信じていた友人がショタNPCの変態調教にドハマリする何て…… 作:万歳!
アルベドは、執務机に肘をつきながら静かに思考を巡らせていた。どうすれば――愛する方、モモンガ様を、自分だけのものにできるのか。
その問いは、もはや彼女の存在理由に等しい。忠誠も、愛情も、そのすべてが一点へと収束している。だが、現実は単純ではなかった。
(厄介なのは……緊縛、様)
その名を思い浮かべるだけで、胸の奥にわずかなざらつきが生まれる。同じ至高の御方。そして何より――最後までナザリックを捨てなかった存在。
その事実は、絶対的な意味を持つ。アルベドたち守護者にとって、至高の御方とは絶対である。その中でも、最後まで残った者は、さらに特別だ。
(……排除、など許されない)
それは理解している。感情ではなく、理性として。だが。
(では、私はどうすればよいのですか)
第二妃。その言葉が、頭の中で反響する。モモンガ様の隣に立てる。触れることも、愛を受けることも許される。
だが、一番ではない。
(……耐えられるはずがない)
思考するまでもない。アルベドにとって、モモンガ様は唯一絶対。その隣に他者が並ぶことなど、本来ならば受け入れ難い。だが現状、それを否定することもできない。
(……まずは)
ゆっくりと息を吐く。
(緊縛様のお考えを知る必要がある)
相手が何を望んでいるのか。それによって、自分の取るべき行動は変わる。モモンガ様との婚姻を望んでいるのか。それとも、別の道を考えているのか。
(それ次第で……)
アルベドの瞳が、わずかに細められる。そこへ、ふと現実に引き戻される。モモンガ様は現在、ナーベラルを伴って外へ出ている。
本来であればあり得ない状況。だが、あの御方のご意思である以上、誰にも止めることはできなかった。結果として――ナザリックには、アルベドと緊縛の二人が残る形となっている。
(……本来なら、緊縛様も外に出られていた)
だが、それは阻止された。至高の御方が同時に危険へ晒されることなど、到底許容できない。それはNPC全員の総意だった。
(……当然の判断だけど)
そう結論づけながらも、アルベドはふと自問する。
(私は……緊縛様をどう思っているのかしら)
ほかの至高の御方のようにモモンガ様や我々を捨てた恨みか。――違う。それは明確に否定できる。では何か。
(……恋敵)
その言葉が、最も近い。同じ対象を想う者。同じ場所を目指す者。だからこそ、排除はできないが、譲ることもできない。
そこまで考えた時、執務が一区切りついた。アルベドは立ち上がり、緊縛のもとへ報告に向かう。その途中。ドアの前で、一人の少女と鉢合わせた。
「あら、シャルティア。無事に任務は終えたの?」
問いかけると、シャルティアは胸を張った。
「もちろんでありんす。今から緊縛様にご報告するところでありんすよ」
だが、その表情にはわずかな影がある。
(……何かある?)
気になるが、今は優先順位が違う。
「そう。では一緒に参りましょう」
二人は並んで扉を開いた。その先にいたのは――。
「おかえり、二人とも」
柔らかな笑みを浮かべる、緊縛様。その表情を見た瞬間、アルベドの胸がわずかに締め付けられる。
(……この方を、追い落とす)
それが必要になるかもしれない。そう考えるだけで、奇妙な痛みが胸に走る。だが。
(それでも)
決意は揺るがない。
(私は、モモンガ様の正妃になる)
そのためなら、どのような選択も受け入れる。
「さすがだね、アルベド。もう全部任せてもいいくらいだよ。私、モモンガと一緒に外に――」
「駄目です!」
即座に遮る。
「モモンガ様だけでなく、緊縛様まで外に出られるなど、到底許容できません!」
その声には、一切の迷いがない。緊縛は少し驚いたように目を瞬かせ、そして苦笑した。
「……はぁ。分かったよ」
その様子を確認し、アルベドはわずかに安堵する。少なくとも、この場で無理をされることはない。そして、緊縛は視線をシャルティアへと向けた。
「ところで、保護対象の女性たちは?」
「はい。現在はアウラの領域で保護しているでありんす」
「……そっか」
一瞬だけ、表情が曇る。
「望まない形でレイプされるなんて……同じ女として、やっぱり見過ごせないよね」
その言葉に、アルベドは内心で小さく息を呑む。
(……やはり、この方は)
単なる支配者ではない。感情を持ち、価値判断をする存在。それが、厄介でもあり――同時に魅力でもある。その時だった。
「……その、緊縛様は」
シャルティアが、わずかにためらいながら口を開く。
「愛があれば、強引なレイプも受け入れられるのでありんすか?」
(……は?)
