信じていた友人がショタNPCの変態調教にドハマリする何て…… 作:万歳!
モモンガ様曇らせ要素もあるかも。
リアルの世界は地獄だ。
モモンガ――いや、鈴木悟は、ログインしたままのログインの間を遠く眺めながら、何度目か分からないその言葉を心の中で反芻していた。
仕事はつらく、人間関係は希薄で、帰る場所もない。だが、ユグドラシルにはあった。仲間がいて、役割があって、意味があった。そのすべてが、今日で終わる。ユグドラシルはサービスを終了する。
それは、世界が消えるということだった。
歯を噛みしめる。どうして自分には、この世界を存続させる力がないのだろう。金も、権力も、声もない。ただの一プレイヤーにすぎない。悔しかった。どうしようもなく、無力で、情けなかった。
最後の日にログインしてくれた友人は少数だった。それでも、来てくれただけで胸が熱くなる。覚えていてくれた。その事実だけで救われる。
そして――
その中に、彼女がいた。
緊縛。
最後までナザリックに残ると言ってくれた、たった一人の友人。いや、正直に言うなら――初恋の人だった。所詮はゲームだけの関係だ。ユグドラシルが終われば、この関係も終わる。分かっている。分かっているのに、どうして胸はこんなにも痛むのか。
告白をする勇気は、最後までなかった。
「……と、すいません。モモンガさん、緊縛さん。愚痴ばっかりこぼしちゃって」
ヘロヘロの声が、チャットログに流れる。
「気にしないでください。ヘロヘロさん。そんな中、来てくれただけで感謝しています」
それは本心だった。だけど緊縛が言うことも事実だった。
「うん、それはそう! でも最後はもう一度冒険したかったな!!」
緊縛が明るく言う。
「ユグドラシルが終わったら、私、別のゲーム始めますから! また一緒にやりましょう! モモンガさんも一緒に!」
その言葉に、胸が締めつけられる。続きがある未来を、彼女は当然のように語る。
「はは、それはいいですね……じゃあ、すみません。お先に失礼します」
ヘロヘロはそう言ってログアウトした。本当は、最後までいてほしかった。だが、言葉にはしなかった。まだ残ってくれている人がいるのだから。
「はぁ……ユグドラシルもサービス終了か……」
緊縛がぽつりと呟く。
「モモンガさん! 悲しいですけど、必ず別ゲーでも遊びましょうね!」
「……ええ、ぜひ。それで、最後はどうします?」
「折角ですし、玉座の間で終わりましょうよ。魔王様!」
その呼び方に、苦笑しながらスタンプで了承する。
「ギルド武器も持っていきましょう! 最後なんですから、何か派手に!」
「……分かりました。何の効果を発揮しましょうかね」
「それは、着いてから考えましょう!」
彼女はそう言って、楽しそうに駆け出した。モモンガはギルド武器を手に取り、遅れないようについて行く。途中でNPCたちを見つけ、皆で玉座の間へ向かう。
そこでは、友人全員の承認がなければ動かせないはずの世界級武器を、NPC筆頭が手にしていた。それに緊縛が暗くなって言う。
「うーん……さすがに勝手な持ち出しはダメですよね……」
緊縛の声が、少し沈む。
「ログインしたなら、一言くらいメッセージか何か欲しかったな……」
その言葉が、胸に刺さる。自分が孤独にならずに済んだのは、この人がいたからだ。そして、いつも自分の言葉にならない感情を、代わりに口にしてくれた。
「……まあ、最後ですし。許しましょう」
二人でアルベドの設定を覗き込み、最後の一文を見て絶句する。緊縛は腹を抱えて笑っていた。
「ははは! さすがですね! でも、ちょっと悪戯しちゃいましょう!」
そう言って、彼女はモモンガの手を取った。一瞬、払いのけようとして――やめる。
ああ、好きだ。だが、この想いを伝える資格が、自分にあるとは思えなかった。彼女の手の温度。オフ会で見た、リアルの笑顔が脳裏に浮かぶ。
気づけば、アルベドの設定は「モモンガを愛している」に書き換えられていた。彼女は、楽しそうに笑っている。
歯を噛みしめる。これは、代替品だ。本物じゃない。それでも――胸が、少しだけ楽になる。
「じゃあ、モモンガさん! 今まで、本当にお疲れ様でした! また連絡しますから、別のゲームでも一緒に遊びましょう!」
