※この作品はR-18です。

ファイアーエムブレム 娼俗の剣   作:どろまみれ

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 ケイオス達は学内での合同演習の日を迎えた。
 闇雲に戦わせるというわけではないが……つまるところ。この演習の最大の目的は、観覧なさるベルン貴族の方々による、兵達の青田買いである。

 だからこそ学徒は全力を出す。
 優勢ならば武をもって切り込むことで、自分を売り込み。
 劣勢なら首魁を命を懸けて守ることで、自分を売り込むのである。

 そんな中。別段注目もされていない演習場の端に ―― 装備を整えた一団。
 ゼフィール王子とケイオスが隊長を務める、連隊の姿があった。




【進撃準備】

▲ケイオス/見習い魔導士(Lv.5↑↑)
 属性:無 移動:5 体格:2

 HP:12↑↑
 力:3↑ 魔力:7↑
 技:5↑↑
 速さ:6↑↑
 幸運:0
 守備:2↑
 魔防:6↑

 魔導書:C↑
 杖:E

 装備:雑魔導書
 重さ:7
 フィアー/アロー/ライブ/サンダー

・サンダー
 武器レベルD/射程1~2/威力5/命中80/必殺0
 訓練のために王家の資金で購入した豪華な練習用の魔道書、その頁を切り貼りしたもの。
 ファイアーを扱うよりも難度が高いため、効率的な訓練を行えた。サンダーの魔道書は間違いなく高価ではあるが、他の魔道よりは重宝される……軍事品として大量生産されているものであるため、安定供給が可能。
 雑魔導書に切り貼りしても出力の低下がないことも含めて、主力の攻撃魔法。


▲ゲイル/見習い兵士(Lv.11)
 装備:手槍、鉄の槍

▲マーク/軍師見習い(Lv.6)
 装備:ライト、アロー

▲セシリア/ソシアルナイト・魔法使い(Lv.13)
 装備:鋼の槍、サンダー、ウィンド

▲ゼフィール/プリンス(Lv.1)
 装備:銀の剣、レイピア

▲精鋭兵×5
 槍兵×2、剣士×2、弓兵×1


  【戦闘フェーズ】

 

 

 ――

 ――――

 

 演習場として選ばれた丘の奥にて。

 兵達を並べるその前に。ケイオス、マーク、ゼフィール、セシリアが集まり、作戦を立てることとなった。

 

 まずは隊長として、現状を告げる。

 

「相手はオレ達と同年の兵団だ。ゼフィール王子にあてて問題のない、貴族間の諍いのないやつらがまとめて招聘されたらしいな」

 

「それだとただの政治的なデモンストレーションにならない? ……あの、いえ、王子を貶めるつもりはなくってですね……」

 

「そう考えるのも普通だと思うから、忌憚なく話してくれると嬉しいよ。セシリア女史。……でも、そうじゃなかったからここで話してるんだろう? ケイオス」

 

「王子の言うとおりッス。オレとゲイルで見てきたところ、あわよくば倒そうっていう勢力がきちんと集まってた。デズモンド王の側に近しい嫡子どもだ」

 

「なるほど……演習だから、堂々と王子(ぼく)と闘うことが出来て。負けて当然だというのに、勝てば鼻をへし折れて、王の覚えは間違いなくよくなる。良い条件というわけだ」

 

「ああ。まぁ王子が優秀だからこそ、ってところだな。……かと思えばそいつらで固めた訳でも無く、騎士団の同年の才媛がふたり。ミレディっていう槍兵と、ブルーニャっていう魔道士が兵の中に紛れてる」

 

" ふたりの兵としての練度は、僕が見てきたよ。軍学校だから演習の記録もあった。ミレディは一般的な貴族の娘で、竜騎士志望の槍使い。 女性であること以外に目立った特徴はない。問題はブルーニャの方だ。魔力に優れた魔道士で、軍略にも長けている "

 

「へぇ……マークにそう言われるなんて、相当だな。……でも?」

 

" うん。でも、だ。……今回の将はブルーニャじゃない。他兵に劣る、とはっきり評価できる貴族の長男、嫡子だ。彼が指揮をとるとみて間違いないよ。……だから、こうする "

