オオカミに襲われたって、そんなの夢みたいな話だった。
お墓だって形だけのもの、そこには誰もいなかった。
「何があったの?」誰に聞いても教えては貰えない。お前は猟師に助けてもらったんだと、それだけで。目が覚めた時、あなたは自分のベッドの上にいた。覚えているのは、お姉ちゃんの家に行った所まで……。それ以上を思い出そうとすると、頭が酷く痛む。
「おはよう、お兄さん」
それからというもの、あなたは毎日お姉ちゃんの家に通うようになった。
ううん、今はお兄さんだけの家。塞ぎ込んでしまった彼が気にかかる。助けてもらったお礼もあった。けれど、一番の理由は寂しかったからだ。
お父さんも、お母さんも、ただ悲しそうに首を振るばかり。
近所の人達は、もう口にさえしなくなった。初めからお姉ちゃんなんていなかったみたい。忘れろと言われた方がまだ優しい。まるで、オオカミに襲われた姉が悪いみたいじゃないか。そんなこと、そんなのって……。
「ああ……。おはよう、赤ずきんちゃん」
弱々しい声。頼りない笑顔。カーテンさえも開かないまま、お兄さんは椅子に座ったままうなだれていた。手つかずのパン。注いで置いたはずのワインは、そのまま水かさを減らしていて。
さっとカーテンを開けると、眩しそうに少しだけ。
一瞬、目を細めたお兄さんは、驚いたように あなたを見つめていた。迷子の子供が親を見つけたように。ポロポロと、その瞳から涙をこぼす。たった一言だ。呟いた名前は、あなたではなく姉の名前だった。
胸が苦しい。
「すまない……」お兄さんは、それきり頭を抱えてしまう。
年が離れていたって、もちろん姉妹だ。どうしたって容姿は似通ってくる。幼い日、楽しかった頃の思い出は、どれだけ彼を苦しめるんだろう。それは、不意に あなたを呼び間違えてしまうほど。
赤いずきんを被った女の子。
今、あの人の目に映っているのは あなたじゃなくて……。
「……お兄さん?」
俯く彼の前にしゃがみ込む。覗き込んだ顔はすっかり老け込んで、穏やかな笑みは見る影も無くなっていた。その手に触れると、怯えたように手を引いてしまう。
止めてくれ……
もう、来ないでくれ……
俺のことは放っておいて……
拒絶の言葉が突き刺さる。「違うんだ」「そうじゃないんだ」どんなに声を掛けても、あなたの言葉は彼の耳まで届かない。聞きたくないと首を振り、縋るあなたは遠ざけられた。
息が苦しい。
それはイヤだ。
両親でさえ、必死に忘れようとしている。姉を亡くした悲しみを、正しく分け合えるのは、もう彼しかいないのに。
どうして、話をしてくれないの?
どうして、話を聞いてくれないの?
ねぇ……どうして、私を見てくれないの?
そんなの簡単なことだった。一番簡単で、一番どうにもならないこと。
だって、あなたは姉じゃない。今日まで向けられていた優しさは、妹に対するものだ。あなたの面影そのものが、彼を苦しめてしまっている。
あぁ、悔しいな。
姉ではない。たったそれだけのことで拒まれる。
こんなに心配しているのに。どんなに想ってもらえない。彼を抱きしめる。
泣いてる子供をあやすように、胸元へと引き寄せた。
きっと、これは酷いことなんだろう。
自分に言い訳をする。仕方がないって。これも、お兄さんの為なんだから。
三日三晩も飲まず食わずで、ヒゲも生え放題。はっと、顔を上げた彼は やつれたオオカミのよう。あなたは初めて、自分の女を使ってみせた。男の慰め方は分からなくても、今の彼が欲しいものは分かるから。声音を真似るのは簡単だ。
たった一言でいい。その耳元で彼の名前を囁いた。
押し寄せた波が引くように。
逆らわないし。抗わない。ちょっと驚いただけ。抱き返してくる腕の力は、思ったよりも強かった。「痛いよ……」もう一度、名前を呼ぶ。彼の瞳からポロポロと涙が溢れ出した。その目を見ていられない。その目に見られていない。
赤ずきんちゃん。
お下がりの愛称でも、その名前はもう あなたのものだ。
だから、何も間違ってない。だって、濁った瞳に映る色は赤いまま、何も変わらないのだから。
求められるまま唇を明け渡した。引き寄せられて、抱きしめられる。
