ファイアーエムブレム 娼俗の剣 作:どろまみれ
ケイオス達は学内での合同演習の日を迎えた。
闇雲に戦わせるというわけではないが……つまるところ。この演習の最大の目的は、観覧なさるベルン貴族の方々による、兵達の青田買いである。
だからこそ学徒は全力を出す。
優勢ならば武をもって切り込むことで、自分を売り込み。
劣勢なら首魁を命を懸けて守ることで、自分を売り込むのである。
そんな中。別段注目もされていない演習場の端に ―― 装備を整えた一団。
ゼフィール王子とケイオスが隊長を務める、連隊の姿があった。
【進撃準備】
▲ケイオス/見習い魔導士(Lv.5↑↑)
属性:無 移動:5 体格:2
HP:12↑↑
力:3↑ 魔力:7↑
技:5↑↑
速さ:6↑↑
幸運:0
守備:2↑
魔防:6↑
魔導書:C↑
杖:E
装備:雑魔導書
重さ:7
フィアー/アロー/ライブ/サンダー
・サンダー
武器レベルD/射程1~2/威力5/命中80/必殺0
訓練のために王家の資金で購入した豪華な練習用の魔道書、その頁を切り貼りしたもの。
ファイアーを扱うよりも難度が高いため、効率的な訓練を行えた。サンダーの魔道書は間違いなく高価ではあるが、他の魔道よりは重宝される……軍事品として大量生産されているものであるため、安定供給が可能。
雑魔導書に切り貼りしても出力の低下がないことも含めて、主力の攻撃魔法。
▲ゲイル/見習い兵士(Lv.11)
装備:手槍、鉄の槍
▲マーク/軍師見習い(Lv.6)
装備:ライト、アロー
▲セシリア/ソシアルナイト・魔法使い(Lv.13)
装備:鋼の槍、サンダー、ウィンド
▲ゼフィール/プリンス(Lv.1)
装備:銀の剣、レイピア
▲精鋭兵×5
槍兵×2、剣士×2、弓兵×1
――
――――
演習場として選ばれた丘の奥にて。
兵達を並べるその前に。ケイオス、マーク、ゼフィール、セシリアが集まり、作戦を立てることとなった。
まずは隊長として、現状を告げる。
「相手はオレ達と同年の兵団だ。ゼフィール王子にあてて問題のない、貴族間の諍いのないやつらがまとめて招聘されたらしいな」
「それだとただの政治的なデモンストレーションにならない? ……あの、いえ、王子を貶めるつもりはなくってですね……」
「そう考えるのも普通だと思うから、忌憚なく話してくれると嬉しいよ。セシリア女史。……でも、そうじゃなかったからここで話してるんだろう? ケイオス」
「王子の言うとおりッス。オレとゲイルで見てきたところ、あわよくば倒そうっていう勢力がきちんと集まってた。デズモンド王の側に近しい嫡子どもだ」
「なるほど……演習だから、堂々と
「ああ。まぁ王子が優秀だからこそ、ってところだな。……かと思えばそいつらで固めた訳でも無く、騎士団の同年の才媛がふたり。ミレディっていう槍兵と、ブルーニャっていう魔道士が兵の中に紛れてる」
" ふたりの兵としての練度は、僕が見てきたよ。軍学校だから演習の記録もあった。ミレディは一般的な貴族の娘で、竜騎士志望の槍使い。 女性であること以外に目立った特徴はない。問題はブルーニャの方だ。魔力に優れた魔道士で、軍略にも長けている "
「へぇ……マークにそう言われるなんて、相当だな。……でも?」
" うん。でも、だ。……今回の将はブルーニャじゃない。他兵に劣る、とはっきり評価できる貴族の長男、嫡子だ。彼が指揮をとるとみて間違いないよ。……だから、こうする "
「……うーん、成る程……。僕は構わないが、これは……」
「流石はマーク。容赦ねーでやんの」
" ありがとう。褒め言葉として受け取るよ。……この通り、ブルーニャにはゼフィール王子とゲイルを当てる。彼女の立場じゃ多分、王子をまともに攻撃出来ないね。残ったケイオスとセシリアには、ミレディを含む小隊を相手してもらおうかな "
「別に良いけど……あたしとコイツの2人だけ? 王子についてきた精鋭兵だってあるんじゃないの?」
" ごめんねセシリア。2人だけだ。そして、王子。申し訳ないんだけれど、精鋭兵は僕に5人とも預けてくれないかな "
「……マーク、君にかい?」
" うん。僕に預けてくれれば君達を、ピンポイントで敵将の元へ届けると約束するよ "