 

「……うーん、成る程……。僕は構わないが、これは……」

 

「流石はマーク。容赦ねーでやんの」

 

" ありがとう。褒め言葉として受け取るよ。……この通り、ブルーニャにはゼフィール王子とゲイルを当てる。彼女の立場じゃ多分、王子をまともに攻撃出来ないね。残ったケイオスとセシリアには、ミレディを含む小隊を相手してもらおうかな "

 

「別に良いけど……あたしとコイツの2人だけ? 王子についてきた精鋭兵だってあるんじゃないの?」

 

" ごめんねセシリア。2人だけだ。そして、王子。申し訳ないんだけれど、精鋭兵は僕に5人とも預けてくれないかな "

 

「……マーク、君にかい?」

 

" うん。僕に預けてくれれば君達を、ピンポイントで敵将の元へ届けると約束するよ "

 

「そうか。……うん、任せた。ケイオスが天稟と呼ぶ君の『軍師』の才を、ぜひとも僕に見せてくれ」

 

 

 

 

 

 

 ――

 ――――

 

 

【プレイヤーフェーズ】

 

 

 遠くで演習開始の笛の音がブォォと鳴った。

 演習場になった丘は、遠くに素組みの天幕と観覧席が見える以外には障害物もない。遠くから進軍してくる敵兵の姿はきっちりと視認出来るが……距離が遠いと、それも小さなものだ。

 

 2人1組を組まされたケイオスとセシリアは、それらの横腹。マークからの指示(しんごう)を確かめながら、直前の剣士を相手取ることにする。

 

 セシリアの軍馬の後ろに乗っていたケイオスが。

 相手の剣の範囲外。こちらの魔法の射程内。その瞬間に飛び降りて、魔法を放つ。

 

「頁の30 ―― サンダーッ!!」

 

「こっちからも、追撃するわよっ!!」

 

 

<戦闘処理>

 

 

 ケイオス:サンダー

 →剣士1:(命中/10)

 

 セシリア:鋼の槍

 →剣士1:(命中/12)

 ⇒剣士1/戦闘不能

 

「……で、そのままアンタを回収して脱出ってワケねッ!!」

 

「マークのやつ人使いが荒いよなぁ」

 

「抱えられたままで……いない! でッ!! さっさとケツに乗りなさいッッ」

 

 セシリアに首根っこをひっつかまれて、ケイオスは再び馬の後ろへ。

 騎兵の突撃に合わせて、相手の一番槍の出鼻を挫くことに成功した。 

 

 騎兵は互いに2騎ずつのため、相手方にも騎兵は居るはず。

 視界を広くとると、相手の将兵……貴族の男が馬に乗っていて。その横に1人。明らかに傭兵と思しき上級騎兵(パラディン)が、傍仕えとして控えていた。

 

 せっかくの機動力を傍に侍(はべ)らせている……と。

 上級騎兵の男は幾分か戦に慣れているようで、せめてこちらを視界から逃すまいと、将兵の位置取りを事細かに変えている。不利は上等という辺りか。

 馬上の坊ちゃんは彼の主なのだろう。主を馬に乗せるのは、アリかナシかで言えば十分にアリ。いざという時に将を逃がすことが出来る陣形だ。

 しかしこと演習に至っては、贅沢な騎兵の使い方に他ならない。ケイオスがそう呆れていると。

 

" 槍2剣1 ―― 横方 ―― 突撃!! "

 

 こちらを向いた相手の槍兵……その横腹を、マークが指示を出した精鋭兵3名が叩いていた。

 陣形を組んだ突撃である。1撃目を受けた槍兵は天高く吹っ飛ばされた。どさっと地に落ちた頃には相手も一度後退し、こちらを受けるだけの陣形を整えている。

 

 相手の狙いは ――

 

「……! こっち、矢!! くるわよ!!」

 

 

【エネミーフェーズ】

 

 

<戦闘処理>

 

 

 弓兵1:鉄の弓

 →セシリア:(命中/5)

 

 弓兵2:鉄の弓

 →セシリア:(回避)

 

 弓兵3:鉄の弓

 →セシリア:(命中/6)