伸びたヒゲが頬に擦れた。くすぐったくて、ちょっと痛い。いつか夢見た光景の筈なのに……。
そう……頭が痛む。
匂いがした。鼻の裏にこびり付いていたものが、ようやく剥がれたような。
土と草と汗と、鉄の匂い。雨に濡れた家畜を、もっと毛深くしたかのような獣臭さだった。それに、何だか変な匂いも混じっている。
むっと纏わりつくような。
白い花が思い浮かぶ。胸がドキドキした。花びらの一枚が肌に触れ、ドロリと溶けだす。二枚、三枚、次々と。あなたの肌は白濁液に塗れていく。
立ち昇る強い匂いに、息が詰まりそう。ずっと止めてはいられなくなって、つい深く吸い込んでしまった。
気持ち悪い。
気味が悪い。
これ以上は……なのに。
白濁液から立ち昇る匂いに胸が満たされる。
なんだか体が熱い。なんだか肌がくすぐったい。体の奥が疼くんだ。記憶の底を覗き込む。目が合った。手を掴まれた。振りほどこうとして……。
お兄さんを突き飛ばしていた。
唇が離れる。自分が何をやったか分からない。彼の目に怯えが浮かぶ。
「大丈夫、大丈夫だから」首を振ったあなたは、赤いずきんを目深に被り直した。
顔を見られたくはない。似ていることが、彼を傷つけてしまうから。今だけでいい、姉の被り物が必要だ。
冷たかった。
彼の口の中。絡め合う舌でさえ温もりが足りていない。朝方の暖炉みたいだ。燃え尽きた薪が、僅かに熱を灯すだけ。
このままじゃダメだから。
机の上のパンに手を伸ばす。半分に千切って差し出してはみても、食べてはくれない。軽く顔を逸らされて、それきり。押し付けた柔らかさすら厭うようだ。
「食べて?」
お姉ちゃんの真似をしてみてもダメ。あなたは露骨に遠ざけられた。
一瞬でも見間違えた自分を罰するみたいに、唇を噛み締めて。
それが、許せなかった。もう、いない人なのに。顔も、声も、そう違わないはず。代わりで良かった。求めてくれるならそれでいい。お兄さんが元気になること、今はそれが一番だ。
苛立つままにパンを噛みちぎった。
歯ぎしりを咀嚼に変えて、口の中でドロドロに溶かしていく。
逃さない。彼の頬を両手で挟んだあなたは、顔を寄せていく。
押し付けただけ。無理矢理に口を開かせて、舌を差し込む。彼の手があなたの小さな肩を掴むけど、その力は弱々しい。今なら、腕相撲をしても勝ててしまいそうだ。
ゴクリ……
喉仏が大きく動いて、少しだけ溜飲が下がる。
何をしてるんだろう。頭に血が昇っていた。イラ立ちと、不安と、甘えたいのは あなただってそうなのに。「すまない……」謝らないでほしい。そんな彼を見ていられない。見ていたくない。悪者になっても構わなかった。
顔が熱いのはお酒のせいだ。
濡れた唇で もう一度。赤いワインが血のように行き交った。
彼の体にも、だんだんと熱が戻ってくる。薄まっていた唾液も濃くなって、喉仏を鳴らしても、あなた達は離れない。彼も離してくれなかった。
求められて、嬉しい。
正気じゃない。あなたも、彼も。求めているのは姉の代わりだ。
愛してくれさえすれば、きっと誰でも良かったとさえ思う。嘘でいい。例え相手がオオカミだったとしても、そこに目をつぶってしまえば違いは無いのだから。
一つ……
ブラウスのボタンに指がかかる。
抵抗しようとは思わない。ただ少し、目を逸らしただけ。
開いた胸元の内側に、冷えた空気が入り込む。「ほぅ……」と、零れた吐息には、ワインの匂いが混ざっていた。
二つ……三つ……
慣れないお酒の味に意識がぼやける。肌着が揺れただけで、くすぐたくなった。
何か、もどかしい。早く触れてほしい反面、ズキリとした痛みが走る。頭と、心と、両方に。脳裏に浮かんだのは、千切れたブラウスの破片と少女の悲鳴だ。
何か、大切な事を忘れている。
思い出そうとして、それが出来ない。したくない。
強烈な違和感に襲われたあなたは、無理矢理に意識を引き戻した。
四つ……五つ……
開いたブラウスがカーテンのように揺れていた。
肩紐が外され、肌着が肩からずり落ちる。もう少しで見えてしまう。強くなる鼓動に押されて、少しずつ、少しずつ……。後はもう、胸の膨らみを越えるだけ。
焦れったくなって身を捩ると、乳首の先に肌着が擦れた。
