転生者と、シキガミと 作:ふなぐち又兵衛
同じく神主の創った五感を絶つ無明から、しがない天使のデビルシフターが、
或いは放たれた無数の破魔矢から、彼女の
『彼』もまた、星霊神社の片隅に顕現した地獄から覚醒した転生者であった。
で、『彼』が覚醒した頃のガイア連合は、
ぼつぼつ嫁シキガミの生産体制がカタチになりだしたところだったので、
『彼』も当然、武器型や動物型などと見栄を張らずに、こう注文した。
「青い瞳と金髪ロング縦ロール!
色白垂れ目の雰囲気おしとやか!!
爆乳巨尻処女でお願いします!!!!」
これには、当時製造部の新人としてシキガミ申請を受け付ける役目を負っていた、
男性ものの喪服めいた衣類型シキガミに身を包む、どこぞの魔女めいた転生者も苦笑い。
前世に引き続き、生物学的には女性である自分に向かってこの発言、
出るところに出たら勝てるレベルのセクハラじゃないかしら?
などと、コーヒーブレイクの際に、周囲に漏らしていたとかなんとか。
まあ、覚醒したての全能感とハイテンションに呑まれた、
『俺ら』にありがちな黒歴史の1ページであろう、と思われる。
ドギツい
話を戻そう。
シキガミを受け取る為の書類を提出した『彼』は、せっせとアギストーンと、
ムドストーンを量産──どちらも神主直伝の攻撃魔法である、
ちなみに『彼』の攻撃魔法の適性は余り高くはなかった──し、製造部に納品するか、
先に覚醒できた転生者たちと星霊神社の異界に潜り、
同行する者たちに
覚醒して得た力を振るいたかった、
及ばぬながらもショタおじと同胞たちの力に、助けになりたかった、
いや、即物的に、異界の悪魔より得られる素材やマッカなど、先立つものが欲しかった。
いずれも正しく、いずれも的外れである。
「じっとしてると股間が爆発しそう」
「覚醒してからめっちゃムラムラする」
「はやくシキガミちゃんとちゅっちゅしたい」
「手羽先ニキが羨ましい」
「喧嘩っ早かった豆柴ニキが腑抜けたみたいに、僕もシキガミちゃんに骨抜きにされたい」
「あくましょうかんで済ませろ? ミナミィネキこわい……」
「それにハジメテは好きな、というか自分で選んだ相手に捧げたいし……」
……失礼、即物的というか、俗物的……いや、俗物そのものだった。
もとい、『彼』も前世から童貞を持ち越したタイプの『俺ら』だったというわけである。
なお、最後の発言には、たまたまそれを耳にしたなっがーい黒髪と泣きぼくろが目を引く、
ちんちくりんのメガネっ娘な転生者が、口許をネコのように歪めてこっそり頷いていたそうな。
さておき、程なくして『彼』が、自分の為だけの嫁シキガミを迎える時が来た。
ひと昔ばかり前の深夜アニメに出てきた、英国出身な留学生の令嬢を思わせる、
ただし人間の頭部大な双丘だの、それと釣り合いをとれるサイズのヒップだの、
左の口許と、そして入院着に隠された右の胸元と、左の大陰唇のほくろだのは、
明らかに元ネタとなったキャラクターとの相違点といえる、そんな容姿のヒトガタを。
それからはまあ……お約束通りのことになった。
もとい、『彼』は『彼女』に肉欲をひたすらにぶつけた。
自分に割り当てられた宿舎の自室で、口を吸い舌をしゃぶり唾液をすすり。
双丘の尖端の桜色を食んでは吸い、潤いを湛えた秘貝をまじまじと観察し。
自分のお世辞にもご立派とは言い難いものを、
『彼女』の口に含ませて欲望を吐き出し、飲みくだすようせがみ、そのまま清めさせた。