 

「―― なんで! あたしばっかり!?」

 

「そりゃあ、馬の手綱握ってる方狙うだろ。つーかセシリアうまいな~。馬狙った矢はきっちり避けてやんの」

 

「くぅ~っ……。……マークから、引っ張れって!!」

 

「そんじゃオレがセシリアを回復するよ。隊列を引き延ばすんだな、任せとけ!」

 

 

【プレイヤーフェーズ】

 

 

<戦闘処理>

 

 

 ケイオス:ライブ

 →セシリア:(HP回復5+7)

 

 傷を覆ったライブの暖かな光を引き連れながら、セシリアが距離を取る。

 相手の弓兵はセシリアを追っている。目線ですぐに判るくらいだ。オレがセシリアを回復していることを認識しておらず、倒せる敵から倒そうとしている……のだと、思う。

 

 つまりは。

 目の前の、追える敵を、杓子定規に、自己判断で追撃している。

 

 これについては少なくとも、エレブ大陸の兵法においては間違っていない行動だった(・・・)。

 兵がきちんとした練度を有していて。その上で、それらを覆す軍師さえ現われなければの話だが。

 

 

【エネミーフェーズ】

 

 

 弓兵が騎馬兵(セシリア)を追って走る。起伏に乏しい丘陵で、人が馬に追いつけるはずもない。せめて射程に入れようとしているようだが、つまるところ弓の射程を理解していないということでもある。

 追いつけるはずはないが、弓兵にはセシリアが見えている。自分達の先鋒を蹴散らした騎兵の尻が。それを追わずにはいられない……のだろう。学徒兵でなければ、たられば(・・・・)。ここはベルンの軍学校で、相手は自分達と同様の生徒である。

 

 だから、彼らは時間(ターン)を移動に費やした。

 弓兵は後列に配置されているものだ。それが前進したのである。当然の帰結として、隊全体が押し上げられるように前へと進む。

 

 後列には、件の馬に乗った指示を出していない将と。全身鎧の上級騎兵と。

 呆れつつも戦域を見渡すような視線を巡らせた、青紫髪の女魔道士だけが残されている。

 

 

【プレイヤーフェーズ】

 

 

「このまま! 一撃離脱!! だって!!!」

 

「おうよ!」

 

 ケイオスはセシリアの声に応じ、馬の鞍をがっしとつかんだ。

 2人乗せたバランスを器用に保ちながら、馬が旋回する。足を止めたこちらを狙って、未だ射程外だというのに矢をつがえた弓兵の横っ腹を、マークが指揮した槍兵のうち……先ほどの突撃とはさらに分けられた別働隊がはたき始めた。

 

 精鋭兵が弓兵をどついて転ばせて、自発的に白旗をあげさせる。

 マーク率いる兵は、演習である事すらも最大限に利用しているようだった。戦闘不能状態にもっていく必要すらないらしい。

 

 こちらも仕事をしよう。

 目前。馬に揺られた視界の内で、先ほど突撃した槍兵と、相手の剣士たちが取っ組み合っている。

 その横をセシリアが掠めゆく。

 

「―― せああぁぁぁっ!!」

 

 

<戦闘処理>

 

 

 セシリア:鋼の槍

 →剣士2:(必殺/10*3)

 ⇒剣士2/戦闘不能

 

 気合の一声と共に、見事に剣士の間合いの外から、左肩を一撃。

 肩を抜いて痛みに絶叫した剣士の男を横へ転がしておいて……。

 

「オレは……こっちな!!」

 

 

<戦闘処理>

 

 

 ケイオス:サンダー

 →剣士3:(命中/12)

 ⇒剣士3/戦闘不能

 

 剣士は武器を持った手を弾かれ、その上でサンダーを浴びた。

 トドメを刺す必要はない。精鋭兵に任せて良いだろう。

 

 ―― 急いで振り向く。

 

 

【エネミーフェーズ】

 

 

<戦闘処理>

 

 

 ミレディ:鉄の槍

 →セシリア:(命中/13)

 

「―― くっ!!」

 

「こちらも、ただで負けるつもりは……ないの! よっっ!!!」

 

