※この作品はR-18です。

Dust to dust   作:解毒発酵DNA

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本編4〜5話くらいの行間です。
整備部隊の会話ですが、けっこう空気悪いので苦手な方はご注意ください。
それと匂わせ程度の原作キャラ×オリキャラのCPが入ります。






整備部隊と寄居虫

「うう………ひぐ………えぐ………」

 

長い猫っ毛を揺らし、めそめそと泣いている少女がいる。それに心配そうにしつつ、青年が話しかけていた。

 

「何を泣いている、ネルソン」

「レッド………」

 

少女の目は小動物のようにくりくりしていて潤んでいる。それに呆れつつ、レッドは無情にも返したのだった。

 

「仕事に戻れ」

「やだあ〜ッ!もうヘッドブリンガーのオーバーホール疲れたあ〜ッ!!!」

「総出でやっとるんだから貴様もさっさと行かんか馬鹿者ォ!」

 

ネルソンは、レッドガン部隊のAC整備部第6班の班長である。つまるところG6 レッドのAC整備担当であるのだが、今はヘッドブリンガーのオーバーホールにかかりきりになっていた。

 

G5 イグアスがコーラル流に飲まれ瀕死の状態で帰ってきたあと、整備部はもう大騒ぎであった。

 

ヘッドブリンガーの関節部に巻き込まれた溶けた装甲、そこに残留する生のコーラル、コーラルがあるだけで溶け落ちる母艦の甲板、とまあそれだけでも阿鼻叫喚の有り様だった。

 

そして、『使えるパーツは残せ』との上からのオーバーホール指示である。

 

もうスクラップにしちまえよ!と第5班の班長が叫んでいた。こんなん買い直した方が早いのは皆分かりきっている。

 

「うぅ〜ッ………」

「あ、居たな猫っ毛」

「ラプラタぁ〜………」

「すまない、直ぐに叩き直す」

「別にいい、俺らも休憩だしよ〜」

 

どかっ、と足場に座り込むラプラタ。彼は整備部第5班の班長であり、G5の乗機 ヘッドブリンガーの整備担当である。コーラルで表面がどろどろになった手袋を丸めて、手すりを背もたれに伸びをした。

 

「にしたってよくイグアス生きてたなァあれ」

「ぐす………座席もどろどろ、コーラルと接触してた肉まで溶けてたよねえ。あれどうしたんだろ」

「うっ………具体的に言うなネルソン………」

「ふふ、レッドってこういう話ダメだよねえ、兵士なのに」

 

へらり、とネルソンが笑った。ラプラタは平気そうにしているが、レッドは顔を歪めている。

 

「まあ医務官たちがどうにかすんだろ、いざとなりゃ医療ポッドもあるし」

「てか、もう入れられてそうだけど」

「それはそうだな」

 

そこにカツ、カツ、と足音が近づく。見れば細身の猫のような優美な姿をした女性が立っていた。

 

「ナジノンもおつかれぇ」

「また泣いてたねネルソン………泣き虫さえ治ればアンタ、もっと尊敬されそうなもんだけど」

「うぇ………?いや別にいい」

「そういうとこよアンタ」

 

笑っていたのに急にスンッとしたネルソンにナジノンが引き気味に言った。彼女も手すりをイス代わりにして休憩する。

 

「………ま、生きるにしても死ぬにしてもカタチが残ってて良かったよ。………キャノンヘッドも………ヴォルタも戻ってこなかったしさ………」

 

整備部第4班は、今はほとんど仕事がない。

────G4 ヴォルタの乗機を整備していた彼らは、その仕事を今後することはもう無いのだ。

ナジノンのその言葉に、ふん、とラプラタが鼻を鳴らした。

 

「イグアスが死ぬかよ、どんだけ意地汚くたって生きてりゃいいと思ってるヤツだ」

「アンタ仲良いんじゃないのかい」

「仲良いかと嫌いなことがあるのは両立するだろ」

 

さらりとそう言ったラプラタに、ふふ、とネルソンが笑う。

 

機械の排気音や、時折空気循環のために動くダスターの音が響いている。沈黙の中を破ったのはネルソンだった。

 