ピンっと弾けるようだった。フワリと揺れるようでもあった。甘い痺れに、気が抜けそうになる。肌が火照って仕方がない。彼の視線を感じて、乳首の先に血が集まってくる。
背中に手を回されて、抱き寄せられた。
ゆっくりと近づいてくる彼の唇。お姉ちゃんも……こんなこと、されてたんだ。
全然考えたこともなかった。子供の作り方。てっきり、男の人を受け入れて終わるものだとばかり。
ぎぃ……ぎぃ……
耳鳴りのような音を聞いていた。
ベッドの上に横たわる姉はピクリとも動かない。その上には、何か大きな影が覆いかぶさっていたような。爛々と輝く赤い瞳があなたを見る。あぁ、次は自分の番なんだ。本能的な恐怖。逃げ出そうとして、逃げられなくて……それから、それから。
「んっ……」
伸びた舌に乳首を舐められ、つい喉が鳴ってしまった。
肩が小さく跳ねる。パチっと頭の中で火花が散った。痛かったわけも、くすぐったいのでもない。変な寝相の後、手が痺れたような感覚だけが乳首に残る。
ジンジンと疼いて、ムズムズと落ち着かない。
彼の頭に手を置いた あなたは、それ以上動けなかった。なぜだか怖い。抵抗したら、もっと酷い目に合わされるんじゃないか。何と比べてるのかすらも曖昧だ。
下から上へ、流れるように。乳首の裏側をひっくり返されながら、大きな舌がゆっくりと動く。言葉にならない声に喉が鳴る。自分の声が頭に響いて仕方がない。気づけば彼の頭を撫でていた。愛されることで、ますます好きになる。
そうでもしないと、気持ちが溢れ出してしまいそう。
お姉ちゃんも、こんな気持ちで彼を受け入れていたんだろうか?
乳首が唇に押しつぶされる。前歯が擦れて、少し痛い。先端から根本へと、根本から膨らみへと。吸われて、舐められて、ゾクゾクした。
嫌ではない。その筈だ。
でも、些細な忌避感が拭えない。
以前にもこんな風に……。前はもっと大きな歯型を付けられたような。
背中に浮かんだ冷や汗が、流れ落ちていく。
一体何と比べてるのかも分からなかった。肌は熱いのに、心はどうしてか冷たくなって。知らないはずの事を知っている。この後、自分がどうなるのか。初めてのはずなのに、身を守るみたいに太ももを閉じてしまった。
「大丈夫……任せて?」
緊張している。
そう、思われたんだろう。
浮かんだ笑顔は優しかった。穏やかな微笑み。いつもの優しい笑顔。
あなたの大好きな お兄さんの顔は、決してあなたに向けられない。だって、その視線は、いつも姉を見つめていたから。
今だってそうだ。姉の代わりでしかない自分。でも、その姉はもう何処にもいなくて。そんな事、思っちゃいけないのに。思ってなんかいないのに。気持ちが言葉になる前に、首を振って追い出した。
背中を抱いていた彼の手が、腰に触れる。
お尻の丸みは、あっさりと包みこまれてしまった。
スカートの上から撫でられて、揉まれて、衣擦れの音がざわめき立つ。
見えないのに、見えてしまう。少しずつ、ずり上がってくる。スカートの内側。
籠もった空気が逃げ出した。擦れた太ももの内側を強く意識してしまう。
「……んぁっ♥」
不意打ちだった。突然の刺激に、昂った感情が口から飛び出した。
お尻を揉まれながら、乳首を吸われて目が回りそう。頭がグルグルする。どっちに意識を向けていいか分からなかった。
完全に捲れ上がったスカート。下着の中へ、そっと指が入り込んできた。
お尻の柔らかさを愉しむみたい。思い思いに動く五本指。柔肉を摘まれたり、押し込まれたり、撫でられたり。
でも、その目的だけは確かだった。
下へ。お尻を弄びながらも、下着を引っ掛けたまま、その手はゆっくりと動く。
脱がされる……。緊張で体が強張った。太ももに挟まれた下着は、それ以上に脱げてはいかない。お兄さんも、無理に脱がそうとはしなかった。
ほぅっ……と、安心して、気が抜ける。
完全に忘れていた。唾液に塗れた自分の乳首が、ピンっと張り詰めていた事を。
突然に吸い付かれて、吐息が漏れる。絡みついた舌に、乳輪の縁をなぞられた。
固くなった乳首を解すように、舌先が円を描く。顔が熱い。知らない自分がそこにいた。声を上げ、身を捩って、とても幸せそうだ。
胸がドキドキした。
