そんでゴメン!! エロいけなかった!!
次回は絶対にエロいから!!
僕が綾小路の代役として生徒指導室に呼び出されてから二週間が経過した。
茶柱先生は原作のように言いたい事だけ一方的に伝えた後、さっさと部屋から追い出された後は少し大変だった。簡単に言うと堀北さんに絡まれたせいである。
原作では綾小路の話を一方的に無視した挙げ句に「協力する。ってあなたの心の声が聴こえた」という電波じみたジョークを交えて強引に協力者にしたてあげられていた。
とは言えAクラスへの昇格に興味も無ければ苦手なキャラクターである堀北さんともお近付きにはなりたくない僕からしたら、溜まったものでは無い。
やんわりとお断りを繰り返すも聞く耳もつどころか、上から目線の一方的な命令や罵倒ばかりでまともな会話にならない。
「協力しないというのなら私にも考えがあるわ。あなたがSシステムの裏側に気付いていた事をクラスの人達に暴露するわよ。クラスメイトを見捨てて自分だけポイントをせしめた事を知ったら、皆どう思うかしら?」
等と、ややドヤ顔で脅迫までしてくる始末。流石に少しイラっと来たのでその場合は
「クラスメイトに勝手に個人情報を広められて虐められている。と、生徒会長に訴えます」
とキッパリ告げると、堀北さんは分かりやすく動揺した。
果たしてこんな事で生徒会が動いてくれるかは多分微妙な気もするのだけれど、少なくとも堀北さんにとって生徒会長の名前は明確な弱点の筈。
先程までの勢いと一方的な命令口調が何だったのかと思える程に意気消沈した堀北さんから僕は足早に立ち去った。
その後は何度か奢るから。という文句で昼食に誘われたり、何度か放課後に付きまとわれては「協力しなさい」と指図されたりしたものの、断りまくって逃げ続ける日々。
「堀北さんは実は隣の席の男子に片想いしている」なんて噂が出回り始めた辺りで流石に彼女のプライドが許さなかったのか、今までの干渉が嘘みたいに無くなったので終わった話だけれど。
ちなみに原作における三馬鹿と堀北さんの勉強会イベントも無事に発生したみたいだ。
原作では堀北さんに命令された綾小路が櫛田さん経由で三馬鹿を招集したのだけれど、この世界線では綾小路は存在しないし隣人の僕も堀北さんからは距離を置いている。ならばどうしたかと言うと、堀北さんは平田くんを頼ったらしい。
つまり堀北さん→平田くん→櫛田さん→三馬鹿。という感じの伝言ゲームを介する事で、無事に勉強会の発足を行ったという事だ。
ちなみに五分もしない内に勉強会は解散になった事に関しては、予想通り過ぎて苦笑いすら浮かばなかった。
連立方程式の問題に躓いて匙を投げようとした須藤に対し、いつもの堀北さん節が炸裂した事が解散の理由らしい。
「はっきり言ってあなた達はあまりにも無知無能に過ぎるわ。こんな簡単な問題すら解けなくて将来どうするというのか、想像するだけで私はゾッとするわ」
まあ、そりゃクラス一の問題児の不良少年に正面からそんな事を言ってのければ揉めるに決まっているわけで。須藤は堀北さんの胸倉を掴み上げてあわや拳を振り下ろす直前まで激昂したのだとか。
流れは原作通りとは言え、この超スピード展開と須藤の怒り具合は原作よりも酷い事になっているのかも知れない。
ちなみに、どうして現場に居なかった筈の僕がここまで詳しい話を把握しているのかと言うと……。
「須藤くんは完全に意地になっちゃったみたいで……堀北さんが謝るまで絶対に勉強会には参加しないって断言してるし。山内くんも池くんもそれに釣られてって感じなの」
ランチタイムの空き時間にトイレから帰った時に廊下でばったりと出会した、クラスの女子の中でも僕が唯一まともに会話ができる女子生徒。
つまりは皆のアイドル、櫛田さんが親切丁寧に教えてくれたからだ。
「そうだったんですか。そんな修羅場に巻き込まれてしまうだなんて櫛田さんも大変だったんですね」
