信じていた友人がショタNPCの変態調教にドハマリする何て…… 作:万歳!
失敗。発狂
静寂に包まれた私室。
そこに、重い空気が沈殿していた。
モモンガは椅子ではなく、あえてその前に立っていた。座ることすらできないほど、内側の感情が揺れている。
対するパンドラズ・アクターは、主の前に跪きながらも、珍しく強い意思を帯びた視線を向けていた。
「モモンガ様……」
その声には、普段の芝居がかった響きはない。
「モモンガ様は緊縛様を愛しておられる。緊縛様も、モモンガ様を拒絶しているわけではありません」
一拍、間を置く。
「ならば何故、その想いを言葉にされないのですか!!」
その問いは、あまりにも直截だった。
「……黙れ」
低く、抑え込んだ声。
だがそれは拒絶ではなく、逃避に近い。
「いいえ、黙りません」
パンドラズ・アクターは一歩も引かない。
「私は、何よりもモモンガ様の幸福を優先いたします。そのためならば、どれほど不敬であろうと進言いたします」
顔を上げ、真正面から言い切る。
「緊縛様と結ばれることこそ、最も望ましい未来であると確信しております!!」
モモンガの指が、わずかに震えた。骨であるはずのそれが、まるで肉を持つかのように。
「……俺には」
絞り出すような声。
「彼女を幸せにする自信がない」
その一言には、すべてが込められていた。
パンドラズ・アクターは、即座に踏み込む。
「それは、あなた様が性器を所有しておらず、緊縛様の性欲を解消できなからそう思われているのではありませんか?」
そして、さらに一歩。
「それを問題の理由にされるのであれば、解決手段もございます」
手にしていた小箱を差し出す。
「宝物殿より、インキュバスに転生するためのアイテムを持参いたしました」
静寂。モモンガはそれを見つめる。それは――確かに可能性だ。
そして同時に、恐怖でもあった。
「……それで解決すると思うか?」
問いは静かだった。
だが重い。モモンガは自分が不安に思っていることをパンドラズ・アクターに言う。
「……お前にだから言うぞ、私がレベル百からレベル一になれば、NPCたちは私たちを見限る――」
「――そんなことあり得ません。ええ。捨てられていない私に言う資格はないかもしれません。それでも、言わせていただきます。NPCたちは皆モモンガ様と緊縛様以外の至高の御方に捨てられたと考えております。そしてお二人に捨てられることを心の底から恐れています」
パンドラズ・アクターは迷わず答える。
「……言い切るな」
「言い切ります」
即答だった。
「我々は、力に忠誠を誓っているのではありません。モモンガ様という存在そのものに忠誠を捧げているのです」
その言葉は、確信に満ちていた。
だがモモンガは、首を振る。
「……違う」
低く、否定する。
「皆……好きで去ったわけじゃない」
かつての仲間たち。
その背中を思い出す。
「それぞれ事情があった。それだけだ」
パンドラズ・アクターの声が鋭くなる。
「では何故、お二人は残られたのですか!!」
空気が、張り詰める。
「何故、他の方々は去り、モモンガ様と緊縛様は残られたのですか!!」
「黙れ!!」
怒声が響く。
「皆、リアルに大事なものがあったんだ!!」
それは、必死の否定。
だが――。
「ではお尋ねします」
パンドラズ・アクターは止まらない。
「モモンガ様と緊縛様には、それがなかったのですか?」
言葉が、突き刺さる。
「……それは……」
答えが、出ない。
沈黙が落ちる。
パンドラズ・アクターは静かに続ける。
「NPCたちは恐れております」
その声は、わずかに柔らいだ。
「お二人までもが、いつか去ってしまわれるのではないかと」
モモンガの胸が、締めつけられる。ああ。自分もいつか緊縛さんがナザリック去るのではないかと恐れていた。だが、パンドラズ・アクターは何故自分は違うかのように言うのだろう。
「……お前は違うのか?」
かすれた問い。
パンドラズ・アクターは、即座に答えた。
「はい」
はっきりと。
一切の迷いなく。
「私は何より、モモンガ様の幸せを第一に考えております。モモンガ様が幸せになるのであれば、捨てられようとも本望です。モモンガ様は緊縛様を心の底から愛しておられるはずです。だからこそ、私は何度でもモモンガ様の背中を押させていただきます。どうか、本懐をお遂げください!」
その覚悟は、揺るがない。
「何度でも、申し上げます」