二人のキスを盗み見てしまった時のような、そんな気分。見てはいけない。
そう思うのに、どうしても気になって。そうだといいなと真似をする。あの時は、唇に指を添えるだけだったけど、今は違う。
もっと、して欲しい。
彼のことをもっと近くに感じたい。
自己主張を強めた乳首が、舌先に押し込まれた。
逃げ場なんて何処にもない。膨らみの内側に沈められて、完全に蓋をされてしまった。窪んだ乳首の周りに唾液が流れ込んでくる。粘っこい水音が肌を震わせた。
聞いてるだけで、頭がおかしくなりそう。
右に左に転がされる。さらに乳首が膨らんで、胸の内はまた窮屈になった。
押しのけたいのに、出来ない。ザラザラとした舌の表面に、ずっと乳首を擦られ続けている。だんだんと、だんだんと、乳首が固くなるほど舌の刺激が強くなった。
もう、じっとしてられない。
「はぁっ……はぁっ……」
呼吸は乱れて、汗が一つ、また一つと浮かび上がった。
少しずつ、少しずつ……。肌が敏感になっていく。揉みくちゃされる乳首。揉みしだかれるお尻。流れる汗の一滴すら焦れったい。足踏みをするみたいだった。
足の指を開いたり、閉じたり。繰り返す内にだんだんと、抑えきれなくなっていく。
無意識に太ももを擦り合わせていた。
そうしていると、なんだか気が紛れて気持ちがいい。そう、気持ちがいいんだ。
名前のつけられなかった刺激。それを快感だと受け取った瞬間に、太ももの隙間から、つぅっと雫が零れ落ちた。膝の裏、ふくらはぎへと流れていく。汗より重く、粘ついて、それはまるで甘い蜜が溢れたようだ。
蜜に濡れた肌に火が付いた。太ももを擦り合わせると、一瞬だけ楽にはなる。けれど、煽られた火はもっと大きくなり、下腹から全身へと燃え広がった。
頭の中まで焦げ付きそうな感覚に、身震いが止まらない。お尻を揉んでいた彼の手が、太ももの内側に差し込まれた。
ぬるり……
抵抗もなく入り込んでくる。肌の内側を這い回る、生温かい指先。
太ももの付け根に近づいてくるのを感じて、思わず足を閉じてしまう。それが余計に辛かった。あなたの反応を探るように、引き出すように。押し付けた太ももは、イヤでもその動きを探り当ててしまう。
無意識に腰がひける。近づいてくる小指の先から逃げたくなった。
触れる直前になって、届かない。掠めた小指が通り過ぎる。飲み込んだ息を吐き出した。胸の内が軽くなる。緩んだ太ももの隙間に、また蜜流れ込んできた。
繰り返される緊張と弛緩。
溢れた蜜で、あなたの股間はグチャグチャだった。
足の間から聞こえてくる水音に、胸が掻き乱さる。どこか遠くに浮き上がるみたいだった。足に力が入らない。肌に張り付いていた下着が引きずられ、彼の手が膝へと抜けていく。広がった太ももの隙間が、少し寂しい……。
濡れた雑巾を床に落としたような。
次に聞こえたのはそんな音。意識を取り直した後も、吐息の熱は冷めやらない。
唾液に塗れた乳首は、ジンジンと痺れたまま。汗の浮かんだ お尻は、ムズムズとして焦れったい。呼吸をする。たったそれだけ。僅かに体が揺れた。それだけで、あなたはもう どうして良いか分からなくなった。触れたい。触れてほしい。このままじゃいられない。膨らんだ欲望に、理性が外へと追いやられていく。
促されるまま、足を開いた。
抵抗はない。する気もなかった。彼の肩に掴まったまま、その上に跨るのでやっと。広げた足の下に、熱り立つものを見つけて息を呑む。恥ずかしい。少し怖いのもあった。気を抜けば、そのまま崩れてしまいそうだ。
「ゆっくりで良いからね?」
優しいのは口調だけ。彼の大きな手は、あなたを掴んで離さない。
ピタリと閉じた縦筋を、肉棒の先端が舐めた。気持ちはある。体だって、もう準備は出来ているはずだ。
それなのに……
彼の肩を掴む指に力が入った。つま先が伸びて、肉棒の先から割れ目を逃がす。
「赤ずきんちゃん?」声を掛けられ、首を振った。違うんだと自分に言い聞かせても、どうしても忌避感が拭えない。苛立つ指先に、体を引き込まれた。
逃がしたはずの肉棒が、追いついてくる。開いていく割れ目の向こうに、見たくないものが見えそうになった。
以前にもこんな風に、無理矢理、誰かに……でも、何に?
