皆さんどう思われますか?
無機質な室内、狭苦しい生徒指導室の窓から夕陽が照らす。ノスタルジックなスポットライトに浮かび上がるのは僕を見下ろす妙齢の美女。
カッターシャツのボタンを全て外し、胸元のブラジャーを曝け出した茶柱先生は不気味な程にその瞳を炯々と輝かせている。
「取り引きといこうじゃないか。真白 祷」
「せ、先生……!?」
色仕掛け。前世含めて性交渉どころか女性との交際経験すら無い、そんな哀れな非モテ男の僕ですら察してしまう程のハニートラップ。
二次元世界から飛び出したような絶世の美貌を持つ先生からの誘惑に僕が硬直してしまったのは、その濃密な色気に当てられただけでは無い。
「見た目は幼いとは言え、お前も年頃の男だ。溜まっているんだろう? イロイロと、な。それを私が処理してやる」
発情した雌の表情。もしも茶柱先生がそんなエロ漫画でよく見るような火照った顔をしていたならば、僕は欲望のままに茶柱先生に襲い掛かっていたかも知れない。
だけど彼女が浮かべているのは笑みだ。しかもただの笑みでは無い。牙を剥き出しにして、獲物に喰らいつき、じわじわと嬲り甚振り、そして徹底的に屈伏させる嗜虐的な笑み。
ギラギラと野望に光るその眼光も相まってか、まるで猛禽類に目をつけられた小動物の様な本能的な畏怖に襲われ、僕はすっかり動けなくなっていた。
「お前はやけに私の身体に興味津々だったみたいだからな。つい先日も私の胸元を覗き込んでいただろ?」
「ち、違っ……あのっ。先生、服を着てっ……本当に」
舌舐めずり一つ。おもむろに僕の頬に触れた先生の掌の感触。屈んだ拍子にゆさゆさと揺れる豊満な乳房。
真っ白な肌とのコントラストが扇情的に映える黒の下着。
恐らく茶柱先生は僕を呼び出す前からこうする事を決めていたのだろう。乳輪が露出するギリギリを責めるような心許ない布面積のブラジャーは肌が透けて見えるような紫色のレースで飾り付けられている。
いわゆる、男を誘う為の用途で用いる下着だという事が童貞の僕にすら理解できた。
「ふん。お前みたいなエロガキの視線など女からすればバレバレだ。現に口では殊勝な事を言いながら今もこうして私の身体に目が釘付けじゃないか」
「いえ……あの、ごめんなさい」
何故、僕が謝っているのだろうか。やっぱり茶柱先生は堀北さん以上に理不尽極まりない女性じゃないか。とにかく今は先生の身体から視線を外さねば。頭を振ろうとしたその時、先生の暖かな掌が僕の身体を撫で回し始める。
「男など所詮はそんなものだ。特にお前の年頃ならな……さて、単刀直入に言ってやろう。もしもお前が今のDクラスをAクラスにまで昇格させる事が出来たなら卒業まで好きに私を抱かせてやる。何度でも、な?」
「そ、そんなこと……」
僕の頬を優しく撫で回していた先生の手は滑るようにして僕の首筋に下りていく。
皮膚の際を、まるで産毛の一本一本まで愛でるかのようなフェザータッチは今までに味わった事の無いようなゾクゾクとした感覚を産み出し、僕は返事を返しつつも密かに身悶えした。
「とは言え困難な道程だ。三年間本気で励んだとしても叶う頃には卒業間近になってしまうかも知れない。そうなってしまってばお前の利点は少なくなり、下手したら私の都合良く動いてはくれない可能性もあるだろうからな。少しばかりオマケをつけてやろう」
先生の指先がまるで子猫を擽るようにして僕の喉を擽った。愛玩動物を愛でる様な手つきとは裏腹に、その瞳は冷徹なまでの計算により冷たさを増していた。
「お前が本気でAクラスを目指す為に動いている……私がそう判断している間は下のクラスで燻っている間でも、お前を気持ち良くさせてやろう。男は好きだろ? どうだ?私の胸でお前のモノを挟んだり、尻に押し付けたりしたくはないか?」
両腕で胸を挟み込むようにして強調しながら、先生は淫らな言葉を僕の耳元で囁いては興奮を唆って来た。
ゴクリ。と思わず生唾を飲むと同時に、未だ発育不良で喉仏の主張が少ない僕の喉が震え出す。
思わず妄想してしまったのだ。
目の前の女性に。クラスの男子の憧れのマドンナの身体を欲望のままに味わえたら。きっと極上の快楽と法悦。天にものぼるような征服感と優越感を得られるのだろう。
目の前で揺れている大きな胸の中に僕の陰茎を挟み込み、俗に言うパイズリを心ゆくまで堪能したい。
タイトなスカートでは隠しきれない安産型の大きなお尻。ムチムチとした大きな媚肉の塊を鷲掴みにして思う存分に味わいたい。