それでいい。ユグドラシルが終わっても、繋がりが残るなら。この想いは、胸に秘めたままでいい。この関係が壊れるくらいなら、言わない方がいい。
「……ええ。また、必ず」
時間は静かに流れ、カウントダウンが始まる。世界が終わる、その瞬間まで――彼は、彼女の隣に立ち続けていた。
☆ ☆ ☆
「いやー、大変なことになりましたね。モモンガさん!」
玉座の間に、場違いなほど明るい声が響いた。モモンガは玉座に腰掛けたまま、深くため息をつく。
「……はぁ。どうしてそんなに笑顔でいられるんですか、緊縛さん」
「それはね! 地獄のリアルから脱出できたからかな!!」
あっけらかんと言われて、モモンガは否定できなかった。確かにそれは、紛れもない事実だった。現実世界に戻る必要は、もうない。
だが――問題は山積みだ。
まずは、この世界が本当にゲームの延長なのか、それとも完全な異世界なのか。自分たちの力はどこまで通用するのか。
玉座の間には、今は二人しかいない。NPCたちはすべて下がらせていた。
「それで、緊縛さん。この世界がゲームと同じ法則で動いているのか……少し、実験をしたいんですが」
「うん、それは必要だよね……じゃあさ」
緊縛は、少し考えるそぶりを見せた後、悪戯っぽく笑った。
「R18な行為が合法かどうか、試してみようかな……誰に触ってもらおう……モモンガさん、おっぱい触ってみる?」
「なっ……!」
モモンガは慌てて手を振った。
「な、何を言ってるんですか! 緊縛さん! そういうのは……自分で試してください!!」
一瞬の沈黙。そして、くすっと笑う声。
「……それだから、童貞なんですよ。モモンガさん?」
言葉は軽い。だが、胸の奥には確かな衝撃が走った。ぐさり、と。男としての自信が、静かに砕け散る。
緊縛は特に気にした様子もなく、ゆっくりと自分の胸に手を当てた。触れる仕草はあくまで実験的で、どこか冷静ですらあった。
いやモモンガの目には扇情的に見えた。触りたいと思ってしまった。
「……うん。感度もある。ちゃんと、体として成立してる」
彼女は満足そうに頷く。
「想像通りだね。この世界、かなり自由だ」
「……それは、良かったです」
モモンガはそう答えることしかできなかった。自由――その言葉は、同時に自分を縛る鎖でもある。
「それでね、モモンガさん」
緊縛は、くるりと振り返る。
「この世界の安全が確認できたら、私、旅に出ようと思ってるんだ」
「えっ……?」
思わず声が漏れた。
「ちょ、ちょっと待ってください! 何があるか分からないんですから、しばらくは……」
「うん、もちろんすぐじゃないよ?」
だが、彼女の言葉は止まらない。
「でもさ。この世界に、他の友人たちが来てる可能性もあるでしょ? それを探す旅もしたいし……それとついでに」
にっと笑う。
「私に相応しい殿方も、探したいし!!」
歯を、強く噛みしめた。ああ、どうして自分はアンデッドなんて種族を選んだのだろう。
もし、生きた体で。
もし、触れることが許される存在だったなら。
もし――。
その瞬間、精神が急速に冷却される。沈静化が発動したのだ。考えてはいけない。欲してはいけない。この想いは、最初から叶わない。
嫌われたくない。
彼女は、最後の仲間だ。
欲しい。だが、それで失うくらいなら、最初から諦めた方がいい。
マーレたちの階層を巡り、至高の御方と崇められ続ける。二人きりでいるはずなのに、常に誰かに見られているような疲労感があった。
「……まさか、ここまで敬われるとは」
「でも、裏切りはなさそうだね。それだけは安心かな」
緊縛は現実的だった。
「直近の安全は確保できたし」
「……そうですね」
二人で、今後の方針を話し合う。そして一段落すると、緊縛が言った。
「ねえ、外、見たい」
それは、モモンガも同じだった。二人で指輪を発動し、地上へ出る。夜空は、あまりにも澄んでいた。
気づけば、二人は空へ飛び出していた。
「綺麗ですね! モモンガさん!」
「本当ですね……キラキラしてる。ブループラネットさんの言葉通りだ……宝石箱みたいだ」
「宝石箱! いい表現するね!」
その背後で、控えていたデミウルゴスが静かに口を開く。
「もしよろしければ、この宝石箱を至高の御方に捧げたいのですが……」
「ダメだよ」
緊縛が即答した。
