「ぁ……う、……」
森を抜ける頃、シライはフラフラになっていた。
淫魔となったシライは、森で行き合った冒険者すべての精気を吸い続けた。数十人もの精を得たのだから体力の消耗は激しく、頭もほとんど回らない状態だ。
「……ぅ……」
フラフラと歩くシライは、ほとんど無意識に見知った場所――ミシェルのいる屋敷へと向かう。
身体を引きずるように歩み、ようやく屋敷の門に行き着いた時、シライは安堵からフラリと身体を揺らして。
「……」
その場に倒れて意識を失ってしまう。
「? どなたですか?」
バタリと倒れた物音を聞きつけたミシェルが小走りで門へ向かうと、そこにはうつ伏せに倒れたシライの姿。
「し、シライさん……!?」
ピンク色の髪を持つ彼女をひと目見たミシェルは叫ぶ。
「シライさん……シライさん……!? ――大変だ……!」
服装は見覚えがないものの、顔を確かめれば間違いなくシライ。状況は分からないが大変なことになったと、ミシェルは小さな身体を懸命に動かしてシライを屋敷の中に運び込だ。
●
客間のベッドにシライを横たえさせて、ミシェルは困惑顔で彼女を見つめる。
「どうしよう……どうしたらいいんだろう……?」
目を閉じて動かないシライは眠っているのだろう。呼吸のペースは一定で、穏やかな寝息とともに胸が上下している。
(それに……これ、どうしたんだろう)
すうすうと上下する胸元に目をやって、ミシェルは困り顔をほのかに染める。
全身に張り付く白のボディスーツを纏うシライは、身体の稜線がくっきり浮いていた。ミシェルの記憶よりも髪は伸びているし、何より頭から生えた角は異形の証のように見えて仕方ない。
「っ……」
枕元の椅子に座るミシェルは、メイド服のスカートを握りしめてシライを見つめる。
メイド少年であるミシェルに出来ることは少ない。このままシライが目覚めるのを待つしかないのか――そんな歯痒い思いに駆られた時、不意に室内に風が生まれた。
「え――?」
窓は閉めているのにカーテンが大きく膨らむ。
驚きに目を閉じてしまったミシェルは、風が収まってから慎重に目を開ける。
すると、ベッドサイドには見知らぬ女性が佇んでいた。
「……くふ。これは面白い」
妖艶な笑みを浮かべる女性は、魔女然とした姿だった。
黒の三角帽に、肩や腕が出る黒衣。足の付け根どころか腰まであらわにする深いスリットが入ったスカートからは、タイツに包まれた美脚が覗く――麗しい姿にミシェルは顔を赤らめ、わたわたと視線をさまよわせる。
「え、えっ……どこから……え、だ、誰ですか……?」
「そう驚くな。私はエルテシアだ――聞き覚えは?」
黒衣の彼女・エルテシアの問いに、ミシェルはフルフルと首を振る。
「成程、冒険者であれば『魔女のエルテシア』で通るものだが。君は冒険者ではないのだな」
「す、すみません」
「気にすることはない。普段は森の奥に住んでいるが、淫魔の気配があったから確かめに出向いたのだ」
そこで言葉を切って、エルテシアはシライを見つめる。
ミシェルはエルテシアの言葉を受け止めるので精一杯。彼女の言葉を咀嚼するミシェルが何か言うより早く、エルテシアは再び口を開く。
「彼女を元に戻したくば、吸った精気を取り出させると良い」
「精気、ですか?」
「そうだ。彼女は淫魔化し――まだ初期段階だが――、精気をいくらか吸ったようだからね。精気を出すには男のモノを生やして、そこから出すのが一番良い。しかし……」
シライの身体をじっくりと眺めていたエルテシアの視線が、ミシェルに向けられる。
「!」
老獪な瞳に宿る熱を感じて、ミシェルはぴくっと肩を揺らす。
「……長く生きていると退屈するものでね。今日は、ヒトの子同士の交わりが見てみたい」
言うと同時に、エルテシアはシライの顔にフッと息を吹きかける。
「さ。君がこの子と交わるんだ」
ミシェルに告げるエルテシアは、そっとベッドに上がると、シライの上体を起こさせる。
「……ん……」
呻きながら薄目を開けるシライの背後に回り込んで、後ろから彼女を抱き寄せるエルテシア。
「ここの準備もしておかなければな」
呟くエルテシアの左手はシライの秘部へ、右手は乳房に。
「え、え……?」
シライの大切な場所を探りだすエルテシアを前にして、ミシェルは困惑するばかり。
(するって言ってた――けど、……え……?)