「ああ、口の中に咥えさせたり、舌先で舐められるのも堪らないらしいぞ? どうせお前は童貞だろ? こんな機会を逃したら一生味わえないかもしれないぞ? 歳上の女からのねっとりとした極上のフェラチオは」
先生の口から肉厚の舌がぬるり這い出し、そのぽってりとした唇を艶めかしく濡らしていく。
冷たい眼差しと冷酷なもの言いが生徒を威圧しているクールな美女。
そんな高嶺の花のような高圧的な女教師を股座に跪かせて媚び諂うような上目遣いをさせながら、奉仕させたとしたら一体どんな気持ちになるのだろうか。
「何だ、私の言葉だけで興奮したのか? 可愛い顔をしてる癖に頭の中は煩悩ばかりが詰まっているようだな」
「ひぃっ……!?」
僕がピンク色の妄想に囚われていたその時、おもむろに茶柱先生は僕の胸元を掴み上げてそのまま引っ張り上げた。
ガタンと音を立ててパイプ椅子が倒れた事など知った事かとばかりに強引に立ち上がる形になった僕の股間を、制服越しに先生のもう片方の手が鷲掴みにしている。
「おいおい真白ー。これは、何だ。うぅん? 言葉では良い子ぶっておきながら、しっかりとお勃てているようだが?」
「ごめんなさいっ!……あっ、先生、カリカリしないでっ!?」
「どうだ真白。私との取り引きに従う気はあるか? お前が断るならこの話はコレっきり。二度とお前にチャンスを与えるつもりは無いから良く考えろよ?」
「だ、だから先生っ! ちょっと、ちょっと待ってっ……さ、触るの一旦止めてよおっ!」
シュリシュリ、シュリシュリと。そんな音が僕の股間から聞こえるのは先生の悪戯のせいだった。
彼女は勃起した僕の陰部を布越しに爪先だてて、カリカリと何度も引っ掻いて刺激を与えて来るのだ。
「何だその言葉使いは? 目上の人間にはしっかりと敬語を使え。小中学校の九年間で習って来ただろう? 所詮はお前も不良品か?」
「ご、ごめんなさい。だ、だからもう止めて下さいっ!」
「はて? 止めろとは何を指している? 主語が無いと会話が成り立たないぞ。最近の若者は直ぐに言葉を省略しようとするから困るな」
カリカリカリカリ。カリカリカリカリ。
布越しに先生の指先が僕の亀頭を引っ掻く度に、理性も少しずつ削ぎ落とされて行く。
あまりにも突飛な。それこそアダルトコンテンツのフィクションでもなければ有り得ないような展開による動揺。
生まれてから初めて。否、前世から初めて味わう他人から与えられる性的快楽に僕は脳味噌が沸騰してしまう程の混乱と熱に侵されていた。
「それから真白」
不意に首元が引っ張られた。唯でさえ近かった茶柱先生と僕との距離が、鼻先が触れる程に縮まる。
「あっ……!?」
昂ぶっている僕を心底バカにするような冷たい目付き。そして何より、先生の女神の如き美貌が僕の視界いっぱいに広がった。
「話をする時は相手の顔を見てからするものだ。常識だぞ?」
心臓の鼓動が五月蝿い。興奮によってこれ以上は赤くなりようも無いと思っていた顔が燃え上がるように熱を帯びる。
肉欲にあっさりと支配された哀れな雄を見下す瞳。便利な駒を見る冷徹な瞳。愚かな不良品を蔑む瞳。
ゾゾゾッと背筋が泡立つ。身体中から鳥肌が立って背骨から脳髄に恐怖とも混乱とも違う余ったるい電流が迸る。
呼吸が乱れて涙が零れ落ちる。
気が付いたら僕は震える声で、絞り出すかのように目の前の女性に懇願していた。
「……し、ます」
「うん? 聴こえんな? もっと大きな声でハッキリと喋ろ」
「取り引き、しますっ! だから射精させて下さいっ!!」
何とも情けない。男として最低な僕の涙ながらの哀願に茶柱先生は何を思ったのか。
ふん。と鼻を鳴らしながら軽蔑の色を更に強くした視線で僕を射抜きながら端的にこう言った。
「手で抜いてやる。『褒美』の前借りだ。有り難く思えよ」
そうして茶柱先生は色を無くした表情で僕のスラックスのファスナーに手を掛けた。
「中間テストを乗り切れ。退学者を一人も出さずにな」
射精後の気怠さにボンヤリとした気分のまま床にへたり込んでいた僕は、なんとか茶柱先生の言葉を咀嚼していた。
中間テスト。よう実の本番とも言われているSシステムの種明かし後の最初の重要イベント。
他のクラスからすれば唯の面倒な学校行事でしか無いのかも知れないが、我がDクラスからすれば最初の関門だ。
何故なら赤点=即退学という厳しいルールが存在する高度育成高等学校の中でも、一際に我がDクラスは学力の低い落ちこぼれが多いからだ。
少なくとも先週に行われた入試よりも難易度が一段も二段も落ちる小テストですら赤点を取った生徒が七人もいたのだから、その絶望感は計り知れない。