「確かに声を荒げた須藤くんは恐かったけど、私は大丈夫だよ。せっかく友達になれたのに赤点取って退学になっちゃうなんて嫌だもん。だから私は友達の力になれるのなら幾らでも協力するつもりだけど……。でも、残念ながら堀北さんは違うみたい」
しゅんと音が鳴る勢いで悲しそうに眉尻を下げて瞳を閉じるクラスのアイドルからは邪念など一切感じない、純粋なクラスメイトの未来を案じる聖女のような慈悲深さを感じる。
「孤高というか気高いと言うか、ちょっと意識が高過ぎてDクラスには合わないのかも知れませんね」
「そうなのかな? 勉強会自体は須藤くん達三人の為に開いたものだけど、私としてはこれをきっかけに堀北さんにもクラスメイトに心を開いて欲しかったんだけど……無理みたい」
まあ、少なくとも表面上の話だけれども。でもきっと僕に原作知識が無かったら、この天使みたいな外面に盛大に騙されて惚れていたかも知れないなぁ。
「それにしても堀北さん。あの勉強会の後から三日続けてお休みしてるし、体調でも悪いのかな? 真白くんは何か聞いてない?」
「いえ、僕は特に何も。そもそも堀北さんの連絡先すら知りませんし」
「そうなの? あの堀北さんが唯一お昼ご飯に誘うくらいだから、プライベートでも仲が良いと思ってたんだけど」
「前にも説明した通り特に仲が良いわけでは無いですよ。そもそも五月になるまでマトモに会話すらした事も無かったんですから」
「怪しいな〜」と言わんばかりに堀北さんと僕の仲を邪推して来る櫛田さんの追求をのらりくらりと躱しつつも。
僕は綾小路不在の影響がこうも早く響いている現実に内心で驚いていた。
「おい。聞いているのか真白?」
今朝の櫛田との会話を思い出しつつ思考に耽る僕の耳に、機嫌の悪いそうな女性の声が響いた。
ふと目の前を見やればテーブルを挟んだ先に、ピシッとしたスーツを着こなしながらも胸元だけは大胆に開けさせたセクシーな女教師の姿がある。
「ああ、ええと。ごめんなさい、先生。少し考え事をしていました」
「ほう。この私の話を無視してまでの考え事とはな……それはそれはよっぽど重大な悩みのようだな? うん」
「いや、その。最近、隣の席の方がずっとお休みしているようですので、気になっていまして」
つまりは我らがDクラスの担任である茶柱先生が僕の向かいに座っている訳なので。
ちなみに僕達の現在地は再びの生徒指導室。特に悪い事をしてないのに指導室に呼び出された五月一日の悪目立ち、再びである。
前回と違うのは放送では無く茶柱先生に帰りのホームルームで名指しで呼び出された事と、この場所に堀北さんが居ない事。
「あぁ、堀北か。本人からは重度の体調不良と連絡があったが……真白。お前は本人から何も聞いていないのか?」
つまりはどこか堅苦しい上に狭苦しい生徒指導室の中、僕と茶柱先生の二人っきり。という意味である。
「いえ、特に何も。平田くんや櫛田さんからも似たような事は聞かれましたけど、そもそも僕は堀北さんの連絡先も知りませんし」
「それは意外だな。堀北の性格ならお前のような便利な奴との接点は何としてでも確保しようとするだろうに」
いや、便利な奴って。つくづく生徒の事を駒とか道具としか見てない人だよなあ。
ある意味では綾小路と考え方が似ている面もあったのかも知れない。まあ、原作では三年生編で盛大な報復を御見舞いされて茫然自失になっていたみたいだけど。
「確かに一時期は堀北さんから、しつこく話し掛けられたり昼食に誘われたりとかしましたけど。僕は全て断っていましたから」
「ふん、薄情な奴め。情の薄い男は女からモテないぞ?」
いや、薄情も何も。僕が堀北さんからつきまとわれる様になった理由は貴女のせいなのですが……。
内心でそうツッコミながらも僕は堀北さんが長い間、学校を休んでいる理由についてを考えていた。
原作において堀北さん主催の勉強会イベントは連鎖的に様々な出来事を引き起こす。