「ポトマックさんもさあ、どうすんのかな。オーバーホールするのはいいけど………アレじゃあ無理だよ、また動くかどうか」

 

ネルソンが整備部第1班の班長であり部長であるポトマックの名を呼んだ。

そして、それはおそらく、ヘッドブリンガーのあの状態を指している。妙な方向や関節に溶着した装甲や塗装を削るには、活性コーラルを不活化する処理がいる。

 

内部にまで入り込んだそれ等はコクピットの操縦桿やパネル、強化人間用の神経接続のパーツにまで侵蝕しており、そこからの主要系統は全てダメになっているだろうことは容易に想像できた。

そのネルソンの言葉に、2人もううん、と唸る。

 

「あの人どんなにヤバくても直すけどさ、今回ばっかりは無理だな」

「私もざっと見たけど同感………主要回路は全部ダメだと思った方がいいよ」

「はあ………もう憂鬱………」

 

そんな3人に、レッドが口にする。

 

「お前たちしか頼りはいない、頼むぞ」

「そういう事言うのレッドだけなんだよなあ!マジで!」

「えらいよレッド〜、6班が羨ましいなあ〜」

 

嬉しそうにそう言ったナジノンとラプラタに撫でくりまわされているレッドを見ながら、ネルソンは言った。

 

「私たちの仕事なんてさあ、無くっていいんだよ」

「………そうね。そういう時はレッドが死にに行く時かもしんないしさ」

「しょうがねーよ、結局どこまで行ったって俺らは傭兵集団だしさ〜」

 

死ぬときゃ死ぬさ、とラプラタは軽く言った。

空気循環が止んだのか音が止まり、静寂が満ちる。

 

「んだよ、俺変なこと言ってねえだろ」

「言ってないけど………ドライだよねえ、アンタってさ」

「お前がいつまで経ってもヴォルタの事でジメジメし過ぎなんだよ」

「はあ!?あんただってイグアスが………ああいや………イグアスだしねえ………」

「自分で言って納得すんなよ」

「私はレッド死んじゃったらやだから分かるよ〜」

「縁起でもないぞ貴様………」

 

妙な納得感に何も言えなくなったナジノンが、ため息を吐き出した。

 

「………ねえ、ラプラタ。あんたさあ、イグアスの事どう思ってんの」

「なに急に」

 

その声が、妙に整備ドックの中に響いた。

 

「死んだら、いいとか」

「………ナジノン」

 

レッドの剣呑な声が響く。

それにラプラタは笑い、ネルソンはああ、と言ったように困った顔をした。

 

「正直言うとよー………俺はアイツがどうなろうがどうでも良くなってる、ヴォルタも居ねえし、あいつに『頼んだ』って言われたけどさ、マジで俺が面倒見る意味ねえよ。タムだってレナ医務官だって多分同じだぜ」

 

だってアイツが救われる気がねえんだから。

突き放すようなその声はやはり平坦で、ドライと言われたような質感であった。

 

「ナジノンはさあ、G5のせいだと思ってるんだ」

「………だって、アイツが言わなきゃあ、ッ………ヴォルタだって一人で、死ぬことなんてさあ………」

「G5もそれは分かってるよー、だからあんなに荒れてる訳だしさあ」

 

でもねー、とネルソンが言う。

 

「そういうの、あんまり言っちゃダメだよ。気持ちは分かるけどダメ、特に4班に言われちゃあさ。いじめてるのと一緒だよお」

 

その声に、うん、と力無くナジノンの声が返した。

 

「レッドも内緒ねー」

「言えるかこんなもの………」

「んふふ、大変だねえー」

「他人事か」

「他人事ですもの〜、ってね〜」

 

ネルソンがスパナを手に立ち上がる。

おもむろにそうしたネルソンにつられてラプラタとナジノンも立ち上がった。

レッドも慌てて立ち上がったところで、彼には聞きなれない怒号が響く。

 

「ポトマックさんが呼んでる〜」

「休憩終わりか、あーくそ………煙草吸いてえー………」

「今は火気厳禁って言ってるだろ、全員丸焼きにしたいのかい」

 

