金色の髪と、青い瞳。あどけない笑顔に残る幼さの面影。
お気に入りの赤いずきん をかぶったあなたは、森の小径を歩いていた。
細腕に抱えたバスケットの中には、パンとワインと果物と。欲張って詰め込みすぎたかな? お母さんにも言われていたのに。お家から森の入口にたどり着く頃には、白い肌に赤い跡が付き始めていた。
「はぁ……」
バスケットを抱え直す。向かう先は、大好きだった お姉ちゃんのお家。
大切な人を亡くした悲しみは、痛いほど分かる。一人残された お兄さんのお見舞い。向かう足取りは重かった。短い歩幅は段々と縮まって、今にも足が止まりそうになった時、後ろから声を掛けられた。
「どこへ行くんだい、赤ずきんちゃん?」
赤いずきんがフワリと舞った。名前を呼ばれて振り返る。
お下がりの愛称は、あなたに唯一残された姉の形見だ。
「お姉……。お兄さんのお見舞いに……」
姉の名前を呼べなかった。咎めるような村人の視線に口を塞がれる。
「気をつけて……」一体、何に対して? また出るかも知れないオオカミに? それとも、姉の名前を口した警告だったのか。
自然と溜息が溢れてしまう。深い川底を歩いているようだ
さらに重くなった足取りで、あなたは再び歩き出した。
******
扉を開けると、お兄さんが出迎えてくれた。
顔色は悪くない。ご飯も食べてくれるようになって、声にも張りが戻っている。
いつもの優しいお兄さん。一見すればそうだ。
「いらっしゃい、赤ずきんちゃん」
名前を呼ばれて嬉しいはずなのに、素直に喜べない。瞳に映る赤い色。
目深に被ったずきんの下に、あなたはいない。どうして、来てしまったんだろう? 後悔を引きずりながら、何度も、何度も……。放って置けなかった。見捨てられるわけがない。きっと、村の人たちは彼を助けないだろう。
今は混乱してるだけ。
いつか、分かってくれるはずだから。
そうやって、何度も、何度も……。
「もう、やめて……」「お願いだから……」「いつものお兄さんに……」
まるで犬の躾だった。抵抗するあなたを、何度も、何度でもだ。「ごめんなさい」も聞いてもらえない。そのうちに、何も言えなくなってしまう。彼の顔を見るだけで、彼の声を聞くだけで……。
「ご飯……ちゃんと、食べてね?」
机の上にバスケットを置いたあなたは、そのまま動けなかった。
足の裏が床に張り付いてしまったみたいだ。逃げなきゃいけない。これ以上ここにいたら、また……。生唾を飲み込んだだけで、体温が上がる。期待なんてしていない。しちゃいけない。こんなこと続けたって、お兄さんの為にはならないのに。
「赤ずきんちゃん……」
名前を呼ばれて、鼓動が跳ねた。
彼の声が、胸の深い所をザワリと撫でる。首を絞められたように声が出ない。
すぐ後ろに立つ彼を、振り返ることも出来なかった。バスケットを掴む手を難く握りしめたまま、どうしていいか分からなくなる。
「今日は……泊まってくるって、お兄さんの所に」
家にだって居場所はなくなっていた。あなたを送り出した母親の顔は、惚気た姉を見るようだ。まるで元通り。本当にいなくなったのは誰だったのか。肩に触れられ、バスケットを掴む指が解けていく。
恐る恐る……
震えた指が摘みとったのは、赤いずきんの結び目だった。
ブラウスのボタンが外れて、肩から滑り落ちていく。重なった赤と白。溢れたワインと白く濁った精の色。肌着を捲って脱ぎ捨てた。下着に指をかけ、足から引き抜く。
肌寒い……
余りの頼りなさに、自分の体を抱きしめた。
人前で裸になるなんて。今ではもう、家族の前ですら抵抗があるのに。
首筋がチリチリする。触れられてもいないのに、まるでレンズが光を集めるみたい。
ただ、見られている。
首筋から肩へ。一度広がった視線が背筋に集まってきた。下へ。背骨の一つ一つを確かめるように、ゆっくりと。おしりの隙間を覗き込まれた。差し込んだ光から隠れるように腰を引く。降りかかる吐息が生温い。
「ゃっ……」
ふいにお尻を掴まれた。飛び出した悲鳴に蓋をする。胸の前で手を握りしめ、飛び出しそうになる心臓を押さえつけた。
大きな手。太い指。
やせ細ったオオカミの印象は何処にもない。
元気になってよかった。その分だけ、欲が出る。一人でパンを食べられるようになった。ワインだって飲み干して。
同情も、憐憫も、依存へ落ちた。
元気になれば、きっと分かってくれるはず。捧げた献身は実を結ばない。
幼かった恋心は、まだ彼を信じていたかった。止めてくれ……。何度も踏みとどまろうとしてくれていたのに。最初からだ。姉の被り物をしたのが間違いだった。
一度壊れたら、もう元に戻らない。
壊れたからって、簡単には無くならない。
壊れたまま、ぶつかって、混ざりあって、元の形すらも見失う。
今のあなたは、一体彼のなんだろう? 愛人? 恋人? それとも幼妻? 名前なんて付かない。あるいは、欲望を満たすだけの愛玩人形かもしれない。
お尻を押されて、寝室に連れ込まれる。