「そうか。……うん、任せた。ケイオスが天稟と呼ぶ君の『軍師』の才を、ぜひとも僕に見せてくれ」
――
――――
【プレイヤーフェーズ】
遠くで演習開始の笛の音がブォォと鳴った。
演習場になった丘は、遠くに素組みの天幕と観覧席が見える以外には障害物もない。遠くから進軍してくる敵兵の姿はきっちりと視認出来るが……距離が遠いと、それも小さなものだ。
2人1組を組まされたケイオスとセシリアは、それらの横腹。マークからの
セシリアの軍馬の後ろに乗っていたケイオスが。
相手の剣の範囲外。こちらの魔法の射程内。その瞬間に飛び降りて、魔法を放つ。
「頁の30 ―― サンダーッ!!」
「こっちからも、追撃するわよっ!!」
<戦闘処理>
ケイオス:サンダー
→剣士1:(命中/10)
セシリア:鋼の槍
→剣士1:(命中/12)
⇒剣士1/戦闘不能
「……で、そのままアンタを回収して脱出ってワケねッ!!」
「マークのやつ人使いが荒いよなぁ」
「抱えられたままで……いない! でッ!! さっさとケツに乗りなさいッッ」
セシリアに首根っこをひっつかまれて、ケイオスは再び馬の後ろへ。
騎兵の突撃に合わせて、相手の一番槍の出鼻を挫くことに成功した。
騎兵は互いに2騎ずつのため、相手方にも騎兵は居るはず。
視界を広くとると、相手の将兵……貴族の男が馬に乗っていて。その横に1人。明らかに傭兵と思しき
せっかくの機動力を傍に
上級騎兵の男は幾分か戦に慣れているようで、せめてこちらを視界から逃すまいと、将兵の位置取りを事細かに変えている。不利は上等という辺りか。
馬上の坊ちゃんは彼の主なのだろう。主を馬に乗せるのは、アリかナシかで言えば十分にアリ。いざという時に将を逃がすことが出来る陣形だ。
しかしこと演習に至っては、贅沢な騎兵の使い方に他ならない。ケイオスがそう呆れていると。
" 槍2剣1 ―― 横方 ―― 突撃!! "
こちらを向いた相手の槍兵……その横腹を、マークが指示を出した精鋭兵3名が叩いていた。
陣形を組んだ突撃である。1撃目を受けた槍兵は天高く吹っ飛ばされた。どさっと地に落ちた頃には相手も一度後退し、こちらを受けるだけの陣形を整えている。
相手の狙いは ――
「……! こっち、矢!! くるわよ!!」
【エネミーフェーズ】
<戦闘処理>
弓兵1:鉄の弓
→セシリア:(命中/5)
弓兵2:鉄の弓
→セシリア:(回避)
弓兵3:鉄の弓
→セシリア:(命中/6)
「―― なんで! あたしばっかり!?」
「そりゃあ、馬の手綱握ってる方狙うだろ。つーかセシリアうまいな~。馬狙った矢はきっちり避けてやんの」
「くぅ~っ……。……マークから、引っ張れって!!」
「そんじゃオレがセシリアを回復するよ。隊列を引き延ばすんだな、任せとけ!」
【プレイヤーフェーズ】
<戦闘処理>
ケイオス:ライブ
→セシリア:(HP回復5+7)
傷を覆ったライブの暖かな光を引き連れながら、セシリアが距離を取る。
相手の弓兵はセシリアを追っている。目線ですぐに判るくらいだ。オレがセシリアを回復していることを認識しておらず、倒せる敵から倒そうとしている……のだと、思う。
つまりは。
目の前の、追える敵を、杓子定規に、自己判断で追撃している。
これについては少なくとも、エレブ大陸の兵法においては間違っていない行動
兵がきちんとした練度を有していて。その上で、それらを覆す軍師さえ現われなければの話だが。
【エネミーフェーズ】
弓兵が
追いつけるはずはないが、弓兵にはセシリアが見えている。自分達の先鋒を蹴散らした騎兵の尻が。それを追わずにはいられない……のだろう。学徒兵でなければ、
だから、彼らは
弓兵は後列に配置されているものだ。それが前進したのである。当然の帰結として、隊全体が押し上げられるように前へと進む。
後列には、件の馬に乗った指示を出していない将と。全身鎧の上級騎兵と。
呆れつつも戦域を見渡すような視線を巡らせた、青紫髪の女魔道士だけが残されている。
【プレイヤーフェーズ】
「このまま! 一撃離脱!! だって!!!」
「おうよ!」
ケイオスはセシリアの声に応じ、馬の鞍をがっしとつかんだ。