一瞬、思考が停止する。
(何を言っているの、この愚か者は)
場の空気を理解していないにも程がある。アルベドが叱責しようとした、その瞬間。
「……うーん」
緊縛は頬に指を当て、少し考える仕草を見せた。
「それ、恥ずかしいから内緒ね」
そして、悪戯っぽく微笑む。
「アルベドとシャルティア、それから私だけの秘密」
その言葉に、アルベドは一瞬言葉を失う。予想外の反応だった。
(……否定しない?)
つまり、それは。思考が追いつかない。だが、その混乱をよそに――。
「あ、そうだ」
緊縛が手を打った。
「せっかくだし、女子会しようよ」
「……女子会?」
「うん。お互いの好みの男性のタイプを話し合うの」
無邪気な提案。だが、その内容はあまりにも重要だった。
(……好み)
それはつまり――。
(この方の望みを知る機会)
アルベドの瞳が、静かに光を帯びる。
(これは……好機だわ)
緊縛の本音を探る絶好の場。そして同時に――自分の立ち位置を見極める機会。アルベドはゆっくりと微笑んだ。
「……ええ、ぜひご一緒させていただきます」
その声は柔らかい。だがその内側では、静かに計算が巡っていた。この女子会が、すべてを左右するかもしれない。
ナザリックの未来も。そして
――自分の願いも。
☆ ☆ ☆
「じゃあ私は最後に好みのタイプを発表するから……まずはアルベドから行ってみよう!!」
あまりにも軽い調子で、自分に話が振られた。テーブルの上には紅茶と菓子。守護者としてではなく、女性同士としての空間。
だがアルベドにとって、これは単なる雑談ではない。
(ここで、何かを得る……)
モモンガ様の正妃となるための、決定的な情報を。アルベドは一度目を閉じ、そして静かに口を開いた。
「では……僭越ながら」
その声には、普段の冷静さと、わずかな熱が混じっている。
「私は……モモンガ様をお慕いしております。できることなら、その……正妃としてお側に侍りたいと願っております」
言葉にすることで、その想いはより明確になる。
「もちろん、緊縛様が――」
配慮の言葉を続けようとした瞬間。
「いいんじゃない? 応援するよ、アルベド!」
あっさりと、肯定された。一瞬、言葉を失う。
(……え?)
予想外すぎる反応だった。だが、それ以上に衝撃的な言葉が続く。
「でも、あの童貞、私が誘惑しても恥ずかしがってただけだから、男らしく迫ってくることはないと思うから、アルベドが頑張って迫るしかないね!!」
……えっ? ちょっと待ってほしい。情報過多である。何故、緊縛様は、あたしを応援してくれているのだろうか? 普通は、モモンガ様と婚姻をするつもりじゃ……というより、モモンガ様は童貞なのか……自分は処女、始めてどうし……。
しゃあ!!
「そ、その緊縛様、モモンガ様が童貞と言うのは間違いないのでしょうか!!」
「間違いないと思うよ、私のおっぱいを触ってみるって言ったときにチラチラ見ながら、そう言うのは自分でしてくださいって言うくらいだから。まったく。据え膳食わぬは男の恥っていうのに……まぁだから童貞なんだろうけど」
シャルティアまで口をあんぐり開けている。いや私もだ。事実なら。
「そ、その緊縛様! それは本当なのでありんすか!?」
明らかに動揺している。それはアルベドも同じだ。
「うーん、本当だと思うよ? モモンガは女性に恥をかかせるぐらいの童貞だから、頑張って妃になってねアルベド!」」
緊縛はあっけらかんと答える。
「少し距離を詰めただけで、すごく困った顔してたし。ああいうの、嫌いじゃないけどね」
シャルティアが口を開いたまま固まる。アルベドもまた、内心で同様だった。
「まぁ、だからね」
緊縛は楽しそうに続ける。
「アルベドが頑張れば、全然可能性あると思うよ。逆レイプと言う形で!」
その言葉は、まるで背中を押すようだった。アルベドはゆっくりと息を整える。
(……やった!!)
緊縛様は敵ではない。少なくとも現時点では、自分が排除する必要はない。それどころか――。
(協力的、ですらある)
ならば。
(利用させていただきます。緊縛様!!)
