信じていた友人がショタNPCの変態調教にドハマリする何て…… 作:万歳!
宝物殿の奥深く。燭台の淡い光が、黄金と宝石の山を静かに照らしていた。だが、その眩い輝きとは裏腹に、場を満たしている空気は重く沈んでいた。
沈黙が、三人の間を支配している。
モモンガは腕を組んだまま、視線を落としていた。骸骨の顔では表情は分からないはずなのに、内心の苦悩は隠しきれていない。デミウルゴスはその様子を静かに観察し、パンドラズ・アクターは腕を組み、珍しく大仰な身振りを控えて思考に沈んでいた。
その沈黙を破ったのは、パンドラズ・アクターだった。
「……男を探しに……ですか」
彼はゆっくりと口を開く。
「緊縛様はサキュバス職業のをお持ちだったはず。モモンガ様、その男探しとは、どのレベルなのでしょうか?」
その問いの意味は明白だった。
ただの欲望のはけ口としての男なのか。それとも、共に人生を歩む恋人なのか。
モモンガは一瞬だけ視線を上げ、そして答えた。
「……私が聞く限りでは、恋人としてだ」
その言葉を口にした瞬間、奥歯がぎり、と軋む。自分でも気づかぬほど強く、歯を食いしばっていた。
デミウルゴスが静かに問いを重ねる。
「その理想の男性は……モモンガ様では、いけないのですか?」
静かな声だった。
だが、その問いはモモンガの胸を深く抉る。
もし自分で彼女を引き止められるのなら。
もし彼女が自分を望んでくれるのなら。
どれほど幸せだっただろう。
だが――。
「……彼女はサキュバスだ。そして私はアンデッドだ」
モモンガは静かに言った。
「彼女の欲求を満たす術を、私は持っていない」
言葉は淡々としている。だが、内側では感情が渦巻いていた。
もし自分がアンデッドではなかったらどうだっただろう。生きた体を持っていたなら。それでも、きっと同じだ。自分は彼女の理想にはなれない。
再び、歯が軋んだ。
その沈黙を破るように、デミウルゴスが提案する。
「では、モモンガ様がアンデッド以外に転生なさるという選択肢はいかがでしょう?」
確かにそれは一見するといい提案かもしれない。しかしモモンガは即座に首を振った。
「この世界での立ち位置が分からない現状で、弱体化する選択は取れない」
そして、少し間を置き、続ける。
「……それに、仮に生身の体を持っていたとしても、私は彼女の男にはなれない」
「それは、なぜでしょうか?」
モモンガは沈黙した。
そして、低い声で言う。
「……一度しか言わない。それを元に考えてくれ」
骨の体で深呼吸をする。意味があるのかは分からない。だが、言葉を吐き出すには必要だった。
「緊縛さんは……どMなんだ」
宝物殿の空気がわずかに張り詰める。
「乱暴に扱われたい。殴られたい。支配されたい……そういう話を、女性陣と話しているのを聞いた」
モモンガは視線を落としたまま続けた。
「だが私は……彼女の友人だ」
そして、静かに言う。
「そんなことはできない」
デミウルゴスとパンドラズ・アクターが、息を飲んだ気配がした。モモンガは顔を上げ、二人を見る。
「デミウルゴス、パンドラズ・アクター。お前たちに聞きたい」
低い声だった。
「緊縛さんに、殴ってほしい、乱暴に扱ってほしい、支配してほしいと言われたら……お前たちはできるか?」
即答だった。
「……至高の御方に反逆を命じられたとしても、私には行えません」
デミウルゴスが頭を下げる。
「……私も同様でございます、モモンガ様」
パンドラズ・アクターも、珍しく真面目な声で答えた。その瞬間、モモンガの中で何かが弾けた。
「ふざけるな!!」
怒声が宝物殿に響く。
「お前たちは私たちに忠誠を誓っているのだろう!! なら緊縛さんの望みを叶えて、ナザリックから去らせないように――!」
そこで、思考が急激に冷却される。沈静化。アンデッドの精神が、強制的に落ち着きを取り戻す。
「……すまん」
モモンガは静かに言った。
「感情的になった」
そして、改めて言葉を整える。
「つまりだ。緊縛さんをナザリックから去らせたくない。何か方法はないか?」
デミウルゴスとパンドラズ・アクターは沈黙した。二人は互いに視線を交わす。言葉を交わさずとも、思考が伝わっているようだった。
やがて、デミウルゴスが口を開く。
「……恋人役の男を、ナザリックの外から探すというのはいかがでしょう」
その声には、わずかな苦味が混じっていた。
「至高の御方の願いを、我らナザリックの者が叶えられないのは無念ですが……それ以上に、緊縛様がナザリックを去られることは避けねばなりません」
モモンガは静かに息を吐いた。悔しい。なぜ自分は、彼女の望みを叶えられないのか。
「……それしか、ないか」
「いえ、お待ちください。モモンガ様」
パンドラズ・アクターが手を上げた。
「至高の御方の発言を疑うのは不敬ですが……まず確認すべきことがあります」
デミウルゴスが興味深そうに視線を向ける。
「本当に、今の緊縛様が望んでいる男性像を、正確に把握する必要があります」
なるほど、とデミウルゴスが頷いた。
「ぶくぶく茶釜様たちと話していた時の内容は、冗談であった可能性もありますし……時間と共に理想の男性像が変化している可能性もあるからだね?」
「その通りであります」
パンドラズ・アクターは続けた。