 槍兵の女・ミレディが、セシリアへ向けて突貫。馬ごとその足を止めて見せていた。

 マークの事前調査に引っかかっていたこの女兵は……なるほど。馬上兵を志望していたが、今回の騎兵数の制限からあぶれたせいで、歩兵に組み込まれてしまったのだろう。

 彼女が持っている槍はランスを混ぜ込んだような形をしていて、偶然にも馬上の敵を狙い易いようだった。

 

 足を止めた馬の上で、ケイオスは周囲を見た。

 ミレディはセシリアに任せるべきだろう。それよりも……前方。

 

 間延びした敵の隊列に割り込んで。

 ゲイルと上級騎兵が。ゼフィールと女魔道士・ブルーニャがそれぞれ、衝突を始めていた。

 

 頭を回す。

 おそらくだが、マークはこの状況を折り込み済みでゲイルと王子を突貫させた。

 ケイオスは、自分に出来ることを探す。マークの様にはいかないが、端から順だ。

 

(……魔道士には王子が接近している。驚異ではない。将兵は貴族の坊ちゃん。今剣を抜こうとして、留め金を外している。後回しに出来る。1番の問題は ―― ゲイルの相手!!)

 

 ケイオスはゲイルの槍を悠々と鎧で受け止めた、上級騎兵に狙いを定めた。

 セシリアの後ろ、馬から飛び降りる。数歩、接近する。

 

 やり方は先ほどマークから教わって(・・・・)いる。

 演習において、必ずしも相手を戦闘行動不可能な状態にする必要はない。

 

 ケイオスに特有で。彼にしか出来ない手がひとつ、確かにある。

 小さな手のひらに雑魔導書を広げる。悠々と唱えて、放った。

 

 

【プレイヤーフェーズ】

 

 

<戦闘処理>

 

 ケイオス:フィアー

 →パラディン:(命中/騎乗解除/0)

 

 吹き飛ばした。馬上から、騎兵を。

 騎手を失った馬が遠ざかって行く。どしゃりと金属質な音と共に、上級騎兵が背中を打つ。

 

「まだやるか?」

 

 ゲイルがぴたりと鎧の隙間に槍を当てると、兵は降参とばかりに白旗をあげた。

 そこから幾つか距離をおいて、横。

 

 王子が両手(・・)に剣をふた振り持って、ブルーニャを追い詰めていた。

 

「ふっ……はぁっ!!」

 

「くっ……!」

 

 左に持った楯の剣。レイピアで詠唱中だった魔道書を貫き、取り上げ(ディスアーム)。

 右に持った軽銀の剣。白刃の腹で、首筋をなぞってあてる。

 

 ブルーニャは王子を見つめたまま、両手を挙げた。こちらも降参である。

 

「……王子……」

 

「ありがとう、ブルーニャ。君はきちんと僕を倒すつもりで立ち塞がってくれた。そこだけはマークの予想を上回って(・・・・)くれたんだ。王子として、これ以上に嬉しいことはない」

 

 笑顔に見惚れたブルーニャの前で、ゼフィールは焼け焦げたマントを翻(ひるがえ)す。

 ベルン王家の紋章を模した刺繍(ししゅう)が燃えて、穴が空き、炭化している。ファイアーの直撃を受けた跡。つまりブルーニャはきちりと自国の王子を迎撃し、王子はその攻撃をかいくぐって剣を振るったのだ。

 

 王子が降参したブルーニャから剣を外す。

 切っ先を変えると、敵将の坊ちゃんは戦う素振りも見せずに武器を置いた。敵兵4名に囲まれている。手駒(ユニット)はまだ居るが、将から離れた位置でマークらともみ合っている。紛うことなく敗北だ。正しい判断だろう。この場面の将に求められるのは武力ではなく、判断力に違いない。

 

 三度。王子は様になるポーズで剣を掲げた。

 

「……そしてその君達を、越えることが出来た。僕たちの、勝利だ!!」

 

 銀の剣が斜光に輝く。敵陣の占領。敵将の敗北。王子の宣言。

 つまりは、ケイオス連隊の勝利である。

 

 

【戦闘終了】

 

 

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