止めて、叫んでも聞いてもらえなかった。ダメだと、抵抗しても無駄だった。
「ゆっくり、するからね」「力を抜いて」縦筋を舐めていた肉棒が、とうとう割れ目を開いてしまう。あなたにとっては初めての、その筈なのに。
どうして、涙が溢れるの?
どうして、痛くはないの?
ねぇどうして……
奥まで届いた肉棒の、その形を知っている。
ギチギチにまで広がった小さな穴。もう無理。もう入らない。中から体を押し上げられる。お腹に ぎゅっと力が入った瞬間に、肉棒の動きは止まっていた。
「相変わらず……キツイね。でも、気持ちがいいよ」
相変わらずって何? 彼は一体いつの話をしているんだろう?
姉と混同しているだけ。それを利用して、彼の愛を得ようとした。嫉妬はある。
でも、そのくらいは我慢しないと……。でも、この記憶はなんだろう? あなたを押し倒す、大きな男の影。カーテンが風に靡く。差し込んだ光が影を払い、その顔が見えた気がした。
「あぁぁっ……♥」
肉棒に奥を小突かれ、伸ばした指が何かを掴みそこねる。
甘い甘い女の悲鳴。初めて聞いた自分の嬌声に、繋がりかかった記憶がひっくり返された。辛い。苦しい。なんとか咥えこんではいても、元々の体格差はどうしようもない。
軽く揺すられただけで下腹が重くなる。鈍い痛みが熱に変わって、ドロドロと内側から溶けていくみたい。円を描くようにゆっくりと、たまに小突くような突き上げがくる。激しくはない、なじませるようだ。緊張の残るあなたの体から、一つずつ強張りが抜けていく。
二つ、三つ……
ふいに背筋が甘く痺れた。つま先が滑って、腰が落ちる。
四つ、五つと数える頃には、自分から彼の体に身を委ねていた。広い背中に手を回して、訳もわからないまましがみつく。
六つ、七つ……
繋がる喜びが下腹に響く。「もっと、もっと……」声を漏らすほど、気持ちが良くなった。彼の耳元で甘く囁く。一突きごと大きくなる唸り声。あなたに応えるように、彼の動きは激しくなった。そこにいるのはもう、オオカミと変わらない。
八つ、九つ……
爛々と輝く赤い瞳。そこに映り込む自分と目が合った。
頬は赤く染まっていた。瞳は涙で潤んでいた。肉棒に突き上げられるたび、胸を弾ませ、声を上げる。鏡写しに自分を真似る。獣のよう犯される自分の姿が、羨ましくてたまらなかった。
「はぁっ……はぁっ!」「ふぅっ……ふぅっ……!」
乱れた吐息は重なって、更に昇り詰めていく。
とんっ……
驚くほど静かだった。繰り返される抽挿。その一回が、あなたの入口に触れる。
熱い鉄の芯を差し込まれたみたい。下腹が縮こまって、咥えた肉棒を締め付けた。
ガクガクと腰が震えて浮き上がる。先端が入口から離れていき、抜け出そうになった瞬間、また……っ。
とんっ……
「あひっ……♥」
彼はあなたを離さない。お尻の肉に指が食い込んだ。
刺激を逃がそうと背筋を伸ばしたあなたは、乱暴に丸め込まれてしまった。
一突きごとに弾んでいた体はピクリともしない。突き上げる衝撃のまま、乳首が胸板に擦れる。削られて、皮を剥かれるみたいだ。新鮮な刺激が何度も弾けて、乳首の先が甘く溶け出した。
奥を小突かれて、グリグリと押し付けられる。
今からここに出すからな。印をつけるようだった。快感に抗えない。何か考えても、すぐに流される。わけもわからず彼の背中を掻きむしった。
「っ……!」苦悶が聞こえたのも一瞬だ。
むしろ、彼はより激しくあなたを責め立てた。お腹の中で肉棒が膨らんでいく。