ベッドに座った彼の前で、促されるままひざまづいた。
スンっと鼻を鳴らすと、さらけ出された肉棒の匂いが鼻を突く。
抗いがたい獣の香りに目眩がした。脳が痺れる。理性がジワジワと削り取られていく。その影が揺らいで見えるほど、立ち昇る青臭さは濃密だった。
頬に血が集まる。
高まった心音が、ドっと耳に響く。
ぼんやりと、けれど確かに、一瞬でも犯される自分が目に浮かんだ。
最初は何も分からないまま。次は、そんな事すらも忘れていて。それでも、嫌いになりきれない。放って置けないんじゃない。放って置かれたくなかった。
また……するんだ。
こんなことしたって、なんにもならない。どうせすぐに、我慢できなくなるのに。
すっかりと、躾けられてしまった。肉棒を見せつけられるだけで、下腹に熱が灯る。恍惚とした吐息が、肉棒に降りかかった。ビクッ……。大きく跳ねて、先走りが頬にまで飛んでくる。
「ぁっ……」
声が漏れた。
頬を汚した先走りが、アゴの下で雫をつくる。垂れ落ちて、糸を引き、胸の谷間に消えていく。ぼんやりと映る視界の真ん中で、肉棒の形だけがハッキリと浮かんでいた。震える指先で、そっと撫でる。我慢できずに、手のひらで包み込んだ。
指紋の隙間まで先走りの汁が入り込み、肉棒との隙間を埋めていく。
催促するように強くなる脈動。重なった鼓動は、彼と一つになったみたい。
手を動かすだけで、背筋が甘く痺れた。まだ、何にもされていないのに。引き寄せた太ももの内側は、もう濡れ始めていた。
自慰行為。
彼のため。そう言い訳をして、本当は自分が気持ちよくなりたいだけ。
違うの? 気づいても、止めないのに? 止められないのに? 肉棒をしごきながら、太ももをこすり合わせる、少しでも手を止めたら、自分から弄り出してしまいそうだった。
彼の目の前で……。
視線を想像するだけで、意識を持っていかれそう。
こんなの全然知らなかった。自分の慰め方。彼に会えない日。物寂しくなった時。
ベッドに潜り込んでは、夜な夜な身悶える。全部終わった後の虚しさといったらない。こんな関係絶対おかしいはずなのに。お父さんも、お母さんも、止めないどころか背中を押すみたいだ。
それで、全部が元通り?
もしかしたら、今もこの瞬間……。両親は何をしているんだろう?
次に「お姉ちゃん」と呼ばれる自分を想像して恐ろしくなった。
きっと、赤いずきんが 似合うんだろうな。
口の中に広がる甘苦さ。肉棒の先に口付けた。
決して美味しくはないはずなのに、何故だろう? 止められなかった。ドロドロとした執着が芽生えていく。舌を痺れさせたのは、精に繋がる男の味。もっと欲しい。吐き出すなんて考えもしなかった。
誰にも渡したくはない……。
いつか、妹と呼ぶ彼女にも。
かつてのあなたが、そうだったから。きっと、彼のことを好きになる。
お下がりの愛称。赤いずきんが似合うようになる、そんな頃には……。
「上手になったね」
頭を撫でられて、嬉しくなった。
髪を梳く、彼の指。その感触に目を細める。赤いずきん はもういらない。
幼いままの少女は、そこになかった。必要なくなった。服も、赤いずきんも、全部、全部、脱ぎ捨てた。彼に言われるままだ。
大きく口を開き、肉棒を咥え込む。
アゴが外れそうなほどの圧迫感。先走りで濡れた唇を巻き込みながら、口内が埋め尽くされた。えぐみの強い塩味。男の放つ青臭さにむせ返る。
あんまりに大きすぎた。舌を押しのけ、更に奥へ。ゴツゴツと浮き出た血管に、頬の裏が削られる。こんな異物に、犯され続けていたなんて。自分の体がいまだに信じられない。
瞳が潤む。
味わう余裕なんかない。
幾度となく喉の奥を突かれるたび、卑猥な水音が弾けた。
泡立った汁が口の端から垂れ落ちる。喉を押し通る重たさに、お腹の底が抜けてしまいそう。肺を満たす空気でさえ、彼の匂いに染まっていく。
ゴクリ……ゴクリ……ごっ、く……。
飲み干そうとして、飲みきれなくって。煮凝った精液が喉の途中でへばりつき、詰まる。ただただ苦しい。一呼吸でよかった。このままじゃ溺れてしまう。
でも、彼はあなたを掴んで離さない。
頭を振って、藻掻く。髪を引きずられる痛みさえ霞んでいく。痙攣したように、熱く震え上がる肉棒。鼻の奥がツンっとした。くぐもった自分の悲鳴も途絶え、すっと部屋に静寂が戻って来る。
何も聞こえない。
最後の一滴が、トロリと喉を通り過ぎていく。
雫が跳ねる。お腹の中に広がる波紋。ユラユラと白く濁った意識が、口の端から溢れていった。
親指に頬を引かれて、無理矢理口を開かされる。
「いい子だ」
空っぽの口内を覗き込んだ彼は、満足そうに頷くと優しく あなたの頭を撫でた。
嬉しい。幸せ。ひねりのない感情に満たされる。難しいことなんて、もう何も。
どうだってよくなった。お腹に溜まる彼の熱。それ以外に必要なものはない。
残り香を舐め取るように舌を這わせる。
先端に口付けて、奥に残っていた精液を吸い上げた。
挑発だ。これで終わりじゃないよね? もっと、出来るよね?
