用され尽くされる。
九度の妊娠。九度の堕胎。その果てにその女性がどうなったのかは、歴史には刻まれていない。あるいは刻むことさえ、死者への冒涜であると秘されたのか。
いずれにせよ——残ったのは、九つの呪物。
九度の妊娠、九度の堕胎。その果てに生み出された、九体の
そんなものを、お願いしてからたった数日で届けてくれたあたり、五条さんも無茶をしたらしい。上層部との溝は広がっただろう。彼はそんなことを気にするタマではないだろうが……だからこそ、周りは大変だ。
改めて、僕は瓶を観察する。
「なんともまあ……」
本人たちの手前言わないけれど——悪趣味、としか言いようがない。人倫を踏み躙っているのは当然——生命の摂理、魂そのものに対する冒涜としか言いようがない。ただでさえ呪霊との混血として生み出されながら——それを呪物として
そう——僕の手のひらの上にあるガラス瓶。この内側に封じられた胎児たちは——生きている。この有り様でありながら、その有り様にされながら、それでも未だ強く魂を保ち——誕生を控え、耐え忍んでいるのだ。与えられた残酷に、孤独に——地獄に、今もなお。
事実——呪物、呪胎九相図のうち、一から三番を除く残り六つは、長きにわたる封印に魂が耐えきれなかったのだろう、その魂が崩壊し。死亡していた。一応、五条悟の『眼』でも確認はしてもらったけれど……四番以降に関してはもう、今は呪力があるだけの状態、としか言いようがなかったらしい。
想像してみよう、ガラス瓶に閉じ込められ、動くことも話すことも、光を見つめることさえもなく、百五十年——ただじんわりと、ゆっくりと、他の兄弟たちの魂が弱っていくことを感じながら、生きながらえる。その絶望を。
「……あ、だめだ。なんか本当に憂鬱な気持ちになってきた」
勝手な想像で鬱になってりゃ世話もない。僕は慌てて首を振る。
取り返しのつかない過去をばかり考えたって仕方がない。それよりは、ポジティブなことを考えよう。そう——その地獄だって、今日で終わるのだ。僕が——終わらせる。終わらせて、みせる。
「さて——やるか」
ことり、とガラス瓶を床に置いて、その上に手をかざす。まずは一番——三つの瓶の中でも最も強く、安定を保った魂から——受肉を、開始する。
その前に。
「——蘭太」
「はい!」
障子の向こう、部屋の外の縁側に控える従者に声をかける。こちら側からはその影しか見えないけれど——彼の名は禪院蘭太。禪院家が誇る呪術師部隊——そのうちでも、呪術高専基準で準一級以上の実力者によってのみ構成されたエリート部隊、『炳』の所属。その中でも比較的若年で、また思想的にも禪院家のそれに染まり切っていない……まあつまり、
そんなわけで、いつものように室外に控えていた彼に、僕は声を掛ける。
「今から少々術を使う。中が騒がしくなると思うけれど、決して入らないようにね」
「畏まりました!」
「また、今から僕が自発的に外に出るまで、絶対に誰も……たとえ当主であっても中には入れないようにして欲しい。僕の命だと言えば大丈夫なはずだから」
「畏まりました! 命に換えても厳守いたします!」
「うん、そこまで気張らなくてもいいけど、よろしくね」
返事に満足し、僕は頷く。
念のための保険をかけつつ、改めて瓶に——その内側の胎児に向かい合う。
「さてさて……上手くいくといいのだけれど」
呟きながら、瓶にそっと手を伸ばす。瓶に——その内側の胎児の、その魂に。挨拶をするつもりで、ほんの少し、指先だけを近づけて——
触れた、瞬間。
「っ——! 刺々しいね、どうも」
激しい抵抗。魂が——僕の接触を強く拒んでいる。呪物として固定された状態で、呪力なんて碌に操れないだろうに、それでも激しく、必死になって——魂への干渉を防ごうとしている。
「僕は敵じゃあないんだけど——って言っても仕方がないか」
それは百五十年、積み重なり続けた呪いなのか、あるいは、長男ゆえの底力なのか。
「大丈夫。僕は、きみを傷つけるつもりはない」
