※この作品はR-18です。

赤ずきんちゃん   作:霧里

4 / 4
はじめから

 

金色の髪と、青い瞳。あどけない笑顔に残る幼さの面影。

お気に入りの赤いずきん をかぶったあなたは、森の小径を歩いていた。

 

細腕に抱えたバスケットの中には、パンとワインと果物と。欲張って詰め込みすぎたかな? お母さんにも言われていたのに。お家から森の入口にたどり着く頃には、白い肌に赤い跡が付き始めていた。

 

「はぁ……」

 

バスケットを抱え直す。向かう先は、大好きだった お姉ちゃんのお家。

大切な人を亡くした悲しみは、痛いほど分かる。一人残された お兄さんのお見舞い。向かう足取りは重かった。短い歩幅は段々と縮まって、今にも足が止まりそうになった時、後ろから声を掛けられた。

 

「どこへ行くんだい、赤ずきんちゃん?」

 

赤いずきんがフワリと舞った。名前を呼ばれて振り返る。

お下がりの愛称は、あなたに唯一残された姉の形見だ。

 

「お姉……。お兄さんのお見舞いに……」

 

姉の名前を呼べなかった。咎めるような村人の視線に口を塞がれる。

「気をつけて……」一体、何に対して? また出るかも知れないオオカミに? それとも、姉の名前を口した警告だったのか。

 

自然と溜息が溢れてしまう。深い川底を歩いているようだ

さらに重くなった足取りで、あなたは再び歩き出した。

 

 

******

 

 

扉を開けると、お兄さんが出迎えてくれた。

顔色は悪くない。ご飯も食べてくれるようになって、声にも張りが戻っている。

いつもの優しいお兄さん。一見すればそうだ。

 

「いらっしゃい、赤ずきんちゃん」

 

名前を呼ばれて嬉しいはずなのに、素直に喜べない。瞳に映る赤い色。

目深に被ったずきんの下に、あなたはいない。どうして、来てしまったんだろう? 後悔を引きずりながら、何度も、何度も……。放って置けなかった。見捨てられるわけがない。きっと、村の人たちは彼を助けないだろう。

 

今は混乱してるだけ。

 

いつか、分かってくれるはずだから。

 

そうやって、何度も、何度も……。

 

「もう、やめて……」「お願いだから……」「いつものお兄さんに……」

まるで犬の躾だった。抵抗するあなたを、何度も、何度でもだ。「ごめんなさい」も聞いてもらえない。そのうちに、何も言えなくなってしまう。彼の顔を見るだけで、彼の声を聞くだけで……。

 

「ご飯……ちゃんと、食べてね?」

 

机の上にバスケットを置いたあなたは、そのまま動けなかった。

足の裏が床に張り付いてしまったみたいだ。逃げなきゃいけない。これ以上ここにいたら、また……。生唾を飲み込んだだけで、体温が上がる。期待なんてしていない。しちゃいけない。こんなこと続けたって、お兄さんの為にはならないのに。

 

「赤ずきんちゃん……」

 

名前を呼ばれて、鼓動が跳ねた。

彼の声が、胸の深い所をザワリと撫でる。首を絞められたように声が出ない。

すぐ後ろに立つ彼を、振り返ることも出来なかった。バスケットを掴む手を難く握りしめたまま、どうしていいか分からなくなる。

 

「今日は……泊まってくるって、お兄さんの所に」

 

家にだって居場所はなくなっていた。あなたを送り出した母親の顔は、惚気た姉を見るようだ。まるで元通り。本当にいなくなったのは誰だったのか。肩に触れられ、バスケットを掴む指が解けていく。

 

恐る恐る……

 

震えた指が摘みとったのは、赤いずきんの結び目だった。

ブラウスのボタンが外れて、肩から滑り落ちていく。重なった赤と白。溢れたワインと白く濁った精の色。肌着を捲って脱ぎ捨てた。下着に指をかけ、足から引き抜く。

 