理解が追いつかないミシェルを待たず、エルテシアはシライに愛撫を繰り返す。
黒手袋に包まれた指先が、白いボディスーツ越しのシライの淫裂をなぞり上げる。同時に乳房がやわやわと揉まれると、意識を取り戻したシライはぼうっとしながらも呼吸に熱を籠めて。
「ん……ぅ……?」
「お目覚めかな?」
エルテシアの問いに、シライの眼差しは曖昧だ。
「……誰、ですか……? それに、これ……?」
シライの戸惑いは強い。
屋敷の前で倒れたと思ったら、室内で、知らない女に身体をまさぐられているのだ。しかも目の前にはミシェルまでいて、意識を取り戻したばかりの頭では情報を処理しきれない。まずは事情を呑み込もうとして周囲の様子を確かめようとしたシライだが、エルテシアは彼女の顎を取って。
「んふ……」
有無を言わせぬ様子で、シライと唇を重ねる。
「っ!? んっ、――ん……」
目を瞠るシライだが、エルテシアは微かな水音を立てながらシライの唇を割り開く。
たおやかな指先は弓使いのシライよりも華奢にすら見えるのに、シライはなぜだか逆らえない。エルテシアの老練たる指使いに身体からは力が抜けてしまって、エルテシアの舌の全てを受け入れてしまう。
「ぅ……ん、……」
ミシェルの目の前、二人の舌が絡み合う。
「……わ……」
思わず声を漏らしてしまうほど、目の前の光景は淫靡だった。
シライもエルテシアも、街にいれば誰もが振り向くほどの美人なのだ。親しみやすい愛嬌を持つシライと、近寄りがたい婀娜っぽさを持つエルテシア――その二人が口づけを交わし、舌を絡ませる姿を特等席で眺めるミシェルは、スカートの内側が熱くて仕方ない。
(すごい……こんな風に……)
見入ってしまうミシェルをよそに、百合のベーゼは続く。
「んふ……ん、っ――ん……」
「は――ぁ、……んん……ぁ……っ」
くちゅっと音を立ててシライの口腔をまさぐるエルテシアに、シライは熱っぽい吐息をこぼす。
「ぁう……ぇ、んぇ……っ」
「くふっ……んん、んふっ……」
シライとエルテシアの頬は色づいているが、依然としてエルテシアがリードする構図。
エルテシアの指先が白きボディスーツの上で踊れば、シライは求められるままに脚を開く。
「は……ぁん……っ……」
接吻に身体が蕩けてしまったシライの間から、女の蒸気が立ち上る。
白いボディスーツはシライの内側を透かしていた。ほんのりと色づいたように見えるその場所には水気が見て取れて、シライがほとんどキスだけで欲情してしまったことは明らかだ。
「んぅ……っ、ん……んんっ……」
二人の継ぎ目からくちゅくちゅと愛らしい水音が立ち、シライは鼻にかかった溜息を漏らす。
瞳を潤ませたシライは自ら舌を差し出し、エルテシアのキスを待ちわびている。我慢できないと言わんばかりに腰も揺れていて、エルテシアはそんなシライの姿に笑みをこぼす。
「くふ……愛いな」
心から愛しげに呟いては、エルテシアは深く唇を重ねる。
「んぅっ……!」
完全に重なった二人の唇の内側で何が起きているのか、ミシェルには分からない。
「っ……」
しかし、熱の入った口づけは見ているだけで喉が乾いてしまうほど。
シライの舌を手玉に取ったエルテシアは、器用なことに両手でシライの性感帯をまさぐっている。
「っん……」
乳房を撫でられたシライはピクッと肩を揺らし、かたく目を閉じてしまう。
疼きに身を委ねるシライとは対照的に、エルテシアは目を開き、シライの表情をじっくりと眺めていた。淫魔として数十もの冒険者を相手取ってきたシライもエルテシアにかかれば生娘同然で、エルテシアのたおやかな指がボディスーツを滑るたびにシライはささやかな声を漏らして身体を跳ねさせる。
「ふ……ん、ん……くふ……っ」
目を開けたまま深く口付けるエルテシアの瞳に淫情の熱が加わったかと思えば、エルテシアの姿が変化する。
「ふ、……んん……」
美しき魔女姿はそのままに、色合いだけが変わる。
黒髪はピンク色に染まり、黒衣は真っ白に。白とピンクの姿は淫魔状態のシライとよく似ていて、似た姿になった二人がベッドで絡み合う様子を見ているとミシェルのスカートの前部分は完全に持ち上がってしまう。