魂の抵抗を——あえて受け入れる。魂同士の干渉は、当然、受け入れれば僕にとってもダメージだ。いつものように、魂に傷はついてないから無効デース、なんては言っていられない。そのものずばり魂へのダメージで、微小であろうとも傷は傷。痛むし、苦しいけれど——なに、この程度は。
痛みを堪えながら、ただ魂に触れ続ける。害意はないと証明するために。僕の術式——無為転変があれば当然、無理やり魂に干渉し、押さえつけることもできるのだけれどなるべくそれはしたくなかった。感情的な話ではない。単純に——これから彼らを受肉させるに当たっては、彼ら自身の協力をも必要だからだ。
抵抗する魂を押さえつけながら無理やりやるには——リスクが高すぎる。僕はそう判断した。
受肉——呪物によるそれは、原作では生きた人間の肉体を乗っ取って行われるそれだった。それこそ主人公たる
翻って——僕がこれから行おうとしているそれは原作のそれとはまったく違う。
まずもって、生きた人間という『器』を、僕は用意していない。
無論、僕の所属は禪院家。『どうなっても問題がない』生きた人間を三人ばかり用意することは容易い。けれど——それはしたくなかった。これから受肉する彼らに余計な罪を押し付けたくなかったというのもあるし——
『——一人で怪物になろうとするな』
……あんなことも、言われてしまったし。
なら、できる限りはね。
抵抗に耐えて、じっと魂に触れ続けていれば、そのうち抵抗が薄れてくれる。単純に疲れたのか、あるいはこちらに害意がないとわかってくれたのか。後者であると信じて——僕はその魂に干渉を始める。
「——『六道』『流転』『菩提樹の根本』、術式順転・無為転変」
祝詞を用いての、最大出力。全神経を集中して——呪胎九相図一番、
今は胎児の形に押し込められ、それでありながらも強く、強く強くその輝きを保ち続けた美しき魂。
それを——解きほぐしていく。大丈夫。すでに二回、僕は似た事象を乗り越えている。一度目は自らの姉の魂を、二度目は与幸吉の魂を、それぞれ、僕はあるべき形に変えることができた。だから——今度だって。
脹相の魂を拡張する。胎児の肉体から——少しずつ。成長を早回しするように、魂の形を幼児へ、子供へ——変化させながら、同時、最大出力で
術式を順転させながらの反転術式の行使。右手と左手を同時に使う、なんてレベルの話じゃない。右に進みながら左に進むような、前を向きながら後ろを見つめるような、極限の矛盾。けれどそれを無理やりに克服して——ただ、光を。
反転術式のアウトプット。これこそが、今回敢行する
反転術式。呪術の世界においては主に肉体の治療に使われる『正』の力を持ったエネルギーだけれど、これの本質は『治療』ではない。
魂の設計図——それに従って、『正』のエネルギーによって
そう、僕はこれを自らの術式と併用することで——
そう、理論上、それは可能なはずなのだ。森羅万象は、魂によってその形を定められている。まず魂ありき。それこそがこの宇宙の法則であり——で、あるのならば。
できるはずだ。魂はそこにある。
脹相。兄弟たちの死を看取りながら、孤独の百五十年を耐えた強靭なる魂。それはここに確かに
言うは易く、されど、その難きは極限。
もとより人の形を知らず、胎児の体のまま百五十年、凝り固まった魂に人の形を与えるのさえ、それは『器』という模倣の元無くしては絵筆も紙もなく宙空に図画を描くが如し難儀。
それに加え——彼らは人と呪霊の混血。彼らの半分は呪霊であり、そうで在るが故に正のエネルギー——反転術式は
彼らの人としての部分と、呪霊としての部分。混じり合ったその二つを見極めながら、片方には反転術式を、そしてもう片方には順転の呪力を、それぞれ流し混みながら肉体を形作っていく——普通に考えて、こんな荒技は成立しない。どこかで破綻し、魂を殺してしまうか、人にも呪霊にもなれない怪物として産み落としてしまうか。二つに一つ。けれど——そこに彼自身の、脹相自身の『生きたい』という願いが乗るのならば!
できるはずだ。信じろ。己を——何より目の前にいる彼自身を! 百五十年の孤独を耐え抜き、兄弟たちの手本となるべく生まれてきた『兄』の底意地を——信じろ!