肌寒い……

 

余りの頼りなさに、自分の体を抱きしめた。

人前で裸になるなんて。今ではもう、家族の前ですら抵抗があるのに。

首筋がチリチリする。触れられてもいないのに、まるでレンズが光を集めるみたい。

 

ただ、見られている。

 

首筋から肩へ。一度広がった視線が背筋に集まってきた。下へ。背骨の一つ一つを確かめるように、ゆっくりと。おしりの隙間を覗き込まれた。差し込んだ光から隠れるように腰を引く。降りかかる吐息が生温い。

 

「ゃっ……」

 

ふいにお尻を掴まれた。飛び出した悲鳴に蓋をする。胸の前で手を握りしめ、飛び出しそうになる心臓を押さえつけた。

 

大きな手。太い指。

 

やせ細ったオオカミの印象は何処にもない。

元気になってよかった。その分だけ、欲が出る。一人でパンを食べられるようになった。ワインだって飲み干して。

 

同情も、憐憫も、依存へ落ちた。

 

元気になれば、きっと分かってくれるはず。捧げた献身は実を結ばない。

幼かった恋心は、まだ彼を信じていたかった。止めてくれ……。何度も踏みとどまろうとしてくれていたのに。最初からだ。姉の被り物をしたのが間違いだった。

 

一度壊れたら、もう元に戻らない。

 

壊れたからって、簡単には無くならない。

 

壊れたまま、ぶつかって、混ざりあって、元の形すらも見失う。

今のあなたは、一体彼のなんだろう? 愛人? 恋人? それとも幼妻? 名前なんて付かない。あるいは、欲望を満たすだけの愛玩人形かもしれない。

 

お尻を押されて、寝室に連れ込まれる。

 

ベッドに座った彼の前で、促されるままひざまづいた。

 

スンっと鼻を鳴らすと、さらけ出された肉棒の匂いが鼻を突く。

抗いがたい獣の香りに目眩がした。脳が痺れる。理性がジワジワと削り取られていく。その影が揺らいで見えるほど、立ち昇る青臭さは濃密だった。

 

頬に血が集まる。

 

高まった心音が、ドっと耳に響く。

 

ぼんやりと、けれど確かに、一瞬でも犯される自分が目に浮かんだ。

最初は何も分からないまま。次は、そんな事すらも忘れていて。それでも、嫌いになりきれない。放って置けないんじゃない。放って置かれたくなかった。

 

また……するんだ。

 

こんなことしたって、なんにもならない。どうせすぐに、我慢できなくなるのに。

すっかりと、躾けられてしまった。肉棒を見せつけられるだけで、下腹に熱が灯る。恍惚とした吐息が、肉棒に降りかかった。ビクッ……。大きく跳ねて、先走りが頬にまで飛んでくる。

 

「ぁっ……」

 

声が漏れた。

 

頬を汚した先走りが、アゴの下で雫をつくる。垂れ落ちて、糸を引き、胸の谷間に消えていく。ぼんやりと映る視界の真ん中で、肉棒の形だけがハッキリと浮かんでいた。震える指先で、そっと撫でる。我慢できずに、手のひらで包み込んだ。

 

指紋の隙間まで先走りの汁が入り込み、肉棒との隙間を埋めていく。

催促するように強くなる脈動。重なった鼓動は、彼と一つになったみたい。

手を動かすだけで、背筋が甘く痺れた。まだ、何にもされていないのに。引き寄せた太ももの内側は、もう濡れ始めていた。

 

自慰行為。

 

彼のため。そう言い訳をして、本当は自分が気持ちよくなりたいだけ。

違うの? 気づいても、止めないのに? 止められないのに? 肉棒をしごきながら、太ももをこすり合わせる、少しでも手を止めたら、自分から弄り出してしまいそうだった。

 

彼の目の前で……。

 

視線を想像するだけで、意識を持っていかれそう。

こんなの全然知らなかった。自分の慰め方。彼に会えない日。物寂しくなった時。

ベッドに潜り込んでは、夜な夜な身悶える。全部終わった後の虚しさといったらない。こんな関係絶対おかしいはずなのに。お父さんも、お母さんも、止めないどころか背中を押すみたいだ。

 

それで、全部が元通り?