『彼女』のフィギュアスケーターめいた肉付きをしつつも白く長い脚を開かせ、
それらの間に座する穢れを知らない真珠を、それを戴いた一対の花弁をおざなりにねぶり、
真新しいベッドに仰向けに寝そべらせたままの『彼女』に覆い被さり、
おのれの唾液と『彼女』の潤いに濡れた入口に欲望の切っ先をあてがい、押し入った。
みっちりした熱い粘膜を押し拡げるのも、途中に存在する封印を引き裂いて貫くのも。
狭く浅めに作られた最奥に届かせるのも、すべてがはじめてだった。
一度既にブチ撒けているというのに、濡れそぼった牝の肉に四度も抽送しただけで、
『彼』は身の内から込み上げて来る、前世からの不良債権の圧に耐えられなかった。
そんな風に腰を振っては欲望をブチ撒けることを五、六回も繰り返したところで、
『彼』は脱力に襲われ、のしかかってひとつになったまま、夢の中へ。
どこか虚ろな微笑みを浮かべたままの『彼女』の目尻には光る雫が、
白いシーツには、欲望と純潔の成れの果てが、まだらなシミとなって散っていた。
それは、頼りなくも硬度を失うことのない『彼』の矛先が、
無遠慮に
意地汚くもめり込んだまま、そこに溜まった欲望と蜜のカクテルを、
太平楽な寝息を立てる『彼』をそっと掻き抱いた『彼女』の真芯から、
溢れさせない栓となっていたから、だったかもしれない。
それから何日か。
『彼女』に搭載された【料理】の汎用スキルカードによる恩恵を一身に受けながら、
『彼』は食事と排泄と睡眠以外はひたすら『彼女』の肢体を貪る歓びに耽っていた。
いや、少し語弊があった。
食事と排泄はともかく、睡眠は『彼女』にかじりつき、つながったままだったのだから。
まあ、そんな日々を過ごしていれば、備蓄してた食材も尽きるというわけで。
『彼』は『彼女』とシャワーを浴び──るついでに、「もう一回だけ」と、
欲望を『彼女』の胎内にブチ撒け──て、『彼女』を伴って、数日ぶりに宿舎の外に出た。
秋の訪れを感じさせる、爽やかな日差しと風の中を行き交う人々、
そこにちらほら混ざった美貌のヒトガタ、彼女たちを連れた同類たち、
視線を横に向ければ、自分の左手を握る、愛くるしく麗しくも淫靡な金の髪のヒトガタ。
秋風に翻るフレアスカートの裾、そこから垣間見える引き締まった白い足首、
タートルネックと羽織ったカーディガンを押し上げる雪山めいて白い豊かなふたごの膨らみ。
嗚呼、世界はこんなにも美しい。
……などと、『彼』が有頂天になっていたのは、
いや、有頂天でいられたのは、宿舎に帰るまでのこと。
玄関のドアに鍵をかけ、食材を冷蔵庫に保管し、
羽織っていたコートを自室のハンガーにかけ、
『彼女』の手料理で腹ごしらえを済ませたら、
今一度『彼女』相手に肉欲を満たす歓びに没頭しようと思っていたところを。
迎えてからめっきり欲望の捌け口にしてしまっているおのれの従者に、
たおやかな繊手に似つかわしくない、これでもかと言わんばかりの力で、両肩を掴まれて。
お互いの鼻が突き合うほどの距離に顔を近づけられ、目を覗き込まれた。
右目が前髪に半ば隠れた線の細い青年の姿を瞳に写した『彼女』が、桜色の唇を開く。
「マスター? あの女たちは誰ですか?」
「マスター? あの女たちを見る目は何ですか?」
「マスター? あの女たちの内、金髪の者を見る時間がやけに長かったのは何故ですか?」
「マスター? マスターには
「マスター?
──ご自分だけ気持ち良くなってしまうのは、薄情ではありませんか?