「――あ……」
思わず声を漏らしてしまったミシェルの方を見もせずに、二人のキスは続く。
「くふ……ぅん、ん……ああ、悦い。年甲斐もなく発情してしまった」
唇を離して呟くエルテシアに、シライは切なそうな溜息を漏らして。
「んんっ……ぅ、ぇあっ……」
舌を伸べ、エルテシアにキスをせびる。
シライは後ろにいるエルテシアの方を向いており、ミシェルからは彼女の横顔ばかりが見えた。
首を伸べて懸命にエルテシアを求めるシライの姿は、これまでに見てきたどんな姿より――シライの初めてを受け取ったあの日の艶姿より――美しいとすら思った。
「……――」
ミシェルは押し黙って魅入るのみ。
勃起は収まる気配もなく、スカートは完全に持ち上がってしまっている。本来なら見せてはならない場所をあらわにしたミシェルは、スカートに小さくシミまで広げる始末。
「……くふ」
エルテシアの視線が、一瞬だけミシェルに向く。
「!」
艶やかな眼差しに射抜かれただけで、ペニスは跳ねてシミが大きくなる。流し目ひとつでそんなシライの様子を見て取ったエルテシアだが、すぐにはシライを明け渡すことはない。
「くふ……」
妖しげな笑みを湛えたまま、エルテシアの手がシライのバストラインを撫ぜる。
「っん……!」
エルテシアの舌を懸命に吸っていたシライは、それだけで腰を跳ねさせる。
「ふ……んんっ、んぅっ……」
甘ったるい声を漏らすシライが身体をモジモジと揺らせば、ボディスーツに包まれた乳丘が柔らかそうに揺れる。
バージスラインに手を添えたエルテシアはしばし揺れを楽しんでから、不意に乳を掴む。
「んくぅっ!!」
シライの反応は劇的だ。
大きくのけぞれば、重なった唇がずれてしまう。わずかに空いた距離を埋めるのは唾液の銀糸で、あえかな輝きのはずなのにミシェルの目には眩しくて仕方がない。
「ふ、ぅうっ――」
乳を揉まれる快感に全身を悶えさせるシライに、エルテシアは更に秘所へ這わせた指も動かして。
「んくぅっ……!!」
「くふ、可愛らしい声だ」
愉快そうに呟きながら、シライの恥部をこすり上げる。
割れ目の形はくっきり浮き出て、ボディスーツの股間にはミシェル以上の大きなシミが広がっていた。シライは大きく開かされた膝をピクピクと震わせては、エルテシアからもたらされる淫悦に浸っている。
「ふ……ぅうん、っ……んん……」
後ろにいるエルテシアに背中をこすりつけるようにして、もっと欲しいとおねだりするシライ。
「くふ。まるで猫のようではないか」
エルテシアは目を細め、ますます指を大胆に動かす。
五指が弧を描き、大陰唇を撫でさする。粘膜のふちを撫でる指先に焦らされたシライは切なそうな声を何度も漏らし、口の端から唾液を垂らす。
「んうぅっ……、んむ、ぅんっ……」
「ん……くふ、んん……っ……」
ぺちゃりと音を立て、舌と舌が再び絡み合う。
キスに熱心なのはシライの方だった。シライがエルテシアの中に舌を伸べると、エルテシアは褒美とばかりに舌を絡ませながら愛撫の手を強める。
大陰唇を何度もさすった指先が、ついにシライの粘膜部に迫る――やさしく、しかし確かにエルテシアがクリトリスをつまむと、シライはこれまでよりも大きく腰を跳ねさせる。
「んくぅ……っ!」
濡れた声を上げ、ますます頬を色づかせるシライ。
ボディスーツ越しの愛撫ではあるものの、熟達したエルテシアの指先にかかればそんなものは無いも同然。シライの奥から湧き出る糖蜜はスーツの股をじっとりと湿らせ、滲み出た汁気でエルテシアの指先も水分を纏う。濡れ光る指先はシライの恥部を自在にまさぐり、シライの性感帯はミシェルの目の前で敏感さを増す。
「はぁうっ……ん、んぁ……っ」
シライは自分の身体の主導権を完全にエルテシアに委ねていた。
「くふ……んむ、っふ……んん……」
シライを支えるエルテシアは、我が物同然となったシライの蜜部で指の抜き差しを繰り返しては彼女を責め立てる。
「んぅうっ……ん……ふぁ、あ……っ!!」
くちゅくちゅと響く湿った音を、熱を帯びたシライの声が上回る。