 

もしかしたら、今もこの瞬間……。両親は何をしているんだろう?

次に「お姉ちゃん」と呼ばれる自分を想像して恐ろしくなった。

 

きっと、赤いずきんが 似合うんだろうな。

 

口の中に広がる甘苦さ。肉棒の先に口付けた。

決して美味しくはないはずなのに、何故だろう? 止められなかった。ドロドロとした執着が芽生えていく。舌を痺れさせたのは、精に繋がる男の味。もっと欲しい。吐き出すなんて考えもしなかった。

 

誰にも渡したくはない……。

 

いつか、妹と呼ぶ彼女にも。

 

かつてのあなたが、そうだったから。きっと、彼のことを好きになる。

お下がりの愛称。赤いずきんが似合うようになる、そんな頃には……。

 

「上手になったね」

 

頭を撫でられて、嬉しくなった。

髪を梳く、彼の指。その感触に目を細める。赤いずきん はもういらない。

幼いままの少女は、そこになかった。必要なくなった。服も、赤いずきんも、全部、全部、脱ぎ捨てた。彼に言われるままだ。

 

大きく口を開き、肉棒を咥え込む。

 

アゴが外れそうなほどの圧迫感。先走りで濡れた唇を巻き込みながら、口内が埋め尽くされた。えぐみの強い塩味。男の放つ青臭さにむせ返る。

あんまりに大きすぎた。舌を押しのけ、更に奥へ。ゴツゴツと浮き出た血管に、頬の裏が削られる。こんな異物に、犯され続けていたなんて。自分の体がいまだに信じられない。

 

瞳が潤む。

 

味わう余裕なんかない。

 

幾度となく喉の奥を突かれるたび、卑猥な水音が弾けた。

泡立った汁が口の端から垂れ落ちる。喉を押し通る重たさに、お腹の底が抜けてしまいそう。肺を満たす空気でさえ、彼の匂いに染まっていく。

 

ゴクリ……ゴクリ……ごっ、く……。

 

飲み干そうとして、飲みきれなくって。煮凝った精液が喉の途中でへばりつき、詰まる。ただただ苦しい。一呼吸でよかった。このままじゃ溺れてしまう。

 

でも、彼はあなたを掴んで離さない。

 

頭を振って、藻掻く。髪を引きずられる痛みさえ霞んでいく。痙攣したように、熱く震え上がる肉棒。鼻の奥がツンっとした。くぐもった自分の悲鳴も途絶え、すっと部屋に静寂が戻って来る。

 

何も聞こえない。

 

最後の一滴が、トロリと喉を通り過ぎていく。

雫が跳ねる。お腹の中に広がる波紋。ユラユラと白く濁った意識が、口の端から溢れていった。

 

親指に頬を引かれて、無理矢理口を開かされる。

 

「いい子だ」

 

空っぽの口内を覗き込んだ彼は、満足そうに頷くと優しく あなたの頭を撫でた。

嬉しい。幸せ。ひねりのない感情に満たされる。難しいことなんて、もう何も。

どうだってよくなった。お腹に溜まる彼の熱。それ以外に必要なものはない。

 

残り香を舐め取るように舌を這わせる。

 

先端に口付けて、奥に残っていた精液を吸い上げた。

 

挑発だ。これで終わりじゃないよね? もっと、出来るよね?