声に、力がこもる。
「どうか、踏み出してください」
モモンガの内側で、何かが軋む。
「――俺は」
言葉が詰まる。
「俺は……彼女が好きだ」
ようやく出た、本音。
「でも……傷つけることはできない」
震える声。
「彼女は……最後に残った、宝物なんだ」
目を閉じる。
浮かぶのは、あの笑顔。
「全部、失った」
仲間も、時間も。
「残っているのは、彼女だけなんだよ……」
沈静化が発動し、感情が押し流される。
それでもなお、言葉は止まらない。
「それを……傷つけて縛れっていうのか?」
静かな問い。
パンドラズ・アクターは、迷わず答えた。
「ええ」
断言。
「それが緊縛様の望みであるならば」
モモンガは、ゆっくりと首を振る。
「……それでも、できない」
決定的な拒絶。
「下がれ」
かすれた声。
「頼む……下がってくれ」
そして、最後に。
「お前を……殺したくない」
その言葉に、パンドラズ・アクターは深く頭を下げた。
「……失礼いたします」
静かに立ち上がり、扉へ向かう。
開き、閉じる。
重い音が、室内に響く。
その外で――。
小さく、囁く声。
「……プランAは失敗です」
そして、淡々と続ける。
「プランBに移行してください」
廊下の闇に、その声は溶けていった。
☆ ☆ ☆
「それでシャルティア、君に何かいい考えがあるとのことだが?」
「あるでありんす。そう、マーレが緊縛様を奴隷にして、モモンガ様に献上するのはどうでありんしょう?」
「……献上?」
「緊縛様はご主人様が欲しい。そしてマーレがご主人様になり、マーレの性癖が寝取られであれば……上手くいくのではないでありんせんか?」
パンドラズ・アクターが言う。
「なるほど……つまりモモンガ様の目の前で、マーレの性奴隷になっているのを見せたうえで、モモンガ様に逆上して頂く……と。ふむ……確かに上手くいくかもしれません」
「……そうだね、私にもそれ以上の策は思いつかない」
「マーレには実際に私をレイプしてもらいんす。その上で、緊縛様の処女は奪わず貞操帯をつけさせたうえで、モモンガ様に献上。モモンガ様の目の前で私をレイプさせて、二人を高ぶらせて……どうでありんしょう?」
「ふむ……であれば、私が転生アイテムを使い、モモンガ様をインキュバスに転生させましょう。なに、モモンガ様は我慢をしておられる。インキュバスになれば沈静化も無くなる……そこに愛した女性がいるのであれば押し倒すでしょう……ですが、シャルティア殿はそれでよろしいので?」
「……そうだね、シャルティア。君は初めてを失うわけだが……本当に言いのかい?」
「私の創造主であるペロロンチーノ様はぶくぶく茶釜様の弟。言うなれば私とマーレはいとこみたいな関係でありんす。至高の御方以外では一番初めてを奪われても腹正しくありんせん。それに私もただ見ているだけではなく、緊縛様の後にモモンガ様にマーレから寝とってもらうでありんす。だから心配しなくていいでありんす」
「ふむ……そうか。それなら、確かに上手くいきそうだね。とはいえだ。それは最後の手段だ。パンドラズ・アクターがモモンガ様を説得するのに失敗したら、実行に移そう」
「そうですね……私も全力でモモンガ様を説得いたします。失敗したときはお願します」
三人で頷きあい。散会する。まだこの考えは誰にもばれてはいけない。最後の手段なのだから。
☆ ☆ ☆
モモンガは執務を行っていた。しかし心はここにあらずであった。ある程度、世界のことが分かり我々からすれば危険なものが少ないと分かったからだ。
このままでは緊縛さんは、男を探しに行ってしまう。
ギリ。歯ぎしりが止まらない。だが自分は見送るしかない。それが苦しい。
「モモンガ様……」
「言うな、パンドラズ・アクター」
エ・ランテルの支配も上手くいき、聖王国も掌握した。もう、彼女を遮るものはほとんどない。パンドラズ・アクターは自分が彼女に告白するように勧めてくる。
自分はアンデッドなんだ。彼女の性欲を解消できない。どうしようもないことなのだ。
そんなことを考えていると、扉がノックされた。ドアの外からマーレが来たことが告げられ、メイドの一人がドアを開けに行き……硬直した。何があった?
「え、えっと失礼します。モモンガ様」
そして押しのけるように、マーレが入ってきた。
首輪をつけてひもで首を引っ張られているシャルティア。
そして犬のように四つん這いになりながら動く、えっ?