巧みな指遣いの虜になったシライはエルテシアに切ない声を漏らす――意識を取り戻した直後からこんな行為に耽っているのだ、シライは自分がこうされる理由が分かっていない上、自分を責めるエルテシアの顔すらろくに見てはいない。
「はぅっ――んん、っんん……!!」
だが、次々にもたらされる淫悦を前にすればそんなのはどうでも良いことだ。
大胆に脚を開いたシライは、エルテシアの指がすることに期待して絶えずヒクついている。そんなシライを真正面から見つめるミシェルは興奮が収まらず、勃起したペニスがピクッと跳ねると持ち上がったスカートが上着とこすれて微かな音を立てた。
「――ねえ、君」
不意に、エルテシアがミシェルに視線を向ける。
「……! は、はいっ……!」
目の前で繰り広げられる艶やかな触れ合いに熱中していたミシェルの声は裏返ってしまう。
「くふ。可愛い声だ」
「……っあ、……うう……」
真っ赤になってしまうミシェルの様子がそんなに面白いのか、エルテシアはじっとミシェルを眺める――物も言えないミシェルが赤ら顔を俯かせる中、シライは甘えるような声音でエルテシアを求める。
「はっ……ん、んぁ……っ――もっと……」
エルテシアの唇が離れて、シライは物足りなげにエルテシアに顔を寄せる。白のボディスーツ越しにも乳首の勃起と淫裂の潤みは見て取れる。
「ああ、そうだった。こっちも可愛がってやらねばな」
思い出したようにエルテシアが指で秘裂をひと撫ですれば、ぬちゅりと繊細な水音が立つ。
「はぁっ……」
「もうこんなに糸を引いて……随分と濡れたようじゃないか」
エルテシアがシライの膣口から手を離せば、指に纏わりつく銀糸が煌めいた。
五指を開いてみると指と指の間に粘液が引いて、女の薫香がむわっと広がる。
「――あ……」
脳髄が痺れそうな香りに、ミシェルは思わず声を上げてしまう。
「は……ぁ、っああ……!」
エルテシアの手が秘部から離れると、シライの下腹はどうしようもないほど切なさに満ちていた。
ほんの短い間だって我慢できないほど淫情は昂っていた――もっと欲しいと求めるように呼吸を乱すシライの淫裂はとめどなく蜜を溢れさせて、身体はすっかり準備が整っている。
「さて。そろそろ、気持ち良くなりたいんじゃないかい?」
「っ……!!」
エルテシアに問われて、性衝動に突き動かされたミシェルはベッドに上がる。
「シライ、さんっ……!」
ミシェルの男の部分は昂って、スカートは内側から押し上げられていた。下着を脱ぎ捨ててペニスをあらわにしたミシェルがシライににじり寄ると、シライは頬を染めてコクンと頷いた。
「挿入れます……!」
天井を向いたペニスの付け根を押さえ、シライの恥部にあてがう。
ボディスーツの表面が歪む――むに、と柔らかな膣口にペニスが跳ねたかと思えば、ミシェルの男根はシライの中に沈み込む。
「あ……ぅああっ……!!」
たまらない快感に声が漏れた。
膣具合は、シライの初めてを引き受けた時とまるで違う。蕩けるような媚肉はねっちりとミシェルに纏わりつき、秘所全体で竿を内奥へと引き込むよう。
「すごい、……っああ……!」
興奮の声を漏らすミシェルは、たまらずせわしなく腰を動かしてしまう。
「あっ、あぁっ……うう、中、締まって……っ!!」
「ん……ぅん、……ん……」
歓喜の声を上げるミシェルに対し、シライの反応は鈍い。
エルテシアの愛撫に興奮し、膣は潤いに満ちている。ミシェルの腰振りに快感がないわけではないが、淫魔となってから多くの冒険者とのセックスを経験したシライからすれば、とても満足のいくセックスとは言いがたい。
「――ちい、さい……」
かすかに漏れた不満の声は、夢中で腰を振るミシェルの耳には届かない。
「くふ。手伝ってやろう」
不満げなシライの後ろで笑みをこぼすエルテシアは、改めてシライに口付ける。
「んくっ……」
唇を吸い合いながら、胸と淫核への愛撫を再開するエルテシア。
エルテシアとミシェルに挟まれたシライは、二人の行為に身を委ねる。穏やかな心地良さが満ちれば膣肉はきゅうっと締め付けを強くして、ミシェルはたまらず強く腰を揺らす。