一つ目は綾小路が櫛田の本性を……つまり堀北に対して罵詈雑言を吐き出しながら屋上の扉に蹴りを入れて八つ当たりする場面を目撃してしまうイベント。
そしてもう一つは夜に寝付けなかった綾小路が何となく外に出ると堀北さんを発見。そのまま尾行すると兄である生徒会長の『堀北 学』にコンクリートの地面の上に投げ飛ばされそうになるのを目撃し、それを阻止するイベント。
「まあ、その。女性からモテないのは割と今更ですし、諦めてますよ。この見た目ですしね」
そしてこの世界線では綾小路が居ない。
櫛田さんの本性を知る機会が無くなった。これは、まあ特に問題は無い。きっと彼女は今後も莫大なストレスを溜め込みながらも理想のアイドルを演じ続けるのだろう。
問題は堀北さんの方だった。
綾小路が居ない今、空手五段にして合気道四段という武力チートを持つ兄にコンクリートの上に投げ飛ばされる悲惨な末路から彼女を救う人間は誰も居ないのだから。
「その年でそこまで悲観する事もあるまい。お前のような庇護欲を唆る容姿を好む女も一定数は……っと。下らない冗談はさておき、堀北の事はこちらも気に掛けている。余計な心配は無用だ」
「いや、まあ。僕としてはただの隣の席の生徒という認識しか無いのでともかく。櫛田さんや平田くんはかなり心配してましたよ?」
「なに、あいつらにも私の口から伝えておくさ。そもそも堀北が仮にそのまま不登校になろうが退学でもしようが、今のDクラスに減点されるポイントは無い。安心しておけ」
「は、はぁ……」
果たして武道経験者からコンクリの上に投げ飛ばされる事を心配するのが余計な事なのだろうか。
いや、そもそも茶柱先生は堀北さんが休んでいる理由を知りようも無いからそこは致し方ない。
それはそれとして、不登校やら退学やらといった重要な問題はポイントの有無に関わらずに真剣に向き合うべき事なのだと思うのだけれど。教育者として。
「さて、そろそろ話を戻すぞ。……真白。単刀直入に聞こう。お前はAクラスを目指す気はあるか?」
……まあ、十年以上前のトラウマと野望に囚われ続けているこの人からしてみれば、『使えない生徒』や『期待外れの人間』への扱いなんて、その程度のものなのかも知れないけれど。
「いや、今更無理じゃないですか? Aクラスとの差は絶望的ですし。確か940ポイント差でしたよね?」
「実現が可能か不可能か。を聞いているのではない。真白 祷という生徒がAクラスへのし上がる気概が有るのか、そうで無いかを聞いている」
堀北さんの話題の時に浮かべていた投げやりな態度から一変。茶柱先生は睨みつけるかのような表情で僕の瞳を射抜いた。まるで獲物を狙う肉食獣のような迫力がある。
「無いですね」
「即答だな」
「嘘をつく理由がありませんから」
僕の言葉は先生からすれば予想通りだったのだろう。その大きな胸の下で腕を組んだ彼女はテーブルに身を乗り出すようにした。
「以前、堀北の前でお前の実力を仄めかした時にも触れたが入学二日目にしてSシステムの裏側を看破した生徒は開校以来、お前だけだった。分かるか?」
「いや、あれ仄めかすっていうか普通に暴露だった気がするのですが」
「喧しい、私の話を遮るな。お前はただ黙って私の話を聴いて、黙って私の言う事に従え」
「えぇ……堀北さん以上の理不尽」
この人、良く教員免許取れたよなぁ。まあ、高育以外のまともな高校ではすぐに迂闊な事をやってクビになりそうだけど。
綾小路も原作で似たような事を語ってたけど茶柱先生って子供っぽいっていうか。ちょっと短慮で我儘な部分があるよなぁ。初手で脅迫しちゃうところとか。
「真白。最も優秀なエリート揃いのAクラスの面々ですら成せなかった快挙をお前はやってのけたんだぞ? 今年だけの話では無い。歴代で最も優秀と呼ばれている現生徒会長ですら、お前程は早く見破れなかった。挙げ句にお前はその情報を教師に売り付けるという突飛な行動で大量のプライベートポイントを獲得した。これは誇るべき事なんだ」