軽口を言い合いながら立ち去っていく彼らに、レッドはため息をついた。

 

「………雰囲気が………悪くなっていくな………」

 

G5 イグアスが『壁越え』から逃げたと言うものが多いのは知っている。戦闘部隊は彼を嘲笑するようなものが多い───特に、G4 ヴォルタが引き連れていった第4MT部隊の生き残りは。

 

「………救われる気がない、か………」

 

荒れる先輩に何ができるだろうか、と思い悩んでいたが、問題は山積みである。

馴染みの小さな体躯がヘッドブリンガーの方に向かっていくのを眺めた後、レッドは整備ドックを後にした。

 

 

 

ネルソンから見たG5 イグアスという男は、非常に気に食わない男であった。

態度は粗暴そのもの。

言葉も悪ければ口も悪く、二言目には「殺すぞ」「死ね」「黙れ」である。

ラプラタはそこまで気性が荒くないが、もう本当に、イグアスという男には関わりたくもなければ声も聞きたくないくらいだ。

 

そこまでネルソンがイグアスを嫌うのは、単純にネルソンが八つ当たりされやすかったからである。

G4 ヴォルタがいた時も普通にケツを蹴飛ばされたので、なんならヴォルタも一緒になって笑っていやがったので、その時手に持っていたスパナを勢いよく顔面に叩き込んでやったのだった。

 

なので、ネルソンは正直どっちも嫌いである。

 

だが、彼が死んだと聞いた時は流石に、喪失感に似たものがあった。

 

死体も機体の残骸も、この冷えきったルビコンのどこかに打ち捨てられているのだろう。

そこにざまあみろと言えるほど、ネルソンは性格が悪くなかった。流石に憐れみが勝った。

 

死んだらいい、なんて。

ナジノンもよくもまあ、ああ言ったものである。無力な整備部としてはそりゃあ納得いかない部分もあるだろう。

 

どっちもどっちである。

G5は今までの態度ややってきたことが悪いし、ナジノンはそれを言うこと自体が悪い。

レッドが剣呑な雰囲気になるのも当たり前だ、言わなかったがラプラタだって雰囲気が少しピリッとした。

 

当然、友人が『最悪だから死んだ方がいい』なんて言われて笑っていられる人間なんていないのであるから。

 

「………にしても、どうかと思うけどなあ〜」

「何だ急に………黙ってやれよ」

「ん〜こっちの話〜」

 

声に出てしまった思考をラプラタに咎められ、ヘッドブリンガーの分解に戻る。

コーラルでどろけてしまった内部制御装置を全て取り外し、磨けば使えるようなフレームと使えない鉄クズとで分けていく。

 

どうかと思う、というのはG5に対してである。

 

周りは気にかけている。

 

『タム』もといシビナイ補給総括官はちょくちょく彼に話しかけている。前よりよっぽど気を使われているのに、G5は前よりも荒っぽく返してよく喧嘩になっている。

 

レナ医務官は、どうやらG4とは好い仲であったような噂を聞く。恨み言ならあの人の方がよっぽどありそうなのに、荒れて幻聴までまた聞こえ始めているG5の診察を投げ出すことはなかった。

 

ラプラタはああだけど、よく気にかけている。

優しいものだ、本人は確かG4 ヴォルタの方に懐いていたはずだ。喪った友人の言いつけを守るくらいには、律儀な男である。

 

救われる気がない。

その言葉はまさに的確で、仲の良くないネルソンから見てもあの男はただ伸びてくる手を振り払っているだけだ。

繊細な割に、周りには荒っぽい。

その繊細さはたまに入るヘッドブリンガーの調整でも感じられた。

 

その時は確か、ラプラタが熱を出してぶっ倒れ、ナジノンはキャノンヘッドの整備と調整で忙しく、手が空いているのがネルソンだったのだ。

 

『チッ………今日はてめえか、チビ』

「よろしくお願いしまあす」

 

いつも『チビ』と呼ばれる。確かに150cmを少し超えた程の己はチビなのだが、G4と並べばさらにチビなのだが、腹が立つ。

少々ムッとしつつもヘッドブリンガーと彼の神経接続の同期率を上げていくと、雑に繋がれた回線と怒鳴り声が響く。

 