だって、あなたはまだ全然満足していない。お腹の底の底。さっきから子宮が疼いて仕方がなかった。何もしてくれないのなら、押し倒したっていい。薄汚れた自分を、守る必要なんて何処にもなかった。満たしてくれるのなら、きっとオオカミにだって体を開いただろう。
掴まれた腕が痛い。
強引に体を引き上げられて、ベッドの上に放り投げられる。
怒らせちゃったかな? 悪いなんて思わない。むしろ責任をとってほしい。期待に満ちた胸の内は、今にも張り裂けそうだ。
腰を捕まれ、持ち上げられる。
四つん這いにされた あなたは、まるで獣のようだった。
吐息は荒く、ヨダレを垂らして。お尻を叩かれればワンと鳴く。雨粒のように溢れた愛液が、太ももの内側をしとどに濡らし、シーツに染み渡る。
先端に割れ目が押し開らかれた。
冷えた空気が、肌の内側を舐めたのも一瞬。
直後。熱い塊が最奥を穿つ。
柔らかな膣肉が悲鳴を上げた。背中を貫く強烈な異物感に、体が強く震えあがる。
部屋に響く嗚咽は、けれど甘い。一つに混ざり合っていく充足感に、思考が真っ白に塗り潰される。
イラ立ちを孕んだ脈動。激しい突き上げに、容赦なく責め立てられる。悲鳴も満足に紡げず、喘ぎ声すら霞んでいく。握りしめたシーツに深いシワが刻まれ、丸まったつま先が虚空を掻いた。
腰が震えて、膝が浮く。
足に力が入らない。崩れた体が彼の方へ飲み込まれていく。枕を抱きしめ、なんとかベッドにしがみついた。声にならない悲鳴が、迫り上がる熱に飲み込まれる。「ふぅ……ふぅ……っ」荒くなった鼻息が吐息に変わって、枕にヨダレを広げていった。
熱く、硬く。膨れ上がった肉棒は、肉塊へと変わっていく。
内側を、最奥を、執拗に叩かれた。抉るような肉塊の重たさ。それを受け止めるたび、あなたの中は一つの生き物のように激しく痙攣した。
甘美な誘惑だった。
従順に振る舞うほど、彼の色に塗りつぶされる。
脳を焼く圧倒的な快楽。視界が明滅を繰り返す。
もう、帰り道も分からなくなった。完全に自分を見失った次の瞬間、爆ぜた。
下腹が一気に燃え上がる。子宮口に肉塊が叩きつけられた。
ああ、どうしてだろう?
どこからか、遠吠えがする。振り返れば、すぐそこに。あなたを覆う影はオオカミのようだ。
どうして、そんなに耳が長いの?
どうして、そんなに鼻が高いの?
どうして、そんなに口が裂けているの?
体が沈んでいく。腹に溜まる精の重たさに、自分を保っていられない。
最後の一突き。枯れるほどに大きな嬌声を上げて あなたは果てた。
無垢な少女としてじゃない。オオカミとして、ケモノの番としての絶頂に、心が砕ける。身をよじればお腹が揺れた。胃の中も、子宮の奥も、オオカミの精液に満たされ、支配される。残酷なまでの心地よさに、恍惚とした吐息が漏れた。
「おねえ……ちゃん?」
開いた扉の向こう側。
赤く小さな影が、あなたを見つめていた。
ごんっ……。乾いた音がする。ワインのボトルが床に転がり、少女が尻餅をつく。
ベッドの上からオオカミが立ち上がった。後退りをしようと少女は藻掻く。
瞳には恐怖が浮かんでいた。けれど、うまく体が動かないのかオオカミとの距離は一向に縮まらない。
あなたの頬に笑みが張り付く。
歪んだ口元が元に戻らない。
可哀想に……。
でも、大丈夫。
きっと幸せになれるから。
意識が溶ける。
少女の悲鳴が尽きた後、最後に銃声が響いた。
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