──シシーは、寂しく思いましたわ。
と、契約の際に、『彼』から告げられた、自身の名を口の端に乗せ。
マスター? マスター? マスター? マスター? と連呼しながら、
『彼女』は『彼』を寝室のベッドまで追いやって、のしかかる。
ちなみに目は
瑠璃色だった瞳は、芳香剤が零れたような色に淀んでいた。
──
自身の名を、『彼女』に呼ばれたそのひと言を最後に、『彼』は有頂天から引きずり落とされ。
医療班のお世話になる半歩手前まで『彼女』に搾り取られたそうな、めでたくなしめでたくなし。
すなわち、それから、午後の寝室において。
『彼』は『彼女』に馬乗りになられた状態で、
『彼女』の胎内にて、マグネタイトと精をさんざんに搾り取られ。
それらが枯渇すると、しおれた欲望を、桜色の唇と舌が、唾液に濡れた白い双丘の狭間が、
【性交】の汎用スキルカードに裏打ちされた手管によって、無理矢理にでも甦らせて。
ふたたびみたび、よたびいつたびと搾られているあいだに、
『彼』は、すっかり『彼女』にしか奮い立つことの出来ない身体にされてしまった。
そう、まるで、どこぞの二足歩行の豆柴のように、
くだんの豆柴の伴侶である、金髪のメスカクエンがそうしてしまったように、である。
閑話休題、『彼女』による『彼』の調教を打ち切ったのは、
胃袋を形作る肉と空気の蠢きによって奏でられた、くぐもった響きであった。
もとい、『彼』の腹の虫が、間が抜けた悲鳴をあげた途端、
『彼女』の芳香剤が零れたような色の目に光が戻り。
『彼女』は『彼』のほんのりこけた頬にキスをして、
身体を離すと、備え付けられた台所に向かって、パタパタと駆け出した。
いつの間にかお行儀良く畳んで枕元に置いていた、
揃いの青いローライズのショーツと、特注サイズのブラジャーを身に着けながら。
『彼女』の偏執的な腰使いと粘膜と脂肪から与えられていた、
芽生えたばかりの妄執に裏打ちされた終わらない快楽と搾精の獄舎から、
唐突に解放された『彼』は、その後ろ姿をぼんやりと見送っていたのだが、
「マスター! 着替えて手を洗ってこちらへいらしてくださいましー!!」
などと澄んだソプラノが鼓膜を揺らしたのに反応して、のろのろと身繕いを始めた。
先程目にした、彼女の後ろ姿からでもなお揺れるのがわかる双丘と、振られる安産型の尻が、
レース生地のランジェリーに包まれていく光景に、充血する海綿体を持て余しつつ、だが。
クロッチ部分に、混ざり合ったふたりの体液が、かすかにシミを作っていたから尚更であった。
さて、『彼女』に言われた通りに衣服をまとい、手と顔を洗って居間に来てみれば、
そこには、湯気を立てるカフェオレ入りのカップと、
皿に盛られたサンドイッチがふた組、テーブルのうえに鎮座していた。
部屋着用のワンピースの上からエプロンをかけてはにかむ『彼女』に促されるがままに、
おずおずとそれらを口に運んでみれば、少しぬるいものの、優しい甘さのカフェオレと、
薄く塗られたマスタードに引き締められた、ハムとチーズの層を孕んだサンドイッチが、
『彼』に安らぎと活力を運んで来てくれた。
『彼』の短い礼を受け、『彼女』が表情を綻ばせる。
そこから競うように崩れていく表情で笑みを交わし、
食後の細々した後片付けと、シャワーや歯磨きを済ませたあとに、
再開された男女の営みは、ふたりともおおいに満足できた上で、
ともに幸せそうな寝顔になれるようなシロモノだったそうな、どっとはらい。
書いている当初は、もう少しぼかし気味な表現を使っていたので、
これR−15……いやR-17.9タグで大丈夫かなー? と思いましたが、
曲がりなりにも本番シーンを描写してるしなと思い直し、
あちこち弄った上でR-18の短編として投稿させていただきました。
そしてこれをカオ転三次って言い張る勇気!(w
ショタおじやミナミィの、星霊神社の名前を出してるし……ということで、なにとぞ。