『1回止めろッ!てめえ殺す気か………!』

「死なない死なない」

『痛えつってんだボケがァ!』

「ええ〜………」

 

ラプラタが言うように徐々に上げていったのに。1度止めつつ、そのまま会話する。

 

「どうですか〜」

『………チッ………頭が痛え………!』

「うーん」

 

レッドは多少雑に上げても怒らないんだけどなあ、と思いつつ、少しづつ調整していく。

本当に緻密な作業は、いつもラプラタが『イグアスが1番めんどくせえ』と言う通りの繊細さだった。

 

少しでも調整を間違えれば頭痛、とは難儀である人だ。まあ若いのに手術形式は第四世代型だというし、辛いものもあろう。

ネルソンはそんなことを考えながら、無事なフレーム部分を洗浄しつつ、丁寧に腐食部分を削っていく。

 

しかし、彼が死ぬ前にヘッドブリンガーを触れてよかった。

結局G4 ヴォルタの乗機はいじれなかったし、戻ってこなかった。

MELANDER C3の特殊フレームに触れながらほくほくで作業していると、ナジノンの呆れた声がした。

 

「アンタ本当に機械いじりが好きね」

「うん」

 

小さい頃からこういうものをいじるのが好きだった。父は優秀なファーロンの技術者であり、ミシガン総長の機体、ライガーテイルの調整に入った事もあった。

総長がレッドガンを作ってからは疎遠のようだったが、それを気にしたことはない。その辺の確執は勝手にやっていて欲しいから。

 

自分も元々ファーロンに居たが、たまにベイラムが技術者を引き抜きに来るので、それでレッドガンに来た形である。

居心地はどっちもどっちなので、戻りたいかと言われると否だが。

 

それにレッドがここにいたのにも驚いた。ミシガン総長に憧れていたのは知っていたけど、入隊当初は生身だったくせに並み居る強化人間達を抑えて成績優秀とは。

化け物みたいなフィジカルしてるなー、と思ったものだが、彼が仲間を庇って死にかけて、強化手術を受けた時もまた驚いた。

 

そういう経歴までミシガン総長に合わせなくていいのになあ。

本人は勲章みたいに思っていそうだけど、こっちからするとひやひやするのでやめて欲しいところであった。

 

「ネルソン、こっち」

「なに〜」

 

思考の海に沈みながら丁寧に作業していると、ラプラタにそう言われた。見れば溶けて溶着した機構と装甲があるので、持っているグラインダーで削れと言うことだろう。

 

「はい」

「お前よくそんなピッタリやるな………」

「勘ー」

「勘でやんな馬鹿」

 

しかし────これを直したところで、あの男は再びこの機体に乗れるのだろうか。

せっかく直しても中身が死んでは、意味がないだろう。様子を見に行くほど仲良くないし、というか弱った姿を見ても困る。

しかし気になるので、さてどうするかと悩むのだった。

 

 

今日の作業を中断し、流石にもう寝るか、となった頃。医務室の方がにわかに騒がしい気がした。この艦の構造上、整備ドックと医務室は近い方にある。

なんだろうと思って見れば、慌ただしく走り回る医務官たちが見えた。

知り合いであるレナ医務官の身体が血に染まっているのがわかる。

 

「大丈夫です〜?なにか手伝いますかあ」

「ネルソンさん、どうして」

「ヘッドブリンガーですよ〜」

「ああ」

 

近づいていくと血を拭いながら、レナ医務官は少しため息をついた。

 

「G5の容態が安定しないんです」

「あれだけ溶けてればそうでしょうねえ」

「ああ………最初に彼を出したのは整備部でしたね」

「ですです〜、うーん………死んじゃうと困るなあ」

「戦力の減退になりますからね」

「や、それもですけど〜」

 

彼女がG4の死後着けるようになったピアスを見ながら続ける。

 

「ヘッドブリンガー直せそうなので〜」

「………乗って欲しいのですか?」

「そりゃあもちろん。そのために直してますからあ」

 

そう言うと、レナ医務官はふふ、と笑った。

 