「くふ……ん、共に果てると良い」
シライと唇を重ねたまま囁くエルテシアは、ミシェルの限界が近いと見て取って愛撫の手を速める。
勃起した乳首と淫核に狙いをつけてカリカリとこすり上げれば、シライの腰がピクピク跳ねだす。ミシェルとシライのボルテージが重なるように調整したエルテシアは、ここぞという瞬間にシライのクリトリスを指で挟んで一番の美悦を加え。
「ぁっ――あ、あぁああっ……!!」
「で、出るぅっ……!!」
ミシェルが精を解き放つのと同時に、シライはオーガズムに至った。
「あっ……! あぁっ、ああっ……!!」
甲高い声を上げるミシェルが腰を揺するたび、シライの白いスーツに白濁が染み渡る。ミシェルの体格相応のペニスよりも精液の熱の方がよほど気持ち良く、シライは興奮のままにエルテシアと舌を絡める。
「んふ……っ、ん、んくっ……」
「くふ……んむ、ふふ……」
妖しげな笑みをたたえるエルテシアがシライの下腹部を撫でれば、そこに紅色の魔法陣が展開される。
――行為が始まる前、エルテシアは彼女に術をかけていた。絶頂によって起動した術は赤い魔力となってシライの身体から浮き上がる。魔力は全てエルテシアの元に向かい、エルテシアは全身で魔力を受け止める。
「――ん……ぁ、……あ……」
魔力が抜けていくにつれ、シライの姿はミシェルが見慣れたものに変わる。
髪の毛の長さが戻り、頭の角が縮んで消える。シライを包む白いボディスーツの色が末端から黒く染まり、失せていた衣服もどこからか現れる。
「ん――……」
エルテシアによって絶頂させられ、身体に溜め込んでいた魔力も放出してしまったシライはくたりとベッドに横たわる。
意識は完全に戻っていたが、身体を動かせるほどは回復していない。虚脱状態でぐったりしたシライの上半身をエルテシアはやさしく支え、そっとベッドに横たえさせる。
「……ぁ……ありがとう、ございま――」
言いかけて、シライは初めてエルテシアと相対する。
三角帽を被った妖艶な美女の姿は初めて見るもの――だが、シライは枕の上で目を見開き、美貌の彼女の名を口にする。
「エルテシア……!?」
「くふ。こっちは私を知っているか」
笑みをこぼすエルテシアは、驚愕に口を半開きにしたシライに接吻をひとつ。
「!」
淫魔化が解けたシライは真っ赤になってしまうが、エルテシアは涼しい顔を崩さない。
「くふ――ではな、冒険者よ。また会うこともあるだろう」
いつの間にかエルテシアも、現れた時と同じ黒い姿に戻っていた。
黒髪をなびかせたエルテシアは堂々たる足取りで部屋のドアへ。当然のように立ち去る彼女を、ミシェルとシライは唖然としたまま見送るほかなかった。
●
初めて訪れた屋敷だというのに、玄関へ向かうエルテシアの足取りに迷いはない。
さも慣れた場所化のように屋敷の戸を内側から開け、外へ。そよ風に黒髪と黒衣の裾を揺らしながら門を出たエルテシアは、そこで一度、屋敷の方へと振り向いた。
(――くふ、あれは良き娘だ)
エルテシアの頭にあるのはシライの姿。淫魔となった姿も、元の姿であろう少女の姿も好ましく、エルテシアの胸は久方ぶりにときめいていた。
(あの娘を我が手で淫魔と出来たら、どれほど愉しいだろうな?)
夢想しながら、エルテシアは己が棲家である森へ立ち入る。
――遠い昔、淫魔と呼ばれるモノはエルテシアただ一人だった。同族が――淫魔の女が増えるのはエルテシアにとって無上の喜び。その時を思うエルテシアは笑みを湛えながら、改めてシライの姿を思い描く。
(紛い物ではあるが、指輪もあの娘を選んだのだ)
愛らしい顔に美しき肢体――そして、指輪を思い起こす。
あの指輪は、淫魔の素養を持つ者の前にしか現れないもの。ソレを身に着けていること自体がエルテシアには大きな意味を孕んでいるのだから、己の棲家に戻った後もエルテシアはシライのことで頭はいっぱい。
「ふ――」
エルテシアの笑い声に木々がざわめく。
「ふく――くくくっ……!!」
祖の淫魔の哄笑に、森は夜通し震えるのだった――。