汗を流し、術式の酷使から脳にダメージを受け、鼻から血を流しながらも——僕は彼の肉体の創造をやり遂げる。
少しずつ、光の中に魂は人の形を描き——それに伴って、反転術式の『正』と、順転呪力の『負』を吸収して——肉体が構築されていく。
骨が、肉が、血が、肌が——順を巡り、魂を包んでいって——
「——これは……」
ぱちり、とその目が開く。
僕はその黒い瞳に挨拶をする。
「や、おはよう、脹相。気分はどう?」
問い掛ければ、その人物は信じがたいことが起きたとばかりに目を見開き——そして次の瞬間、土下座をする。
え、何事?
「受肉の恩義、果てしなく。伏して感謝の意を示す」
「え、うん。どうも?」
「その上で——どうか頼む」
言いながら、彼は震える手で、近くにあった残る瓶二つ——壊相と血塗のそれを僕に差し出す。
「どうか——弟たちにも受肉を! 俺が差し出せるものならなんでも差し出す、だから——」
「オーケイオーケイ」
ヒートアップし始めた脹相を宥めて、瓶を受け取る。
「大丈夫、元からそのつもりだから」
「本当か!? なら——」
「すぐにでも、ね。わかってるよ。出来ることなら、きみにも協力してもらえると嬉しいな」
「出来ることがあるならば、なんでもする!」
「心強い。それじゃあ——呼びかけてあげてほしい。きみの兄弟たちに。それが、彼らの肉体を形作る力になるだろうから」
そして——脹相の暑苦しい雄叫びが木霊するなか、僕は残り二人の受肉もやり遂げる。壊相と血塗に関しても——原作とは違い、異形の要素を残す体ではなく、兄たる脹相と同じく、人同然の姿へと。肉体を構築し——この世に生まれる手伝いをする。
そして——
「やっと——出会えた」
目の前で、脹相、壊相、血塗の三人が、輪になって抱き合い、涙を流している。
僕はもうすっかり呪力がすっからかんで、マジで今だけは絶対誰も近くに来ないでくれよ——主にメロンパンとか直哉とか——と祈りながら壁にもたれかかる。頼れるのは襖の向こうの蘭太だけだ。突然中から知らん人の声がし始めてびっくりしてるだろうけれど、びっくりしながらでいいから僕を守ってくれ。
それにしても——
「悪くない眺めだ」
抱き合う三人を見ながら呟く。
仲睦まじきは良きことかな。僕自身、二人の姉を持つ三姉弟の一員だ。どことなく、シンパシーを感じる。
ひとしきり、彼らは誕生の喜びを分かち合い——そしてそれが終わると、代表して脹相が前に、三人揃って僕の元へやってくる。
「俺たちを受肉させてくれて——この世でこうして会わせてくれて、本当に感謝する、呪術師よ。よければ、名前を伺いたい」
「ああ、どうも。僕は——禪院真十という。歓迎するよ。ようこそ——人の世へ」
言って片手を差し出せば、その手を両手で握りしめられる。「ありがとう」と感謝の言葉と共に。なんか照れくさいな、どうも。
「それでその、受肉に関しては、感謝しているんだが……」
「うん? 何かあった?」
「いや、その……」
言いながら、脹相は——
「なぜ俺たちは、
そう、九相図兄弟——いや、今は姉妹というべきか。
大和撫子然とした長い黒髪に、ややダウナーな三白眼。愛らしいアヒル口を困ったように尖らせて、大きな胸を恥ずかしそうに腕で隠しながら、受肉したてで全裸の女性——脹相はもじもじとこちらを見ている。
残りの二人に関してもまた似たように。
尋常ではないダイナマイトボディ——高い背に、でかい胸、でかい尻。その麗しい肉体を恥ずかしげもなく晒す、短い黒髪の女性——壊相。
小さな背丈に、小さな胸尻。完全なロリ体型に、子供らしい無邪気な顔立ち。青緑のセミロングヘア。——血塗。
呪胎九相図三兄弟は——今や見目麗しき三姉妹。
なぜ、と聞かれても——
「僕の趣味?」
「おい」
言えば、脹相が怒気をあらわにする。
「そう怒んないでよ。どうどう。いや、趣味もあるけどさ、真面目な話——モチベーションの問題があったんだって」
僕は頭をかきながら弁明をする。
「モチベーションだと?」