その瞬間を知っている。幸せが注がれる瞬間だ。どんなに苦しくても、最後には……。
奥へ、奥へ……
大きく、大きな、声を上げた。自分から腰を動かして肉棒を受け止める。彼の背中に爪を立てながら、腰が勝手に落ちていく。甘い痺れが、背筋を駆け抜けた。
何が起きたの? どうなったの? もう、早く、分からない。
何度も、何度も、繰り返される抽挿に あなたは喘ぐ。
壊れそうな胸の鼓動。乱れた呼吸が、そのまま詰まって息が出来ない。
見えてくる終わりに、頭の中が白く霞んでいった。
とんっ、とんっ、とんっ……
ずっと、ずっと、気持ちが良かった。彼と一つになる。幸せに溶けていく。不規則に奥を叩かれ、間を空けて深く沈み込む。その間隔は次第に短くなっていくと、執拗なまでに入口をせめて立てられた。
……とんっ。
きゅっと、下腹が縮こまった。突き上げる肉棒が、確かにあなたを捉えた。
快感に抗えない。抱き竦められて動けない。肉棒の先端が、いよいよ入口に突き刺さる。肉がめり込み、口がこじ開けられた瞬間。
ドクンっ……!
肉棒が弾ける。あなたの中に、大量の精が流れ込んできた。
「だ……ぁ」漏れた自分の声に、ゾクリとした。懇願と、混乱と……。子宮が溺れていく。熱く、深いところへ沈んでいくみたい。なんて、なんで、気持ちがいい。今も、あの時も、イヤでも、ダメでも、こうなるともう……。
ドクンっ……!!
声を上げる。涙を流す。2回や3回じゃ収まらない。吐精のたびに快感が弾けた。
下腹が波を打つ。何度も、何度も、肉棒から精液を吸い上げるように。
「くぅっっ……!」声を上げた彼は最後にもう一度、あなたを強く抱きしめた。体が浮き上がる。あなたの入口に、彼の肉棒がピタリと重なり……。
それから……それから……どうなっただろう?
時間の感覚さえ遠い。お姉ちゃんの家についた時は、お昼にもなってなかっただろうに。気づけば、夕焼け空があなたの頬を撫でていた。体を起こそうとして、顔を顰める。火傷の跡にも似た痛み。下腹に何かが残っているような違和感があった。
なんで? どうして? いつの間に?
見下ろした自分の体は、ほとんど裸と変わらなかった。
頭が酷く痛い。視界がグルリと回って、体勢が崩れる。咄嗟に掴んだワインボトルが、机の上から滑り落ちていった。
パリンっ……!
ビンの割れる音が耳を劈く。そう、そうだった。お姉ちゃんのお見舞いにきたんだ。なのに、お姉ちゃんはオオカミに襲われていて、私も襲われそうになって、咄嗟にビンを投げつけたんだ。
ポタ……ポタ……
滴る水音。白く濁った水溜まり。淀んだ男性の匂いと、ワインの匂いが入り混じる。
「赤ずきんちゃん……。大丈夫かい?」
名前を呼ばれて顔を上げると、お兄さんに頭を撫でられた。
やさしく、ゆっくりと、髪を梳かれる。辛くて、苦しくて、泣くしか出来なかった。オオカミに襲われた あなたを救ったのは一発の銃声。
よかった……。
胸を撫で下ろす。お兄さんが助けに来てくれた、お姉ちゃんもきっと大丈夫。
ほっと……胸を撫で下ろす。安心して目を閉じた……そのはずなのに。あなたの唇を震わせたのは、小さな悲鳴だった。
それを何とか飲み込んで、慌ててずきんを被り直そうとする。
けれど、そこには何もない。被り物が欲しかったんじゃない。顔を見られたくなかった。顔を見たくなかった。
だって、そうでしょう?
あの日、あなたを襲ったのは……。