2人乗せたバランスを器用に保ちながら、馬が旋回する。足を止めたこちらを狙って、未だ射程外だというのに矢をつがえた弓兵の横っ腹を、マークが指揮した槍兵のうち……先ほどの突撃とはさらに分けられた別働隊がはたき始めた。
精鋭兵が弓兵をどついて転ばせて、自発的に白旗をあげさせる。
マーク率いる兵は、演習である事すらも最大限に利用しているようだった。戦闘不能状態にもっていく必要すらないらしい。
こちらも仕事をしよう。
目前。馬に揺られた視界の内で、先ほど突撃した槍兵と、相手の剣士たちが取っ組み合っている。
その横をセシリアが掠めゆく。
「―― せああぁぁぁっ!!」
<戦闘処理>
セシリア:鋼の槍
→剣士2:(必殺/10*3)
⇒剣士2/戦闘不能
気合の一声と共に、見事に剣士の間合いの外から、左肩を一撃。
肩を抜いて痛みに絶叫した剣士の男を横へ転がしておいて……。
「オレは……こっちな!!」
<戦闘処理>
ケイオス:サンダー
→剣士3:(命中/12)
⇒剣士3/戦闘不能
剣士は武器を持った手を弾かれ、その上でサンダーを浴びた。
トドメを刺す必要はない。精鋭兵に任せて良いだろう。
―― 急いで振り向く。
【エネミーフェーズ】
<戦闘処理>
ミレディ:鉄の槍
→セシリア:(命中/13)
「―― くっ!!」
「こちらも、ただで負けるつもりは……ないの! よっっ!!!」
槍兵の女・ミレディが、セシリアへ向けて突貫。馬ごとその足を止めて見せていた。
マークの事前調査に引っかかっていたこの女兵は……なるほど。馬上兵を志望していたが、今回の騎兵数の制限からあぶれたせいで、歩兵に組み込まれてしまったのだろう。
彼女が持っている槍はランスを混ぜ込んだような形をしていて、偶然にも馬上の敵を狙い易いようだった。
足を止めた馬の上で、ケイオスは周囲を見た。
ミレディはセシリアに任せるべきだろう。それよりも……前方。
間延びした敵の隊列に割り込んで。
ゲイルと上級騎兵が。ゼフィールと女魔道士・ブルーニャがそれぞれ、衝突を始めていた。
頭を回す。
おそらくだが、マークはこの状況を折り込み済みでゲイルと王子を突貫させた。
ケイオスは、自分に出来ることを探す。マークの様にはいかないが、端から順だ。
(……魔道士には王子が接近している。驚異ではない。将兵は貴族の坊ちゃん。今剣を抜こうとして、留め金を外している。後回しに出来る。1番の問題は ―― ゲイルの相手!!)
ケイオスはゲイルの槍を悠々と鎧で受け止めた、上級騎兵に狙いを定めた。
セシリアの後ろ、馬から飛び降りる。数歩、接近する。
やり方は先ほどマークから
演習において、必ずしも相手を戦闘行動不可能な状態にする必要はない。
ケイオスに特有で。彼にしか出来ない手がひとつ、確かにある。
小さな手のひらに雑魔導書を広げる。悠々と唱えて、放った。
【プレイヤーフェーズ】
<戦闘処理>
ケイオス:フィアー
→パラディン:(命中/騎乗解除/0)
吹き飛ばした。馬上から、騎兵を。
騎手を失った馬が遠ざかって行く。どしゃりと金属質な音と共に、上級騎兵が背中を打つ。
「まだやるか?」
ゲイルがぴたりと鎧の隙間に槍を当てると、兵は降参とばかりに白旗をあげた。
そこから幾つか距離をおいて、横。
王子が
「ふっ……はぁっ!!」
「くっ……!」
左に持った楯の剣。レイピアで詠唱中だった魔道書を貫き、
右に持った軽銀の剣。白刃の腹で、首筋をなぞってあてる。
ブルーニャは王子を見つめたまま、両手を挙げた。こちらも降参である。
「……王子……」
「ありがとう、ブルーニャ。君はきちんと僕を倒すつもりで立ち塞がってくれた。そこだけはマークの予想を
笑顔に見惚れたブルーニャの前で、ゼフィールは焼け焦げたマントを
ベルン王家の紋章を模した
王子が降参したブルーニャから剣を外す。
切っ先を変えると、敵将の坊ちゃんは戦う素振りも見せずに武器を置いた。敵兵4名に囲まれている。
三度。王子は様になるポーズで剣を掲げた。
「……そしてその君達を、越えることが出来た。僕たちの、勝利だ!!」
銀の剣が斜光に輝く。敵陣の占領。敵将の敗北。王子の宣言。
つまりは、ケイオス連隊の勝利である。
【戦闘終了】