何だろう? 茶柱先生がやけに僕を持ち上げてくる。燃え盛るようなAクラスへの野望とは裏腹に、生徒に対しては酷薄な程に関わりを持とうとしないドライな彼女らしくない態度だ。
御世辞を並べていい気持ちにさせよう。だなんて薄っぺらさは一切感じないし、むしろ一言一句にどこか恍惚とした不気味な熱意が籠っている気がする。
「……ええと、誇るも何も。僕はクラスの面々を見捨てて自分だけが甘い蜜を吸ったようなものでは無いですか。責められる事はあっても褒められる事ではありませんよ」
「ふっ。それは弱者の醜い嫉妬でしかないな。お前は私の説明に疑問を持ち、それを解消する為に行動した。その上で莫大な報酬として500万プライベートポイントを勝ち取ったのはお前の実力だ。入学初日に私はちゃんと説明した筈だぞ? この学校は実力で生徒を評価する……と、な」
茶柱先生の瞳が輝いている。それだけでは無い。頬は熱を帯びて薔薇の花弁が咲き乱れるかのように色付き始め、唇からはチロリと蛇の様に舌先が一瞬だけ除いている。
どうにも目の前の女教師は興奮状態にあるように思える。少なくとも、生徒の目の前で唇を吊り上げては舌舐めずりを晒す程に。
「本来Dクラスは不良品の集積所。上のクラスの連中への見せしめとして晒し者にされる本物の劣等生の集まりと化している。腐ったミカンが何とやら。と、何かの台詞で聞いたことは無いか?」
まあ、昔はまだ違ったのだがな。と、一瞬だけ遠くを見るような仕草で呟いた茶柱先生は大人と言うより年頃の少女に見えた。
自信の高校時代を振り返ってるのかも知れない。
生徒指導室の小さな窓から色鮮やかな夕陽が差し込み、茶柱先生を照らし出す。
成熟した大人の色気を纏う妙齢の美女が茜色のスポットライトに照らし出されて、浮かび上がった童女のような一面が、どうにも僕の胸の奥を締め付けるような得も言われぬ衝撃を与えた。
「だが、今年は違う」
そんな陰りのある表情から一瞬でサンチマンタリスムを消失させた茶柱先生は、再び野性的な笑みを浮かべて、こう語り出した。
「平田。櫛田。高円寺。堀北。王。幸村。須藤。欠点ばかりが目立ちがちとは言え、確かに光るタレント揃い。そこにお前だ、真白。この面子ならば不可能も可能に出来る。最底辺のDクラスからAクラスへの下剋上だって果たす事が出来る。私はそう確信している」
そこまで言い切ると、茶柱先生はおもむろに立ち上がった。
170手前という女性にしては長身の女性に必然的に見下される形となった僕は、彼女の顔を見上げる事となる。
「せ、先生? あの、どうしたんですか?」
「私の叶えられなかった夢を。未練を。執念を。後悔を。そして何より、あの日からの卒業の為なら」
先生の瞳は僕をしっかりと捉えている。視線がまるで可視化しているのでは無いかと疑いたくなる程に、僕の身体に絡み付いていく。
舐めるような視線。きっとこの比喩はこの時の為にあったのだろう。そんな粘着質で、重くて、熱の籠った視線。
「私は何だってする。そう……何だって、な」
シュルリ。ジャケットを脱ぎ捨てる音が生徒指導室に響く。
茶柱 佐枝という一人の女性は、驚き固まる僕を挑発するかのようにしてシャツのボタンを続いて外し、真っ白な肌から浮かぶような黒のブラジャーを顕にしたのだった。
サブヒロインについて
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いらない。
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松下
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佐倉
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星ノ宮
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その他