「――はっ?」
そこには下着の代わりに鉄製の何かをつけられた緊縛さんがいた……隙間から液体が漏れていた。
「モ、モモンガ様にお願いがあってきました。シャルティアさんはボクの性奴隷になりました。だから第一階層から第三階層の守護者の解任をお願いしに来ました。それと――」
「緊縛様……き、緊縛も僕の性奴隷になりました。な、なので、至高の御方から除名して欲しいです! 僕だけのものにしたいです」
…………はっ? 沈静化が発動する。何度も何度も発動する。
そして……緊縛さんは笑顔だった。まるで本当に求めていた者がいたかのように。
悔しいのか、二度と緊縛さんがナザリックを去ることはないという安堵なのか……自分にも分からなかった。分からなかったが。
「……好きにしろ」
「やった! これで私はマーレ様のものだ!!」
「こ、こら。勝手にしゃべる奴隷にはお仕置きです」
そういうとマーレは緊縛さんのおしりをこっちにむけると、金属でおおわれていない部分を叩き始めた。それを嬉しそうに悲鳴を上げながら……液体を飛ばす緊縛。
彼女は本当に嬉しそうにしていた。
自分が、彼女の性癖を真正面から受け入れていれば……もしかしたら僕の者になっていたかもしれないのに……。
涙が流れそうで……気が付けば、パンドラズ・アクターが自分に何らかのアイテムを使うのを見ていた。
☆ ☆ ☆
パンドラズ・アクターは状況が想定通りに動いているのを見ていた。シャルティアとマーレと視線を交わす。頷いていた。
モモンガ様をインキュバスに転生させるのには成功した。
「じゃ、じゃあモモンガ様。この緊縛とシャルティアをモモンガ様に献上します!」
「……えっ?」
「ぼ、僕寝取られが好きなんです! 自分の物が目の前で別の人にとられるのが好きになっちゃったんです!」
ここまで全部演技だ。緊縛様は呆然としている。少しぐらい我々の苦労を知ると言い。モモンガ様は笑いながら緊縛様に近づいている。
マーレは貞操帯のカギをモモンガ様に預け……緊縛様が騒ぎ出した。
「やだー!! マーレ様の物が良いの!!」
シャルティアが抵抗しようとする緊縛様を力で押さえつける。装備も剥奪されている。抵抗は無理だろう。と思ったらマーレが自分のペニスを緊縛様の口に突っ込んだ。
……これならモモンガ様の罪悪感も消えるだろう。
モモンガ様も嬉しそうにしている。きっと嫌がっているほど楽しみにしていると思っているのだろう……そして緊縛様の性癖ならそれは間違いとは言えない。今はこれでいい。
自分は呆然としているメイドたちを連れて、執務室の外に出る。
外ではデミウルゴスが待機していた。
「首尾はいかがですか?」
「上手くいきました。マーレもシャルティアも演技の才能がある」
「アクターである君がそう言うとは……上手くいったみたいだね。後は」
「ええ。モモンガ様たちは難しいことをしなくていい。ただ遊んでいてくれればいい……ナザリックの外を見ないように……ね」
「……ええ。最後に残られた至高の御方々です。ナザリックを捨てられる。それだけは避けなければ……君は不満そうだね、パンドラズ・アクター」
「不満というほどではないですが、私はモモンガ様が幸せであるなら、ナザリックをお捨てになられる選択をされても、背中を押したでしょう。ですから緊縛様には心から感謝しており、心から困った存在だと思っておりました」
「というと?」
「モモンガ様にとって最後まで残られたご友人。アルベドを筆頭にモモンガ様の妃になりたい者たちはいましたが、緊縛様がいる以上、側室でしかないはずだったのに……」
二人でため息をついた。
「緊縛様の性癖だね……」
「ええ。非常に悩まされました。とはいえ、仮に他の方が残られていた場合、この結果はなかったでしょうから、とりあえずは最善の結果を導けたと思いましょう」
「アルベドはどうするのかい?」
「なに、いずれ宴に参加しますよ。なのでナザリックの内はセバス殿に任せ……我々が指揮をとり、敵対する……まずはあの鎧の男、危険人物を排除しましょう。モモンガ様と緊縛様がナザリックにいるのであれば、我々に敗北はないのですから」
「……そうだね」
そうして二人で、ドアの外から耳を当てて顔を真っ赤にしているメイドたちを横目に自分たちは脅威を排除するために動き出した。
全てはモモンガ様たちのために。
ぶくぶく茶釜「訴訟も辞さない」
ペロロンチーノ「なるほど、シャルティアとマーレの恋愛……いとこ婚の近親相姦になるのか!」
ぶくぶく茶釜「黙れ、弟」
ちなみにアルベドは宴を知って参加しようとして、シャルティアにモモンガ様は寝取りが好きだと言われて、絶望する模様('ω')