「そう。大事な話だぜ、モチベーション。君たちの受肉がただならぬ難行だったってのはわかってくれるだろ?」
「それは……ああ」
「君たちの魂をあるべき形に整えて、そこに反転術式と順転呪力を同時に注ぎ込む——僅かなミスが即死に繋がる状態で。そんな状態じゃ——気の持ちよう、モチベーションだって成否に関わってくる」
だからこそ——僕は彼女らを女体で受肉させた。
その方が、僕のモチベーションが上がるから。
「男の体を作るより、女の体を作る方がずっとテンションは上がるからね。そっちの方が、成功しやすいと判断した。事実、三人とも完璧に成功してるだろ?」
性別が女になっている以外、三人の体は完全に人の形をしている。見た目も中身も。原作のように異形の要素が残っているということは一切ない。これなら彼らも——大手を振って人の世で生きていけるはずだ。
「……そうか。なら、納得する」
言って、脹相は引き下がってくれた。
「だが、もしもお前が弟たちの尊厳を凌辱しようというのなら、命を賭してでも反抗するぞ」
鋭い瞳で、彼女は僕を睨みつける。まあ別に、僕も無理やりそういうことをするつもりはないけれど……。
「頑張ったんだしさ、ご褒美にちょっとくらいおっぱい揉ませてくれたりしない?」
「ダメだ」
「壊相ちゃん、ダメ?」
「……私は、別に胸くらいいいが……」
「ダメだ!」
「じゃあ血塗ちゃんは?」
「いいぞ!」
「ダメだ!!」
そっと手を伸ばそうとしたら、脹相にはたき落とされた。ケチ。
「どうしてもというのなら俺のにしろ」
「じゃあ遠慮なく」
言って、脹相のおっぱいを揉む。うんうん、いい手触りだ。さすが、僕が設計しただけはある。
「……手つきがいやらしい」
「当たり前でしょ、いやらしいことしてんだから」
もにもにと揉み続ければ苦情が入る。あ、やばい、勃ってきた。流石にヤらせて……はもらえないだろうな。
「ま、いいや。うん、だいぶ回復した。もうしまっていいよ」
「しまっていいよって……服もないんだが」
「あ、そうか。おーい、蘭太ー、服持ってきて! 女用、三着! でかいのと普通のとちっちゃいの!」
「畏まりました!」
たったった、と気配が縁側を走っていくのを感じながら、僕は脱力する。
「……おい、真十……お前まさか、己の欲を満たすために俺たちを受肉させたわけじゃないだろうな」
「なわけないでしょ。僕の信頼度、急落しすぎじゃない?」
さっきまであんなに殊勝に感謝してくれてたのに。
「それはそれ、これはこれだ。恩は返すが、そのために弟たちの尊厳を犠牲にはできん」
「その言葉が聞けて安心したよ。僕も——なんの意味もなくきみらを受肉させたってわけじゃない。恩を返してくれるってんなら万々歳さ」
僕は笑顔で言った。
「何をさせる気だ?」
「ま、そう難しいことじゃないよ。きみたちには——きみの弟の助けになってほしいんだ」
「? なんだその当たり前の話は」
「弟って言っても、そこの二人じゃない。四人目の——いや、きみにとっては十人目の弟だ」
「十人目……?」
彼は疑問符を浮かべる。それも当たり前の話。これまで九人で頑張ってきたところにいきなりそんなことを言われても困惑するだろう。
「——加茂憲倫」
僕はその名前を口に出す。
「現代では史上最悪の呪詛師と呼ばれている男——知っているね?」
「当たり前だ」
恨み骨髄、という表情で彼は頷く。ある意味では——己の『親』とも呼べる存在。彼ら兄弟が『呪い』として固定され、百五十年、苦しむこととなった元凶。その名を聞かされ——穏やかではいられないのだろう。
荒波立つ彼女に——僕は追撃をする。
「やつは未だ——この現代にも生きている」
か、と。脹相たちは目を見開く。
「詳しく教えてくれ」
「詳しく……と言っても、僕も知ることは少ない。やつが他者の肉体を乗っ取り、成り替わる術式を持っていること。本体は『羂索』と呼ばれる術師で、千年前——呪術全盛の平安時代から生き続けていること」