「我々も手は尽くします」

「んふふ、お互い頑張りましょうねえ」

「ええ。それとネルソンさん、少々お願いがあります」

「は〜い」

 

その後、掃除やら洗濯やらの手伝いをした。寝られたのは数時間後で、起床時刻まであと2時間もないのであった。

 

 

 

「………」

 

あれから1週間後、G5 イグアスは歩いて動けるようになっていた。

まだ訓練もヘッドブリンガーへの搭乗も許されていないが、身体を鈍らせないように歩き回るように言われているらしい。

 

起床時間よりももっと前、誰もいない夜中に空っぽの4番ドックに来たのを見た事がある。未だにG4のことを思っているようだった。

今もそんな感じで、たまたまネルソンが夜中にレッドの機体がある6番ドックに向かっていたところ、その男を見かけたのだ。

 

「G5〜、風邪引きますよ?ヘッドブリンガーが見たいなら5番開けましょうか〜」

「………チビ」

 

声に覇気がない。

一体なんだと思って見れば、感情の読み取れない空っぽの目がそこにある。

なんだか戦場でボキボキに折り曲げられて死んだ兵士みたいだ。流石に、いつもそんな死んだ顔はしていなかったので心配になる。

 

「ヘッドブリンガーは直んのか」

「いちおうフレームはある程度無事でしたあ、ただ制御装置やら内部機構やらは全部ダメでしたので、ほぼ買い替えですねえ」

「………そうかよ」

「元気ないですね、早く寝た方がいいですよお」

 

そう言って、思い出したのでポケットを探る。出てきたのは小さな飴玉が2つだった。

 

「どうぞ〜、煙草吸えない時に」

「………ん」

 

気のない返事だけが返ってきた。

よく分からないが、今ならこの男に何を言っても怒鳴ることは無い気がする。

 

「ラプラタにあまり心配させちゃだめですよ」

「………ああ」

「ナジノンにはちょっとお礼言うくらいは流石にしてくださいねえ」

「分かってる………」

「レッドも心配してましたよ」

「………」

 

返事が無くなってしまった。

 

「私は正直貴方が嫌いですが〜、貴方が機体を丁寧に使うのは好感が持てます。ヘッドブリンガーも随分大事にしてもらっててカワイイですからあ」

「………感性が意味不明だなてめえは………」

「理解は求めてないです〜」

「殺すぞ………」

 

言う割にいつもの圧がないので笑ってしまった。本当に繊細な男である。一体誰に何を言われてからここに来たのやら、と思っていると、G5が徐ろに口を開いた。

 

「あの医務官に言われた」

「どの人ですかあ?」

「ッ………ヴォルタのだよ」

「レナ医務官ですねえ」

 

何を言ったんだろうと気になってしまう。続きを待っていると、酷く平坦な声色がその音を作った。

 

「生きてて良かったって」

「へえ〜」

「ナジノンのヤツみてえに、死にゃあ良かったとは言わなかった」

 

本人に言ったのか、ナジノン。

それに眉をひそめると、何も無い目───いや、ほんの少しだけ困惑や不思議そうに、といった表情でG5が私を見た。

 

「何だその顔」

「いやあ………本人に言いやがったかあ、と思いまして〜」

「ああ?………はっ、俺が動けねえだけで意識があるなんて思ってなかったんだろ。いい恨み言だったぜ」

「ああ、だから今怒ってないんですかあ」

 

精神安定剤と感情の抑制剤か。

つまるところ、怒りに包まれず剥き出しになったG5がここにいるということであり、思ったより静かな男であるとわかった。

 

「でもねえ、言っちゃダメなことはどこで言ってもダメなんですよ。ね、G5」

「ふん………まあいい、これみよがしにナジノンには先に礼を言っといてやった」

「もう嫌がらせ済みでしたかあ、性格悪いですねえ」

「てめえもどっこいだろチビ」

 

そう言われて笑うと、舌打ちが返ってきた。

 

「まあそれくらいが貴方らしいですねえ〜、良かったですよお、折れてなくて」

 

そう言うとG5は笑った。

割と笑わない男であるので、びっくりして見つめてしまった。

 

「当たり前だろうが、ナメてんじゃねえ」

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