「例年、最初の中間テストではDクラスから退学者が出やすいと言われている。今後のクラス間闘争を勝ち抜くには頭数は必須だ。こんな序盤から貴重な駒を失うわけにはいかない。真白、手段は問わない。絶対に退学者を出さずに中間テストを終えろ」
既に服装を整えた茶柱先生がスーツを着込みながら僕に振り向いた。教室でよく見かけるクールビューティーな女教師の姿がそこにある。
僕を誘惑した時の艶姿。その美しい御々手が僕の陰茎を握り扱いた時の甘い感触。目の前で揺れていた大きな胸。スカート越しに浮かび上がっている魅惑のヒップライン。
「おい」
射精直後で気もそぞろ。気怠い疲労感にボンヤリとしていたのが悪かったのだろう。
「いっ!? 痛いいいっ!!」
僕の股間に先程までの愛撫とは真逆の強い痛みが走った。
「さっき抜いたばかりなのに何故まだ勃起させている。お前、私の話はしっかりと聴いていたんだろうな。あぁ?」
脚だった。
色っぽい黒のタイツに包まれたスラリとした先生の美脚が、床にへたり込んでいた僕の股間目掛けてぐりぐりと踏みにじっていた。
「き、聴いてましたぁ! 中間テストの話!! だ、だから踏まないで!!」
「本当だろうな? もしも退学者でも出したら取り引きの話は当然無し。使えない駒は私自ら引導を渡してやるからそのつもりでいろよ?」
青筋を立てて怒りを顕にした先生は八つ当たりするかのようにして、真っ黒なパンプスの爪先でグリグリと踏み躙る。既に下着もスラックスも履き直していたとは言え、その衝撃は飛んでも無いモノだった。
痛みと屈辱に思わず引っ込みかけていた涙がまた出てくるが、不思議な事に僕の陰茎はますます硬さを増している。
それどころか強烈な痛みに混じって甘い痺れのような、僅かな快感すら混ざって来た。
「あ……うぅ……」
痛みに悶える僕の声に艶が混じったのを察したのだろう。
先生は怒りに歪んだ顔から一点、訝しむ様にして眉間に皺を寄せた。
「真白。お前、まさか私にペニスを踏まれて興奮してるのか?」
「ち、違いますっ!! ……う、動かさないでっ……あぅぅ……」
「薄々勘付いてはいたが真白、お前マゾなのか? その年でそんな拗らせた性癖を持っているとは、将来苦労するぞ?」
グググッ。とますます股間に圧が強くなり、先生の脚先の動きも変わっていく。
ただ闇雲に踏み躙るだけでは無く、靴底に上下運動が加わった。痛みが無くなる事は無かったけれど、スラックス越しとは言え竿を扱くような動きが加わった事により確かに性感が増していく。
つい先ほど欲望を吐き出したばかりだと言うのに、僕の陰茎は下着の中でますます反り返ったら。
「うっわぁ……お前、本当に変態だな」
「ち、違いますっ……あ、あぁ……」
「はぁ? 靴底で性器を踏みつけられてガチガチに勃起させてるエロガキが変態じゃなかったら一体何だと言うんだ。まさかこの歳になって、ここまでヒくような経験をする事になるとは思わなかったぞ」
多分に呆れが含まれていた先生の声が段々と低くなっていく。僕は強制的に与えられる刺激と快楽から逃れようと必死で先生の脚に縋り付いた。
だけれど、僕のそんな行動ですら先生は不愉快だったのだろう。ますます脚先の圧は強くなり、動きも射精を催促するようなものへと変化していく。
「ごめんなさい……先生ごめんなさいっ……あっ……あっ」
「チッ。このエロガキが」
舌打ちの音に僕は恐る恐る先生の顔を見上げた。
侮蔑。軽蔑。もはやそんな言葉ですら言い表せない熱の無い瞳。ゴミを見る目だった。
クラスメイトの女子生徒が猥談している池と山内を見る瞳と言えば分かりやすいかも知れない。
恋慕を抱きつつある女性からの氷獄の様な視線。女性に男としての象徴を踏み躙られる無様極まりない現実。
心臓がキュウッと音を立てて締め付けられるような悪寒が走り、涙が止め処無く溢れていく。
「あっ……あぁ……!!」
にも関わらず僕の股間はますます熱を帯び、再び精液がグツグツと噴き出そうと沸き立っている。
僕のそんなみっともない姿に限界が来たのだろう。先生は最後に虫けらの死骸を踏み躙る様にグリッと力強く僕の股間を靴底で捻じりながら。
まるで唾を吐き捨てる様に、恐ろしく低い声で言い放った。
「とっととイけ。この変態マゾ」
先生の脚を抱え込む様にして縋りつきながら。
僕は涙を流しながら再び射精した。
感想、高評価いただけたら嬉しいです。
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