そして——
「この現代で『何か』を企み——多くの悲劇を起こそうとしていること」
それくらいしか——知らない。
小さく嘘をついて、僕は言う。
「多くの悲劇……」
「それに、きみたちの『弟』の話も関わってくる」
僕が言えば、脹相たちは目を見開く。
「まさか本当に——いるのか? 俺たち以外にも」
「そう。名を変え、体を変え、現代まで生き続けている羂索は——新たな『子』を。君たちの兄弟を作っている」
「っ! どこにいるんだ! 俺たちの弟は——」
「それはまだわからない」
僕は首を振る。
「だが——近いうち、その人物は間違いなくこの呪術の世界に入り込むことになる」
「……なぜ、そう言い切れる?」
「そこについては、誰にも言えない」
「……縛りか?」
「言えない」
言えば——彼は勝手に納得してくれたようで、「わかった」と引き下がってくれた。
「とにかく、僕の目的は、その時、その『彼』に味方を増やすことだ。羂索は——平安最強の術師、両面宿儺の復活を狙っている。僕たち呪術師は、いずれそれと戦わねばならない。その時——『彼』はキーパーソンとなる」
「……加茂憲倫が——羂索が、それを狙う、と?」
「おそらくは」
だからこそ——
「きみたちという『味方』が欲しい。きみたちの弟の——ひいては僕ら呪術師の、『味方』として。ともに両面宿儺に、羂索に、立ち向かうための仲間として」
どうかその力を——貸して欲しい。
言えば——
「わかった」
脹相は力強く頷く。
「もとより弟のためだと言うのなら、是非もない。兄の勤めだ」
心強い言葉で、僕は安心する。
「おそらく、羂索が事を仕掛けるのは今から一年近く後のことになる。それまでの間——きみたちには呪術高専に通ってもらいたい」
「呪術高専?」
「呪術師たちの学舎さ。僕の『姉』も通ってる」
何かあったら、力になってあげて欲しい。
僕が言えば——彼は頷く。
「なるほど。お前もまた、家族を想うものだったか」
「きみたちほどじゃないよ」
照れくさくて言いつつも、僕は立ち上がる。呪力もだいぶ回復した。
「きみたちは……今は恩に目が眩んでるだろうけど、僕はもともと、いいやつってわけじゃない。むしろ、その逆だ」
自分への戒めを込めて、僕は言う。
そう。
僕は決して——いいやつなんかじゃない。
いいやつだなんて——思い上がってはいけない。
いいやつになんて——なろうとしてはいけない。
「羂索や宿儺と戦うのだって、僕が面白おかしく生きるためでしかない。あんまり過度に、僕に期待したり、恩義を感じたり、しすぎない方がいい」
言って、じゃあね、と部屋を出る。同時、服を持ってきた蘭太とばったり出会う。
「あ、真十さん!」
「お疲れ、蘭太。中の三人に服、渡してあげて」
「中の三人……?」
「僕の客。丁重に扱ってね。しばらく泊めるから、女中と相談して、部屋、分けたげて」
「畏まりました!」
「うん、よろしく」
言い残して——僕はそのまま移動する。
向かう先は——一つ。
◎
「や、直哉、会いにきたよ」
襖を開ければ、その向こうには、一人の女。
腰まで伸びた髪が、もうすっかり彼女を『女』に仕切っていて——射殺すような視線が、僕を睨みつけて。
「……何しに来たんや」
禪院直哉は、冷たい声で僕に言う。
「やだなぁ、僕が来たってことは、することなんて一つでしょ?」
言えば、直哉は「は」と鼻で笑う。
「この姿の女に、勃つもん勃つんか?」
彼女は言って——両手を広げる。
着物を纏った、彼女のお腹。
そのお腹は西瓜のように、丸々と大きく膨らんでいた。
この一年で。
直哉は——懐妊していた。
「試してみようか」
僕は言いながら、身重の直哉に近づいていく。
「変態が」
彼女は冷たく吐き捨てる。
その奥に僅かに見える怯えが——陰茎を硬くさせた。
僕は背後の襖を、そっと閉める。
次回、ボテ腹直哉いじめ。
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