その思考は冷徹だが、同時に合理的だった。一方で、シャルティアは未だに混乱の中にいた。
「そ、そうでありんすか……」
呆然と呟く。だがその瞳の奥では、何かを計算している気配もある。この場にいる三人は、それぞれ異なる思惑を抱えていた。そして――。
「じゃあ次はシャルティアね!」
緊縛様の一言で、場は再び動き出す。
だがアルベドの意識は、すでに次の段階へ進んでいた。瞳が、静かに輝く。この女子会は、ただの雑談では終わらない。それぞれの想いと策略が交錯する――戦場へと変わりつつあった。
続けてシャルティアが口を開いた。その声音にはいつもの妖艶さが滲んでいる。
「では次はわたくしでありんすね……好みの男性は……死していて、なおかつ腐っていない殿方でありんす」
やはり、と思う。
(……こいつも、モモンガ様狙いか)
言葉こそ遠回しだが、その条件に最も当てはまる存在は一人しかいない。胸の奥に、じわりと対抗心が灯る。
(負けるものか……)
静かに闘志を燃やしながら、アルベドは次の流れを待った。
そして――ついに、その時が来る。緊縛様の番。彼女がどのような理想を語るのか。それは、今後の力関係を左右しかねない重要な情報だ。
「じゃあ、私の好みの男性だけど……」
少しだけ照れたように頬をかく仕草。しかし次の瞬間、その雰囲気は一変する。
「ちょっと恥ずかしいんだけど、私ってドエムなんだよね!」
――思考が、一瞬止まった。
(……は?)
理解が追いつかない。だが緊縛様は構わず続ける。
「できれば私を腕力で無理やり押さえつけて、嫌がる私を無理やりレイプしてくれるような屈強な男性がいいかな!!」
……えっと?
場の空気が、微妙に変わる。
先ほどまでの軽やかな雑談とは違う、どこか異質な方向へ。
「後は私を叩いてくれたり、暴力を振るってくれたり、監禁してくれたり……まぁそういろいろだけど。そんな感じの殿方を探したいかな!」
沈黙が場を支配した。シャルティアは何かを考えているようだが……。だが私にとっては好都合だ。モモンガ様を貰えるなら大歓迎だ。
紅茶の湯気だけが、ゆらゆらと揺れていた。
シャルティアは顎に手を当て、何やら真剣に考え込んでいる様子だ。
だが――。
(……これは、好都合)
アルベドは内心でほくそ笑む。少なくとも、今の発言からはモモンガへの執着は感じられない。むしろ方向性がまるで違う。
(ならば、競合相手ではない)
その事実だけで十分だった。
「ナザリックじゃ私の理想の殿方は見つかりそうにないし、安全が確保できたら、冒険に出て好みの殿方を探そうと思うんだ!!」
緊縛様は軽く肩をすくめる。
「安全が確保できたら、外に出て探すのもありかなって思ってるんだ!」
その一言で、アルベドの中で結論が出た。
(……排除の必要はない)
それどころか――。
(むしろ、外へ向かわせるべき)
邪魔にならないどころか、自ら離れてくれる存在。これ以上ない好条件だった。アルベドは即座に立ち上がる勢いで応じる。
「承知いたしました! このアルベド、全力で緊縛様の安全を確保し、理想の殿方をお探しできるよう尽力いたします!」
「ちょっ! 何を言うでありんすかアルベド!!」
シャルティアが慌てて制止するが、もう遅い。
「ありがとう、アルベド!!」
緊縛様は満面の笑みを浮かべる。
「いやーナザリックだと皆私を敬うから、正直私も性欲を持て余してるんだよねーはぁ。せめてこんな会話してる時に誰か罵倒してくれないかなー」
苦笑混じりのその言葉に、アルベドは内心で確信を深める。
(やった……! これで、邪魔者はいない)
胸の奥で歓喜が弾ける。
(モモンガ様の第一妃は……この私)
抑えきれない高揚を、必死に表情の奥へ押し込める。その時だった。シャルティアが、改まった様子で口を開く。
「その……ナザリックの中に、緊縛様の好みに合う殿方はいないでありんすか?」
その問いには、どこか探るような色があった。
緊縛は少しだけ考える素振りを見せる。
「うーん……そうだなぁ」
そして、ぽつりと。
「もしマーレがそういう感じになってくれたら、ギャップもあって最高なんだけどねー」
軽い冗談のように笑う。
「まぁ、現実的には難しいでしょ。あなた達じゃ無理だろうし」
あっけらかんとしたその一言。だがアルベドは、すでにその内容に興味を失っていた。
(どうでもいい)
重要なのはただ一つ。
(モモンガ様を巡る障害が、また一つ消えた)
それだけで十分だった。瞳が、静かに細められる。この女子会は、単なる雑談ではない。それぞれの思惑が交錯する、静かな戦場。
そして今――。
アルベドは確実に、一歩先へ進んでいた。
ここまでが準備会……次回以降は一気にBBS要素を出したいなー
オリ主ならどんな扱にしても原作キャラと違って良心が痛まないのはいいですね!