「ですのでモモンガ様。この会議には、女性の意見が必要かと」
「……アルベドか?」
その名前を出した瞬間、モモンガの胸に少しだけ罪悪感がよぎる。緊縛さんが自分の手を使って書き換えた、あの設定。
だがパンドラズ・アクターは首を振った。
「いえ。男性の話題ですので……ここはシャルティア殿が適任でしょう」
デミウルゴスが小さく笑う。
「なるほど。ペロロンチーノ様のNPCですからね」
モモンガはゆっくりと頷いた。
「……確かに、そういう話には向いているな」
そして立ち上がる。
「よし。私が今から連れてくる。ここで待っていてくれ」
宝物殿の静寂の中、モモンガの指輪が静かに光った。
☆ ☆ ☆
モモンガは言葉を切ると同時に、指に嵌めた指輪の力を解放した。視界が歪み、瞬時に風景が切り替わる。次に彼が立っていたのは、ナザリック地下大墳墓第三層――シャルティアの支配領域だった。
時間を惜しむ。迷う理由はない。
モモンガはそのまま足を進め、シャルティアの私室へと急いだ。豪奢でありながらもどこか退廃的な装飾が施された扉の前に立つと、短くノックをする。
コンコン――。
わずかな間を置いて、扉が開いた。顔を覗かせたのはヴァンパイア・ブライドの一体である。
そして、次の瞬間。
「――ひっ!?」
自分の姿を認識した途端、その顔がみるみる青ざめた。当然だろう。ナザリックにおいて、自分は絶対の支配者なのだから。
「も、モモンガ様……っ!! し、失礼いたしました!!」
慌てて道を開け、深く頭を下げる。その過剰な反応に、モモンガはわずかに胸の奥が重くなるのを感じた。違う。自分は、そんな存在ではなかったはずだ。
だが、それを否定する時間も余裕もない。
「シャルティアはいるか」
「は、はい! ただいまお呼びいたします!」
ヴァンパイア・ブライドは慌てて奥へと駆けていく。しばらくして、軽やかな足音とともに、主が姿を現した。
「モモンガ様! このような場所にお越しになるとは、いかがなされんした?」
シャルティアは恭しく礼を取りながらも、その声音にはわずかな高揚が混じっていた。モモンガは無駄な前置きを省く。
「シャルティア、大事な話がある。場所を変えるぞ」
一瞬だけ、シャルティアの瞳が見開かれる。だがすぐに、強く頷いた。
「は、はいでありんす!」
モモンガは再び指輪の力を発動する。
次の瞬間、二人は宝物殿へと転移していた。
重厚な扉の向こう、黄金と宝石が積み上げられた空間。そこに、デミウルゴスとパンドラズ・アクターが静かに控えている。
シャルティアは周囲を見回し、その異様な空気を感じ取ったのか、わずかに表情を引き締めた。
モモンガは短く告げる。
「デミウルゴス、説明を頼む。私は……できれば口にしたくない」
その一言に、自分の内心が滲んでいることを自覚しながら。
「畏まりました、モモンガ様」
デミウルゴスが一歩前に出る。その動きには一切の迷いがない。
「シャルティア。急にこの場に呼ばれ、戸惑っているだろう。しかし、これから話す内容は、ナザリックの今後に関わる重要事項だ」
一度、言葉を切る。そして、わずかに息を整えた。
「……緊縛様が、ナザリックを去ると仰っている」
「……なっ!?」
シャルティアの瞳が大きく見開かれた。それは当然の反応だ。ナザリックにおいて、至高の御方が去るなどという事態は、想定すらされていない。
デミウルゴスは淡々と続ける。
「理由は明確だ。ご自身の理想に適う殿方を探すため」
その言葉が、モモンガの胸を再び締めつける。
「……モモンガ様では、駄目なのかと考えるのが自然だろう」
デミウルゴスは、あえてその言葉を口にした。
だが、その先も容赦はなかった。
「緊縛様の望みは……強く支配してくる殿方だそうだ。モモンガ様は、それを望まれていない」
沈黙。
シャルティアはしばらく言葉を失っていたが、やがて恐る恐る口を開いた。
「……それで、わ、私は……何をすればよろしいのでありんすか?」
その声には、戸惑いと緊張が混じっている。デミウルゴスは静かに答えた。
「緊縛様の理想の殿方像を、正確に聞き出してほしい」
「正確に……?」
「そうだ」
デミウルゴスの眼鏡が光る。
「過去に語られた内容が、冗談であった可能性もある。また、時間の経過とともに変化している可能性も否定できない」
モモンガはその言葉に、小さく頷いた。確かに、自分が聞いたものがすべてではないかもしれない。
「だからこそ、間違いは許されない」
デミウルゴスは続ける。
「本音を引き出す必要がある。その役目は、同性であるシャルティアが最も適任だ」
シャルティアは一瞬だけ俯き、そして顔を上げた。その瞳には、はっきりとした決意が宿っている。
「……承知しんした」
ゆっくりと、しかし力強く言う。
「必ず、緊縛様の本音を聞き出してみせるでありんす!」
その言葉を聞きながら、モモンガは何も言えなかった。
――聞き出した先にあるものが、何であれ。
それが、自分では決して埋められないものだと、分かっているからだ。宝物殿の光は相変わらず眩しい。だがモモンガの内側には、重く沈んだ影が落ち続けていた。
オーバーロードで書きたい二次創作が多すぎる!!
この短編を書き終えたら、次はアウラとマーレの近親相姦を書きたい……その後はまたオリ主物か、逆行のブレイン、爪切りのその先へだな!