「この世界の敵がどれほどか分からない今、それは危険。ね、モモンガさん?」
「……ええ。緊縛さんの言う通りです、デミウルゴス」
だが、モモンガは空を見上げながら、続けた。
「……けれど、もし世界を掌握できたなら。他の仲間たちも、見つけられるかもしれませんね」
その言葉に、緊縛は何も言わなかった。
ただ、夜空を見つめ続けていた。
――彼女は、いずれ誰かの腕の中へ行く。
それを知っていて、モモンガは隣に立ち続ける。
それが、彼の選んだ諦め方だった。
☆ ☆ ☆
そして、モモンガたちの命令に従って、ナザリックを隠そうとしている、マーレとアルベドに、モモンガが報酬として指輪を渡した。
「マーレ! 後で、私の部屋へ来なさい! 御褒美をあげるわ!」
そう言っているのを聞きながら、モモンガは緊縛と別れた。どうすれば、緊縛をナザリックに留まらせることができるのか。
……いや、彼女自身の意思でナザリックに留まらせることができるかを考えた。
だが彼女の意思は明白だ……自分に相応しい男を探しに行く。
モモンガはメッセージをデミウルゴスに飛ばす。
「デミウルゴスか? お前に内密で相談したいことがある。緊縛さんに見つからないようにして来てくれ」
うろうろと、自室を歩き回る。ナーベやメイドたちはデミウルゴスと話し合いたいことがあると、遠ざけた。そこまで時間が経過することなく、デミウルゴスはやってきた。
「デミウルゴスです。モモンガ様」
「入ってくれ」
ドアが開かれ。デミウルゴスが入ってきた。その顔には緊張があるように思える。
「デミウルゴス。ここでは話が漏れる可能性がある。場所を変えるぞ」
そう言って、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの効果を発動し、宝物殿へ場所を変える。
「この先に、私の創ったNPCパンドラズ・アクターがいる。三人で話し合う必要がある」
「……何と!」
デミウルゴスが驚愕の表情をした。そして表情がより真剣なものに変わった。デミウルゴスの中では自分は至高の知者と言うことになっている。そしてパンドラズ・アクターはアルベドやデミウルゴスに匹敵する知者。
その三人で話す。容易ならざることと思っているのだろう。確かに答えが出ない問題だ。
そして先に進むと、ダブラ・スマラディグナの格好をした、パンドラズ・アクターがいた。
デミウルゴスが驚愕して、頭を下げようとしているのを止めてパンドラズ・アクターに言う。
「元に戻れ、パンドラズ・アクター」
「はっ! 私の創造主たるモモンガ様!! この度はどのようなご用件で!!」
モモンガは羞恥で顔をしかめそうになるが、それを抑え込む。そんなことに時間を取られる暇はないのだ。
「……私一人では解決できない問題がある。デミルゴスとお前はナザリック一の頭脳を持っている。私の悩みを解決してほしい」
「……モモンガ様が解決できない問題を解決できるとは思えませんが、精一杯務めさせていただきます」
デミウルゴスが静かに言う。パンドラズ・アクターは同意と言う風に大げさに頷いている。
「緊縛さんのことだ」
「緊縛様がどうなされましたか、モモンガ様!! もしや、緊縛様の御命を――」
「――違う!! 二度と、私が緊縛さんを殺そうとしているなどと不愉快な考えをするな、パンドラズ・アクター!! 私はナザリック去っていない最後の友人である、緊縛さんにナザリックを去ってほしくないだけだ!!」
その言葉にデミウルゴスが驚愕の表情をした。いやパンドラズ・アクターも。
「まさか、緊縛様はナザリックを去ると!?」
「……そうだ。安全が確認出来たらナザリックを去ると言っている」
「……どのような理由かお尋ねしてもよろしいでしょうか? 我々も緊縛様にナザリックを去られないように精一杯説得をさせて頂ければと思います」
「……男だ」
「はっ?」
「自分の理想の男を探しに行くためにナザリックを去ると言っている」
アルベド→モモンガ→オリ主→マーレ
いやーこれはナザリックは地獄ですね!!
最悪、モモンガ様がオリ主を手に入れるためにマーレを粛清しそう(小並感)
アルベドがオリ主を殺そうとする展開もありそう(; ・`д・´)
短編ですのでそこまで長くはならないかと('ω')