※この作品はR-18です。

ファイアーエムブレム 娼俗の剣   作:どろまみれ

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【 はじめに 】

 この小説はフィクションです。
 また「成人向け小説」であり、登場キャラクターは全て要件を満たした年齢です。

 戦争、差別、非人道的な行為。およびそれら属性を含む「過激な性描写」が多数含まれます。
 ゾーニングすべき部分は多少ながらタグに付与しますが、ネタバレ防止のため全てを明記してはいません。
 タイトル、もしくはタグについて、作品の進行と共に追加や変更が成される予定があります。

 加えて。
 この作品はゲーム原作のシナリオや世界観を活かした成人向け描写をするものであり。

 決して『現実世界における差別・戦争・犯罪といった行為を賛美・助長・推奨するものではありません』。

 フィクションはフィクションであるからこそ。
 その上で、二次創作という分野に理解を示し、許容が可能な方のみお読みください。
 またタグでのネタバレは最低限。ゾーニングが不完全な成人向け小説につきまして、なにとぞ自衛のほどをよろしくお願いいたします。
 これらについて理解が得られない方は、ブラウザバックをお願いします。


 作品の更新はとてもゆっくりめ。気が向いた時に書き、パートがまとまったら一気に更新する形です。
 成人向けシーンに入るまでの描写段階があります。

 また、戦闘パートは手ごわいシュミレーションRPGを意識した書き方をします。
 軍記ものでもなく。通常の小説と言うよりは過程と結果とドラマ性をピックアップした内容の趣味の書き物となりますので、ご理解ください。



序章
1話 混沌の種


 

 エレブ大陸。

 1000年前に人と竜の激しい争いがあった土地である。

 

 時が過ぎた今。エレブ大陸は様々な国に分かたれながらも、人々が助け合い、力を合わせ。均衡と平穏を取り戻していた……。

 

 東のベルン王国。

 北にゆけばサカ。極地までゆけば雪に包まれたイリア。

 中央西のエトルリア王国。南に降って諸侯が集まって群れを成すリキア。

 大陸の西端には乾燥地帯が広がるナバタ。その北洋にある3つの島、西方三島。

 

 これらで構成されたエレブには、それぞれ、1000年前の戦争を終わらせたという「人の英雄」達になぞらえた逸話が語り継がれている。

 彼ら彼女らが命を賭して造りあげた平和には ―― 未だ(・・)、崩れる気配は見られていない。

 

 運命の足音は未だ聞こえず。戦乱の兆しは、未だ見えず。

 しかし幽(かす)かにそっと灯され始めていた ――

 

 地はイリア。

 隠遁した魔女の住む、雪深い森の最中。

 

 山の隠者・ニイメの工房にて。

 ひとりの幼児がつまらなそうに、開いた本の上で寝こけている。

 

「―― なんだい、ケイオス。お前はこの魔道書も好みじゃないのかい」

 

 肌にしわをたたえた老婆が、やっと本を読み始めたばかりの幼児に向けてため息を吐いた。

 彼女は腰をぴんとたたせて壁に近寄ると、暗闇のように見えたそこへ手を突っ込む。戻した手には、古い装丁をした本を1冊携えていた。

 

「こちらはどうだい。ただの雑記の寄せ集めみたいなものだけれどね、これは」

 

「あぃがと」

 

 ケイオスと呼ばれた男児はうって変わってご機嫌な様子。本を床に置くと広げてその上に寝そべり、舐める様に眼球を動かして読み始めた。

 老婆が満足そうに息を鼻から噴き出して椅子へ腰かけた所で、部屋のドアがガチャリと開く。利発そうな少年が顔を出した。

 

「母さん、僕も次の本を貰いに来たんだけど……」

 

「カナスかい。お前に渡す本は選ばなくていいから、いいねぇ。もう決めてあるよ。そこの机に積んであるやつから2つか3つ、好きなのを選んで持ってゆくと良い。上から順にオススメだよ」

 

「ありがとう、母さん」

 

 カナスと呼ばれた少年は言われた通りに数冊。自らの闇魔法(・・・)の学習進捗に合った本を選び取ると振り向いて。

 足を止める。床に転がり本を読む男児をみながら驚いて見せた。

 

「……ケイオスは凄いな。この年でもう魔道書を読んでいるの?」

 

「ふん。カナスみたいに出来の良い奴じゃあないけれどね。……どうやらケイオスには、私らと同じ闇は肌に合わないらしい」

 