だって、あなたはまだ全然満足していない。お腹の底の底。さっきから子宮が疼いて仕方がなかった。何もしてくれないのなら、押し倒したっていい。薄汚れた自分を、守る必要なんて何処にもなかった。満たしてくれるのなら、きっとオオカミにだって体を開いただろう。

 

掴まれた腕が痛い。

 

強引に体を引き上げられて、ベッドの上に放り投げられる。

怒らせちゃったかな? 悪いなんて思わない。むしろ責任をとってほしい。期待に満ちた胸の内は、今にも張り裂けそうだ。

 

腰を捕まれ、持ち上げられる。

 

四つん這いにされた あなたは、まるで獣のようだった。

吐息は荒く、ヨダレを垂らして。お尻を叩かれればワンと鳴く。雨粒のように溢れた愛液が、太ももの内側をしとどに濡らし、シーツに染み渡る。

 

先端に割れ目が押し開らかれた。

 

冷えた空気が、肌の内側を舐めたのも一瞬。

 

直後。熱い塊が最奥を穿つ。

柔らかな膣肉が悲鳴を上げた。背中を貫く強烈な異物感に、体が強く震えあがる。

部屋に響く嗚咽は、けれど甘い。一つに混ざり合っていく充足感に、思考が真っ白に塗り潰される。

 

イラ立ちを孕んだ脈動。激しい突き上げに、容赦なく責め立てられる。悲鳴も満足に紡げず、喘ぎ声すら霞んでいく。握りしめたシーツに深いシワが刻まれ、丸まったつま先が虚空を掻いた。

 

腰が震えて、膝が浮く。

 

足に力が入らない。崩れた体が彼の方へ飲み込まれていく。枕を抱きしめ、なんとかベッドにしがみついた。声にならない悲鳴が、迫り上がる熱に飲み込まれる。「ふぅ……ふぅ……っ」荒くなった鼻息が吐息に変わって、枕にヨダレを広げていった。

 

熱く、硬く。膨れ上がった肉棒は、肉塊へと変わっていく。

内側を、最奥を、執拗に叩かれた。抉るような肉塊の重たさ。それを受け止めるたび、あなたの中は一つの生き物のように激しく痙攣した。

 

甘美な誘惑だった。

 

従順に振る舞うほど、彼の色に塗りつぶされる。

 

脳を焼く圧倒的な快楽。視界が明滅を繰り返す。

もう、帰り道も分からなくなった。完全に自分を見失った次の瞬間、爆ぜた。

下腹が一気に燃え上がる。子宮口に肉塊が叩きつけられた。

 

ああ、どうしてだろう?

 

どこからか、遠吠えがする。振り返れば、すぐそこに。あなたを覆う影はオオカミのようだ。

 

どうして、そんなに耳が長いの?

 

どうして、そんなに鼻が高いの?

 

どうして、そんなに口が裂けているの?

 

体が沈んでいく。腹に溜まる精の重たさに、自分を保っていられない。

最後の一突き。枯れるほどに大きな嬌声を上げて あなたは果てた。

無垢な少女としてじゃない。オオカミとして、ケモノの番としての絶頂に、心が砕ける。身をよじればお腹が揺れた。胃の中も、子宮の奥も、オオカミの精液に満たされ、支配される。残酷なまでの心地よさに、恍惚とした吐息が漏れた。

 

「おねえ……ちゃん?」

 

開いた扉の向こう側。

 

赤く小さな影が、あなたを見つめていた。

ごんっ……。乾いた音がする。ワインのボトルが床に転がり、少女が尻餅をつく。

ベッドの上からオオカミが立ち上がった。後退りをしようと少女は藻掻く。

瞳には恐怖が浮かんでいた。けれど、うまく体が動かないのかオオカミとの距離は一向に縮まらない。

 

あなたの頬に笑みが張り付く。

 

歪んだ口元が元に戻らない。

 

可哀想に……。

 

でも、大丈夫。

 

きっと幸せになれるから。

 

意識が溶ける。

 

少女の悲鳴が尽きた後、最後に銃声が響いた。

 

 

 




最後までご覧頂きありがとうございました。

よろしければ、いいね、高評価等、宜しくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。