 ニイメは愉(・)しそうにケイオスを見ながら背を預ける。昨年カナスからプレゼントされた手製の木製椅子がぎしりと軋んだ。

 彼女らがこうしてケイオスについて気に掛けるのも一度や二度ではない。

 だが、義務があった。彼を育てなければならないという義務が。

 

 ケイオスという子は。

 ニイメらが身を寄せる研究室の片隅に……人知れず。誰にも望まれないまま。

 薄暗い闇の中からぽつりと産まれた、身寄りのない乳飲み子であった。

 

 彼を初めて見つけた時、ニイメは腰を抜かしかけた。

 何分いるはずのない場所に、いるはずのない生命が、無から産まれていたのだから。

 

 彼女の専攻とは古代の闇であり、またそれを遡及・追究することである。当然ながらニイメは人を造ろうとしたこともなければ、召喚した記憶もない。

 工房内には無数の魔道書が積んである。そのためいずれかの魔術が発動した……あるいは暴発した形跡も探したのだが、全くなかった。

 

 他の可能性と言えば唯一の弟子であるカナスだが、彼も未だ少年である。誰かと子を成したという記憶もなければ、行為に及んだ記憶すらない。老婆に子を成した覚えがあるかい、と尋ねられた際には酷く狼狽(ろうばい)しながら否定したものだ。

 

 突如どこからか現れた乳飲み子を、悩んだ末に育てようと決めたのが数年前の事。

 冬の奥山。イリアの僻地にも関わらず、ケイオスはすくすくと育っていった。

 

 そして当然。闇魔法を探求する魔女(・・)であるニイメと。それを受け継ぐカナスに。

 ひいては魔法に興味を持つのも自然な流れであった。 

 

「ケイオスが読んでいるのは……これは?」

 

「雑(・)魔道書さ。良い見方をすれば混沌(・・)とも呼べるね。名の通りじゃないか」

 

 ふたりの訝し気な視線をものともせず。

 ケイオスは本当に楽しそうに、その魔道書を読んでいる。

 弟弟子のそんな姿を目にしながら、カナスは言う。

 

「雑魔道書。……闇でもなく、理でもなく、光でもない」

 

「そうさ。光と闇がせめぎ合い、世に理が降り注いで精霊が生まれ。……3竦(すく)みが産まれたからには、その中央にあろうとする者が現れるのも当然さね」

 

「……僕にも覚えがあります。確か、竜の扱うものを『第四の魔法』。杖を媒介とした魔術を『第五の魔法』と定義した、エトルリアの学術院で一時期流行した考え方でしたね」

 

「カナスは優秀だねぇ。そんなものは覚えなくってもいいってのに。……その流行は廃れちまったよ。とうの昔にね。当然さ。『無』だなんていう属性が生まれる世じゃあないんだよ、ここは」

 

 ニイメが爪先で机の端に置いた闇の魔道書を撫でる。

 何もないが有る、という証明は成されなかった。……いや。強いて思い当たる人(・)をあげるとすれば。

 

「神将。人のくせして神だなんて呼ばれた彼ら彼女らならば、ケイオスのこの異質さ(・・・)に何かを見出せるお人もいたのかも知れないねぇ」

 

「エレブにあって、彼らは建国神話のようなものですからね。崇拝にしろ信仰にしろ、偉大なお人たちだ。……とはいえ今の僕達に叡智を貸してくださる訳でもないですから、やはりこの魔道は自分達で歩まなければならないでしょう」

 

「お前は出来が良すぎるのが困りものだね、カナスや。年相応の悪戯っぽさはあっても、このババに手を焼かせる訳でもない」

 

「はは。山の隠者を困らせるその役目は、未来の孫にでも任せましょう。僕もいつかは子どもを作るでしょうから」

 

「はんっ。あの質問をしてからというもの、お前はいつもそうやってからかってくる。……隙をみせた私のほうが悪いのは、そりゃあそうだ」

 

 そう言って笑い合うと再び、ふたりは床に寝転ぶケイオスを眺めた。

 

「―― ん? おぉ……うひひひ!!」

 

 くるりと首を回して、ケイオスは振り返る。

 カナスとニイメを見つめるその目は生気に満ちて、叡智の喜びに満ちている。

 笑った幼児の様子を見つめながら……もう少し品の有る笑い方は出来ないもんかね、とニイメは独り言ちた。

 

 冬の風が窓を叩く。木造の家屋が軋む音に揺られながら。

 暖炉に照らされた雑魔道書の頁(ページ)は既に、中ほどに差し掛かっていた。

 

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